悪くないペースなのでは?
憎悪、憤怒────果てには殺意。
彼から見える"光"は微弱どころかほぼ皆無、ギリギリ視えるか視えないかというレベルだ。
ここまで酷いのはオレも初めて視た。もちろん過去にも"光"が薄いポケモンは数多く視てきたが、このウォーグルは格が違う。心の底から、血の一滴に至るまで人間を嫌悪し、恨んでいるのだろう。
『……急に襲いかかって来ないだけ温情なのかな……だったら』
まだ話し合いの余地はある。
オレが他の人間と少し
さて、どうするか。
一応持ってきたご飯は拒否されるだろうし、一歩でも距離を詰ればオレの身の保証ができない。バトルも不可、"光"を通しての気持ちの伝達も無意味と、八方塞がりだ。
『……質問、いいか?』
当然応えなんて帰ってくるはずもなく、しかし敵意が強まった感じもしない。これは許可を貰えたということなのだろうか。
確認する術がないのでオレは肯定と受け取るが、だとするならばここからのミスは許されない。ウォーグルを激昂させること無く、オレが知りたいことを最小の会話で引き出さねばならないのだ。ジムを終えたばかりの疲れている状態で行うには、些かハードルが高いように思える。
けれど、気付いてしまったのだ、あの敵意に。ならやるしかない。「オレが救う」なんて烏滸がましいことは言わないが、目の前で起こっている問題を見過ごす程、オレは堕ちていないつもりだ。
『君は、
いくつもの質問が頭を逡巡し、篩いから落とされていく。
その中から残った質問その1、それが己の出自を問うものだった。
僅かにウォーグルの身体が反応する。正解か。
まあ、これは質問と言うよりも確認なのだが。ウォーグルの本来の生息地は不明、少なくとも現在のイッシュにある記録ではそうなっている。
だが、進化前のワシボンならどうだろう。ワシボンの方なら生息地が分かっており、その生息地はイッシュ地方の北、"ソウリュウシティ"を越えたその先にある"10番道路"だ。
だから確認させてもらった。もし10番道路から来たのであれば、その付近で何か
『(だけど10番道路を超えた先にあるのはチャンピオンロードとポケモンリーグ……もっと言えばあのシャガさんの目が届く範囲で異常事態……?)』
オレの旅で最後に挑む関門になるであろう、ソウリュウジムを守るのは最強のジムリーダー、シャガ。ドラゴンタイプの使い手でソウリュウシティを束ねる市長でもある。さらにすぐ近くにはポケモンリーグと、何か悪事でも働こうものなら即座に鎮圧されそうなものだが。
『もうひとつ、その
目つきがさらに鋭くなる。これも当たりか。
しかし中々リスキーな質問をしてしまった。ウォーグルの豪脚が砂を踏みしめる度、命が縮んでいく気がする。
ウォーグルに傷があるのは別に変な話では無い。むしろ、ウォーグルの図鑑説明には「傷が多いほど勇猛な戦士の証」とあり、傷があるのがデフォルトの姿とも言える。
では何故「
────
『(…人によるものなら尚更許せない……視力まで奪うことはないだろうに……!!)』
沸き立つ怒りを抑え、冷静になるように努める。今感情的になればウォーグルにどう取られるか分からない。
心を落ち着け、怨嗟を秘めた右目と憎悪を放つ左目をオレは真っ直ぐに見つめる。今はただ、真摯に向き合うのみだ。
『時間をとってゴメン、最後の質問だよ』
この質問が吉と出るか凶と出るか、果たして。
『オレと……一緒に来ないか?』
────地雷だった。
言葉を言い終えた瞬間、ウォーグルは耐え難い程の絶叫を周囲に響かせたのだ。
大嫌いな人間と共に行くなどと、恨み怒りの前に「空の戦士」としてのプライドが許さないのだろう。
地から翔び上がり、感情のまま襲いかかってくる一歩手前で、
『……ッ! 最後まで聞けッ!!』
普段からは考えられない声量でウォーグルを制した。
睨んだ目はそのままに、羽ばたく翼だけは動かすのを止め、「空の戦士」は地に降りる。
『オレに、君の怨敵が誰なのか
少し敵意を抑えられたのか、感じている威圧感が少し和らいだ気がする。
心当たりと言うかほぼ確信なのだが、十中八九プラズマ団だろう。「ドラゴンのホネ」の時といい、彼らの行動にはリミッターが無い。目的達成のためなら、強奪も暴行も問わないのがプラズマ団という組織なのだ。遭遇したことがないので推測になるが。
