ポケットモンスター 転生したのは初めに旅立った子供   作:剣の舞姫

98 / 101
右手首、軽い腱鞘炎です。
腫れてないけど、めちゃ痛い。


第96話 「エンジュシティ、歴史の詰まった都」

ポケットモンスター

転生したのは初めに旅立った子供

 

第96話

「エンジュシティ、歴史の詰まった都」

 

 ジョウトリーグに出場するため、旅を続けるソラタとククリ、シズホの三人は遂に次のジムがあるエンジュシティにやってきた。

 歴史の都、エンジュシティは歴史の詰まった街として有名であり、特にエンジュシティにはかつて伝説のポケモンが舞い降りると言われており、更に伝説が生まれた都でもあると言い伝えられている。

 

「伝説ですか……」

「そうだ、シンオウ地方の伝説のポケモン、ディアルガやパルキアと同じ、このジョウト地方の伝説のポケモンの一角、ホウオウがエンジュシティに大昔は降り立っていたと伝えられているんだ」

「スズの塔と呼ばれる塔の頂上にホウオウは舞い降りてきたって言われてるんです……とはいえ、今あるスズの塔は再建されたレプリカなんですけどね」

 

 シズホが目を向けた先にある高い塔、それこそがエンジュシティで最も有名なスズの塔と呼ばれている塔だが、この塔はその昔ホウオウが降り立ったスズの塔ではない。

 そのすぐ近くにある焼け落ちたままになっている塔、やけた塔と呼ばれているソレこそが嘗てホウオウが降り立ったというスズの塔なのだ。

 

「大昔の争いによる大火事で焼け落ちたまま残されているんです。今のスズの塔はあくまで昔あったスズの塔を模して建てられたレプリカに過ぎません」

「そして、そのやけた塔……かつてのスズの塔の大火事の時に焼け死んだ名も無き3匹のポケモンにホウオウが命を吹き込んで生まれたとされるのがジョウト伝説の三犬、スイクン、エンテイ、ライコウだ」

 

 原作ゲームでは“やけたとう”は、“カネのとう”というルギアが降り立った場所とされていた。

 しかし、このアニメの世界においては“やけたとう”こそが元々の“スズのとう”だったとされており、今の“スズのとう”は焼け落ちたものを再現して建て直されたものなのだ。

 更に、アニメでは原作とは違う点があるからこその歴史的矛盾が生じていることがあり、今回エンジュシティではソラタはそれに着目してレポートを書きたいと考えている。

 

「ククリ、スイクンとエンテイ、ライコウはやけた塔で死んだ名も無き三匹のポケモンにホウオウが命を吹き込んで生まれたポケモンだと伝わっているが、ここで問題だ。この話に、違和感や矛盾している点がある……なんだと思う?」

「えっと……すいません、わからないです」

「ホウオウによって命を与えられて生まれたポケモンなら、世界に一匹ずつしか存在しない筈なのに、実際は違うこと……ですよね?」

「シズホ、正解だ」

 

 スイクン、エンテイ、ライコウ、共にジョウト地方ではホウオウに命を与えられて誕生したポケモンだと伝わっているが、それではおかしい事がある。

 それは三匹とも、世界に複数個体存在しているという事だ。それぞれ別々の地方でも同一ではない、別個体の目撃情報があるのだ。

 

「例えば、スイクンだな。スイクンは確かにジョウトが主な生息域として目撃情報もある。だが、ジョウト以外にもスイクンが生息しているという場所が存在するんだ。しかも明確に別個体だとわかる情報もな」

「……あ! クラウンシティ!!」

「流石はシンオウ地方出身、クラウンシティの守り神の存在は知っていたか」

「シンオウにもスイクンが?」

「らしい。しかも、クラウンシティのスイクンは色違いの個体だという噂を聞いた事がある」

 

 確実にジョウトのスイクンとは別個体だという証明だ。死んだ名も無きポケモンに、ホウオウが命を与えて誕生したポケモンが、なぜ複数個体存在しているのかという疑問、それをソラタは研究対象として調べたいと考えていた。

