二人の孫悟飯   作:無印DB好き

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ビーデル達と悟飯の組手

「ビーデル、本気で言ってるの…?」

 

 ビーデルの申し出を聞いて、最初に口を開いたのはイレーザだ。その口調は、明らかに「止めておいた方がいい…」と言外に主張している。

 

 が、それも当然だろう。なにせ、ビーデルですら勝てるかわからない言わしめたあの匿名希望選手ですら、今大会の全選手を順位付けするなら下から数えた方が早いと思われるのだ。決勝のあの超人試合すら完璧に見切る事が出来ていた悟飯に勝てる道理はまずない。

 

 しかし、ビーデルの決意の表情は揺らぐことがない。うけてもらえるまで、絶対に引き下がるものか! という堅い意思がその瞳からは見て取れる。

 

「い、いや、僕はその…」

 

 とはいえ、肝心の悟飯がまるで乗り気ではないみたいで、せわしなく視線を左右に振り逃げ場を探している。いざとなればこの前みたいに姿を消せばいいし、そうさせないために一応ビーデルが悟飯の服の裾を掴んではいるのだが、悟飯がその気になればこの程度すぐに振りほどけるだろう。

 

「悟飯君、どうしてそんなに組み手を嫌がるんだ?」

 

 と、ここにウットナが助け舟を出す。ただし、ビーデルに、だ。

 

「ど、どうしてって、それは強さなんて見せびらかすもんじゃないし、それに…」

 

「それに、弱い人を相手にしても気まずいだけだから?」

 

 しどろもどろになりながらも答える悟飯だったが、途中で言葉を詰まらせてしまう。しかし、そのつまった言葉をビーデルが悟飯を睨みつけながら代弁する。どうやら図星だったようで、悟飯はあからさまに「うっ…」と息を詰まらせている感じだ。

 

「なら、俺もビーデルさん側に付こう。それで少しはマシになるだろう」

 

「俺も混ざっていいか? 流石に、ビーデルにそこまで言われちゃ黙ってられねえぜ」

 

「あっ! 私も私も! 悟飯さんの実力が見てみたいから混ざってもいいですか!?」

 

 そのビーデルの代弁に、ウットナが提案をし、それにシャプナーは指を鳴らしながら、クオーラは見るからにワクワクした様子で参戦を表明する。

 

「で、でも、組み手をするにしても、開けた場所なんてすぐに確保は…」

 

「その点なら大丈夫だ。この近くに親戚の務める道場がある。獅獅牙流という流派のサタンシティ支部の道場で、その師範を任されている方だ。この時間なら稽古に来ている人も少ないだろうし、稽古場の一角くらいなら貸してもらえるはずだ」

 

 挙動不審になりながらもなんとか逃げる為の理由を口にする悟飯だが、ウットナがその逃げ道をふさぐ。

 

「悟飯君、武道家とは強き者と拳を交えずにはいられないものなのだ。己を磨くために。どうか、ビーデルさんの挑戦を受けてやってはくれないか?」

 

 更に、悟飯に頼み込むウットナ。その情熱に燃える瞳の前に、遂に悟飯は根負けをするのだった。

 

 

 

 

 

 そして、例の獅獅牙流の道場に移動した面々。ウットナの言う通り、ウットナとクオーラの二人で頼み込めば道場の主は快く道場を貸してくれた。ただ、勿論親戚云々の関係もあるだろうが、どちらかと言えばこの主はビーデルに、そして、そのビーデルが興味を持っている孫悟飯という人物に興味を示して、それを見学するために貸してくれた…という感じがする。

 

「………よしっ!」

 

「いつもはパンツにグローブだからな…。こういう道着と拳サポスタイルは初めてだ…」

 

「孫悟飯の名前を持つ者との組み手か…。気分が高揚してくるぞ…!」

 

「私もなんかワクワクしてる! 悟飯さんなんか凄い気功波つかってくれないかな~っ!」

 

 獅獅牙流の道着を着て、気合の声と共に帯を締めるビーデル。シャプナーは少し不慣れな様子。ウットナとクオーラは共に興奮で少し浮かれている様子だ。

 

