転生したら兎だった上に竜と家族になっちゃった件   作:謎の人でなしZ

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長くなったので前編・後編と分けました


プロローグ 

 突然だが、ある一人の男の話をしよう

 

 その男は生涯孤独だった

 

 物心がついた時には両親は他界しており、男は母親の親族に引き取られ、育てられた

 

 

 

 ――これが地獄の始まりだった

 

 

 その男の母親は親族の反対を押し切り、父親と駆け落ちをしたらしい。だからであろうか。男は引き取り先の家では歓迎されず、腫物を触るように扱われた

 

 幼少の頃から奴隷のように仕事をさせられ、なにかと理由をつけては罵倒され、暴力を振るわれた。食事は与えられないのが当たり前。与えられるとしても、それは生ごみと言っても遜色のないものだった。仕事が終わればごみ溜めのような物置に軟禁され翌日の朝まで出ることは許されなかった

 

 学校には通わせてもらえたが少しでも成績が落ちたり門限を破ったりすると、躾だ、といって痛くない所が無くなる程殴られたり、蹴られるなどの暴力をうけた

 

 その時の傷がすぐに癒えるわけもなく、学校でも気味悪がられ友人など一人もできなかった。更に運が悪いことに、男はいじめグループの標的にされた。初めは靴を隠されたり、教科書に落書きをされるなどの軽いものだったが、だんだんエスカレートし最終的には金銭を奪われたり、暴力をうけるなど、家と同等かそれ以上の扱いだった

 

 

 それでも男は生きていた。どんなに暴力を振るわれようと、どんなに人間の尊厳を汚されようと、毎日を必死に生きていた

 

 

 

 ―――しかし、世界に救いはなく、どこまでも残酷だった

 

 

 高校二年の夏、男は死んだ

 

 

 死因は失血死

 

 

 学校からの帰宅途中に通り魔に胸を刺され、出血多量で呆気なく死んだ。通りかかるものは一人もおらず、男を刺した犯人は逃走した

 

 

 結局、男は死の瞬間も独りだった。この世に生を授かり、親の愛情を知らず、誰にも愛されず、ストレスの捌け口にされ、それでも自分なりに頑張って生きてきたと思う

 

 

 その結果が(これ)

 

 

 死は人生の終着点であり、悲しい物なのかもしれない。だが男にとってそれは唯一の救いだった

 

 

 だって地獄のような人生からやっと解放されたのだから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これまで長々と語ってきたわけだが、つまり何を言いたいのかというと、一人の人間の人生が幕を閉じたのだ。そして本当かどうかは知らないが、死者は所謂天国か地獄にいくのだろう

 

 

 

 

 

 

―――それなのに

 

 

 

 

 

 

 

 ここどこ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 何もない真っ暗な空間で、先程話した悲劇(自分ではどうでもいいことだが)の主人公こと俺――柊 湊斗は途方にくれていた

 

……待てよ。死んだからこの名前も無くなるのか?まぁ今は置いておこう

 

 

 ……俺は死んだ、はずだよな?ってことはここって天国?もしくは地獄か?

 

 

 天国がいいなー、いや現世で散々な仕打ちを受けたのだから天国以外ありえないだろう僕悪いことしてないもん!

 

 

 などと少々馬鹿げたことを思っていると……

 

 

《告。個体名名無し(ネームレス)。呼称変更を試みます……成功しました。これより個体名名無し(ネームレス)をマスターと呼称。マスターの要求により空間の解析を実行します》

 

 

 

 えっ?!だ、誰!!??

 

 

 

 突然頭の中に女性の声のようなものが聞こえてきた。……というか名無し(ネームレス)ってやっぱり俺の名前無いのね……グスンっ

 

 

《解。エクストラスキル『守護者(ヨリソウモノ)』です。マスターの願望によって生み出されました》

 

 

 

 お、俺の願望?

 

 

 心当たり全くな……待てよ?言われて見れば死ぬ間際に最後だから色々と抱えていたものや欲望なんかを曝け出したような……それになんか『守護者』さんみたいな声も聞こえてたような!?

 

 だとしたらクソ恥ずいんだけど!!え、もしかして他にもスキルあんの?そこんとこ詳しく!!!!

