ウマ娘と腐れ目トレーナーの日常   作:緑茶P

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('ω')さてはて、久々に集まった悪友たちを集めた彼の目的は何なのか?

今日も頭を空っぽにお楽しみくだされ~



_(:3」∠)_やすーみをくださいっ、だれにいうつもり~だろっ♪(bump名曲より



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俺んとここないか?

「んーでっ、なんで私達は今回よばれたの、ヒッキー?……うわっ、ここのからあげおいしっ。沙希も食べる?」

 

「いや、自分で取るからいいってば。……くだらない用事だったら即効帰るからね」

 

「かっかっかっか、タダで飲み食いする時ほど甘美に感じる食卓もあるまいて!!」

 

「この人無駄に美味い飯屋知ってるから侮れないんだよ。おい、お前はさっき二つ食ったろ、それ!」

 

「どうせ奢りなんだからまた頼めよ。それに釣られて毎回、無茶に巻き込まれてんだよなぁ…」

 

「あ、あははは、皆とりあえず落ち着いて食べよ?」

 

 夜も更けて来て賑やかになってきた店内の中で、人の話を聞く気があるのかないのか夢中で届いた料理と酒に舌鼓を打って盛り上がる彼らの代わり映えの無い姿にちょっとした呆れと懐かしさを感じつつ箸で空になったお通しの皿を叩いて一旦こちらに注意を惹きつける。

 

「えー、この度はご多忙の中お集まり頂き「それ以上長くなら帰るから」……はいっ、という事で簡潔に行く。―――今度、職場でチームを持つことになったので、それの運営メンバーとしてお前らを引き抜きしたい。急な話で悪いんだが月給はざっとこんなもんだ」

 

「「「「―――――ほえ?」」」」

 

「見してっ!」

 

 俺の口から発せられた言葉の意味に誰もが愕然としている中で――瞬息で椅子から立ち上がりその雇用条件が記された紙をもぎ取って穴が開くくらい読み込んだのは意外な事に川崎だった。

 

 何度も何度も指追い確認していくその姿に唖然としていた他の面子もおそるおそるその紙を覗き込んで目を丸くする。

 

「ひ、ヒッキーこれ額まちがってない!? 手取りがすんごい金額になっちゃってるよ!!」

 

「中央トレセンは高給取りって聞いてたけど……みんなこんな給料貰ってんのかよ」

 

「いやまて、相模氏。この男の事だ何か裏があるに違いない間違いない。義輝それで何回も痛い目みてるから騙されないもん!」

 

「いや、でも、雇用条件は確かにきつめだけど今のブラックと違って残業代も開発成果も自分の所有物だって明記されてるぞ……(ゴクリっ」

 

「えっと、でも、これ雇用者がトレセンじゃなくて―――八幡個人の名義になってる?」

 

「「「「へ?」」」」

 

 紙を覗き込んで見た事も無いような雇用条件にあわあわとしていた面子が戸塚が呟いたその一言にようやく見逃していた重要事項に気が付き、ようやく俺の方へと視線を戻して問いかけてくる。

 

 そう、ここからが――――本題で、勝負のしどころである。

 

 視線の圧力と緊張に少しだけ乾いた唇を麦酒で湿らせて一つづつ順を追って言葉を重ねていく。

 

「戸塚が言った通りその契約書の契約者は俺個人になる。そもそもがこう言った“チーム”が新たに設立された時点で専属トレーナーはウマ娘の指導以外の大量の仕事が増えるからこういったサポート人員を集めるのが普通だ―――慣例通りなら“トレセン学園の関係者”からな」

 

「……まぁ、普通はそうであろう? というか、我らはお主みたいにトレーナー専門校を卒業もしていないしウマ娘との関りも一般と変らん。雇うなら造詣の深いものを雇った方が早いに決まっておる」

 

 そうとも。材木座の言う通りだ。

 

 だが、残念ながら俺はあの職場に置いて一番厄介な問題を抱えている。

 

「俺は担当のお陰もあるが、凄まじい出世をしてしまった訳だ」

 

「……いや、唐突に自慢しはじめたな、この人」

 

「たまにいるよな、聞いても無いのに延々と自慢する奴」

 

「喧しいぞ、ゲーム研。……そんで、ここからが本題なんだが―――職場で同僚関係ではすっごく嫌われている」

 