 対して、悟飯はまだ少し困惑気味。が、ここまで来たのなら…という様子で、同じく獅獅牙流の道着に身を包み、ビーデル達四人に向かって礼儀正しく一礼をする。

 

 その礼を受け、ビーデル達も一例を返す。と、ほぼ同時に、

 

「行くわよ悟飯君! はあああっ!!」

 

 ビーデルが悟飯に向かって猛然と向かっていった! そして、初撃となる右の正拳突きを放つが、これは悟飯に紙一重で避けられてしまう。

 

「まだまだっ!!」

 

 大声で己を奮い立たせながら、続けざまに左フック、右回し蹴り、更に連続で下段左、上段右、と回し蹴りを放つが、これも全て紙一重で避けられる。

 

「けっ、舐めやがって! 俺も行くぜ悟飯っ!!」

 

「行くぞ悟飯君っ! 我が全てを君にぶつけるっ!!」

 

「よーし、私も全力で行くよ悟飯さんっ!!」

 

「皆がんばってー! 悟飯君にギャフンといわしちゃえーっ!!」

 

 そのビーデルに続き、シャプナー、ウットナ、クオーラも悟飯に立ち向かっていく。その後ろでは、唯一見学のイレーザがビーデル達に声援を送っていた。

 

 だが、やはりその実力差はいかんともしがたいレベルで差があるようだ。四人のコンビネーション攻撃は即席にしてはかなり巧みなのだが、数分間攻撃を続けても悟飯にはかすりもしない。全て紙一重で避けられてしまうのだ。

 

「はあっ、はあっ、くそっ! こいつ動きが速いだけじゃねえ! 体の動かし方、ステップの取り方、どれを見ても、実戦慣れしてる動きだぜっ!」

 

「はあっ、はあっ、ふ、ふははははっ! よもやここまで差があるとはな! 最早笑うしかない!!」

 

 四人がかりですら一撃も浴びせられないという事実に、絶え間ない連撃で息切れしながらもシャプナーは苛立たし気にし、ウットナは言葉通りに笑い始める。

 

「はっ、はっ…ダメ! このままじゃ埒が明かない!」

 

「私に任せてください! はあっ、はあっ、さ、三人は、悟飯さんの気を何とか引いてもらえれば…っ!」

 

 息切れしつつ焦りも見え始めたビーデル。そこに、同じく息切れしながらもクオーラが名乗りを挙げるとともに、一旦悟飯と距離を取って右手に力を集中し始めた。

 

 その構えは、あの映像で散々見てきた、いろいろな人物が気功波を繰り出す直前の構えに似ていた。それを察したビーデル、シャプナー、ウットナの三人は、当てる為ではなく、悟飯の意識を自分に引かせるための攻撃に切り替える。

 

「…………っ!」

 

 力の集中自体は短時間で終えるクオーラ。しかし、闇雲に放ったところでかわされるだけだ。絶対に命中させられる…という瞬間を、悟飯の動きを見つめながらじっと待つ。

 

 そして、その機はすぐに来た。クオーラと悟飯の合間にウットナが立ち、悟飯の顔面に向けて拳の突きを放ったのだ。更に都合よく、ビーデルとシャプナーも別角度から同時攻撃を仕掛けている。

 

「やあああああっ!」

 

 掛け声と共に、悟飯に立ち向かいながら右手を振りぬくクオーラ。その右手からは、やはりあの映像で散々見せつけられた光線が飛び出し、悟飯に襲い掛かる! ほぼ同時にウットナは素早い動作で体を地に伏させたので、悟飯から見たらウットナの背後から突然光線が襲ってくるように見えたはずだ。この辺りは、やはり兄妹の息の合ったコンビネーション…といったところだろう。

 

 三人の同時攻撃を紙一重でかわして体勢が固定されてしまっていた悟飯の顔面目掛けて飛んでいく光線。しかしその一撃も、固まった体勢のまま体全体を真横にずらすという、物理法則を無視したような奇妙な動作でかわされてしまう。

 

「そ、そんな…っ!」

 

 そのあまりにけったいな回避の仕方に、流石に非難めいた悲鳴を上げるクオーラ。が、

 

「そうか、クオーラさんは気功波が使えるんだったね。ちょっと油断し過ぎた…」

 

