インキャソロハンター   作:カルガモ大将

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モチベが死んだので、オチだけつけておく。



6 未だ道中

6

 

 

 

モガの森って知ってる?

アレだよアレ。導きの大地の事だよ。ビチビチのうん地とは別物だよ。生態系は狂ってるし、なんか地下にはナバルデウスが居たり、ラギアクルス希少種が居たりするやべーところだよ。オストガロアが来てる可能性も微レ存。

これが今回のメインだね。

 

取り敢えず初心者に色々教えるなら、ドス系列で『ドスジャギィ』を最初に、飛竜の基礎たる『イャンクック先生』を2番目、慢心を捨てさせ、毒や閃光といった状態異常に慣れる為に『ゲリョス』を、硬い奴の定番である『バサルモス』を、そして『リオレイア』と『リオレウス』の天地を制し、『モノブロス』を狩る事で無事卒業、という計画でいこう。そういう計画だったんだよ。

 

でもな……これ、3ヶ月から半年ぐらいかかったりしそうなんだよ。

こんなんやってらんねえよ。予定はキャンセルだ。もっとハイペースでやるぞ。

 

と、いう訳で、モガの森に行って『ドスジャギィ』を、クックとゲリョスを兼ねて『クルペッコ』を、バサルよりもめんどくさい『ボルボロス』、天地を制して一人前の登竜門を越えて終わり! これがベスト!

 

いや、待て。仮免をまずは本免にしねえとな。

 

仮免を本免にする方法は2種類。

実力でのし上がるか、訓練所の試験に合格するか。

実力を見せつけたかったら、ドスジャギィだとか、ドスファンゴだとか、アルセルタスだとか、そう言った弱い中型モンスターを倒すか、ジャギィの群を倒すだとか、そう言った方向が主だ。

 

ちなみにゲームでは採取ツアーに大型は出ないが、こっちでは出たり出なかったりする。ここからこの範囲は安全地帯だけど、ここでは大型モンスターが確認されてるから気をつけてね、だとか、神出鬼没のイビルジョーに下位ハンターが食われたりとか、古龍が居なくなったばかりだから暫くはモンスター寄り付かないから安全だよ、みたいな感じだ。

 

そのため、採取ツアーで小型モンスターの群れに喧嘩を売って勝利して本免を取る奴もいる。たまーにそんな話を聞く。

 

で、一人でのし上がらないといけない訳なので、俺はついて行ってはいけない。あとはよろしく。

 

今日も今日とてガヤガヤジャラジャラゴクゴクガツガツ騒々しい集会所の隅っこの席で、向かい合って座っている仮免ハンター(笑)にソロで頑張れと伝えると、「……そうか」とだけ言って、サッサと受付嬢の元へと行ってしまった。

 

……なんか君ィ、テンション低くない? 前まではもうちょっとこう、なんというか、そう、メスガキ濃度が高くなかったかい? なんか最近ぐんなりしてない? 

 

まあいいか。いやよくないかもしれんな。バサルモスの一件を引きずってるのかもしれん。トラウマが悪化していたらアイツ、死ぬかもしれんな。いやでもなあ、そこまで介護するのもアレだし、したところでっていうのもあるし、でも死なれるのは困るし、ぐぬぬ。

 

結局、越えるかどうか、越えようとするかは自分次第、だからなあ。

 

 

 

 

 

 

──────────

狗竜の群れを狩猟せよ!

 

場所:孤島

 

メインターゲット

ジャギィ・ジャギノス、合わせて20頭の狩猟

500z

 

サブターゲットA

ドスジャギィの狩猟

1400z

 

サブターゲットB

竜骨小 10個の納品

300z

 

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肉屋を営む中年男性

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ドスジャギィが長いこと居座ってるせいで群れが大きくなって、周りへの影響が出ちまってる!

群れを減らしてくれないか? 頼む!