「「「「………あぁ」」」」

 

 たったその一言で全員にもの凄く納得されてしまうのは悲しむべきか、怒るべきか悩みどころだけれども俺の周りにいたこいつ等にはある意味お馴染みの環境なので一番理解が早い説明だろう。

 

 嫌われ者のチームに入って針の筵に座りたがる人間なんてまずいないというのもあるが、トレーナー業というのはそもそもが守秘義務の塊だ。

 

 トレーニング内容は勿論の事、ウマ娘たちの身体カルテやプライベートの事情、多額の賞金の運営管理、機材に、スポンサーとの交渉、メディア関係。それこそ数えればキリが無いがソレが一つでも漏洩していれば大問題。だが、一人で管理をしきることなどは出来ない以上は信頼のおけるサポーターをつけなければならない。

 

 それは、普通ならば就職時に守秘義務の契約書に同意しているトレセンの事務員や教官の中だったりから選ぶのが普通に考えれば最適解といえる。

 

 だけれども――――裏切られればソレは担当のウマ娘共々に全ての終わりを意味する。

 

 少なくとも、あの学園の同僚関係でそんな命綱を託せる人間を俺は知らない。

 

 だから――――知識が薄くとも、経験が薄くても、俺は例え裏切られても後悔のない人間にその命綱を託したい。

 

 そんな俺の我儘からのヘッドハンティング。断られても、それはそれでいい。

 

 その答えは

 

「最速で今の派遣辞めて来週から出勤すればその分の給料は日割りでいいんだよね? というか、給料が嘘だったらマジで殺すからね?」

 

「まあ、今の開発会社いても使い潰されるだけだしなぁ……」

 

「というか、今までもバイトで結構な開発させられてるし……今更そんな変わらんでしょ」

 

「むあっはっはっは、就活に失敗してバイトに身をやつして雌伏していたのはこの時の為よ!! というか、マジでありがとうございます神様仏様八幡大菩薩様!!」

 

「うーん、今までも八幡の担当さんの施術はさせて貰っていたから僕はいいんだけど……新しい担当さん達がOKしてくれたら専属にならせて貰おう、かな?」

 

「ヒッキー! あたし、頑張るねっ!!」

 

 俺の予想に反してあっさりと誰もが首を縦に振ってしまう。

 

 腹の探り合いも気疲れする思考の読み合いも何もない、いっそのこと何も考えていないのではないかという程に軽やかに返されるその返答は呆れるくらいに目的も思いも単純。“条件が良くて、都合が良くて…まあ、腐れ縁もあるしいっか”くらいの気楽さで決められた人生の選択はめんどくさい思考回路を持つ俺にはない清々しさがある。

 

 だから、きっと俺に無いもので彼女・彼らは抜けた穴を埋めてくれる。

 

 手を取り合うのは、膝をつき項垂れている時ではなく、同じ方向へ進む時にこそ結ばれるべきだろうから。

 

 前途多難、不安マシマシのトレーナー人生だが、まあ、こうしてカラカラと“転職にかんぱーい”などと何事も無かったかのように騒ぐこいつ等を見ていると何とかなりそうな気がして―――俺も小さくグラスを掲げて澄んだ音を店内に響かせた。

 

 

 

 

 

=蛇足という名の人物紹介=

 

 

 由比ヶ浜 結衣  (25)

 

 高校卒業時に猛勉強と親友の熱血指導により奇跡的に看護学科に入学(親友・両親・担任は合格発表で号泣した)。その後は養護教諭の資格等を取り、各高校を巡り歩きカウンセラーとしての経験を重ね今に至る。

 生徒たちからは同世代やカワイイおねーさんという親しみを込めて『ゆいちゃん先生』と呼ばれ大変に人気だったそうな。

 

 

 川崎 沙希  (25)

 

 無事に国公立大学に進学したは良いのだが就活時期がちょうど就活氷河期だったこともありギリギリ入社。そして、そこでセクハラ上司を思い切り蹴り飛ばしてしまった為にクビとなって、派遣の事務職で食い繋いでいた為にとても心がささくれている。

 

 家族のために彼女は今日も頑張るのだ。

 

 

 戸塚 彩加  (25)

 

