俺と理事長のこれからとそれから   作:小金さん

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本当に続きを書くつもりはなく、一発ネタのつもりでしたが需要が結構あるみたいなので不定期更新で続けます。
短編としてまとめるつもりですが私の悪癖もあって長編になるかもしれません。
それでもよければお付き合いください。

理事長とのイチャイチャだけ見たい!っていう人がいましたら自分で書いたら良いと思うよ!
渇望ッ! 理事長がヒロインの作品もっと増えろ!
 
 


2話

「あー、頭いてぇ……」

 

 見事に二日酔いでトレセン学園を歩く。

 非常に教育に悪いので生徒に会わないよう校舎裏を使っていたところ、生徒と出くわしてしまった。

 出くわしたと言っても向こうはまだこちらに気づいていない。

 何やら花壇に向けて座り込んでいるが……芽も出ていない花壇に何の用だろうか。

 

 つーか誰だこんなところにいる子は。

 いや生徒の名前とか一人も知らんけど。

 おっとジョウロ発見、どうやら花の世話をしていたらしい。

 

 なんとなく気になって花壇の前に座り込む。

 もちろん距離は大分空けてあるぞ。

 いきなり隣に知らない男性がいたらびっくりさせちゃうからな。

 セクハラとか言われても困るし。

 

「……いや分からんわ」

 

 芽も出てないのに何が分かるわけでもなし。

 ってか花とかチューリップと朝顔しか分からんわ。

 見て分かるのは水をあげ終えた状態ってだけ。

 

 その独り言で俺の存在に気付いたらしい生徒はこちらを見上げて惚けていた。

 随分ちっちゃい子だ。

 ショートカットの黒毛と同じ色した可愛らしい愛嬌たっぷりのお目々はぱちくりと閉じたり開いたり。

 お、よく見ると瞳は若干紫がかってるな。

 光に当たればアメジストのような深く美しい色がよく見えた。

 

「えーっと、不審者さんですか?」

「違います」

 

 それが俺とニシノフラワーの出会いだった。

 可愛らしいお嬢さんだったがプロポーズしなければ!という天啓はなかった。

 やはり俺はロリコンではなかったようだ。

 

 

 

 

 

      ̄ ̄ ̄ ̄ ̄リジチョー―――――

 

 

 

 

 

「推挙ッ! キミにぜひ観てもらいたいウマ娘がいる!」

「はぁ」

 

 いかん、つい気のない返事をしてしまった。

 理事長の麗しい声はまだ癌には効かないがそのうち効くようになる。

 しかし二日酔いの頭には今でもよく効く。

 めちゃ痛い。

 だが二日酔いだからって適当な気持ちで仕事と向き合うのは違うよな。

 いっちょ気合を入れよう。

 

 俺は理事長室の例のソファに座っていた。

 またしても理事長と対面で話をしているのは呼び出されたからだ。

 たづなの姿がないがどうやら別件の対応中だとか。

 そんな感じで俺は今理事長から推挙を受けている。

 これ実質命令だよね、立場的にさ。

 

「どんな子なんです?」

「進呈ッ! この子だ!」

 

 感嘆符つけなきゃ喋れないのかな?

 そんなところも可愛らしいが、今ばかりは勘弁してもらいたい。

 

 痛む頭を押さえつつ渡されたファイルを開く。

 一番最初のページには履歴書みたいなのがあった。

 顔写真とプロフィールとかそういうの。

 

 つらつらと見ていてまず思ったのが、ついさっき会った子だわ。

 ほうほう、ニシノフラワーっていうのね。

 可愛いお名前だこと。

 年齢はじゅう―――ぶっ。

 

「え? この子、いわゆる飛び級って奴ですか?」

「肯定ッ! スプリンターとしての才覚は間違いなくある!

 だが未だ幼い体が過酷なレースに耐えきれるか?という不安もあり、トレーナーが未だ不在!」

 

 そりゃそーでしょーよ。

 同じトレーナーとしては顔も見たことのない同僚の気持ちがよく分かる。

 せめてもう数年我慢させることはできなかったのか?

 

「ううむ……謹聴ッ! これには当人の強い意志があってのこと!

 ウマ娘が走る上で“想い”が何より大事なのはトレーナーたるキミには釈迦に説法!

