トレセン学園は今日も鬱世に踊る   作:おおおユウゴ

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あさりよしとお先生はエロい(断言)。詳しくは『生殖の碑』を読みなされ。

あの雰囲気が気に入った方は『ひとりぼっちの地球侵略』もイイぞ(ダイレクトステルスマーケティング)

あ、わかりにくいかもしれませんが時系列的には二話よりも過去のお話になります。ので主人公はまだ男です。


第一幕第二節 失われたとき 上

 

 

 初めての印象というものが案外当てにならないにも関わらず、その第一印象とやらをいつまでも引きずってしまうのが自分という人格がいまでも未熟である証のように思えて、すこし厭になることがある。

 

 その日だってそうだった。

 彼という少年が、自分には見せないその一面をこともなげに、自分よりも短いつきあいの少女に露わにさせていた。

 

「──会長? なにになさいますか、人参ハンバーグがおいしいと昨日(さくじつ)私のことを“閣下”呼ばわりしたあの転入生はいっておりましたが……、会長?」

 

 そう、久しぶりに訪れた生徒たちであふれかえる食堂において、いつもどおりに何とはなしに集まってくる視線を【皇帝】として何げなしに受け流しつつ、私はそう甲斐甲斐しく話しかけてくれるエアグルーヴの言葉を馬耳東風とさせながら、さあらぬふうにしてその光景をちらりと見やった。

 

 そのいつも、自分の前ではいつも厳めしい表情ばかりでそれを決して崩そうとしない、意固地な、頑とした青臭い少年そのものの顔がその少女にじゃれつかれているうちにだんだんと和らいでいくのだ。

 やめてくれと、思ってしまう。

 なんでそんな、嬉しさを堪えているような表情をするのだ。

 なぜそうも、私の前ではけっして見せないような、見せる気すら微塵もない顔をそんな()に対しては見せるのだ。

 

 私と君は昔からの仲じゃないか。

 私は君のことを昔からみてきたのだ。 

 私は君のおかげで此処までこれたのだ。

 ──────────────────私は。

 

 だというのに。

 そうだというのに。

 私がこうも望んでいるというのに。

 私の望む彼と私の関係はいつもどおりの青写真のままだ。

 

 自嘲。

 それはもちろん、お前が彼のことを知ろうとしても。

 ──彼が教えてくれないからさ。

 

 

「おい、ルドルフ」そう肩をたたかれる。

 

「──ああ、ブライアン」

 そうして、自分が食堂の受付前で立ち惚けるよう自失していたことに気づく。

 

「──いれこむのも、いい加減にした方がいいな。生徒会長殿?」

 そうナリタブライアンはいただけないと言わんばかりに顔をしかめて見せる。

 

「そういうわけではない……。そういうわけではないのだよ」

 そう譫言(うわごと)めいた言い訳が口からふと飛び出て、刹那、戸惑う。

 

「──いや、なんでもない。忘れてくれ」

 そうして、自分を恥じる。なんと女々しい! これが学園の生徒会長たるものが、【皇帝】たるウマ娘が口にするべき言葉か? 

 

「……ふん、まあ、分からないまでもないがね」

 そうナリタブライアンは先導するかのように私の前に背を向けて立ち、食堂に並ぶより先に席を取りに行こうとした。

 

 私がついエアグルーヴの方を見やると彼女はすでに列に並んでいた。私の視線に気づいたのか、それに見返しつつ、うなずいてみせる。どうやら私たちのかわりに並んでおいてくれるらしい。

 その好意に甘んじて、私とナリタブライアンはどこか空いている席はないかと食道のホール、その奥の方へと歩んでゆく。

 

 あの少女と、彼がじゃれ合う──おもに騒がしい少女の声ばかりが響く、けれどもしっかりと少年の、声変わりしたそのやや低めの、ぽつりぽつりと受けごたえするだけの、それでも確かに楽しげな声もたしかに混じっている──それを背にしながら。

 

 

 

(──)

 

 

 

「~~~んんんっっ!? じゃあなにかァ、生徒会の言うチームの予算審査委員ってのはオメエだったってのかァッツ!?」

 

 そんな大声が飽きもせず、嗄れもせず、恥じることもなくまたも彼の耳元で響きわたり、それがついには食堂のホール全体に聞こえる羽目になった。

 

 耳がその女子特有の(まあ()()はそこまで極端というわけではないが)高めの大音響にジンジンと痛む。ついでに首が絞められかけているせいで首筋が痛む。無理な体勢を強いられているせいで、正直にいってきつかった。

 

「そうさ。なにか?」そうやっとのことで答える。

 

 完全に絞め落とされないために彼女のしなやかで強靱な腕と、自分の首の間に挟んだそこそこの太さをした自身の腕が今にもミシミシいっている気がする。さっきからギブギブと彼女の腕をたたいているのだが、相手はどうやら気にもとめていないようであった。

 助けで~。そう周りのウマ娘たちにそっと目配せするも、何奴も此奴も素知らぬふりである。くっそやっぱり女嫌い。

 

 ──!! いや!! どうやら俺は助かるようだ!! 

