アタシのトレーナーさん   作:森竹

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お久しぶりです。

久しぶりに書くので、読みにくかったらごめんなさい。

あと、ちょっと重たい話になってしまったかもです。

それと、いつも以上に文字数ありますんで、お時間がある時にどうぞ。

あ、あらすじ詐欺回です。お許しください。


天皇賞(春)編

「ん〜! マーベラス☆ おはよーネイチャ! ネイチャの方が早く起きてるなんて珍しいね! 今日はお休みなのに、何かいい事でもあった?」

 

「今日も元気ですなー? おはよーマーベラス。いやね? ちょーっと早く目が覚めちゃってさー?」

 

「そーなんだー? ……あ! トレーナーさんと会う約束してるんでしょ!だから早く起きちゃって、ソワソワしちゃってるんだ★」

 

「ち、違…くないです。なんでわかったの? あー……トレーナーさんがね?デートしよう! 寮まで迎えに行くから! って言ってきてさー? それで、ちょーっとだけ、楽しみにしてたら、いつもより早く起きちゃって……」

 

「それ、ぜんぜんちょっとじゃないやつだよね? 最近のネイチャって、恋する乙女全開だよね! ホントかわいい! すっごくマーベラス☆」

 

「ば、バカ! 茶化さないでよね!」

 

「あはは! これは帰ってきてからもマーベラスな展開が期待出来るね★」

 

「はいはい、もういいですよー……ねぇ、マーベラス? ちょっと聞いてもいい?」

 

「ん? なーに?」

 

「あのさ、今日のアタシ、どうかな? ヘリオスさん達にメイクの仕方とか、教わったんだけど、似合ってないかな……?」

 

「……」

 

「ま、マーベラス? アタシ、なんかダメだった?」

 

 

「マーベラス ☆ミ 」

 

 

「ちょ! びっくりしたー! 急に大声出さないでよ!……それって、良いってこと?」

 

「もちろんだよ!今日のネイチャは最高にマーベラスだよ★」

 

「そ、そっか。うん、ありがとね! よし! あとはトレーナーさんを待つだけってね!」

 

 

prpr…

 

 

「あ、電話だ! トレーナーさん着いたかなー……って、知らない番号? 誰だろ?」

 

「もしもし? え? はい、アタシがナイスネイチャですけど……」

 

 

 

 

 

 

 

「……え? トレーナーさんが……?」

 

 

 

 

 

「……ごめん、マーベラス、アタシ行くね!!」

 

「ちょっとネイチャ!? ……顔色変えて出てったけど、大丈夫かな……?」

 

 

 

 

 

 

「トレーナーさんが病院に運ばれたって……どういうこと……!?」

 

「トレーナーさんに何があったってのさ!?」

 

 

 

 

 

 

…………

 

 

 

 

 

 

「すいません! アタシのトレーナーさんがここに運ばれたって聞いたんですが!」

 

「……あ、主治医さんですか?」

 

「……え?トレーナーさん、意識不明の重体で、面会謝絶中……!? 」

 

「……なんでトレーナーさんが!? あ、あの! トレーナーさんに何があったんですか!?」

 

「車に撥ねられそうだったウマ娘を助けるために、トレーナーさんが庇った……ですか……?」

 

「そのウマ娘は助かったけど、代わりにトレーナーさんが……?」

 

「……わかり、ました。あの! トレーナーさんをよろしくお願いします……!」

 

 

 

「トレーナーさんが、撥ねられた……」

 

「……トレーナーさんならやりそうですわー。トレセン学園のトレーナーだから庇うのは当たり前だーって言ってさー」

 

「……でも、それでトレーナーさんが死んじゃったら、アタシ、どうしたらいいの……?」

 

「アタシの事、待っててくれるって約束はどうなっちゃうのさ……?」

 

「あ、看護士さん……アタシに何か用ですか……?」

 

「え? トレーナーさんの手荷物に、アタシの宛てのモノが……? なんだろ……」ガサガサ

 

「天皇賞(春)用のトレーニングメニューが書かれたノート……」

 

「アタシのために、用意してくれたんだろうけどさ……」

 

「ムリだよ……今のアタシじゃ、走れないよ……」

 

「だって、今までトレーナーさんとずっと一緒だったんだよ?」

 

「厳しいトレーニングだって、トレーナーさんとだからここまでこれたんだよ?」

 

「不安なときは、いつも優しく撫でてくれたし、レースじゃ誰よりもアタシの勝利を願って応援してくれた……」

 

「そんなトレーナーさんのところに、誰よりも早く駆けつけたいって、そう思って走ってたんだよ……?」

 

「それなのに……」

 

 

「それなのに! 今さらひとりっきりでなんて、走れないよ!」

 

 

「アタシ、どうしたらいいのさ……!?」

 

 

 

 

……

 

 

 

 

 

「……思わず、病院飛び出しちゃった」

 

「明日から、どうしたらいいんだろ……」

 

「せっかくトレーニングメニュー用意してくれたけど、走ろうなんて、思えないよ……」

 

「トレーナーさん……」グスッ

 

「……あれ? メニューの他に、まだ何か入ってる……」

 

「小包とメッセージカード……?」

 

「……小包は2つあるけど、1つは潰れちゃってる……」

 

「メッセージカード、何が書いてあるんだろ?」

 

「『ハッピーバースデー!ネイチャ!』……あ、そっか。今日、アタシの誕生日じゃん……」

 

「だからデートしようって誘ってくれたんだ。プレゼントまで用意してくれて……」

 

「ちゃんと、覚えてくれてたんだ……」

 

「会いたいよ……トレーナーさん……」

 