 当人の想いを徒に抑制するだけではその才覚を潰しかねん!」

「まぁ、トレセン学園はどう言いつくろったところで実力主義ですからね」

 

 つまりその実力で早すぎるという意見を捻じ伏せて飛び級入学したのだろう。

 それでも良く入学を許可したなぁ。

 

「……そのぉ、峻拒ッ! 断りはしたのだが……」

 

 珍しく歯切れ悪いね、どったの?

 

「折衝ッ! 年齢については……私という前例が……ううむ」

「アッハイ」

 

 実力さえ示せば良いんだルルォ!?ってことか。

 それ言われた上で実力を示されちゃったなら文句は言えないわな。

 理事長が理事長をやっている限り認めざるを得ない。

 

 そんで蓋を開けたら誰も専属トレーナーになりたがらないもんだからデビューできませんよと。

 ニシノフラワーにしてみればそんなの詐欺だろ!と言いたい気分かもな。

 あるいは世間の厳しさを小学生にして痛感してたり。

 人の良い理事長はそれで彼女が腐ってしまうのを避けたいと考えてるんだろう。

 天使かな?

 

 まぁ、元々ウマ娘のレースに年齢制限はあってないようなものだ。

 場合によっては二十歳越えを相手に十五歳の子が戦うなんてことも珍しくはない。

 それを思えばデビューが他人より数年早いくらい誤差みたいなもんだな。

 

 ……つっても手足の短さはどう言いつくろっても不利だ。

 歩幅の小さい方はその分だけ足を動かさなきゃならない。

 回転数(ピッチ)をあげればそれだけ体力を持っていかれる。

 そういう走り方が有利な場面もあるだろうが、それしか選択肢がないっつーのは純粋に不利だ。

 

 デビューしたところでどれだけやれるか……。

 ガッツがあるというのなら最初の三年は経験を積むものと割り切らせるのも手か?

 大事な三年を棒に振るのは厳しいがそれもニシノフラワーの選んだ現実って奴だ。

 まぁ、その辺りを考えるのは後でもいいだろう。

 

「受け持つのは構わないんですけど、一回くらいは走ってるところ見たいですね。

 それとスプリンター育てるのなんて未経験なんですけどその辺りは……」

「不問ッ! 幼いウマ娘を見事競技者に育て上げた経験にこそ期待している!」

「そっすか」

 

 まぁ、ここは理事長を助けると思って受けとこうかな。

 理事長の頼み事は断れる気がせん。

 あの意志の強そうな眉を見せられるとこっちが折れるしかない気がしてくる。

 それに理事長がここまで推す才覚とやらも気になるし、ひょっとしたら俺自身もニシノフラワーの走りに惚れ込むかもしれない。

 もし俺と相性が悪ければ別のトレーナーを探してもらうしかないけど、その辺りは理事長も分かってるだろう。

 

「それじゃ前向きに検討させてもらいます。社交辞令とかではなくて真面目に」

「感謝ッ! 二人の今後の活躍に期待している! はっはっはー!」

 

 立ち上がり、天晴天晴と扇子を仰ぐ理事長。とても可愛い。

 あととても気が早い。

 こっちも受ける前提で話をしてるし別にいいんだけど。

 

「はっはっは―――ぁ?」

 

 ぐらりと理事長の体が傾く。

 突然のことに驚くしかない俺を置いて彼女は腕と足を動かしてバランスを取る。

 止まったかと思えば後方に倒れかけ、タイミングの悪いことに頭の上に載っていた猫が飛び降りた。

 その勢いで逆側、つまりテーブル側に来た。

 

「っと!」

 

 まずいと反射的に立ち上がり、手を差し伸べる。

 高そうなガラステーブルと激突する前に受け止めることができた。

 理事長の頭を抱きしめた形だが、帽子の広いツバが刺さって結構痛い。

 曲がっちゃったらごめんね。

 でも理事長が傷つくよりいいでしょ。

 

「なっ、なっ、なっ」

 

 なんか下から壊れたレコーダーみたいな声が聞こえてくる。

 俺の厚い胸板が理事長の脳を破壊してしまった可能性が微レ存って奴だな。

 いや、俺の専門は走りなので言うほど大胸筋は鍛えてないんだが?