 ポケモンの歴史学の研究として、これほど興味深いものはないとレポートのテーマを考えて、前世のこの話を思い出したときから思っていたのだ。

 

「確かに、興味深いですね……確かに、スイクンだけでなく、ライコウもエンテイも、複数個体の存在が確認されている……でも、その誕生はホウオウによって生まれた存在だけが語られているというのは……」

「興味深いだろ? 実はウツギ博士から送られてきたパルデアの資料を見ていて一つ仮説が浮かんだんで、ちょっとエンジュシティの歴史博物館に行きたいんだ」

「では、案内しましょうか? 小さい頃は何度も行きましたから」

「頼む」

 

 エンジュシティの歴史博物館には、やけた塔で死んだとされている名も無きポケモン達の生前の姿を描いたという絵が展示されていると聞いた。

 勿論、それも古い絵なうえに、やけた塔の当時の大火事で大半が焼失していて、絵自体も半分は燃えている上に汚れている状態だから正確とは言えない。

 それでも、ソラタは見ておきたい理由があるのだ。自分の仮説が間違っていないのであれば、その絵にこそ答えのヒントが隠されているのだから。

 

 

 エンジュシティの歴史博物館、それは展示品のほとんどがエンジュシティに伝わる歴史に関連するものばかりで、やけた塔の調査で発掘されたものや、古文書、巻物なども展示されており、ジョウトの伝説のポケモンの大半について触れられている。

 博物館に入って直ぐ、ソラタはククリやシズホを置いて真っ先にやけた塔で焼け死んだとされる名も無きポケモン達の生前の姿絵の所へ向かった。

 後ろから二人が付いてくる気配を感じつつ、目的のガラスケースの前に辿り着くと、そこに描かれている絵を見て、ソラタは自分の仮説が正しいという証明の一歩を得られたような気がしたのだった。

 

「ウネルミナモ、ウガツホムラ、タケルライコ……」

 

 ガラスケースの中の半分焼けた絵に書かれているポケモン、焼けた塔で焼け死んでホウオウに命を与えられてスイクン、エンテイ、ライコウになったと言われているポケモンの生前の姿は、今ソラタが手に持つパルデアから送られてきた資料にある古代ポケモンの絵に写る姿と瓜二つなのだ。

 ずっと考えていたのだ。何故、スイクンとエンテイ、ライコウというホウオウに命を与えられて誕生したポケモンと瓜二つのポケモンが古代ポケモン……パラドックスポケモンとして存在しているのかを。

 そして、その答えはここにあった。

 

「そうか……名も無きポケモンとは、やはりお前たちだったのか」

 

 ウネルミナモがスイクンに、ウガツホムラがエンテイに、タケルライコがライコウに、それぞれ死んだあとにホウオウに命を与えられて転生したということだ。

 それぞれの誕生の秘話はこれで解明されたも同じ、ならば残る疑問であるスイクン、エンテイ、ライコウが複数個体、この世に存在している理由の仮説も、これから解明していかなれければならない。

 

「師匠、何がわかったんですか?」

「この資料と、ガラスケースの姿絵を見比べてみろ」

 

 ククリの問いに、ソラタは持っていた資料を渡す。受け取ったククリは隣に立つシズホと共に資料の絵とガラスケースの姿絵を見比べて、驚いた。

 

「お、同じ!?」

「これは、パルデアで見つかったという資料ですね……そうですか、スイクン、エンテイ、ライコウの元の姿は、この子達……」

「ああ、ジョウトにもウネルミナモ達は生息していたということだな。そして、スズの塔の大火で焼け死んだことで、ホウオウに命を与えられてスイクン達になった」

「では、スイクン達が複数個体存在する理由は……? これだけではその説明が」

「そこはこれからだけど、俺の中では既に仮説として、とあるポケモンの存在が浮かんでいるんだよなぁ」

 