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──────────

 

 

 

 

 

 

『ギョァッ!?』

 

──重い

 

「オァッ!」

 

『ギェァッ!?』

 

──重い

 

鉄の塊を振り回すのには慣れていた筈だ。だが、重い。腕に伝う衝撃。足まで駆けていく痺れ。

 

「ハァッ、ハァッ、オ、アアァッ!」

 

鉄の塊を跳ね起こす事すら辛い。それを振り回すとなると、尚更だ。

 

『ギャォッ!?』

 

また一匹、飛びかかってきたジャギィを足元に転がる骨諸共叩き潰した。

 

「ハァ、ハァ、ああ、もうっ!」

 

大地に転がる大小様々な、それなりの耐久性を持つ骨が足の踏み場を奪い、しっかりと踏み締める事を阻害する。それが腹立たしい。踏ん張れないせいで、うまく大剣を振り回せない。かと言って、積み重なった骨を踏み砕いて足場にするだけの気力も体力も、もったいない。

 

「うああああああああ!!!」

 

壁を背に、兎に角大剣を振り回す。教えられたのは二つ。『一対一を意識して、周りを囲まれないようにする事』と、『具体的には、細道に誘い込むか、壁を背にするか』だ。

 

「ハァ、ハァ、終わ、り?」

 

途中で数えるのを忘れたが、大体20ぐらいのはず。これだけ殺した。殺せた。この手で、殺したんだ。

 

「ハァ、ハァ、う、お」

 

ああ、ダメだ。

 

「お、おえええ、おっ、おえっ、おおえええ……」

 

腹の中でぐちゃぐちゃにかき混ぜられたソレを、恥じらいもなく兎に角吐き出す。気持ちが悪い。気分が悪い。

 

「おえっ……」

 

口が酸っぱくて、ぐちゃぐちゃで、本当に気分がサイアク。

 

「うぅ……おとうさん……」

 

なんでなのよ。なんで、みんな。

 

「お、おえええええええ……」

 

落ち着いたはずなのに、まだ出てくる。ビチャビチャという音を立て、頭が潰れたソイツが朝ごはんと昼ごはんを混ぜたソレに塗れていく。

 

「ハァ、ハァ……」

 

臭い。

死体がクサイ。

この場所がクサイ。

ジャギィの巣がクサイ。

糞と尿が混ざった匂いでクサイ。

自分が吐き出したものがクサイ。

口の中が気持ち悪い。

死体が気持ち悪い。

首から先が消えて中身が見えてるソレが気持ち悪い。

ソレに腹の中の物が注がれて気持ち悪い。

目に映る物全部気持ち悪い。

 

「おええええっ」

 

もう何も出ない。込み上げてきても、吐き出せるほどの量がない。喉が辛い。痛い。

 

「おええええええっ!」

 

途中まで登ってきたソレを無理に吐こうとして、声を上げて、喉を動かして、口の中まで移して、舌に乗せ、移ってきた物全てを舌で集め、思い切り吐き出す。

 

「うう、うううああああああああ!!!」

 

自分は何をしているんだ。

 

視界が霞む。

 

声を張り上げる事を我慢できない。

頬を水滴が流れ落ちる。

 

吐き気がする程クサイ空気を胸一杯に吸い込んで、思い切り叫ぶ。

 

「うわああああああん! うわああああああああああ!」

 

なんでなんだ。

もう何もわからない。

 

悲しい。

辛い。

苦しい。

イライラする。

頭の中がぐちゃぐちゃで、なんで泣いてるのかも、叫んでるのかもわからない。

 

でも、叫ぶのを抑えることができない。

叫びたくて仕方ない。

 

『ヘェーイ!』

 

「……あ゛?」

 

音の鳴る方へ首を傾け、視線を移す。

 

『アッアッオーーウ!』

 

無駄にデカい襟巻き。

なんか腹が立つ鳴き声。

 

「……ぶち殺す」

 

元気ドリンコを口に含み、気持ち悪いものを纏めて飲み込む。

 

「オアァッ!」

 

空瓶を投げつける。が、当然横への軽いステップ移動で回避される。

 

「シィッ!」

 

だが、私を視界から外したな?

 

脅威ではないと、そう判断したな?