 っていつまでも抱きしめたままじゃまずいな。

 思わずプロポーズをし直しちゃうところだったぜ。

 

 ぐっと両肩を押して互いの距離を離す。

 見れば理事長のご尊顔は真っ赤に染まっていた。

 ちなみに帽子のツバは元に戻っていた。

 

「―――ごほんっ、んん゛、感謝ッ!」

「無事ならよかったです」

「陳謝ッ! すまない、心配をかけた。少々貧血気味のようだ!」

 

 貧血と聞いて女の子特有の日が連想される。

 まぁ、そうでなくても女性はホルモンバランスの影響とかで鉄分が不足しがちだ。

 あの日でなくても血中の鉄分が不足していて日常的に貧血の症状が出る場合も多い。

 もしそっちだとすると食生活を見直した方がいいかも。

 

「理事長、ニンジンばかり食べてたらダメですよ?」

「無論ッ! ニンジンステーキは完全栄養食ッ!」

 

 ステーキは血肉になるので間違いじゃないけど、ニンジンばかり食べちゃダメっつってんのに返答でニンジンが来たのはどうなんだ。

 うん、貧血で倒れそうになっていたとたづなに報告だけしとこう。

 

 理事長は倒れかけたのが余程恥ずかしかったのか扇子で口元を顔を隠してしまっている。

 つば広帽子も合わさって殆ど顔が隠れてしまった。

 するとどうしても目に付くのは扇子に書かれた文字。

 

 理事長。

 

 えらい達筆に書かれているがこれ理事長本人が書いてるんだろうか。

 昨日は『歓迎ッ』だったけどまさか全部手書き?

 理事長の扇子は108式まであるぞ。

 

「失礼します」

「うむ!」

 

 ノック音と同時にたづなの声が聞こえてきた。

 理事長の赤面も返事をする頃には引いていて、何事もなかったかのように扇子を仰いでいる。

 入ってきたのはたづなともう一人。

 小柄だけど背筋のピンと伸びた女性がいた。

 若いけどウマ娘じゃないところを見るに女性トレーナーさんかな。

 

「二人とも立ち上がってどうなさいました?」

「丁度話も終わったので退室するところだったんですよ」

「好機ッ! 丁度良い、桐生院トレーナーに紹介しておこう!

 この度新人トレーナーとして入所した椎葉トレーナーだ!」

 

 やっぱりトレーナーだったか。

 それにしても桐生院って貴族っぽい名前だな。

 ○○院ってだけで漫画のキャラっぽいよね。

 育ちも良さそうだし、良いところのお嬢さんだったりして。

 

「ご紹介に預かりました、椎葉いづるです。よろしくお願いします」

 

 そう名乗れば合点がいったと言わんばかりに手を合わせて顔がほころんだ。

 ううむ、ウマ娘に負けず劣らずの美貌。

 あと数年もしたら大人の魅力も携えて引く手数多になるんじゃないか?

 

「桐生院葵です。噂はかねがね伺っています。

 同期のトレーナー同士、手を取り合って頑張って参りましょう!」

 

 あ、同期になるんすね。よろしく。

 

「ええっと噂というのは……」

 

 違法ロリにプロポーズした伝説を持つ男みたいに思われてたらどうしよ。

 そうやって心配してたら桐生院嬢は上品に笑った。

 

「たづなさんと父から少々、悪い噂ではありませんから安心してください」

「おいたづな何を言った!」

「さて、どうでしょう?」

 

 お前はそこで意味深に微笑むな。

 怖いだろう。

 

「ん、父……桐生院? 桐生院!? 桐生院ってあの桐生院家か!?」

「おそらく想像の通りかと」

 

 うわー、ガチでお嬢様じゃん。

 ウマ娘のレース界をけん引してきた(トレーナー)の重鎮。

 代々名トレーナーを輩出してきている三女神に最も愛された一族と俺の中で専ら評判だ!

 彼女もこの先立派なトレーナーになるに違いない!

