転生者は創造神の光を見るか?   作:おんのじ

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誤字脱字あったらご指摘ください。
日常回(?)その2です、バトルは次回書きます多分。よろしくお願いします。



7話 都会より田舎の方がオレは好きである

 雨降る森中で、車輪の回る音が鳴る。

 白と黒のクールな自転車に跨り舗装された道をオレは駆けていた。

 日が昇ればたとえ迷路でも脱出は容易だ。むしろ雨の中テントを片付けたり濡れた草木を掻き分ける方が困難だった。

 

 ヤグルマの森を抜けてそこに見えるのは、イッシュ地方の観光雑誌で必ずと言っていい程取り上げられる絶景スポット、「スカイアローブリッジ」だ。

 イッシュ地方に架かる5本の大橋で最長の長さを誇り、歩道の下には車道も通っている。人の往来が特に激しいヒウンシティからの人や車は絶えることは無く、その逆も然りだ。眼下には大海原が広がり、船が走る姿も見て取れ、その中でも目を引くイッシュ地方の豪華客船、「ロイヤルイッシュ号」もこの先のヒウンシティ発となっている。

 

 オレはこの橋を何度か渡ったことがあるが、その度にワクワクしてしまう。

 景色が良いのは勿論のこと、掻き立てられる「冒険のはじまり」感につい胸が高鳴ってしまうのだ。

 今回は生憎の雨で景色も胸の高鳴りもへったくれも無いが。

 

 少しガッカリしながらヤグルマの森・ゲートを抜け「スカイアローブリッジ」を渡り始める。約270°グルっと回ってから、後はひたすらに真っ直ぐ自転車を走らせるのみ。

 目の前にはヒウンシティの高層ビル群が聳え立つ。威圧感すらオレに与えてくる眼前のビル群は、旅のチュートリアル終了を示唆しているようにも思えてしまう。

 慣れているとはいえイッシュ最大の都市に足を踏み入れるのだ。少しばかり緊張が走り生唾を飲み込む。

 

 名残惜しく「スカイアローブリッジ」を渡りきり、ヒウンシティ側のゲートに入る。

 そこを抜ければ、

 

『久しぶり……でもないか。何も変わらないなぁこの街は。』

 

 オレがイッシュ地方で1番苦手(・・)な街、ヒウンシティの入り口だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 いきなりジムに挑んでも良いのだが、まずは宿の確保と観光の予定を立てようとポケモンセンターに訪れた。

 部屋は問題無く取れ、設備もサンヨウやシッポウよりも充実している。どういう訳かポケモンセンターなのにレストランや温泉、果てはエステまである。人間用のみならずポケモンにもだ。

 ポケモンセンター一つ取ってもこの変わりよう、トレーナーへのサポートが色んな方面で手厚い。レストランとエステは流石に有料だったが。

 ここまで設備が整っていて、尚且つ大都会となると、

 

『めちゃくちゃ人が多い……』

 

 田舎────例えばカラクサタウン────なら多くて常時10人以下なのに対し、ヒウンシティは常にその3倍の人で溢れかえっている。

 オレがこの街を苦手と感じる理由の一つがこれだ。どこに行っても人混みと喧騒で満ちている。例外として"スリムストリート"という裏通りがあるが、あそこは初めてこの街に来た者か好き者しか通らず、ヒウンシティの陰の部分となっている。通るとすれば、好き者がカフェ"憩いの調べ"に行く時くらいなのだ。オレ自身は行ったことが無いのだが。

 

 やはり広かった部屋に入り、荷物を整理してからフレンドリィショップで買った観光雑誌を広げヒウン滞在中の予定を練り始めた。

 イチオシと書かれていた"ヒウンアイス"は現在冬のため買えず、「ゲームフリーク」や「アトリエヒウン」には興味を惹かれず。芸術や流行に疎いオレが、唯一気になったのは「バトルカンパニー」と呼ばれる会社だった。結局バトル関連に行き着くオレのハマりように微笑が浮かぶ。

 件の「バトルカンパニー」についてだが、簡単に言えば社内でバトルが盛んな会社だ。仕組みとして面白いのは、見学に来たトレーナーを歓迎するようにバトルを仕掛け、会長職の人物に勝てば貴重な道具を進呈するというところ。