 

後悔させてやる。

 

──バギャッ

 

大剣を跳ね起こしながら、群のヌシ目掛け大きく踏み出す。足元の骨を踏み砕き、更に一歩。

 

──バギャッ

 

顔がこちらを向いた。視線と視線が噛み合う。

 

私は夢でも見ているのか。急に動きが、そう、私と、私以外の動きが遅く見える。いや、動いていない。動きが止まっている。前には進めないし、大剣は振り下ろせない。

 

不思議な感覚の中、鼻と鼻がくっつく程に近づいているわけでもないのに、瞳に映る、大剣を振り下ろしながら迫る人の姿が、ハッキリと見えた。

 

火山で行っていた動きと、きっと、まったく同じ構えが、私の顔よりも上にあるソレに映っていた。

 

なんでそんな物を見たのか。ただの思い込みなのか。そもそもこれは夢なのか。何もわからないし、考えたってどうせ分からない。

 

深呼吸が出来るわけではないが、たしかに私は深呼吸をしてから、動き始めた。

 

大地を今までで一番の力で踏み抜き、思い切り大剣を振り下ろす。

 

「死ねやあああああああ!!!」

 

──バギャッ

 

こうして私は、瞳に映るモノを砕いた。

 

 

 

 

 

 

うわコイツこわい。

 

ジャギィの群の討伐でドスジャギィも倒して帰って来た件。お前もアチラ側の住人に足突っ込んでる存在だったのか。

 

もしやこれは、任せてもいいのでは?

いや待て。クルペッコはヤバいぞ。イビルジョーが来る未来が見える見える。

俺には分かるぞ。なんらかのイレギュラーが発生してイビルジョーが乱入する未来が。

 

俺もお前も、運がない。運が悪い。

 

アドバイスは勿論する。

音爆弾によるギミックは絶対に必要だ。閃光玉と音爆弾はたっぷり渡す。あとうんち。それと素材玉。あとはなんだ。

 

……そんなもんか。

 

うっし。

 

準備するか。

 

……いや、でもなあ。あんまり助けてもなあ。ドスジャギィを倒せたんだからなんとかなるとは思うんだが。流石に早いか? ドスジャギィで慣らすべきか。慣らすべきだな。ドスジャギィ武器と防具を作るべきだな。いや待て火耐性。ボルボロスを先にするか? ダメだボルボロスはなんだかんだで強い。ドスジャギィでしっかりと経験を積ませるべきだ。あとはピッケル持たせて鉱石装備を作らせれば火耐性は確保できるか。

 

……ラギア希少種とか、ナバルとか、呼ばないよね?

いやそもそも呼べないけど、呼ぶことは無いよね?

陸まで上がってくることはないし、仮に呼んだとしても、戦うことにはならないよね?

 

ま、まあ、ここは見守ってやるとしよう。

 

 

 

 

 

 

クルペッコを殺した。モンスターを呼び寄せるのは厄介だったが、対処法は幾らでもあった。

ボルボロスを殺した。泥よりもその打たれ強さと力強さの方が厄介だったが、頭を壊せばかなり弱くなった。

ロアルドロスを殺した。トサカを壊して誘き出し、たてがみを壊せば弱かった。

リオレイアを殺した。そもそも、見え見えの火球に当たるわけがなかった。

リオレウスを殺した。閃光玉で地に堕とし、翼膜を裂いてしまえばただの火を吹く鷄だ。

偶々陵に上がって来ていたラギアクルスを殺した。水中ならともかく、陸上で不利になる要素はなかった。

砂漠でモノブロスを殺した。狩りにも慣れ、特異な能力を持たない飛竜を恐れる理由が無かった。

とにかく、目についたモンスターについて調べ上げてから喧嘩を売った。そして殺した。

殺して、殺して、鏖し続けて、気づけば私は、上位ハンターになっていた。

なにも見えぬまま、為し得ぬままに。

 

そもそも私は、何の為にハンターになったんだっけ。

 

 

 

 

 

 

「……はあ。パーティーを組みたい。楽をしたい。報酬が減ってもいいから、楽をしたい」

 

こんな弱音を吐き出してしまうのは、砂漠という地の暑さが原因なのか。はたまた、ただ一人でその地の生態系のトップ争いをするようなモンスターであるティガレックスを倒した疲れからなのか。のそのそと、足を引き摺り込もうとする砂達を踏み締めながら、キャンプ目指して進む。

ナルガクルガを象徴する真っ黒な防具を身に纏い、ラージャンの腕かと見間違えてしまいそうな太く大きく長いモノを背負った女は、話す相手もいないのに言葉を発し続けた。

 