「……プレゼント、直接もらった訳じゃないけど、アタシ宛てだし、貰っちゃってもいいよね……?」ガサガサ

 

「……これって、ペンダント?」

 

「青色の宝石を取り囲むように、花をモチーフにした黄色の宝石が装飾されてる……」

 

「これ、もしかして手作りなのかな? すごくキレイ……」

 

「この花、なんていう名前の花なんだろ……」

 

「……聞きたいけど、トレーナーさん、病院だし……」

 

「トレーナーさん……」

 

 

 

「ナイスネイチャか、こんなところで立ち尽くしてどうしたんだ?」

 

「あ……エアグルーヴ先輩……」

 

「……なんて顔をしているんだ。何があった? 」

 

「実は……」

 

 

 

 

 

…………

 

 

 

 

 

「そうか……それは大変だったな」

 

「……はい。だからアタシ、これからどうしていいか、わからなくて……」

 

「決まっている。走るべきだ。今は心情的に難しいかもしれない。だがな? だからこそ、走るべきだ」

 

「……ムリですよ。今までトレーナーさんと一緒に走ってきたんですよ? ひとりだと、挫けちゃいますって……」

 

「だからこそトレーナーは、ナイスネイチャの事を想ってその花のペンダントを贈ったんだろうな」

 

「このペンダントの花、ご存知なんですか?」

 

「あぁ、その花はヘリアンサスと言うんだが、花言葉は、『憧れ』『輝かしい未来』そして『君のそばにいるよ』だ」

 

「……アタシの、そばに……」

 

「少しキザだが、相当ウマ娘想いのトレーナーなんだろうな」

 

「……いつもアタシなんかのために、色々してくれてました。トレーニングは厳しいですけど、いつもそばに居てくれて、励ましたり、褒めたりしてくれるんです。それに、練習やレースで使う備品とかも自作してくれるんです。ほら、この蹄鉄なんかアタシのために型から用意してくれて!」

 

「……なぁ、ナイスネイチャ。そこまでしてくれたトレーナーがいないのは、とても不安だろう。だがな? お前はトレーナーが戻ってくるまで、項垂れるだけの日々を過ごすつもりか? トレーナーが戻ってきたとき、なんの進歩もしていないところを見せるつもりなのか? 本当にトレーナーの事を想うのであれば、トレーナーが戻ってくるまでの間、自分が出来るベストを尽くすべきだ! お前自身のためにも、トレーナーのためにもだ」

 

「トレーナーさんのために……」

 

「私からは言えるのは、ここまでだ。すまんが、そろそろ失礼する」

 

「あ、はい……お疲れ様です……」

 

 

 

 

「……今大変なのは、トレーナーさんなのに、アタシ、自分の事ばっかり考えてた……」

 

「……トレーナーさんが今のアタシを見たら、どう思うかな……」

 

「落ち込んで、下を向きっぱなしのアタシを見たら、トレーナーさんまで落ち込んじゃうよね……」

 

「トレーナーさんが、アタシを見てそんな気持ちになるのは、嫌だ」

 

「なら、アタシがちゃんとしてれば、トレーナーさんだって安心してくれるハズ」

 

「……なら、今はアタシが頑張らないとダメなんだ」

 

「手元には、トレーナーさんのトレーニングメニューがある。ずっと一緒にトレーニングしてきたんだから、伝えたい事だってきっとわかるハズ。だから、これがあればなんとかなる」

 

「それに、今は近くにいないけど、トレーナーさんの想いなら、ペンダント(ここ)にある。だから、ひとりじゃない」ギュッ

 

「なら、あとはやるだけなんだ」

 

「……決めた。どこまで出来るかわかんないけど、頑張るよ!」

 

 

 

 

「……やれやれ、これで少しはモチベーションも上がっただろう……」

 

「やぁ、エアグルーヴ。ナイスネイチャの激励、上手く言ったようだな。だが、心配になって見守るくらいなら、最後まで勇気づけてやれば良かったんじゃないか?」

 

「会長、見ていたんですか……いえ、ナイスネイチャはトレーナーと行動する事が多い。休日まで一緒に出掛けているらしく、少し依存しかけていると言ってもいい。今後、またトレーナーが不在になった場合、挫折してしまうでしょう。ナイスネイチャのためにも、自分自身で立ち上がる必要があったんです。なので、私は背中を押すだけに留めておくべきだと判断しました」

 

「そうだな。トゥインクルシリーズは甘くない。不測の事態はいつだって起こりえる。その判断も含め、当意即妙の話をしていたな。流石副会長だ」

 

「いえ、ナイスネイチャが上手く受け止めてくれたか、不安があったので、ここで様子を見ていたんです。私もまだまだ未熟です」

 

「そうかもしれないな。だが、そうやって自分も成長していけばいいんだ。日進月歩で歩んで行けばいい」

 

「会長……」

 

「さて、あとは本人の頑張りに期待しようじゃないか」

 

「えぇ、そうしましょう」

 

 

 

「……いずれ、ナイスネイチャとはレースで相まみえる事になるだろう。その前に、トレーナーとも話さねばならないな……」

 

 

 

 

……

 

 

 

 

 

 

「はぁ……はぁ……くぅ〜! このトレーニングメニュー、もう3日もやってるってのに、ぜんぜん慣れない! ホントキッツいわぁ〜!」

 

 

……誰か聞いてるワケでもないのに、ついつい喋っちゃう。

 

人に見られたら、ヘンな娘だって思われるかも。

 

でも、黙々とやってると、ツラくなっちゃうから喋っちゃうんだよね……

 

ま、レース場の1番端っこを借りてるから、そうそう人なんて来ないし、ヘンな目で見られるなんて心配はないと思うけどね。

 

 

「……さて、あと3000mを2セット!……その前に、ちょっと水分補給しよっと」

 

「……」ゴクゴク

 

「ふぅ……トレーナーさんが作るスポーツドリンクと違って、なんか違うんだよねぇ……」

 

 

アタシって、だいぶトレーナーさんに依存してたんだなぁ。

 

前に教えてもらったレシピ通りにドリンク作っても、なんか物足りないって思っちゃう。

 

でも、市販のドリンクよりはこっちのが好きだから、自分で作って持ってきてるんだけどさ……

 

こういう時、トレーナーさんがいてくれたらなぁーって考えて、気が滅入っちゃったりする。

 

いや、やるって決めたからには、頑張らないと!

