イッシュ地方好きなんですよね、雰囲気とか
アララギ博士(娘)、オレの義姉であり尊敬するポケモン博士。基本的に明るく活発であり白衣を着ていなければとても博士には見えないのが特徴で、昔はバックパックを背に各地を巡っていたらしい。口癖は「ハーイ!」と「あらら?」。後者はギャグにしか聞こえないのはオレの気の所為だろうか。
念の為に言っておくと、この世界にオレが"転生者"であることを知っている人は誰もいない。少なくともこの14年間、オレを"転生者"だと疑う者も「貴方は"転生者"ですか?」とアホ丸出しで聞いてくる輩は、イッシュはもちろんカントーにもホウエンにもいなかった。いたらいたで身の危険を感じざるを得ないのだが。
『ハーイ!ショウ、今日もそのスカーフキマってるわね!』
赤いスカーフはオレの宝物だ。なんでもオレが転生して都合良く拾われた際、このスカーフに包まっていたと聞かされた。仮にその話を聞かされずとも、オレはこのスカーフを大切にしていたと思う。理由は分からないが、そんな気がするのだ。
いつもの世辞を適当に流して、早速オレは本題に入る。
『姉ちゃ……いや、アララギ博士。オレにポケモンくれるって聞いたんだけど、そのポケモンはどこにいるんだ?』
『ショウってば意外とせっかちよね。それじゃ…ほら!出ておいで!』
空に放たれた3つの球体、モンスターボールから現れたのは"くさ"、"ほのお"、"みず"タイプのポケモン達。初心者トレーナーにポケモン博士がプレゼントする最初のパートナー。
"くさ"タイプのポケモンはくさへびポケモンのツタージャ。特性は「しんりょく」。尻尾で光合成をし、ツルの扱いに長けるお高く纏まったポケモンだ。
"ほのお"タイプのポケモンはひぶたポケモンのポカブ。特性は「もうか」。鼻の穴から火を吹き、風邪を引くと火は真っ黒い煙になるが、たくましさなら負けないポケモン。
"みず"タイプのポケモンはラッコポケモンのミジュマル。特性は「げきりゅう」。お腹のホタチは木の実を砕くだけでなく強力な小刀となり、それを使いこなす器用なポケモンである。
どのポケモンも初々しく、可愛く、だから選び難い。それでも決めなければならないのが辛いところなのだが、オレはこの日を迎えるまでにどのポケモンを選ぶのか決めておいた。ブレることは無い。
目当てのポケモンの元に歩み寄ろうとした瞬間、ふと、
たまにあるのだ。特定のポケモンと接している時にこの胸がザワつくような、あるいは
思考がフリーズする。漂白された頭の中に浮かぶのは、今まさに選ぼうとしているポケモンの顔と覚えのないのどかな景色。一体─────
『ショウ、大丈夫?』
我に返る。止まった思考を再度回転させ、現実を見つめ直す。
ここにいるオレは"ショウ"なのだ。前世は関係ない。今オレが成すべき事を成すだけだ。そうすれば、おのずと──────
『…あ、うん。大丈夫。……っと、じゃ…よろしく、ミジュマル。』
3匹のポケモンの内、オレが選んだのはミジュマルだった。なぜミジュマルを選ぶのかというと、理由は大体3つある。
1つ目は"みず"タイプであるという点。旅をする中、必ず水上移動をする場面に出くわすのは明らかで、その際"みず"タイプを持つミジュマルなら移動に手間取らないと考えたからだ。
2つ目は進化を想定した時、最もバランスが取れていると判断したからである。1進化目のフタチマル、最終進化のダイケンキ、技のレパートリーも能力も、他2匹と比べて尖っている部分が少ない。なので、様々な状況に対応しやすいと思ったのだ。
3つ目は単純に見た目の話で、最初にパートナー候補を見せてもらった時、「あ、この子にしよう」と心の中で即決したのがミジュマルだったからである。
『"みず"タイプのポケモン、ミジュマルにするのね?』
『うん、決めてたからね。』
ニッコリと笑う義姉。その笑顔がオレはとても好きだった。なんとなくだが明るい気持ちになれるのだ。
『次に……はい、ポケモン図鑑!』
これだ。オレはこの長方形の機械を貰うことをどれだけ楽しみにしていたか。義父と義姉の研究者気質が移った感は否めないが、ポケモンの情報を即座に確認出来るこのハイテク図鑑を手に入れて喜ばない人がいるだろうか。
受け取ったオレンジと黒の機械が、目の前にいる3匹のポケモンの情報を淡々と喋っていく。当然知っている事なのだが、今起こっている状況に謎の感動を覚えた。
『ありがとう姉…アララギ博士、大事にするよ。……それじゃあ、行ってきます。』
『頑張ってね!偶には捕まえたポケモン見せに帰ってらっしゃい!』