 感心した様子でそう口にする悟飯。その頬に、微かにではあるが…赤い一筋の線が走っている。どうやら、完全には回避しきれなかった様だ。

 

「うおおっ! やったぜクオーラちゃんっ!」

 

「ふふっ、クオーラちゃん、やるじゃない!」

 

「見事だぞクオーラっ!」

 

「おおーっ! 凄いすごーいっ!!」

 

「いえ、兄さんやビーデルさん、シャプナーさんのアシストのおかげです! ナイスアシストでした!!」

 

 そして、兄と兄の学友達からも褒められ、嬉しそうに照れくさそうに…しかし、自分も彼らを称賛し返すクオーラ。

 

「ビーデルさん…。その、今日の所はこれで終わりにしてほしいんだけど…」

 

 と、ここで悟飯が少し遠慮がちにビーデルに提案をする。

 

「はぁ!? 冗談でしょ!!? クオーラちゃん以外は一撃も入れられてないし、悟飯君も私達に全く攻撃してきてないじゃない!!」

 

 当然ながら、烈火のごとく怒りだすビーデル。

 

「それなんだけど…。最近は勉強ばかりで鍛錬を怠っててさ…。さっきのクオーラさんの一撃の反応の遅さに、体がなまってるって改めて痛感したんだ…。流石にこれはまずい、こんな体たらくじゃ、お父さんやピッコロさんになんて言われるか…。だから、勘を取り戻すための鍛錬の期間が欲しいんだ…」

 

 対して、申し訳なさそうにそう告白する悟飯。ビーデル達からしたら、あの軽やかな動きで体がなまりきっているとは到底信じがたいが、しかし悟飯は嘘をついている様には見えない。本当に、体はなまり、勘も鈍っているのだろう。

 

「―――………。仕方ないわね。ちょっと準備期間をあげるから、さっさと本調子に戻しなさいよ」

 

 そんな悟飯を暫く睨みつけていたビーデルだったが、やや間を置いてから、ふう…と一息ついて悟飯の意向を受け止める。一応は納得した様子のビーデルにホッと胸をなでおろす悟飯。だったのだが、

 

「悟飯さんの鍛錬!? すっごく見てみたい! 私もご一緒していいですか!?」

 

 すぐさまクオーラが食いついてきたのだ。それも、なんかめっちゃ目をキラキラさせながら。更に、

 

「あ、ずるいぞクオーラ! 悟飯君、俺も同行していいか!? 鍛錬もそうだが、俺は何より、差し支えなければ君の親族の方から孫悟飯翁の事が聞きたいのだっ!!」

 

「そうよずるいわクオーラちゃん! 悟飯君! 私もまぜなさいよ! あの気功波とかいう技を教えて欲しいわ!! それに、私も君に聞きたい事がいろいろあるのっ!!」

 

「悟飯君の家かー…。ちょっと興味あるかも…。ねね、私もご一緒していい…?」

 

 クオーラに続き、ウットナ、ビーデル、イレーザまでもが悟飯に詰め寄る。どさくさにまぎれて、悟飯の家に行く事にすらなってしまったのだ。

 

「モテモテだな、悟飯…」

 

「は、はは…」

 

 そこに、茶化したようなシャプナーの声が入るが、悟飯はもう笑うしかない…とばかりに、乾いた笑みを浮かべるだけだった。

 

 

 

 

 

 一方そのころ、ミスターサタンの家にて。

 

「ビーデルはまだ帰らんのか?」

 

「はい、まだお戻りにならないようで…」

 

 家の主であるミスターサタンが、執事らしき男に尋ねるが、返ってきた答えは芳しいものではない。

 

「イレーザちゃんはともかく、男を二人も家に連れ込んだとは…。いかん、いかんぞビーデル。私より強い男でなければ、付き合うことは許さんと口を酸っぱくしていったはずだ…」

 

 苛立たし気に呟きながら、所在なさげに部屋をうろうろし続けるミスターサタンであった。




 獅獅牙流のおっさんとかドマイナー過ぎるんだよなぁ…。あと、クオーラさんがなんか少年時代の孫悟空みたいになって来とる…。
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