「やっぱり、ナルガクルガの防具はやめた方が良かったか。黒いし、熱いし、陽射しが肌を刺すみたいで痛いし。でも鎧だと砂が入ってきたら気持ち悪くて集中できないし」

 

側を回遊するガレオスに目もくれず、ただただ愚痴のような何かが口から出てくる。

 

「暑さ対策ができて、重くない装備ってなによ。ティガレックスとか?でも砂漠に行く事なんて殆どないし、倉庫に眠らせそうなのがちょっと困るし、うーん」

 

昼の砂漠はとにかく熱いし暑い。

ナルガクルガ装備とは相性が悪い。

バックパックからゲリョスの素材で作られた水筒を取り出し、ゴクゴクと音を立てながらゆっくりと飲む。

 

「あぁぁぁぁぁぁ。生き返る」

 

ゲリョスの素材で作られた水筒は、適当に扱っても簡単には壊れない。だから、ポーチではなくバックパックの中には再利用前提の物が多く入れてある。戦闘が始まる際、遠くに放り投げても中の物が壊れたりしない事を、たいそう気に入っていた。

 

水筒の口を閉じ、バックパックへしまう。

バックパック中には他にも、何種類かの水筒が詰め込まれており、どれも蓋の色が違っていた。

 

今しまった水筒の蓋は黄色と青色で着色されており、中身は氷結晶で冷やされた元気ドリンコであった。身体を冷やす効果と、栄養補給、この2つの要素のお陰で、手間を省く事が可能となっていた。しかし飲みすぎると腹に溜まるし、腹を壊すこともある。

 

「あっつ」

 

一人というのは孤独なようで気楽で、しかし話し相手がいないというのは、やはりそれなりに寂しいものである。

 

「いいよな。仲間がいて」

 

回遊するガレオス達に声を掛ける。ガレオス達は無情にも行先を変え、女から離れて行った。

 

「モンスターにすら引かれるって」

 

これには流石に精神的なダメージが大きく、歩みがまた遅くなった。

 

「はあ……」

 

一息ついて、気持ちを入れ替える。早くキャンプにつけば、それだけ早く帰れる。休める。なら、歩みを止めるわけにはいかない。

 

「ん?」

 

足が微弱な揺れを感知した。

何か巨大なモンスターが地下を移動しているのか?

はたまた、ジェンモーラン、或いはダレンモーランの影響か? 

今は回遊の時期だったか?

この辺りにディアブロスは居たか?

生態情報には居なかったはずだが移動してきたのか?

新種のモンスターか?

 

バックパックを手際良く漁り、音爆弾を明後日の方向へと放った。

 

──キィィィィィィィンンンン!!!!!

 

耳をつんざく様な音が響き渡ると同時に、砂の中から緑の化物がアグナコトルの如く飛び出した。

 

「……お前か」

 

砂の大地に似つかわしくないドス黒い深緑。

口からポタポタと垂れる唾液。

顎から飛び出た牙の数々。

巨体に対して小さな瞳と前脚。

 

忌々しい記憶が蘇る。

 

『ああああああ! 熱い! 熱い!』

 

『なんでだよ! なんでおごっ!』

 

『に、逃げあぎゃ』

 

もう、夢に見ることも無かったあの光景が、瞬く間に瞳の裏で過ぎ去った。

思い出した。思い出してしまった。

あの時を今、再び体験してしまった。

腑が激情で燃え盛る。火山の溶岩よりも暑く熱くアツク心が燃える。

 

「イビルジョー……ッ!」

 

奥歯が砕けるかという程に噛み締める。

勝てる相手ではない。実力差がある。

でも、やるべき事がある。

為さねばならぬ事がある。

 

バックパックを放り投げ、腰から銃を引き抜き、信号弾を撃ち上げる。もうこの銃に用はない。

 

「っしゃ!」

 

掛け声と共に投げつけるが、大したダメージにはならない。

だが、気合は入った。

 

もう、あの頃の無力な村娘なんかじゃない。

 

「喰らえやあああああああ!!!」

 

食事の為にぱっくりと開かれた顎目掛け、背負っていた武器を振り下ろした。

 

 

 

 

 

 

──ガチィィィィン!