『君は怨敵と会うためにオレを利用する、オレはキミのその力をアテにさせてもらう。……利害は一致していると思うんだ、ウォーグル』
互いに馴れ合うことはせず、利用し合うだけなら彼のプライドを傷付けること無く共に歩めるとオレは思った。素直に「仲間になって欲しい」と言ってもウォーグルが認めるわけがない。あくまでオレを復讐のために利用して良いと、メリットと感じられるような提案をさせてもらった。
もちろんオレの
オレに「人間を信じて欲しい」なんて言う資格はない。彼からしてみればオレも犯人も同じ人間、同類だ。
だからいつか、
『乗るか、反るか。最終的な判断は君に任せるけど……オレは、君を
そう伝え、オレは柔らかく微笑んでみせた。
時間にして1分と20秒程、静寂の時間が訪れていた。
その沈黙を破ったのはウォーグル。転がったままだったモンスターボールを大翼で叩き飛ばし、オレの方へと打ち込んできた。
外殻も開閉スイッチも壊されていないところを見るに、とりあえずの納得はしてくれたと受け取って良いのだろうか。
『…戻すよ、ウォーグル』
手の中にあるボールには、こちらには一切無関心のウォーグルが確かに入っていた。ボールに戻しても抵抗の様子は無し、どうやら交渉は成立したようだ。
ボールを腰に付けた瞬間、どっと身体の力が抜けてしまい地面にへたり込んでしまった。鉛のように重い息を吐き、情けないほど濁った声が勝手に出てくる。
これ以上活動を続けると間違いなく倒れると見て、オレは即座にヒウンシティへと踵を返す。今はもう、ポケモンセンターのベッドが恋しくて仕方がない。
☆
翌日、4番道路を外れた先にあるリゾートデザート。
太陽ももう頂点に達するかという頃、予定調和と言わんばかりに寝坊したオレはせっせと図鑑のページ埋めに精を出していた。
メグロコ、ズルッグ、ダルマッカ辺りはよく見かけたのだが、マラカッチとシンボラーを見つけるのに時間を要してしまった。なんとか全員捕まえてボックスに送ったのはいいが、リゾートデザートにはまだ探索すべき場所が残っている。
その名は"こだいのしろ"。城と言っても今は砂に埋もれて地下遺跡のような状態になっている。時代の流れは残酷だ。
入城してみれば辺り一面砂、砂、砂。しかしここは霊験あらたかな場所のようで、"サイキッカー"やら"バックパッカー"の方々があちらこちらにいた。バトルも何度か挑まれたが、これを容易く撃破。バッジを3つ持っているのだ、そう簡単に敗北を許すことは出来ない。
ここではデスマスを捕獲。さらにバックパッカーから"はねのカセキ"を貰い、ホクホク気分で本道である4番道路まで戻ってきていた。
『まさか地下が砂で埋まってるとはなー』
高架下をのんびり歩きながら呟く。
昔義父と来た時には流砂こそあったが地下へと降りることは出来た。
数年の間に砂が積もってしまったのだろう。最下層へ降りられるようになるには今しばらく時間が掛かりそうだ。
『
顔には全く仕方なくなさそうに出ているのだろう。誰も見てないしその理由もオレにしか分からないから構わないが。
忘れもしない、シッポウ博物館での出来事。
あの黒い石を見て倒れたことは忘れられるはずもなく、今もまだオレの身体と心に苦しみと形容し難い想いが刻み込まれている。
もし探索出来たなら、"
この道を真っ直ぐ行けば、いよいよイッシュ地方最大の娯楽都市"ライモンシティ"だ。
"バトルサブウェイ"、"トライアルハウス"、ポケモンジムとバトルを愛する者に向けた施設だけではなく、"ポケモンミュージカル"や"ビッグスタジアム"に"リトルコート"、子連れの家族には嬉しい"遊園地"と、娯楽に関しては本当になんでもある。
オレもまだ小さな頃、義父と義姉と一緒に遊びに来たものだ。特にオレは観覧車がお気に入りだったようで、乗ると毎回窓にべったり張り付いていたと義姉がよく話してくれた。
『そうだなー、折角のライモンだし思いっきり遊ぶのも悪くないかもなぁ……な?』