 

「しゃっす!」

 

 基本的には長いものに巻かれろというのが現代社会の鉄則だ。

 うちも祖父からトレーナー業をしているが相手の歴史には敵わない。

 同期かつ年下であろう女性に頭を下げるのに何のプライドも必要なかった。

 俺の方が格下ってはっきり分かんだよね。

 

「ええっと、はい。お願いします? でいいんですよね?」

 

 体育会系の挨拶は苦手か。

 さすがお嬢様、今後は気を付けよう。

 

「それでは自分はこの辺りで失礼します」

 

 話も落ち着いたところでファイルを手に取ってそそくさと退室する。

 その際、たづなに「理事長、貧血気味」とささやいておくのも忘れない。

 小さい頃に練習した「お前を、殺す」が役に立ったぜぇ。

 

 しっかりお辞儀をしながら扉を閉める。

 気持ちのいい音がして閉じられたのを確認すると思わずため息が出た。

 あっぶねー、たづな達がもうちょっと早かったら事案だったわ。

 

「何が、危なかったの?」

「こいつ脳に直接……!」

「こんにちは」

「あ、こんにちは」

 

 扉の近くには白いウマ娘がいた。

 どこかぼんやりとした半開きの目は焦点が合ってるようで合わない。

 俺に興味があるようでないらしい。

 ならなぜ話しかけてきたんだ?

 ははーん、さては不思議系ヒロインだな?

 

「違う、よ?」

「ナチュラルに心読むの止めてもらっていいです?」

「ん」

 

 ……いやどう見ても不思議ちゃんだわ。

 俺は好きだけどね不思議ちゃん。

 

「で、理事長に用事?」

 

 理事長は幼児だけどな、なんつって!

 

「幼児じゃないよ?」

 

 だからさぁ!? 絶対心読んでるよね!? サトリかな!?

 

「ハッピーミークだよ?」

「ミークちゃん、ツッコミが追い付かないんだわ。分かって?」

「ん」

 

 で、改めてどうしたの?

 

「トレーナー、待ってる」

 

 俺を?

 いや違うな、現在進行形で待ってるってことは桐生院嬢の担当ウマ娘か?

 

「ん」

「そかそか、じゃあねミクちゃん。また会おうぜ」

 

 俺はさっさとこの書類読んでスプリンターについて情報洗い直さないといけないんだ。

 ニシノフラワーに会うのはその後だな。

 

「ミクちゃん? ミークミークにしてやんよ?」

「ライブはね、頑張るからじゃねーよ!」

「ん、バイ」

「ばいばい」

 

 よし、楽しく話せたな!

 

 

 

 

 

      ̄ ̄ ̄ ̄ ̄リジチョー―――――

 

 

 

 

 

「あらあら、まぁまぁ、昨日の今日でもう担当したいウマ娘を見つけたんですか?」

「否定ッ! こちらから推挙した!

 ニシノフラワーの才、埋もれさせてしまうにはあまりに惜しい!」

「なるほど、ニシノフラワーさん……ミークの強力なライバルになりそうですね」

 

 立ち去った椎葉トレーナーの話で一旦場を落ち着けつつ、淹れてもらったお茶を一口。

 甘露ッ!

 ほのかな甘みが頭をしゃっきりとさせてくれる。

 やはり緑茶はアツアツに限るッ!

 ただし夏の時期は例外とするッ!

 冷えたお茶で作るお茶漬け、あれは良いものだ。

 

 それにしても、椎葉トレーナーに先日の告白の件、聞きそびれてしまった。

 それに先ほどの胸板の硬さ。

 嗅ぎ慣れぬ異性の匂い。

 抱きしめる腕の温かさ。

 どれ一つ思い出しても顔が熱くなってしまう。

 今は他のことを考えればいいが……これは今宵も寝不足になってしまいそうだ。

 

 激務の日々、睡眠時間だけはしっかりと確保しようとお父様と約束をしているのだ。

 今夜こそきっちり寝ようと思う。

 思うが、私の知る少女漫画のどれにも睡眠不足を解消する術は乗っていなかった……。

 なにゆえ……ッ!

 

「ところで理事長、先ほど椎葉トレーナーから貧血気味だと聞いたのですが?」

「ギクッ」

「にゃー」

 

 身をすくませる私の頭に猫が戻ってくる。

 この後のセリフを分かっているからだろう。

 おこぼれちょうだいと言ってるのだ。

 

「今晩はたーっぷりお魚、食べましょうね」

「はひ……」

 

 

 




理事長はお魚がニガテなご様子。

ニシノフラワーとの契約まで入らないのでそこは次回に回します。
どうしてニシノフラワーが入学できたんだ?って疑問をこねくり回しすぎました。
でもこれで納得できたので今作はこういう設定で行きます。
必然的にニシノフラワーはグラスワンダー並みの闘志を胸の内に秘めてるタイプのウマ娘になってしまいました。
あとミークが不思議ちゃんになってしまいました。
それが一番の不思議です。
 
 
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