 

 

《告。空間の解析が終了しました。結果を報告しますか?》

 

 スキルの件について聞こうと思ったら、頼んでいた空間の調査が終了したようだ

 

 

 ん?頭の中に選択肢が出てきたぞ。YES/NO……選べってことか?

 

 

 じゃあYESで!

 

 

《了。この空間はマスターのいう天国、地獄ではありません。ここはどの世界にも属さない空間……世界と世界の狭間に位置しています》

 

 

 世界と世界の狭間って……なんで俺そんなとこにいんの?

 

 

《解。本来ならばマスターは元の世界とは別世界に転生するはずでした。しかし何者かの干渉によりこの空間に迷い込んだと思われます》

 

 

 何者かの干渉?俺に?一体何のために…………それに転生?やっぱり俺って死んだんだね

 

 

《告。マスターの死後、世界を渡る際に身体を分解・再構築されています》

 

 

 再構築……ってことは今の俺ってどんな感じなの?なにも見えないんだけど

 

 

《マスターは既にエクストラスキル『魔力感知』を習得しています。これにより魔素の流れから外界を視認できるようになります。『魔力感知』を使用しますか?》

 

 

 頭の中に先程の選択肢が。勿論YES!!

 

 

《了。エクストラスキル『魔力感知』を発動します》

 

 

 瞬間、俺の周りを漂う細かな光の流れを感じ取る。これが魔素と呼ばれるものなのだろうか?

 

 

 すると段々周囲が鮮明になっていく。どうやら俺は先が見えない一本道の上にいるようだ

 

 

 そして、俺は下を見下ろす。そこには―――

 

 

 純白の毛に包まれた身体、手は生前よりも少し短いだろうか?掌には気持ちよさそうな肉球のようなものがある。脚部は他より発達していた。更に頭に違和感を感じたので触ってみるとなにやら細長くて柔らかい物があった。しかも触るたびにくすぐったい感じがする。まるで耳でも触られているような………

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――あぁ、まだ見ぬ天国のお父様、お母様。貴方たちの息子は………息子は!!

 

 

 

 

 

 

 

 死んだら、()になってしまいました!!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 誰もいない空間に俺の悲しみの叫び(鳴き声)が虚しく木霊した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~

 

 

 

 

 

 

 しばらく嘆いていた俺だが『守護者』曰くこの姿も俺の願望だそうだ。理解できなかったが、そういえば死ぬ間際にモフモフに包まれたかった、なんて考えたことを思い出し冷静になることができた

 

 

 ……なにやってんだ俺……死ぬ間際くらいもっとマシな事考えろよ………モフモフに包まれたいって……あんまりだろう。この姿自体俺の黒歴史確定じゃねぇか

 

 

 

 あのときの俺をぶん殴りたい衝動に襲われながら、現在俺は先が見えない道を飛び跳ねて進んでいる

 

 

 『守護者』に聞いてみたところ現時点でこの空間から脱出する方法はないらしい。俺が持っているスキルの中にも現状を打破できるものはなく、もしかしたら道の先になら解決策があるかもしれない、ということで道の先を目指している

 

 初めは戸惑ったが慣れてみると案外生前よりも楽に移動できるようになった。更にこの身体、勝手に周囲の魔素を吸収してくれるので飲み食いしなくても活動できるという見た目に反して高性能だった

 

 

 誰だよ。兎だからって馬鹿にしたのは!……俺でしたすいません

 

 

 しばらく『守護者』に俺の持ってるスキルの話を聞きながら道を進んでいった

 

 

 

 

 

 

 

 

――数時間後

 

 

 

 あれからかなりの時間道の果てを目指して進んでいたのだが、ようやく終着点らしきものを視認することができた。だが、ここで新たな問題が発生した

 

 

 俺は『守護者』さんに教えてもらった『魔力感知』の応用でユニークスキル『魔力操作』を獲得し、身体を巡る魔素や魔力の流れを操作することで出せるようになった声で問いかける

 

 

 

「『守護者』さん。コレどうしよう?」

《告。強力な結界が張ってあります。解読開始…………失敗しました。結界を破ることは不可能と思われます》

「……ですよねー」

 

 

 『守護者』さんの言葉に俺はため息をこぼす。そんな俺の前には扉がある。ただデカい。とてつもなくデカい。見上げてみても扉の先が見えない

 

 

 せっかくここまで来たのにあったのがこんな巨大な扉だったら俺にはどうすることもできない。だって兎だもん、俺。可愛らしさと喋られること以外取り柄のない俺に何ができると?