ちらっとボールに入った4匹を見やると、2匹は首をブンブンと縦に降り肯定、1匹は何を思っているのかジッとオレを見つめ返し、1匹は完全無視。想定通りの反応だ、ちゃんとレスポンスが返ってくる2匹には感謝しかない。
ここしばらくオレもポケモンもジムだバトルだと、かなり駆け足気味に旅をしてきた。ここらで息抜きの1つでも入れておくのが良策だろう。
『じゃ、行こうか!』
目前の楽しみ目掛けて、オレは駆け出したのだった。
☆
ポケモンセンターで少し休み、最低限の荷物を携え準備は万端。
今ここにいるのは"天才"でも"転生者"でもない、ただの14才の少年アララギ・ショウだ。
まずは1番近い"バトルサブウェイ"────と思ったが、毎回毎回バトル関係のところに飛びつくのは芸がない。ここはあえて普段縁のないスポーツ関係の施設から攻めていこうと決め、街の北へと歩き出す。
ちなみに、オレの運動神経はそこそこ、スポーツも大して上手くない。
野球、バスケ、テニス、アメフト────ただ、唯一
これも前世で何かあったお陰なのだろうか。まあ、そうとしか考えられないのだが。
しかし不思議なことに、シュートとドリブルはからっきしだったのだ。出来たのはパスと精々リフティング、この2つはやたら上手かった。邪魔が入らなければずっと続けられるんじゃないかと言える程に。
丁度今日試合が行われるとのことで、早速チケットを買って"ビッグスタジアム"の観戦席へ。試合当日でも席が取れたのはラッキーとしか言いようがない。
午後2時になると同時に試合が始まり、凄まじい熱狂の嵐がスタジアム全体から巻き起こる。
そこからはオレもその嵐を成す熱の一つだ。素晴らしいプレーに叫び、ファインプレーには立ち上がり拍手を、シュートが決まれば跳ねながら喜びを表現する。
そうしているうちに試合終了のホイッスルが鳴る。楽しい時間はあっという間に過ぎてしまうものだ。
両チームの健闘を讃えながら拍手をし、控え室へと戻ったのを確認してオレはスタジアムを後にした。
『スポーツは良いなぁやっぱり。オレも本格的に始めようかな……なんて』
この旅が終わったらサッカーを学んでみるのも悪くないのかもしれない、そうぼんやり考えながら、次の目的地である"ポケモンミュージカル"の建物前まで来ていた。
形は"リトルコート"や"ビッグスタジアム"とほぼ同じ、違うのは可愛らしさや華やかさが見て取れるところくらいだ。
『コンテスト……とは違うんだよな。思い出すなーホウエンで見たコンテスト…綺麗だったなぁ』
ホウエンに留学した時に、似たような施設である"ポケモンコンテスト"の会場を訪れたことがある。確かカイナシティの造船所へ見学に行った時だったか。
意外にもオレのコンテストへの食い付きは良かった。バトルとはまた違うアプローチで、ポケモンの魅力を引き出し絆を結ぶ────その美しさときたら、オレの心は昂り踊ったものだ。
入ってみれば人が多いこと。興行的には上手くいっているのがよく分かる。
このミュージカルはコンテストと違い、技でのアピールやコンディションで競うものでは無い。ポケモンを着飾り、演目の中で独自のアピールを行うものとなっている。独自、と言っても着飾った小物でのアピールが主だ。批判的かもしれないが、拡張性は余りない。最大の違いはトレーナーがほとんど関与しないところか。着飾るのを手伝ったり試行錯誤したりするが、それだけだ。そこもまたコンテストとの差別化なのだろうか。
生憎着飾る道具なぞ持ってないので、今日のところは演目を見るだけだ。
もう15分ほどで今日最後の演目、「情熱のライモン」が始まる。なんとか後ろ端の方だが席は取れたので、どう時間を潰すか考えていたその時────
『おっ…と……!』
目の前で女の子が、勢いよく人混みから飛び出してきたのだ。
多分転んだと思われ、体勢を崩したところを咄嗟に腕を掴んで顔から地面に激突するのを阻止した。
はてこの子────
『あ、ありがとうございまあす…!』
『どういたしましてー』
ズレた緑色の帽子を直し、深々と頭を下げてお礼を言う目の前の女の子。見ただけでわかる、この子は間違いなくどんくさい。どうしようもなくそういう雰囲気があるのだ、失礼だが。
