ポケットモンスター プリティーダービー 作:室星奏
「あれ、まだやってたの?」
「うん、皐月賞も近いしね」
ゴルシをあきらめた私は、ふと練習コートに足を運ぶと、そこではテイオーが一人走り込んでいた。
彼女の最近は、こうやって一人頑張る事が多いのだが、今後に支障が出ないか心配である。骨折されでもしたら、その後の調整が互いに大変になるからだ。
何度も言ってはいるが、彼女は『わかってるけど、大丈夫』の一点張り。もう少し、自分の心配をしてもらいたいものだが、さすがにそうも言ってられないようだ。
「ゴルシ、どうだった?」
「ありゃ~無理だ、適当に対策考えるしかないよ」
靴磨きを手伝いながら、沈みかける夕日を眺め、色々な感情にふける。だが不思議と、彼女に語り掛ける言葉が見つからなかった。何を話したらいいのかもわからない。
まあ、ふと見かけただけだったし、仕方のない事なのかもしれない。
「コンディションは順調? タイムも安定しているし、1着狙えそうだけど」
『記録してるロト!』
「うん、絶好調だよ! 大丈夫、大丈夫!」
笑顔で立ち上がり、思いっきり胸を張り上げる。この元気なところが、やはりテイオーの一番いい所なのかもしれない。
だが、前よりかはどこかぎこちない感じがあるのも否めない。
「何か、悩みでもある?」
「へ? ……んー、別にないけど」
「ん、ポケモン触れない事とか」
図星、と言わんばかりに身体がビクッと震える。私が言うのもなんだが、別に怖がるような存在でもないとは思うけど。
危険な生体を持った奴は数あれど、丁寧に接していれば問題ないとは思っている。まあ、壁衝突はさすがにやめてもらいたい。
「ちょっと噛まれただけだし……別に触れなくても問題ないしっ」
「そ、そう……。まあその方がいいのかもね」
「え?」
「練習サボりなくなるし……」
「あー……」
まあここ最近は、スケジュール管理もしっかりした事で、そんな事は余程の事がない限り起こらなくなったものの、当時はちょっとひどいレベルでサボりが発生していた。
当時に比べたら、今の忙しさは十分マシな方だ。
「靴磨き、ありがとう。そろそろ行くね」
「うん、気をつけて帰りなよーっ! ウィンディあたりに噛まれないようにー」
「分かってる~」
***
「……はあ」
トレーナーと別れて、一人夜道を歩く。確かに、一番にこだわってた私にとって、何かで遅れを取るっていうのは、少し悔しかった。
何とかして慣れようと、家に迷い込んでくる鳥ポケモン辺りに触れようとするが、すぐに逃げてしまうか、躊躇ってすぐ手を引っ込めてしまう。もしかして、嫌われているだけなのだろうか。
「どーすればいいんだーっ!」
つい声を高くして叫んでしまう。刹那、上空で何かが飛び去ったかと思えば、その衝撃で激しい突風が吹く。落ち着いて飛行していたのか、周りに被害が出る程の突風ではなかったものの、中々強いものであった。
風がやみ、上を見上げると、七色の光が一直線に伸びて一瞬輝き、私のもとに一枚の鳥羽がヒラヒラと舞い落ちた。
「……?」
奇妙なものだ。その羽は七色に美しく輝き、数分の間目を奪われてしまった。だが、眺めていると、さっきの時のように、身体の底から何か高揚感みたいな物が沸き上がってくるのを感じる。……お守りの一種、なのかな?
「でもこんな羽、見たこと無いよ。ポケモン……でも見た事無いし」
『ビヨォーッ!』
「!?」
公園の方から声が聞こえる。急いで振り返ると、そこには虹色に輝く謎の鳥が一匹、私の方をじっと見つめていた。
何、あれ。見た事がない。
『……』
「ぁ、待って!」
私がその存在を確認すると同時に、バサッと大きな翼を広げ、再び空へと舞い戻っていく。
なんて飛行速度だ、澄んだ顔で飛んでいるにもかかわらず、その速度は明らかに常識を逸していた。
「……今のは、一体?」
この衝撃の出来事を、私は一生忘れないだろう。