 むしろ、それ以外にスイクン達が複数個体存在する理由の説明が出来そうな存在に心当たりが無い。

 

「シンオウ出身のククリなら、アルセウス神話について聞き覚えは無いか?」

「あ、アルセウス神話……! 勿論、聞いた事がありますし、チャンピオンのシロナさんもアルセウスについて調べていると聞いた事があります」

「アルセウス……初めて聞く名前ですね」

 

 おそらく、ジョウト以外にもウネルミナモ達は生息していたのだろう。それが、スイクン達の誕生後に姿を同じく変えた。

 そんなことが出来る存在など、一つしかない。命を与えることしか出来ないホウオウではない、ならばそれより上の存在であれば可能だとソラタは見ているのだ。

 

「ホウオウによってウネルミナモ達が命を与えられスイクンになったあと、何を考えたのかアルセウスが他のウネルミナモ達の姿を変えた。今のところ仮説でしかないけど、これが俺の提唱する歴史解釈だ」

 

 なぜアルセウスが他のウネルミナモ達の姿をホウオウと同じ様にスイクン達に変えたのかは、これから調べることだが、仮説としては悪くない解釈だという自信があった。

 そして、それを裏付けるかのように三人の背後から拍手が聞こえ振り返れば一人の青年が立っており、ソラタに向けて拍手をしているではないか。

 

「見事な解釈だった……いや、本当に見事だったよ」

「エンジュジム、ジムリーダーのマツバさん……」

「おや、僕を知っていたのか」

「マツバさんって……え、もしかしてメグリちゃんの師匠の!?」

「お! メグリのことまで……ああ、もしかして君がククリちゃんかな? メグリから話は聞いているよ」

 

 エンジュジムのジムリーダー、マツバ。代々スズの塔を管理する一族の人間であり、実はこの博物館の館長でもある。

 そして、ククリにとってライバルになるかもしれない嘗て戦った少女、メグリの師匠でもあるので、実は意外と繋がりがあるのだ。

 

「もしかして、三人ともチャレンジャーなのかな?」

「ええ、俺は明日、ククリは明後日に挑戦予定です」

「私は、母の実家がエンジュシティなので数日はそちらでのんびりしてから挑戦するつもりです」

「そうか、それじゃあ挑戦に来るのを楽しみにしているよ……それより、今はちょっと君、ソラタ君だったかな? 君の歴史講釈を聞きたいんだが、良いだろうか?」

「それは、勿論」

 

 改めて、ソラタのスイクン、エンテイ、ライコウについての歴史解釈を説明すると、マツバは時折頷いたり、または少し驚いた表情をしたりと、中々興味深そうに聞いてくれた。

 

「凄いな……僕も同じことを考えていたという点もあれば、予想外のことまで……しかも、これを学会にレポートとして提出するつもりなんだって?」

「ええ、オーキド博士、ウツギ博士、プラターヌ博士の推薦を頂いてまして」

「ポケモン研究の三博士からか、しかも内容からしてシンオウチャンピオンのシロナさんも興味を抱きそうだ」

 

 確かに、アルセウスが関わっているのではという解釈はシロナが食いつきそうな内容ではある。

 

「ポケモンの歴史研究をしているうえに、セキエイ大会ベスト4の実力……ソラタ君は、明日がチャレンジの日だったね」

「はい」

「なるほど……明日が楽しみになってきたよ」

 

 エンジュジム、ジムリーダーのマツバはゴーストタイプの使い手、ゴーストタイプを知り尽くしたスペシャリストだ。

 ソラタが苦手とするトリッキーな戦術のエキスパートともいうべき相手、だが苦手だからとソラタは負けるつもりはない。

 むしろ燃えて来たとばかりに不敵な笑みを浮かべて、翌日の挑戦が楽しみになって来るのだった。




次回はソラタのジムチャレンジ、当然ですがマツバの手持ちはゲームとは少し違いますよ。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。