 貴重な道具の部分も気にはなるが、それよりもジム戦前に腕試しがてらポケモンの調整が出来る喜びが大きかった。

 

『(……アーティさんは強い、掴みどころが無さそうに見えて良く頭が回る人だ。準備は怠らずに、対策は万全に行こう。)』

 

 明日は「バトルカンパニー」に行くと決め、ベッドに横たわる。

 シミひとつ無い天井を眺めながら考えていたのは、シッポウで見た夢の事だった。

 あの日見た夢は、夢を見ている―――というよりも誰かの独白(・・・・・)を聞いているような感覚で、その声にはどこか懐かしさを憶えた。引っかかるのは、声の主をオレは知っている(・・・・・)と感じたのに、具体的に"誰"なのかは分からないのだ。記憶力の良さが"天才"と呼ばれる一因にもなったオレが、知っているのに分からないと言うのは我ながら珍しいことであった。

 

 

 黙りこくって真剣な顔付きをしていたからか、イーブイに思いっきり顔を踏まれた。目を開けて寝ていたとでも思ったのだろうか、「イテッ」とリアクションしたオレにビクッとしている。

 事実、考えたら答えが出るでもないし、今はジムを見据え図鑑を出してポケモン達のステータスでも測っていた方が幾らか有意義だ。

 

 早速カバンから黒とオレンジのハイテク機器を取り出し、情報を調べ上げる。

 最高レベルはココドラで26、最低はダンゴロの24と、3つ目のバッジを獲りに行く段階にしては高水準だ。技も極力"変化技"を一つ覚えさせ、柔軟にバトルを進められるようにしている。残る要素は持ち物なのだが、オレは何も持たせていない。もとい、持たせられるモノを持っていない。カノコの家に戻れば「きのみ」や「ジュエル」等がないでも無いが、今のオレは残念ながら手持ち無沙汰だ。

 

 そして対するアーティの情報は既に頭に叩き込んである。

 "むし"タイプの使い手で、とてもトリッキーな戦い方をするらしい。当の本人が変人(アーティスト)だから戦法もそれに準じるのだろうか。

 使用ポケモンはホイーガ、イシズマイ、そしてエースのハハコモリを含む3匹。ハハコモリに要注意なのは当たり前として、ホイーガの"どく"にも留意しておきたい。

 コチラで有利を取れるのは、もはやジム攻略に欠かせない存在となってきたココドラと、最近あの(・・)兆候を見せているダンゴロの2匹。

 懸念点があるとすれば、両者ともハハコモリにはそこまで強く出れない(・・・・・・・・・・)ことだ。

 ココドラはタイプ相性が一見良さそうに見えて"くさ"技は等倍、得意技の"てっぺき"も撃ってくるであろう"はっぱカッター"の急所率の高さを考えると善策とは言い難い。

 ダンゴロも弱点を突き突かれつなので五分─────いや、基礎能力で劣っている。

 

『(ダンゴロは………まあ良いとして、ココドラを出しにくいのはキツイな……)』

 

 これまでのジム戦、常にココドラに頼ってきたオレ達に訪れた試練。強引なタイプ有利と能力値のゴリ押しが効かない初めてのジム戦だ。

 そうなると頑張ってもらうのは、

 

『(イーブイとフタチマルになる……だけど。)』

 

 フタチマルはココドラとダンゴロよりも相性が悪く、イーブイは素の火力不足が露呈してきた。正面からぶつかっても────言いたくないが、勝てる見込みは無い(・・・・・・・・・)。何か一手、変化球を織り交ぜなければ。

 

『(どうする……?奇策で裏を付けるほどアーティさんは甘くないぞ……) 』

 

 世間的には"天才"と呼称されるとはいえ、オレはまだトレーナーに成りたての駆け出しだ。ポケモンの知識は豊富でも、トレーナーとしての知識は習熟の余地がある。

 

『なら……ポケモンの知識を満遍なく使って勝負するのが良いよな…!』

 

 そこからオレの閃きは早かった。

 閃いた案がジム戦までに間に合うかどうかは正直賭けだ。ただ、やらなければ負ける。元より選択肢は一つだけなのだ。

 

『イーブイ、フタチマル、ちょっと来てくれる?』

 

 個々で部屋を満喫していた2匹を呼び寄せ、オレは思い付いた対策を伝える。

 数秒呆気に取られた2匹だが、すぐに「やってみせる」と凛々しい笑顔で返してきた。

 