 

でも……

 

 

「……トレーナーさん、会いたいなぁ……」

 

 

少しは、良くなったかな?

 

まだ意識戻ってないのかな……

 

連絡してみようかな?

 

……検査中だったら、邪魔になっちゃうよね。

 

……声だけでもいいから、聞きたいなぁ……

 

 

 

 

 

「あ、あの……!」

 

「へ? ど、どちら様です?」

 

 

ヤバ! まさか人が来るなんて!

 

さっきの、聞かれてたかな……?

 

てか、こんな端っこまで来たって事は、アタシに用があったってこと……?

 

 

「あの! ナイスネイチャちゃん、ですよね?」

 

「はい、そうですけど……あれ? もしかして、高等部のライスシャワーさん?」

 

「ラ、ライスのこと、知ってるの……?」

 

「知ってるも何も、天皇賞(春)で、有力者として名前上がってるじゃないですか! そんなすごい娘が、アタシになんかご用です?」

 

「あの……! ご、ごめんなさい!」

 

「え? い、いきなりどうしちゃったんです? 急に謝っちゃって?」

 

「ナイスネイチャちゃんのトレーナーさんがケガしたの、ライスのせいなの……トレーナーさんが、ライスを庇って……」

 

「……トレーナーさんが庇ったウマ娘って、ライスシャワーさんだったんだ……」

 

「ごめんなさい……! ライスが、ライスがあんなとこ走ってたからいけなかったの……! ライスの近くにいる人は、不幸になっちゃうってわかってたのに……! ライスなんて、いなければ良かったのに……!」

 

 

 

正直、声を荒げそうになった。

 

アンタのせいで、トレーナーさんが! って……

 

でも、言えなかった。

 

震えながら謝ってるこの娘を見てたら、言えなくなっちゃった。

 

ここに来るまで、すごく迷って、苦しんで、覚悟して来たんだろうな……

 

その上で、アタシを探して、謝ろうとしてたんだ。

 

そんな娘を責められるワケない。

 

だったら、アタシは……

 

 

 

「そっか。ライスシャワーさんも辛かったんだね……」

 

「……え?」

 

「あー……ほら? トレーナーさんが運ばれたの、見てたんですよね? しかも、庇ってもらった人が大ケガをしたら、尚更ショックだと思いますし?」

 

「う、うん……でもね? ライス、ナイスネイチャちゃんたちに、迷惑かけちゃったから、謝らないといけないって思ったの。でも、まだトレーナーさん、退院してないって聞いて……それでね? ナイスネイチャちゃんがいるって場所を聞いて、ここに来たの……本当に、ごめんなさい!」

 

「……そんなの、謝ったってダメですよ」

 

「そ、そうだよね……謝ったって、意味ないよね……」

 

「そういうときは、アタシに謝るんじゃなくて、トレーナーさんにありがとうって言ってあげてくださいな!」

 

「え? で、でも! ライスが近くにいて、不幸にしちゃったから! ライスが、いつもライスがみんなを不幸にしちゃうから……」

 

「いやいや、そんな自分のこと悪く言っちゃダメですってー! それより、トレーナーさんのおかげで無事だったんだから、その分頑張らなきゃですよ!」

 

「ナイスネイチャちゃん……」

 

「あ、ネイチャでいいですよ? アタシもライスさんって呼びますんで!」

 

「え? う、うん。いいよ」

 

「んじゃ、ライスさん。せっかくここまで来てくれたし、いっしょに走りません? トレーナーさんのメニュー、かなり厳しくて、ひとりだと心折れそうになってきたところなんですよー……だから、誰かいっしょ走ってくんないかなー? って思ってたところなんですよねー」

 

「…!うん。いいよ!ライスもいっしょに走るね!」

 

「やった! それじゃ、やりますかー!」

 

 

 

 

…………

 

 

 

 

「ふぅ……! やっと終わったー!てか、ライスさんすごいね!アタシなんてめっちゃ疲れてんのに、まだまだいけそうじゃないですか?」

 

「そ、そうかな? ライスはいつも、もう少し走ってるよ?」

 

「え? マジっすか? うーん……アタシももうちょい走った方がいいのかな……でも、トレーナーさんから、メニュー以上はオーバーワークになるからダメだよって言われてるから、ここでやめときまーす!」

 

「トレーナーさんのこと、信頼してるんだね」

 

「まぁ、アタシなんかをずーっと見ててくれる珍しい人なんですけどねー? ……すっごく、信頼出来る人なんだ」

 

「そうなんだね! ネイチャちゃんにとって、トレーナーさんはお兄さまなんだね!」

 

「へ? お兄さま?」

 

「うん! いいなー! あ、ライスね? この絵本のお兄さまみたいな人に会いたいなーって思ってるの!」

 

「『しあわせの青いバラ』? ……なるほど、それでトレーナーさんがお兄さまかー」

 

「うん! すっごくあってると思うの!」

 

「……でも、トレーナーさんがお兄さまになるのは、イヤだな……」

 

「え? どうして? すごくいい人なんだよね?」

 

「そうなんですけどね? トレーナーさんは、アタシの……」

 

「……ネイチャちゃんの?」

 

「だ、旦那さんになってほしいなーって……」

 

「……!? は、はわわわわ!」

 

「あ……い、今の無し! 忘れてください!!」

 

「ううん! とってもステキだと思う! ライス、応援するね!」

 

「いいですって! ちゃんと忘れてくださいね!?」

 

 

prpr……

 

 

「電話? 誰から……もしもし?」

 

『今、すっごくマーベラス★なことが』

「うっさいわい!!」ブチッ!!