 テニスで才能開くことはなかったが、多くの部員に親身になってケアしていた経験からスポーツ医学の道を志し整体師&ケアマネジャーへジョブチェンジ。開業したばかりだが腕もよく、人柄と可憐さから顧客は人・ウマ娘問わず結構多い。ルドルフとも唯一すでに接点がある人。

 

 とつかわいい。

 

 

 

 材木座 義輝  (25)

 

 大学を出たまでは良いがコミュ障と中二感が抜けず、就職氷河期も合わさり就職に失敗。色々とバイトしたりしなかったり、小説を書いたり書かなかったり、見事にワナビとして引きこもりの道を歩んでいたが、ようやく雌伏の時は終わり剣豪将軍復活。

 

 最近、両親の目線がモノすごく辛いらしい。

 

 

 相模くん  (24)

 

 プログラムの会社に入った社畜。頭がいいし有能だが、根暗で小賢しい為に大悪党にはなれずに搾取され続けていた。たまに来るゾンビみたいな先輩からの開発バイトはいいお小遣い稼ぎだったらしい。

 

 姉がホストに嵌りそうで大変らしい。頑張れ。

 

 

 秦野くん  (24)

 

 技術系開発職の社畜。結構に凄い技術力があるのに開発したモノは全て上司の名前かチーム名義になっている摩訶不思議な現象が起こっていて怖さと怒りで眠れない日々。たまに来るゾンビみたいな先輩からの開発バイトはいいお小遣い稼ぎだったらしい。

 

 最近、出会い系アプリの怖さを知ったらしい。写真加工ってしゅごい…。

 

 

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「んっぐんぐ――ぷはっ、人のケツ触った奴をぶん殴ってなんで私がクビになるのよっ! ふざけんな!!」

 

「か、川崎さん、ちょっと飲みすぎじゃないかなぁ?」

 

「なんで僕しか残業残ってないんだよおかしいでしょ、てかほとんどの仕事が全部他の奴らのじゃん? おかしくない? 苦労の押し売りはなんでクーリングオフが効かないの??」

 

「わかる。そしてどれだけ頑張った結果も最後は全部持ってかれるんだよなぁ……。お前らがやったのってほぼ耐久検査とか黙って見てるだけの奴じゃないっけ?」

 

「ぬははははっ………え、社会こわっ。我、就職できなくてもしかして正解??」

 

 ガヤガヤ、わちゃわちゃと川崎が酒を開けてから一気に加速した飲酒量と比例するようにテーブルには会社や現状に対する愚痴が止めどなく溢れ出す社会人呑み会あるあるな光景が広がる魔境となってしまった。

 

 そんな光景を呆れながら眺めていると同じように苦笑いを浮かべた由比ヶ浜が隣にやって来て小さく杯を交わした。

 

「あ、あははは、みんな相当溜まってたんだねぇ。みんな昔のヒッキーみたいな事を言ってるのを見るとなんだか複雑な気分だよ……」

 

「馬鹿言うな。今でも俺の主張はあの時と変らん。変らんが……あそこまで荒れられると自分の方が冷静になっちゃうレベル」

 

「いやっ、ソコで急に冷静になるのはもはや裏切りじゃん!」

 

「あいたぁ」

 

 ベチリと肩を叩かれた拍子に彼女の柔らかさと、柔らかなサボンの香りを感じつついつもと変わらぬ茶番を繰り返す。そんなお決まりの流れに二人揃ってクツクツと笑いを零していると由比ヶ浜はゆるりと微笑んで言葉を紡ぐ。

 

「でも、頼ってくれて嬉しかった。きっと、皆もそうだよ」

 

「言い損ねてたけど……正直、助かる」

 

「うん、どういたしまして。――――ゆきのんにもそれくらい素直になればいいのに」

 

「………いろいろあんだよ、大人には」

 

「うわぁ、ヘタレだなぁ」

 

 子供のようにそっぽを向いて誤魔化す俺に、ケタケタと指さし笑う彼女。そんないい歳した俺らのガキ臭いやり取りが妙にくすぐったくてむずかゆい。

 さてはて、これ以上に話題が不味いものに転がらない内に酒瓶片手にあっちの卓に交じって誤魔化しにかかるため俺はずりずりと酔いで重たくなった腰を持ち上げたのでした、とさ。

 

 

 

 

 





雪ノ下 雪乃  (25)


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