『─────じゃ、やりますか!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ヒウンシティ、ジムストリートにある建物の一部屋にて。

 

『彼は今、この街にいるのですね?』

 

『はっ!』

 

 灰衣の女性に大柄な男が確認する。

 そうですか、と後に続け男は冷たく笑う。

 男の目的はイッシュ地方で最も有名なポケモン博士アララギ、その息子と接触すること。そして、アララギの息子をコチラ側(・・・・)に引き込むこと。

 "王"は言った、「彼には()が見えている」と。

 元々は計画の障害となるアララギを排除する為の存在としか認識していなかったが、王の言葉により考えは改められた。

 男は直感で分かったのだ。アララギの息子にはプラズマ団の王、Nと同等の力(・・・・)があると。

 その瞬間"犠牲"から"傀儡"へと、男の中でアララギの息子は変わったのだ。そんな男の胸の内を周りのプラズマ団員(愚か者共)は知る由もない。

 

『しかし…ふむ、時期尚早……ですかね。』

 

『と、言われますと……?』

 

『今の彼に会っても、我々は拒絶されるだけです。彼にはもう少し理想でも見ててもらいましょう、真実を叩きつけるのはその後で構いません。』

 

『かしこまりました、七賢人様。……総員、引き上げの準備を!』

 

 イッシュの裏側、闇の中でプラズマ団は暗躍する。アララギの息子()への毒牙は、着実に研ぎ澄まされているのだ─────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……あー、あー……おーい、聞こえてるー?』

 

 部屋に備え付けてあったパソコンの画面に向かってオレは呼びかける。

 イッシュの中心地ヒウンシティに着いたので、そろそろアララギ博士(義姉)に図鑑をチェックしてもらおうかとカノコタウンの研究所兼自宅へと連絡していたのだ。

 ブツッと音が鳴り、画面いっぱいにオレの義姉の顔が映る。まだ旅に出て1週間程度しか経ってないが、顔を見ただけでえも言われぬ嬉しさが込み上げてきた。

 

『ハーイ!元気にしてるショウ?』

 

『まぁね、ご覧の通り元気…グホァッ!?』

 

 全力の"とっしん"をかましてきたイーブイに吹っ飛ばされ、オレの顔が画面からフェードアウトする。

 と思ったら次は体重「60kg」のココドラがうつ伏せ状態のオレの背中を踏み越え、パソコンの画面にイーブイと割り込んでいった。

 発した呻き声があまりにも痛々しく聞こえたのか、本気で心配したフタチマルがオレの体を揺らして呼びかけてくる。

 

『大丈夫、大丈夫だよフタチマル………ココドラさん60kgは…60kgはヤバいよ……背骨イったかと思った……まったく…』

 

 カノコタウンを出た時、イーブイとココドラの機嫌が悪かった理由を思い出したオレは痛みに震えながら席に戻る。

 画面にへばり付いたイーブイを引き剥がし、さらにその画面の奥で爆笑している義姉に無言の圧力を送る。

 

『フフフ、変わらないわねイーブイもココドラも。』

 

『変わってくれてもいいんだけどなぁ……』

 

 ボソリとイーブイとココドラには聞こえないように呟き、

 

『で、図鑑の定期報告したいんだけど姉ちゃん。』

 

『オッケー、じゃあ図鑑とパソコン繋いでデータ送ってくれる?』

 

 本題に筋を戻す。

 図鑑とパソコンをコードで繋ぎ、簡単な操作をして遠く離れたカノコに旅の成果を送信する。化学の力はすごい。

 データの送信が終わり、記録を見ていた義姉が驚いていたのは「ゆめのあとち」で見掛けたムシャーナの情報を見ていた時のことだった。

 オレが出会ったムシャーナはどうも特殊な個体だったらしく、近年正式に発表された"隠れ特性"という希少な特性を宿した個体だと聞かされた。補足しておくとムシャーナの"隠れ特性"はテレパシーである。

 他にはエルフーンとドレディアに「へー」と関心を見せたり、思いの外図鑑埋めに意欲的だったオレ自身に驚いていた。他に図鑑を託した子はそうでもないのだろうか。

 