 

「ど、どうしたの……?」

 

「な、なんでもないです……あはは……」

 

「う、うん……?」

 

 

prpr……

 

 

「また!? もしもし? ぜんぜんマーベラスじゃないっての!」

 

『あー、ごめん。マーベラスじゃなくて、俺なんだけど、タイミング悪かった……?』

 

「……え? ……トレーナーさん?」

 

『うん……いろいろと、ごめんね』

 

「だ、大丈夫なの?」

 

『大丈夫だよ。心配したよね……?』

 

「あ、当たり前じゃん! トレーナーさんに何かあったら、どうしようって、思ったんだから……!」ポロポロ

 

『……ごめん。またネイチャの事、泣かせちゃった……ホントダメだね、俺ってさ……』

 

「……すっごく不安だった。でも、人を救っちゃうなんて、やっぱアタシのトレーナーさんはすごいって思ったんだ。だから、ちゃんと胸張っててよね?」

 

『ネイチャ……ありがとう……』

 

「あ、そうだ! トレーナーさん、アタシにプレゼント用意してくれてたよね? 一個は潰れちゃってたんだけど、もう一個は無事だったよ。だから、貰っちゃったからね? 花のペンダントのヤツ! 今もつけてるよ。……ありがとうね。トレーナーさん」

 

『あ、つけてくれてるんだ! 嬉しいよ! でも、それは手作りのヤツでさ……もう一個の方はアクセサリーショップで買ったヤツだったんだ。もしかしたら、そっちの方が良かったかもしれないけど……』

 

「んなわけないじゃん。アタシのために作ってくれたんだもん。こっちがいい」

 

『……そっか、嬉しいけど、ちょっと照れるね。 あ、そうだ! あの娘、大丈夫だったかな……? 何か聞いてる?』

 

「うん、大丈夫だよ。ちょっと待ってね?」

 

 

「ねぇ、ライスさん。電話、変わってもらえません?」

 

「え? ライスが? ……いいの?」

 

「もちろん! 声を聞かせてあげてほしいんです。トレーナーさん、安心すると思うから……」

 

「……うん、わかった」

 

 

「あ、あの……!」

 

『ん、君は……』

 

「ライスは、ライスシャワーっていいます!あの時、助けてくれて、ありがとうございました! トレーナーさんのおかげで、ケガひとつなかったです! それに、ネイチャちゃんと仲良くなることが出来ました!」

 

『そっか、 無事だったんだ! 良かったー……ケガしてたらどうしようって思っててさ。それに、ネイチャと仲良くしてるなんて……声聞かせてくれて、ありがとうね!』

 

「こちらこそ、ありがとうございます! あ、あの……どうして、ライスを助けてくれたんですか……?」

 

『ん? 理由なんてないよ? 危ない!って思ったから助けただけ。それに、俺はトレセン学園のトレーナーだから、ウマ娘が困ってたり、危なかったりしたら、助けるのは当然のことだし?』

 

「ホントに、お兄さまみたい……」

 

『え、お兄さまって?』

 

「ううん! なんでもないの! あ、ネイチャちゃんに変わるね?」

 

 

「あ、もしもし? 聞いたでしょ? ライスさんは横でニコニコしてるから、心配しなくて大丈夫だよ」

 

『安心したよ。ありがとう、ネイチャ……あ、 トレーニングって、今どうしてる?』

 

「ちゃーんとトレーニングメニュー通りやってますよー! 相変わらずトレーナーさんのメニューはキッツいよねー!」

 

『自主的にやってたんだ……あ、かなりにキツめに組んであるから、それ以外のトレーニングはダメだよ?』 

 

「やってないよ? ちゃーんと言うこと守ってやってますよー」

 

『よしよし!ネイチャは良い子だなぁ! もしわからないことや、こういうトレーニングがしたいとかあったら、遠慮しないで連絡してね?』

 

「もー! 子ども扱いしないでよねー? でも、なんかあったら連絡するね♪ あ、退院っていつぐらいなの?」

 

『……それなんだけど、検査とかあって、天皇賞(春)には間に合わないかもしれないって』 

 

「……そっか。なら後はアタシに任せて、トレーナーさんはゆっくりしてて?」

 

『……ごめん。近くで見守れなくて』

 

「大丈夫だって! んじゃ、そろそろ切るよ? しっかり寝て、早く良くなってよね?」

 

『そうするよ。またね。ネイチャ』

 

「うん、またね。トレーナーさん」

 

 

 

 

「ふぅ……あ、ライスさん、無茶言ってごめんね?」

 

「大丈夫だよ? それに、ライスのこと、無事で良かったーって! 本当にいい人だね! 」

 

「そりゃーアタシのトレーナーさんですから!」

 

「でも、トレーナーさんが退院する日、天皇賞(春)に間に合わないの……?」

 