『……あれ? あなたもしかして……ショウ君?』
『まぁ、ショウはオレですけど…そちらはどちら様で?』
少し警戒色を強める。が、それはすぐに無駄な労力だったと知ることになる。
『アララギ博士からお話を聞いててえ……あっ、ごめんなさい、あたし
『ん? ……あぁ! 貴女が姉ちゃ…ごほん、アララギ博士の言ってた…!』
それはヒウンシティ、最初の日のこと。
図鑑の完成度報告のために義姉ことアララギ博士に連絡した時、オレは故郷カノコタウンからオレ以外にも3人のトレーナーが先に旅立ったと聞いた。そのうちの一人が目の前にいる少女、ベルというわけだ。なるほど、聞いていた通りだ。緑の帽子とゆったりした服装がよく似合っている、と思う。
『えへへ、博士から聞いてた通りの人だ。赤いスカーフと青い目だからもしかしてー…って思ったんだあ』
『そんな目立つのかこのスカーフ…付けるところ変えようかな……』
青い目はどうしようもないので置いておいて、赤いスカーフは身にはつけていたいが目立つのは避けたい。
「服の袖にでも巻いとけば目立たないかなー」と、考え話を目の前の少女に戻す。
『ショウ君もミュージカル見に来たの?』
『ショウでいいよ、同じくらいの人に「君」付けられるのなんかむず痒いし。……あぁ、ごめん。そうそう、ミュージカル見に来たんだ』
『いいよねぇミュージカル…あたしもう4回目なんだ、ここに来るの』
『へー…』
反応が薄そうに見えるが、内心では凄い感心している。
本当に好きでなければ旅の中でそこまで通いつめることは出来ないだろう。
と、話しているうちに「情熱のライモンまもなく開演」のアナウンスが流れた。
偶々取った席がベルの席と近かったこともあり、一緒に観賞することに。開演までの間、ミュージカル初心者のオレにこれでもかと、どこが魅力的でどのポケモンが可愛くてどのステージにはどんな特徴があるのかとハイテンションで語り、開演してからは一転、嘘のように静かになり終始ニコニコしながらミュージカルを楽しんでいた。
一方のオレは説明の段階で疲れたのか、ミュージカルの内容が全く頭に入ってこず途中から意識が飛びかけていたのだった。
☆
『そうだったんだ、父親に……』
『うん…でもみんなと旅を続けたかったし…お陰でやりたいことも少し分かってきた気がするんだあ…』
場所は変わってライモンシティのポケモンセンター、その休憩スペースにて。
ミュージカルを見終えて別れるかと思いきや、ベルの方からアララギ博士やオレのことを聞きたいと申し出があったので、こうやって話し込んでいる。オレも彼女や残りの2人について聞きたいことが幾つかあったので、願ったり叶ったりだ。
今の話題はベルがライモンシティに始めてきた時のこと。
曰く、遠路はるばるカノコから父親が来て、旅をやめて帰ってくるよう言われたそうだ。そこにライモンシティが誇るジムリーダー、"シャイニングビューティ"ことカミツレがやって来て、ベルに旅を続けるよう助言してくれたらしい。
正直ベルの父親の気持ちも分からないでもない。まだ会って数時間のオレですら、この子にはどこか危なっかしさを覚えているのだ。親ともなれば過保護気味になるのも頷ける。
それでも今のベルには旅が、出会いが────傷付くことが必要だと決断した父親の判断を、オレは尊敬する。
『ねえねえ! アララギ博士って普段どんな感じなの!? 怖い? 優しい? 』
『普段は優しいんじゃないかな…レポートとかで詰まるとちょっと機嫌悪くなるけど。でも良い義姉だよ、うん』
義姉の姿を見れば分かるが、基本的には明るく元気。博士を名乗るだけあって良識も知識も兼ね備えている。オレ自慢の義姉だ。
図鑑を託して送り出してくれたことにも感謝しているし、図鑑を埋めることでいつかその恩返しをしたいとオレは思っている。
『じゃあオレからも質問良い?』
『いいよぉ!』
何か昨日に引き続き質問してばかりだなと、心の片隅で思う。昨日と違って気楽に聞けるのは心臓に優しくて良い。
『君と一緒に旅に出たのって、えーと…』
『チェレンとトウコのこと?』
『あ、そうそう。その2人って今どこにいるの?』
『うーん…2人とも昨日カミツレさんに勝ったーって言ってたから……そんな遠くまで行ってないんじゃないかなぁ』