ミジュマルをボールに入れ、研究所の扉を開ける。
冬の空気は冷たいが、これから体験するであろう出来事に期待しているのか体は熱かった。
後ろで見送ってくれる我が義姉のエールを受けながら、オレは故郷カノコタウンを旅立ったのだった。
☆
1番道路のど真ん中、川を見つめながらオレはこれからの道筋を考えていた。
ポケモンリーグに挑戦するためには8つのジムバッジが必要になるが、ここから最も近いジムはカラクサタウンを越えた先にあるサンヨウシティのジム。3つ子のジムリーダーが最初に選んだポケモンに対応して相手をするのが特徴の変わったジムだ。オレの場合だと、"くさ"タイプ使いの「デント」が立ち塞がるのだろう。
道筋とは関係ないが、1つ気になる事がある。
オレが旅立つより先に、カノコタウンでも有名(?)な3人組が旅立ったらしい。オレはその時丁度フィールドワークに出ていたから3人がどうやって旅に出たのか知らないが、日にち的にも、もうヒウンシティ辺りには到着しててもおかしくはない。
なぜ気になるのか、それはオレにも分からない。ただ、何か
ベルトに付けたボールを外し、ミジュマルを外に出す。この子は"がんばりや"な性格の様で、常に気負っている風に見える。
『ミジュマル、頑張ろうな。オレも精一杯努力するからさ。』
義姉の様に眩しい笑顔ではないが、それでもオレのパートナーはホタチを掲げる事で応えてくれた。なるほど、トレーナーの喜びとはこういうものかと心に刻む。
そういえば、とベルトに付いたもう2つのモンスターボール────ではなく、ゴージャスボールとクイックボールに手を掛ける。
オレにはミジュマルだけじゃなく、留学中に捕まえたポケモンが2体いるのだ。1匹はカントーで、もう1匹はホウエンで捕まえたポケモンだ。
カチッと開閉スイッチを押し、2匹のパートナーを外に出す。
『悪かったな、すっかり忘れてた……って痛い痛い!』
ゴージャスボールから出てきた茶色のモフモフしたポケモンは、しんかポケモンのイーブイ。現在進行形でオレの腕に噛み付いている。
イーブイはヤマブキに留学してる最中に、隣のタマムシシティの大学を見学に行く機会があり、そこで仲良くなったとある人から譲り受けたポケモンだ。「譲り受けた」というよりも「押し付けられた」と言った方が正確か。
彼曰く、「ワイの家イーブイぎょーさんおるんやけどな、このコだけホンッッットに言う事聞かへんのよ!頼む!連れてってくれへんか!?な!な!」とグイグイくる圧に負け、押し付けられてやったのだ。
片やクイックボールから出てきた白い鉄塊とも見える、てつヨロイポケモンのココドラ。イーブイと違って噛み付いてはこないがそこはかとなく視線が痛い。
ココドラもホウエン留学の時、世話になったような気がするおぼっちゃまと一緒に捕まえたポケモンである。そのおぼっちゃまの事はよく知らないけれど、身なりと彼が放つ存在感からしてかなりの大物なのだろう。
で、どうして2匹がオレに怒りを向けているのかというと、義姉に挨拶出来なかったからである。2匹とも義姉が大好きなので怒りを向けられるのは致し方ないのだが、にしてもここまで怒るかと困惑したのもまた事実。
『分かった、分かったから。今度図鑑見せる時に一緒に報告しよう。な?それでいいだろ?』
「しょうがないな」と言いたげな表情を向けられつつも、オレは2匹をなだめる事に成功した。
この2匹だけがオレの「ポケモンと仲良くなりやすい」という能力(?)が
☆
ミジュマルにイーブイとココドラの紹介を済ませ、オレは歩みを進める。
道中でミネズミとヨーテリーを捕まえ、図鑑に記録した。一応図鑑を埋めることも旅の目標であるので、ポケモンの捕獲には貪欲に取り組む予定だ。
30分もかからない内にカラクサタウンへは到着した。ここには何があるかと聞かれたら、オレは段差としか言えないほどに何も無い町だ。
ボックスにミネズミとヨーテリーを預け、3匹をポケモンセンターで休ませているうちに散策でもしておくかとフラフラしていると、
『この前の……そう……プラズマ団……
とても信じ難い単語が、オレの耳に入った。
イーブイ Lv13
性格:やんちゃ
性別:♂
特性:てきおうりょく
技:たいあたり・すなかけ・でんこうせっか・おんがえし
やんちゃ通り越して破天荒なイーブイ。ただショウには懐いている。
ココドラ Lv15
性格:のんき
性別:♂
特性:がんじょう
技:メタルクロー・がんせきふうじ・かたくなる・おんがえし
こちらもショウにはちゃんと懐いている。ただショウにも何考えているかよく分からない。