「……かもしれないって。ま、トレーナーさんってば、ずっと働きっぱなしだったし、休暇代わりにちょうど良かったのかもですよ?」

 

「ごめんなさい……」

 

「だから謝んないでくださいってー」

 

「……あの! ライスで良かったら、力になるからね? 併走とか、付き合うからね?」

 

「……うん、ありがとう。ライスさん。んじゃ、今日はこの辺で失礼します!」

 

「う、うん! またね!」

 

 

 

 

 

「そっか……トレーナさん、来れないんだ……」

 

「もしかして、間に合ってくれるんじゃないかなーなんて思ってたけど……」

 

「……頑張るしかないか」

 

 

 

 

 

 

 

………………

 

 

 

 

 

 

 

「とうとう、この日が来ちゃった……」

 

「まさか、天皇賞(春)の控え室にひとりだなんて、思わなかったな……」

 

「でも、トレーナーさんだって、病室のテレビで見てくれてるだろうし、頑張らなきゃ!」

 

「……ちょっとだけ、声が聞きたいな」

 

「電話、してみよ」

 

 

prpr……

 

 

「出ないな……トレーナーさんに何かあったのかな……」

 

「いや、もしかしたら、検査中かもしれないもんね! ……そう、だよね?」

 

「……」

 

「ここにいても、落ち着かないわ……」

 

 

コンコン……

 

 

「……? 誰だろ? 今開けまーす」

 

 

 

「ごきげんよう、ネイチャさん。話は聞きましてよ? あの……大丈夫ですの?」

 

「マックイーン……あー、ごめんね。トレーニングは熟してきたけど、体調は万全とは言えないかも……でも! 全力で走るから! 病室で見てるトレーナーさんにみっともない所見せたくないから!」

 

「……覚えてくれていたのですね? それなら私も、メジロ家の一員として、全力でお相手致しますわ」

 

「うん! あ、そろそろ時間かな? じゃ、アタシ、そろそろ行ってくるよ!」

 

「……えぇ、では、後ほど」

 

 

 

 

 

「ネイチャさん……絶不調じゃないですか……」

 

 

 

 

 

……

 

 

 

 

 

『唯一無二、1帖の盾をかけた熱き戦い! 最長距離G1天皇賞(春)!』

 

『この京都の地にて、猛者たちが集う!』

 

『メジロ家からはパーマー、ライアン、そしてマックイーンが参戦しています。そして、漆黒のステイヤー、ライスシャワーも出場し、実力者が勢揃いですね』

 

『そして、3番、1番人気のナイスネイチャ! これまで黒星ひとつという、非凡な才能を遺憾なく発揮しています。今ではトレードマークとなった王冠も似合っています。しかし、今回はどうにも調子が優れない様子』

 

『無理もありません。あのトレーナーさんが事故で入院中ですからね。大事に至らなかったのは幸いですが……』

 

『果たして、今回の天皇賞(春)はどんなドラマが生まれるのか!?』

 

 

 

『各ウマ娘、ゲートに入り、今スタートしました!』

 

 

『やはりメジロパーマーが飛び出して行きました! この判断が、どうでるか!? 今後の展開に期待です!』

 

『その後ろから、メジロマックイーン、ライスシャワーと続きます』

 

『後方にはメジロライアン、ナイスネイチャという展開』

 

『ナイスネイチャ、今のところ走りに問題は無さそうですが、その表情はいつもと違い、覇気がないようにも見えますね』

 

『やはり、不調だったかナイスネイチャ。3冠ウマ娘の意地を見せられるか?』

 

 

 

『さぁ、割れんばかりの歓声を受けながら、一周目の第4コーナーに先頭のメジロパーマーが入っていきます』

 

『先頭は変わらずメジロパーマー、続いて、メジロマックイーン、ライスシャワー。かなり間延びした展開になっています』

 

『メジロライアン、徐々に前に出てきた! しかし、ナイスネイチャ、以前動かず!』

 

『動かないのか、動けないのか、どちらでしょうか……心配ですね』

 

 

 

『レースも終盤に差し掛かり、第3コーナーを周ります』

 

『おぉーっと! 早くもメジロマックイーンが仕掛けた! 一気にペースをあげていく!』

 

『それに続くようにライスシャワーもついていったー!』

 

『黒い刺客の名は伊達ではない! 今回はメジロマックイーンを標的に捉えたようだ!』

 

『そして後方から! メジロライアンが上がってくる! 強烈な脚だー! 瞬く間に加速していき、先頭集団に食らいついていくー!』

 

『その後ろ、ナイスネイチャも少し遅れてペースを上げた! 流石3冠ウマ娘! 本調子ではなくとも、メジロライアンにしっかりついていく!』

 

『間もなく第4コーナーに差し掛かるところ、ついにメジロマックイーンがメジロパーマーを捉えた!』

 

『そして、直線に入ると同時にマックイーンが先頭! 続いて、ライスシャワー! マックイーンの後ろに張り付いている!』

 

『そして、ライアンも上がってきたー! 勢いそのままに、パーマーを抜き去っていく!』

 

『ナイスネイチャ、ライアンに負けじとついていく!パーマーを抜くが、しかし、勢いはライアン程ではなく、徐々に差が開いていく!』

 

 

 

 

「はぁ……はぁ……もう、追いつけない……」

 

足が重い……

 

息が苦しい……

 

トレーナーさん、ごめん、アタシこれ以上は……

 

 

 

 

 諦めるなー! ネイチャー!!