 そう食堂の入り口にあらたに現れた人影をみて確信する。あらたな贄のご到着である。

 

「おーい、おーい! おー(ムグッ」

 

 とりあえずその生贄第2弾にこの名誉ある神への供物的役割を押しつけようと、まずはその暴虐無人な神たるこの暴れウマ娘にその生贄第2弾の存在に気づかせるためにそう声をかけてみる(鬼畜)

 

 が。すぐにその神は俺の口を難なくふさぐ。うるさいと周りに迷惑だとでも思ったのだろう。自分はどうなんだ自分は。

 

「おおん!? なんだなんだイキナリ生きがよくなりやがって!? 

 ああ、さてはおめえゴルゴル星からDEMでもくらっちまったのか!? くっ、あのやろうども許さねえッツ!! いくぞおおおっつ、マックイーンっつ! スーパードライブストライドだッッツ!!」

 

 [朗報]生贄第2弾、無事捕捉された模様

 

「お、おまちくださいまし!! わ、わたくしはこれからテイオーと減量記念のパフェを──」

 

 にやりと笑う気配がする。

 

 

 

君を包む Absurd Fog

 

 

伽羅(きゃら)な Silhouette 駆け出せば

 

 

それは まぎれもなく ヤツ

 

 

 

彷徨える葦毛(あしげ)の女東宮 ゴゴゴーゴ・ゴーゴゴ 参戦!! 

 

 

 

「マックイイイイイイイッーン!!!!」

 

「ひいいいいいっっツツ!!!!」

 

 逃げるマックイーン!! おいすがるゴゴゴーゴ・ゴーゴゴ!! 

 

 内から内から! 並んでいる生徒たちのいない玄関側の入り口から逃走を図るようです! 

 

 先行はやはりメジロマックイーン!! 対するゴーゴゴはその外に並ぶ!! 

 

 妥当な選択ですね。彼女の脚質にはあっています。

 

 ──食堂玄関までの直線は短いぞ!! 

 

 負けられない! 負けられないぞメジロマックイーン!! 

 

 

 

「マックイーンッツ、それがお前の減量で得た力か!!」

 

「だが足りない、足りないね!!」

 

 ────「なんですって!?」

 

「オマエにたりないものは、それは──」

 

「情熱、思想、理念、スタミナ、賢さ、気品、根性、優雅さ、パワー、勤勉さ!」

 

「そしてなによりも!!」

 

 

 

「速 さ が 足 り な い !!」

 

 

 

「脳ミソが足りておらんわ貴様は‼」

 

 

猛突に放たれるは【女帝】エアグルーヴ渾身の、天空へと突き上げるがごとし“腹パン”!!

 

「メメタァ!!」

 

予想外の“肘”!!!!

 

「アバーッツ!!」

 

特に理由のないはずがない暴力(せいさい)がゴーゴゴを襲う!!!!!!!!

 

「ゴルシっッ」

 

エアグルーヴの猛烈にして苛烈なその連撃を受けて、 その見事な麗しき蘆毛の長髪を乱れさせ、神々しきプロポーションを持ち合わせた肉体を惜しげもなく躍動させて────

 

ゴールドシップはペガサスとなった。1907年12月17日ノースカロライナ州キティホーク近郊のキルデビルヒルズではなく、トレセン学園の学生食堂において、このウマ娘は人類史上初の偉業をなしたのであった。

 

空を、飛んだのである。

 

滞空時間はおおよそにして七秒半。自律飛行とはいかないまでも、人力ならぬウマ娘力式マスドライバー「たかいたかーい《過激版》」の実用性を全生徒に見せつけたそれはゴルシ劇場の粋を極めたものであったと、のちに有識者は語った。

 

だがしかし、その時エアグルーヴは動いた。

 

彼女の俊足にして豪脚をもって素早く、かつ正確にゴールドシップの肉体が落下するであろう地点へと滑り込み──

 

高らかに宣言した。

 

「これで下準備は整った……。さあ、終わりにしよう!!!!」

 

 そうして彼女は繰り出す。

 

 肉体のパワーを全開だっっツ!!

 

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラッ!!!」

 

「ヤッダーバァアァァァァアアアアアッツ!!!!」

 

「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」

 

ここまでされる謂れはない!! 

 

だが哀れゴルシ!!  敗北(K.O)!!!!!!

 

【女帝】の勝利である──ああっ、ゴールドシップのトレーナーを発見!!

 

──ダメダ!!

──ダメダ!!

 

「゛ぅ゛ト゛レー゛ナぁァあ……」

 

 おおっと、ゴールドシップ、立ち上がった。ほうほうの体でありながら彼女のトレーナーのほうへと向かう。六万大観衆よりどよめき──!!

 

「……何をしているのだね、ゴールドシップ」

 

 そう、男は言った。今さっき息絶えたかのように全身で彼へと寄りかかってくるゴールドシップのことを怪訝そうにしつつも、(しっか)りと受け止めながら。

 

 

 

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