 

牙と牙が綺麗に噛み合い、熱した鉄を打った時の様な音が鳴り響いた。

 

背負っているソレは鈍器だ。誰にでも一定の効果を上げるが、イビルジョーが相手では、どうだろうかと不安に思えてしまった。

頭を叩いた。だが、効いている様には思えない。

 

すぐ様イビルジョーに背を向け、鈍器を背負い、その場から大きく跳んで離れる。

 

──ガチン!

 

噛みつき。

 

今度は横に跳び、再び噛みつきを避けながら体勢を整える。

 

「チッ、筋肉の塊なのに硬すぎる」

 

イビルジョーは、他のモンスターにある様な甲殻や、外骨格の様な鎧を身に纏っている訳ではない。しかし、高密度に圧縮された筋肉が、生半可な鎧などを越す強靭さを手にしていた。

 

剣で切れば筋肉の収縮に巻き込まれて引き抜けない。

鈍器では出血による体力削りが出来ない。

ボウガンではそもそも貫けない。

 

正に悪魔。ハンターの誇りである武器をものともせず、鎧や武器も溶かして消化してしまう強力な胃液。

イビルジョーに食われたものは、生きていた証すら遺せずこの世を去るのだ。

 

だから、誰もが恐れる。

 

だが、怖気付く理由にはならない。

 

「らあああああああ!!!」

 

タックルをスライディングで避け、後脚に比べて貧弱過ぎる前脚を思い切り鈍器でぶん殴る。

これは流石に効いたのか、前脚が少し変色した。内出血だ。

 

だが、これを繰り返した所で、この悪魔を殺せるのか?

いいや、無理だ。先にこちらの集中力が途切れる。

 

短期決戦。

その言葉が浮かんだ。バカなことに、それしかない。

 

なら、どうやって一撃必殺を可能とする。

 

……どうすればいいんだ。

 

「知るかよバァァァァカ!!!」

 

再び、イビルジョーの噛みつきに合わせて上から叩き潰す。

 

効いている様には思えない。だが、他にいい手は思いつかない。だったら、考えながら手を動かすしかない。

 

考えている間に行動を変更して、周辺の村にでも行かれたら困る。

 

とにかく、殴るしかない!

 

──オオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!

 

雄叫びと共に、イビルジョーの全身が大きくなる。特に背中に至っては、山の様に盛り上がった。抑圧されていた筋肉が解放されたのだ。ぱっくりと裂かれたであろう古傷の跡がクッキリと浮かび上がり、イビルジョー自身の熱さなのか、背中は血のように真っ赤に染まっていた。

 

急上昇した体温が原因か、イビルジョーの背中の辺りがゆらゆらと揺らめいて見えた。

 

ああ、コイツ、最高にキレてるんだな。

 

だって、しっかりと観察すれば、背中の傷から血が出てるのに、元気いっぱいに動いているんだもの。

 

「チィッ!」

 

鞭のように振われた尻尾を後方に跳んで避け、異様な速度で突っ込んできた噛みつきを横に跳んで避ける。

もう、カウンターを合わせることはできない。

力負けしてしまう。

そもそも避けるだけでも大変なのだ。

可能ならば背中の古傷を攻撃して悪化させたい。だが、背中は高く到底届かない。ならどうやって背中を攻撃する。

落とし穴はもう無い。落とし穴があればよかった。だがそもそも設置に時間がかかる。

 

いや、待て。手はある。

 

「こっちだ!」

 

砂漠には、所々に天然の落とし穴が存在する。すり鉢状に出来た緩い穴は、ハンター程度の重さでは反応しないが、大型モンスターが通ると重さに耐えられず、呑み込まれる。

 

だから、そこへ誘導する。

 

 

 

 

 

 

「ハッ、ハッ」

 

走る。走る。

悍ましい咆哮を背後に、ブレスを躱しながら、時に鈍器を盾に身を削りながらも走る。

 

そもそも、人間とイビルジョーでは一歩の大きさが違うのだ。全力で走りつつ後ろの様子を窺う必要性のある人間と、餌求めて歩いて着いていき、ちょっかいを出す余裕もあるイビルジョー。

もう、集中力は限界に近い。

 

──ガチン!