 

 

 

 

……はは、苦しくって、トレーナーさんの幻聴まで聞こえてきた……

 

トレーナーさんは病院にいるから、聞こえるハズないのに……

 

 

 

 俯くな! 前を向けー! ネイチャー!!

 

 

 

……あれ? ホントに聞こえる?

 

 

 

あっ……!

 

 

 

 走れー!!ネイチャー!!

 

 

 

 

『あーっと! ナイスネイチャ! ここでさらに加速した!! 表情も先程とは別人の様に活き活きとしている!!』

 

『いったいどうしたんでしょうか……おや、この声は……』

 

『ト、トレーナーだぁーー!! トレーナーがナイスネイチャに檄を飛ばしているー!』

 

『松葉杖姿ですが、まだ退院予定日ではないハズ……恐らく病院から抜け出して来たんでしょう。これにはナイスネイチャにも気合が入った事でしょう!!』

 

『ナイスネイチャ! 勢いが止まらない! 前を走っていたメジロライアンを抜き去った!』

 

『そして、先頭を行くメジロマックイーン、ライスシャワーまで一気に迫る!』

 

『二人は一騎打ちのつもりで走っていたのでしょうから、これは想定外でしょうね』

 

『残り100! ナイスネイチャ! 二人との差が縮まり、今、並んだ!!』

 

 

「差せー!!ネイチャー!!」

 

「うおりゃぁあああああ!!」

 

 

『一歩も引かぬ大接戦となった! そして、3人が並ぶようにしてほぼ同時にゴールイン! 』

 

『体制的には加速していたナイスネイチャが有利に見えます。しかし、あの状態から良くここまで走りましたね!』

 

『そして、トレーナーのおかげで、今日もナイスネイチャ劇場がしっかり見れそうです。間もなくナイスネイチャ、トレーナーの前に到着します。それでは見守りましょう』

 

 

 

「トレーナーさん! なんでここに?」

 

「居ても立っても居られなくなってね……病室、抜け出して来ちゃった。 両手松葉杖(こんな)だったから、電話出れなくてさ……ごめんね?」

 

「そんな無理しちゃって……ケガ、悪化したらどうするのさ!」ギュッ

 

「大丈夫。病院の先生が大袈裟なんだよ。もう動いたって平気なのにさ」

 

「ダメだよ! ちゃんと治してもらわないと!」

 

「また心配させちゃったね。……いない方が良かったかな?」

 

「……そんなこと、ないよ」ギュ−ッ!

 

「ん、そっか……」ナデナデ

 

 

 

『写真判定の結果が出ました。一着はナイスネイチャ! 見事勝利しました!』

 

『この二人が揃えば、もはや国内では敵なしかもしれませんね』

 

『さて、オーロラビジョンには、トレーナーに抱きついて甘えているナイスネイチャの姿が映っております』

 

『最近では良くある光景になってしまいましたね』

 

『どうやらこちらに気づいた様子。さぁどう出るか……』

 

『……おーっと!! 今日は逃げずに顔をトレーナーの胸に埋めている!』

 

『……いや、恥ずかしいけど、トレーナーがケガをしているから無理は出来ない。でも、離れたくない。だから、自分のテレ顔を見せない様にトレーナーの胸に顔を埋めているんだと思われます』

 

『なるほど。これは攻め手ではなく、逃げの一手のつもりだったと言うことですね?』

 

『そのようです。……二人はしばらく会えていなかったハズですし、我々はこの位にして見守りましょうか』

 

『ええ、そうしましょう。見事天皇賞(春)を征したナイスネイチャでした!』

 

 

 

 

「ねぇ、トレーナーさん」

 

「ん、どうしたのネイチャ?」

 

「応援してくれて、ありがとね? トレーナーさんの声が聞こえたから、頑張れたよ」

 

「そっか。でも、最初諦めようとしてたでしょ?」

 

「……うん」ジワッ……

 

「……その後の走りは凄かったよ! やったね! ネイチャ!」

 

「うん!」

 

「さて、そろそろ控え室に戻ろっか? ……イテテ」

 

「あ、トレーナーさん! やっぱまだ良くなってないんじゃん!」

 

「大丈夫だよ! ちょっとだけだから!」

 

「……ダメ! ほら、ちゃんと松葉杖持っててね?」

 

「え? ネ、ネイチャ? 何しようとして……ちょっ!!」

 

 

 

 

『ん? おーっと! しっとりな状況が続くと思いきや、ナイスネイチャ! トレーナーを抱きかかえている!』

 

『ウマ娘のパワーなら軽々と出来るでしょう。しかし、お姫様だっこというのは……掛かり過ぎじゃないでしょうか?』

 

『トレーナー! 顔を隠したくても、手に持った松葉杖が邪魔で出来ない!』

 

『これは辛いですね』

 

『そしてトレーナーを気遣うようにゆっくり進むナイスネイチャ! これはトレーナーにとって地獄のような時間だ!』

 

『成人した男性が大観衆の中、中等部の女のコに抱きかかえられると言うのは面子もなにもないですからね。これはトラウマものですよ。南無……』

 

『トレーナーの心情に反して、場内は大歓声だ! ネイチャコールが止まらない! しかし、ナイスネイチャはトレーナーに夢中で気がつかない!!』

 

『……あ、逃げようとしましたが、ナイスネイチャにガッチリホールドされて失敗しました。やはりウマ娘のパワーはすごいですね。次回はどの様な展開になるか、目が離せませんね!』

 

 

 

 

 

 

……

 

 

 

 

 

「もー! トレーナーさん、機嫌直してよー? ごめんって言ってんじゃーん?」

 

「もう、お婿にいけない……」シクシク

 

「え……? トレーナーさん、そういう相手いるの……?」 コンコン ネイチャチャン?