ズズーッと見るからに甘そうなココアを飲みながらベルは答える。
なるほど、ベルはともかくチェレンとトウコの方はオレと同じバトルが好きなタイプか。カミツレを倒せるのであれば相応の実力は持っているのだろう。バトルするのが楽しみになってきた。
と、そんな個人的欲求はここらで抑えておいて、
『……嫌な質問かもしれないけど』
『うん?』
『ヒウンシティでポケモンを奪われたのは……君だよね?』
ズッと空気が重くなる。思い出したくないことを掘り返してしまっているのは承知で、オレは話を続けた。
『こんなこと聞いてゴメン、でも確認しておきたかったんだ』
『うん…そうだよ、あたしのムンちゃん…プラズマ団に奪われちゃったんだ』
俯きながらベルは答える。
この質問もほとんど確信を持って聞いたのだが、オレも性格が悪いと我ながらに思う。
話を聞いた限りだとトウコ、チェレンの両名は実力的にポケモンを奪われるなんてことはそうそうないだろう。なので消去法でベルとなる。彼女もバトルはするのだろうが、どこか────
『でもでも! みんなが取り返してくれて! それで……!』
『お、おお…それはなにより……』
────めちゃくちゃ顔が近い。俯いていたかと思えば急にガバッと顔を上げて力説してくるのだから、たじろいでも仕方ないと思うのだ。
ちゃんと取り返して貰っているのは義姉から聞いているから良しとして、問題なのはそれを
『取り返してくれたのってアーティさんと…』
『アイリスちゃんとトウコだよ。3人がプラズマ団のアジトに乗り込んで、それで取り返してくれたんだよ』
アイリス。記憶によると、ソウリュウジムリーダーシャガの孫────ではなかったか。シャガとの血縁関係は無かったはずだが、一緒に暮らしていると義父から聞いたことがある。トレーナーとしての実力もシャガの下で特訓しているからか、そこらのトレーナーよりも遥かに上らしい。
そしてトウコと呼ばれる人物。名前からして女の子か。
多分シッポウの「ドラゴンのホネ」事件を解決したのも彼女なのだろう。確証は無いが、オレの推測はよく当たる。
ブツブツと呟きながら考えていると、ベルが会話を切り出した。
『あっそうだ! ライブキャスター! ねえねえ連絡先交換しておこうよお!』
『そうだね、その方が色々良いかも』
お互いの連絡先を交換し、名前がちゃんと入っていることを確認する。ライブキャスターも長いこと使ってなかったため、起動に少し時間がかかったのだった。
その後もたわいもない話を続け、2時間ほど話し込んだところでベルとは別れた。「またねえ!」とブンブン手を振っていたのは印象深い。
明日は待望のバトル関連の施設を攻めるか、と考えながらオレも今日の行動は終了することにした。────あと一つだけ、用件を残して。
☆
5番道路、中央。日中ならパン屋やストリートパフォーマー達がいるこの場所に、今いるのはオレとパートナー達。そして、今日ずっと
『気に入らないか? オレが遊び回るのが。遊んでいても君からの"光"に気付かないほど、オレの感覚は鈍くないよ』
挑発的なオレの言葉に、ウォーグルは怒りを露わにして唸る。
近くにベルがいる手前、ウォーグルに暴走されたら敵わないと細心の注意を払っていたが、結果としてこうやって夜中にフラストレーションを爆発させるだけならまあいいだろう。
『オレとしても、君のイライラを発散させるのは必要だと思うワケ。だからさ、相手になるよ。オレとオレのパートナーがさ』
ゆっくりと抜刀するフタチマル、オレンジのコアを光らせやる気を見せるガントル、毛を逆立て臨戦態勢に入るイーブイ、特に何もしないココドラ。今日はみんなイマイチ消化不良だ、誰が相手をするにせよ手加減は出来ない。
『さ、かかってきなよウォーグル。────
昨日の恐怖はどこへやら、今のオレはそんなもの一切感じていなかった。
ただ楽しみ、ただ興じ、ただ────
確固たる想いがある今、オレはもう迷わないし怯えない。眼前に在るモノだけを見据え、このバトルへと乗じるのだ。
こんにちは、読んで頂きありがとうございます
やっとメインキャラと絡めた……