 その後は博士とトレーナーではなく、義姉と義弟としての会話が続いた。

 義姉の近況、変わらないカノコの話、オレより前に旅立った3人のトレーナーの話。最近良く話に出てくる4番道路でその内の2人と、もう1人はヒウンシティで会ったらしい。カノコからヒウンの移動でオレが義姉に会えなかった理由は"そらをとぶ"を使ったのだと思われる。

 変わってオレの旅の出来事を聞かれ、サンヨウ・シッポウジムの話、ミジュマルがフタチマルに進化した話、博物館でぶっ倒れた話をペラペラと楽しげに話した。最後の話は本気で心配されたが、心配をよそに愛されているなとガラにもなく泣きそうになってしまった。

 

『ところでショウ、プラズマ団って知ってる?』

 

『え? あー…知ってるよ。オレのダンゴロの住処で騒いでくれたからね。』

 

 話の色が暗くなる。

 手招きでダンゴロを呼び、紹介ついでにパソコンの前に座ってもらいオレは「ちかすいみゃくのあな」の事を話し始めた。

 ダンゴロが旅に加わったのは自分の住処とポケモン達の安寧を荒らしてくれたから。その恨みを晴らすためにオレ達と一緒に来てくれたのだ。

 オレ自身もシッポウでの事件もありプラズマ団に良い印象は持っていない。むしろ最悪と言っていい。

 

『ん…?そういやなんで姉ちゃんがプラズマ団のこと知ってるの?』

 

『つい先日、ショウより前に旅立った子がポケモンを奪われちゃってね……まあ一緒にいた子達が取り返してくれたんだけど。』

 

『え…奪…!? 』

 

 もはやそれは犯罪なのでは無いだろうか、と驚きが顔に出てきた。

 プラズマ団の大義がどうあれ、無理矢理トレーナーとポケモンを引き離すのはやってはならないことだ。それを分かっていて行為に及んでいるのなら、いよいよタダでは済まなくなってくる。

 

『だからショウも気を付けてね。ショウはしっかりしてるから大丈夫だとは思うけど、万が一の事があったら……』

 

『うん、気を付けるよ。…ありがとう姉ちゃん、心配してくれて。』

 

 旅に出る前よりも柔らかくなった笑顔で感謝を述べる。

 また連絡するよ、と締めくくりオレは通話を切った。

 

『気を付けるよ、気を付けるけど……さ。』

 

 義姉の心配の裏には多分「自分から関わりに行くな」というメッセージが込められているのだと思う。オレが同世代よりもしっかりしているのを理解して、その上で注意をしてくるのはそういう事なのだろう。

 だがオレは、この義姉の心配を受け取ることは出来なかった(・・・・・・)

 

 仮に"オレ"がプラズマ団に何かされたなら、警察なりなんなりに行けばいい。

 しかし、被害の対象がポケモンだったなら。オレは本能のままプラズマ団を"敵"と看做し、制裁を下すだろう。そして、()がその時だ。

 これは幼い正義感かもしれない、自己満足かもしれない。それでも、何も知らない"転生者(オレ)"が唯一覚えていた存在、「ポケットモンスター」に危害を加えられるのは黙って見過ごすわけにいかないのだ。

 

『って言ってもオレ、プラズマ団見たことないんだよね。うーん……姉ちゃんの言ってたポケモンを奪われたトレーナーと会えたら良いんだけどな。』

 

 義姉との会話からヒウンシティで最近会ったらしいので、まだ距離は離れていないはずだ。

 単純に"オレがその3人に多少の興味がある"という理由もプラスして、会うのが楽しみになってきた。

 名前と念の為容姿や特徴も聞いており、会った時に判断できるようにおさらいする。

 

『大きい緑の帽子を被ったのがベル、メガネを掛けていて気難しそうに見えるのがチェレン、キャップとポニーテールが似合うのがトウコ……ね。って最後の人は姉ちゃんの感想じゃん…こういうとこがホント……』

 

 果たして本当に巡り会えるのだろうかと不安を抱えながら部屋を出る。

 やることも無くなり、就寝までの時間つぶしにアテのないヒウン観光へと繰り出していったのだった。

 

 

 

 





スカイアローブリッジのBGM良いですよね、BWのBGM中でも結構好きな方です。


※UA2000件とお気に入り30件ありがとうございます。引き続き頑張りますので、読んで頂けたら幸いです。
それでは。
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