 

「それぐらいめちゃくちゃ恥ずかしかったって話! いるわけないでしょ! ……俺はネイチャ一筋だから」

 

「そ、そう? えへへ……」

 

 

 

「ちょっと! 外まで聞こえていますわよ! バカップルも大概にしてください!」ガチャ!

 

「マ、マックイーン! ちょっと! ノックぐらいしてよ!」

 

「しても気づかなかったのはそちらですわよ! ライスさんと二人で待ってましたのに!」

 

「う、うん。ライス、ちゃんとノックしたよ?」

 

「え? そうなんです? あはは……ご、ごめんね?」

 

「もう! こんな方に負けるなんて! またトレーニングし直さないといけませんわね……」

 

「あのね! ライスは、レースで負けたのは悔しいけど、ネイチャちゃんが元気になってホントに良かったーって思ってるよ! トレーナーさんにも会えて良かったね!」

 

「ライスさん! ありがとう!」ギュッ!

 

「きゃっ、ネ、ネイチャちゃん……?」

 

「あ、ごめんね……嬉しくてつい……」

 

「ふふっ♪ ネイチャちゃん、かわいいね♪」ナデリ

 

「も、もー!茶化さないでくださいよー?」

 

「誰かれ構わずイチャつくのはやめください!!」

 

「……マックイーンも、ありがとうね? 何度も気にかけて貰っちゃってさ」

 

「わ、私はただ、少し気になっただけで……って! そもそも! あんなに走れるなら、最初から走れば良かったじゃありませんか!」

 

「……ごめん。途中までは、ムリだったんだ。でもね? 途中、トレーナーさんの声が聞こえてから、今までのいろんなモノが弾けたっていいますか……」

 

「隙あらば惚気けて来ますわね……」

 

「の、惚気てないわい!」

 

「ふふっ♪ さぁ、ライスさん? 私達はお邪魔みたいですし、お砂糖ぶつけられる前にここらでお暇しましょうか?」

 

「う、うん! あ、ネイチャちゃん! 耳貸して?」

 

「はい? なんです?」

 

「旦那さんになってもらえる様に、頑張ってね!」ボソッ

 

「ラ、ライスさん!?」

 

「じゃあね!」

「それでは、ご機嫌よう!」

 

「ネイチャ? 顔真っ赤だけど、大丈夫?」

 

「ピェッ!? な、なんでもないから!」

 

「…? そう?」

 

 

コンコン

 

 

「あれ? またお客さん?」

 

「あ、アタシ開けるよ! はーい! どちら様ですかー?」

 

 

 

「失礼、ナイスネイチャだな?」

 

「え、か、会長? どうしてここに?」

 

「あぁ、君たちと話がしたくてね? 少し話をしてもいいかな?」

 

「えぇ、どうぞ」

 

 

 

「まずは、春の天皇賞、勝利おめでとう。途中までどうなるかと思っていたが、起死回生の一手があったかの様な走りだったな」

 

「はい、トレーナーさんが駆けつけてくれて……それで、勇気づけられました」

 

「ふむ。それは良かったな。だが、誰かがいないと走れない。そんな走りを、いつまで続けていくつもりだ?」

 

「……え?」

 

「そんな砂上楼閣な走りを、今後も続けていくつもりなのかと聞いているんだ。またトレーナーがいなくなったら、君は不調になるだろう。そんな如履薄氷なウマ娘を放ってはおけない」

 

「それって、どういう……」

 

「このまま君のトレーナーと一緒にいると、ナイスネイチャという存在が損なわれると言っているんだ」

 

「……アタシに、他のトレーナーと走れって言うんですか?」

 

「それもいいだろう。そうだ。私のチームに「お断りします」

 

「……それが君の答えか?」

 

「はい。アタシは、アタシのトレーナーさんとしか、走りません」

 

「……解せないな。どうして、そのトレーナーに拘るんだ? 君が初めての担当ウマ娘なんだろう? 技能も経験もないだろう。……まさか、1番最初に声を掛けてくれたから、と言うのではないよな?」

 

「……初めはそうかもしれません。でも! トレーナーさんは、こんなアタシを見捨てずに……」 

 

「わかった。そこまで言うのであれば、勝負をしよう」

 

「勝負……?」

 

「そうだな……君は、今春シニア3冠に王手が掛かっているな?」

 

「そ、そうですけど……」

 

「宝塚記念だ。そこで、勝負をしよう。私が勝ったら、先程の話、考え直してほしい」

 

「それって……」

 

「……おや? 自信があるのでは無かったのかな? 始める前からそんな弱気では……」

 

 

 

「ウチのネイチャにケチつけるんなら、俺に言ってください。俺がネイチャの担当トレーナーなんですから!」

 

「ト、トレーナーさん……?」

 

「……私は今、ネイチャと話をしているんだがな?」

 

「トレーナーの俺から見て、行き過ぎている発言があると判断したから止めているんです」

 

「ほんの挨拶程度なんだが……まぁ、良いだろう」

 

「話をする前に、少し待ってください」

 

「……いいだろう」

 

「では……なぁ、ネイチャ? 俺はネイチャの意思を尊重したいんだ。それでネイチャが他のチームに移りたいって言うなら、喜んで送り出すよ。だから、遠慮なく言ってほしい。でも、ネイチャが望まないのであれば、ネイチャのトレーナーは俺だ。そして、俺はまだ君と一緒に走りたい!」

 

「トレーナーさん……」

 

「ネイチャは、どうしたい?」

 

「アタシも、まだトレーナーさんと走りたい!」

 