 

 

 唯一の希望である『守護者』さんもお手上げならもう諦めるしかない。俺は扉に背中を預け、長耳をシュンと垂らしながら愚痴をこぼす

 

 

「う~やっと前世の地獄みたいな日々から解放されたと思ったのに……次は巨大な扉しかない空間に幽閉ですか………俺ってなにもしてない筈なんだけどな…………」

 

 

 

 

 

 

 これで俺の人……いや、今は兎か。短い兎生だった…………

 

 

 

 

 

 

 これからどうするか考えていると……

 

 

《!!何者かの干渉を確認。警戒してくだ――――》

 

 

 『守護者』さんの慌てる声が聞こえるも、最後まで聞き取ることは出来なかった。いきなり背中の扉に穴が出現し気づけば俺は浮遊感に包まれていた。扉の先は崖になっていたらしくどうやら俺はその崖から落ちているのだろう。『守護者』さんが何か言っているがよく分からない

 

 

  

 

 

 

 俺は遠ざかる扉をぼんやりと眺め、遂に気を失った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~

 

 

 

 

 

 

 ――ここは、どこだ?

 

 

 

 

 

『……せん。………て、ここ…………』

 

 

 

 

 

 ――おれ、なにして、たっけ?

 

 

 

 

 

『…あ………すか……?』

 

 

 

 

 

 

 ――そうだ。俺落ちたんだ。あの扉のさきの崖から

 

 

 

 

 

 

 

『……い…げ………こ…し………』

 

 

 

 

 

 

 

 ――てことは、また、死んだのか?ははっ短い兎生だった、な

 

 

 

 

 

 

 

『……し………すか……う………か』

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――あー次こそ天国かな?地獄は嫌だな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『い……げん……こ…………すよ!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――ええい!さっきからうるさいんだよ!!このバカ、アホ、ハゲ!!死んだあとくらい静かに過ごさせろや!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ほう?いきなりやってきて私の質問を無視した挙句バカ、アホ、ハゲ……ですか。余程死にたいようですね?いいですよ。魂も残さず消滅させてあげます』

 

 

 

「ふぁ!?」

 

 

 

 感じたこともない程の濃密な殺気に目を覚ました俺は、ガバッと顔を上げる

 

 

 

 

 ―――思えば、この出会いは偶然ではなく必然、『運命』だったのかもしれない

 

 

 

 

 ()()は、全身を黒い鎖で拘束され、なにやら結界のようなもので覆われていた。本来は翡翠のように美しかったであろう身体は、そのほとんどを悍ましいナニかに浸食されていた。その雄々しかった翼は最早本来の役目を果たすことは叶わないだろう

 

 紅い罅がはしっている右目とは違い、おそらくまだ浸食されていない左目に怒りを宿しながらこちらを見ていた

 

 

 全てを見透かす琥珀のような瞳に見惚れそうになるも、俺は口を開いた

 

 

 

 

「……きみ、は?」

 

 

 

 

 

 俺の言葉が聞こえたのか、怒りのオーラを発しながらも答えてくれた

 

 

 

 

 

『なんですか、いきなり。……いいですよ。冥土の土産に教えてあげます』

 

 

 

 

 

 瞬間、俺は息をのんだ

 

 

 

 

 

 表情は、よく分からない。だが、その瞳には見覚えがあった

 

 

 

 

 

 

『私の名は――ヴェルセリア』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 何故かは自分でも理解できない。でも、俺は()()のそんな瞳を見たくない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 だって、それは――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『世界から否定され、世界から拒絶された、ただの(ドラゴン)ですよ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 かつて世界(すべて)に絶望した、昔の俺の瞳そのものだったから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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アレンとリアを今後どうするか

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