「ありがとう、ネイチャ。……と言うワケで、本人もそちらに行きたくはないと言っています」

 

「やれやれ、事の重要性がわかってないな? 君の考え方では、ナイスネイチャの将来を潰しかねんと言っているんだ」

 

「そんな事にはならない。事実、今日もネイチャは勝利している」

 

「それは君が来たからなんだろう? 二人は仲睦まじいとは聞いている。……全く、いつもどんな事をしているのやら。君はまだ中等部なんだろう?」

 

「…! トレーナーさんは、アタシにヘンな事なんかしてないです!」

 

「会長さん、宝塚記念でネイチャがアナタに勝てばいいんですよね?」

 

「ほう? いいのか? 尻尾を巻いて逃げ帰るつもりなのかと思っていたが?」

 

「俺にそんな挑発は効きません。それにどうせ会長さんとはいつか走らないといけないんです。だったら、むしろ好都合ってぐらいですよ」

 

「ほう。好都合、ときたか」

 

「だから、アナタの理想が勝つか、俺とネイチャの二人で一つの想いが勝つか、勝負しましょう」

 

「……良いだろう。では、宝塚記念で会おう。それでは、失礼する」

 

 

 

 

「ふー緊張した……あの人、ホントに学生? 威圧感ハンパないわー……」

 

「ホントスゴかったね。ねぇ、トレーナーさん。間に入ってくれた時、嬉しかった……ありがとね!」

 

「ネイチャの曇った顔は見たくなかったからね。しかし、あの会長さんから褒められるとはね……」

 

「え? どういうこと? アタシ、一人だとダメだって言われたんだよ?」

 

「でも、逆を言えばそれ以外は会長さんのお眼鏡に叶ったんだ。ダメな部分があれば、あの人なら具体的な話をしてくるだろうからね」

 

「アタシが、会長に……」

 

「そうじゃなきゃ、会長さんだってここまで来たりはしないよ。あんな喋り方だったけど、今日はそれを教えに来てくれたんだよ。会長さんって優しい人だね」

 

「そうだったんだ……」

 

「……気が変わっちゃった?」

 

「それはないよ。アタシはトレーナーさんと走りたい」

 

「そっか……ありがとう」

 

「でもアタシ、会長に勝たないといけないんだよね……?」

 

「そうだね。皇帝って呼ばれてるのは伊達じゃないからね……会長さん」

 

「……アタシなんかで、勝てるかな?」

 

「勝たせてみせるよ」

 

「……ホント、いつも即答してくれるよね」

 

「ネイチャは頑張ってついてきてくれるって、知ってるからね」

 

「……うし! いっちょやったりますかー! と言うワケなんで、トレーニングやサポート、よろしくお願いしまーす♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

「おや、バレていたのか。あれぐらいで打壊するような関係ならどうしようかと思っていたのだが……存外、やるじゃないか」

 

「トレーナーは快調では無いようだが、ネイチャの事を任せても大丈夫だろう。さて、私も学園に帰ってトレーニングでも……」

 

「ん? 快調か……会長は快調……ふふっ……これはエアグルーヴにも聞かせてやろう♪」

 

 

 

 

 

 

 

-おまけ-

 

 

「あ、そういえば、このペンダントの花って、ヘリアンサスって言うんだよね?」

 

「そうそう。ヤナギバヒマワリとも言うんだけど、よく知ってたね?」

 

「エアグルーヴ先輩に教えてもらったんだー!」

 

「え……人に見せたの?……恥ずかしいなぁ……」

 

「ふふっ♪ 君のそばにいるよーだってー♪」

 

「は、花言葉も……ほ、ほら? 実際に走るのはネイチャだから、せめて想いだけでも一緒に連れて行ってほしいって思って……」

 

「うん。伝わってるよ。だからトレーニング頑張れたよ」

 

「……そっか」

 

「あ、この宝石の意味ってあるの?」

 

「真ん中の青いのがラピスラズリ。ヘリアンサスに使ったのはシトリンだよ」

 

「へー? なんか意味とかあったりするの?」

 

「意味というより、誕生石なんだよ。4/16の誕生日石がラピスラズリなんだ」

 

「へー!誕生日石ってあるんだ!」

 

「……あれ?このシトリンってのは?」

 

「……『成功』『幸福』『希望』って意味だよ」

 

「へー! 縁起の良い宝石なんだね!」

 

「ちなみに、ラピスラズリにも『幸運』て意味があるよ」

 

「そうなんだー! ……今ならくじ引きで3等以外引ける気がする! トレーナーさん! 行こうよ!」

 

「よーし、引きにいこうかー!」

 

 

 

 

 

 

 

「ごめんねネイチャ。ホントの意味は、ちょっと違うんだ」

 

「俺の誕生日石がシトリンでさ」

 

シトリン()がラピスラズリ(ネイチャ)のそばにいるって意味だよなんて、クサ過ぎて言えなくてね」




ネイチャがペンダントの真意に気づくのは、まだまだ先の話。

次回、会長vsネイチャ。デュエルスタンバイ!


すいません。リアルが忙しくて遅れてしまいました……

あと、毎度こういう書き方しか出来なくて、申し訳ないです。。。


……余談ですが、トレーナーがネイチャに抱きかかえられる前って、
体制的にネイチャの上目遣いを見ながら話しをしてるんですよ。
……自分で書いてて、鋼の意志かよすげーなって思いました。

今後の予定について 希望等ありますか?

  • 現在の流れ保持してシニア編
  • チームを組んで、他の娘視点も。
  • 閑話多め(ネイチャ小話)
  • 閑話多め(他のウマ娘小話)
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