 

己のすぐ左横に、イビルジョーの顔が飛び出してきた。目と目が合う。瞳の中に映る餌と視線が噛み合う。

 

「見てんじゃねえ!」

 

剥ぎ取り用ナイフを目に突き刺し、引き抜いた。

グズ、ズブ、ジュボッという間の抜けた気持ちの悪い音と、大地を震わす悲鳴。耳を通り抜け、脳を震わす咆哮に、完全に動けなくなってしまった。

 

「ご、ぶっ」

 

ただ、頭を横に全力で振っただけ。イビルジョーからすればその程度だろうが、人間からすれば、命に関わるレベルのものだった。投げられた石ころをハンマーでホームランした時のように(この際の石ころは自分自身だが)吹っ飛んでいく。本能の域にまで刷り込まれた受け身のお陰で身体が弾け飛ぶような事は無かったが、弾けてないだけで中身はひどいことになっているだろうなあと、謎の確信があった。

 

それでも、まだ身体は動く。

ごろごろと転がったせいで全身砂まみれで気持ちも悪いし、視界もグワングワンと揺れているが、動ける。

 

頭を激しく振るい、雄叫びを上げていたイビルジョーも落ち着いたのか、左眼でこちらを睨みつけながら接近してくる。

 

「おおおっ!」

 

気合を入れて、力を入れて、踏ん張って、踏み締めて、跳ぶように駆け出す。

 

「いっ、あ、あああ!」

 

走れば当然腹は痛む。腹だけじゃ無い。全身が痛い。ガララアジャラに締め付けられた時のような痛みが全身にある。目尻に涙が集まるのは、砂漠の暑さ故か、痛み故か。

 

痛みを気合で押し退けて、とにかく前へ前へと向かう。

もう、目的地まであと少し。あと3秒もあれば着く。

 

チラリと振り返れば、口から黒雷が漏れ出ていた。

 

「まずっ」

 

避けるには、横へ跳ぶしかない。だが、もう気力も体力も限界だった。

 

──◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️!!!

 

「ガッ、アアアアアアアアア!!!」

 

イビルジョーのブレス。回避するには間に合わなかった。背中の大部分は大剣が防いでくれたとはいえ、他の防げなかった部分に関しては、モロにダメージが入った。オマケにブレスの勢いで吹き飛ばされたせいで、ゴロゴロと転がり回ったせいで全身が痛い。

防具を身につけているにも関わらず、ブレスを受けた場所はヒリヒリと焼けるように熱い。痛い。砂漠の暑さで余計に痛い。熱い。

 

「ハッ、ハアッ! バーカ!」

 

だが、それでも、目的地まで辿り着いた。己の足ではなかったが、辿り着いた。

 

のっそのっそとこちらへ歩いてくるイビルジョーに対し、煽りを入れる。

 

ゆっくりと、力の入らない身体を起こす。

もう、痛くない。

 

煽りが効くはずもないだろうが、イビルジョーは真っ直ぐに歩いてきた。

 

──ッ!?

 

そして、蟻地獄へ囚われた。

 

 

 

 

 

 

全身が熱い。燃えているんじゃないかと不安に思うが、燃えていないのだからそれでいい。身体は動く。力は入らないが、気合を入れればどうにか動く。

 

──オオオオオ◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️!!!

 

咆哮の途中からブレスが放たれた。

黒雷を横へ跳んで避けるが、顔を向けてこちらに遂にさせてくる。一歩一歩に力を入れて、ブレスを吐けない確度まで立ち位置を変えると、そのまま前脚のすぐ横の角度まで移動した。

 

正面はイビルジョーが激しく暴れているせいで危険だ。しかし背面では殺せない。だから、ここからだ。生き残る為の最後の行動は、ここから始めるのが一番いい、はず。

 

「ふんぬ!」

 

大剣を蟻地獄の外縁に突き刺し、固定する。これは足場だ。

足場にも体力にもまともに身体が動くのかも賭けみたいなものだが、賭けをしない時点で死ぬのだから問題ない。

助走の為に少しだけ距離を離す。

今日は暑いな。熟睡できそうにない。

 

「うらあああああああ!!!」

 

一歩。大きく跳ぶ。

二歩。距離を合わせる。

三歩、大剣の柄、その先端に足の真ん中に乗せる。

四歩、そのまま足を空へと振り上げて、思い切り飛ぶ。

 

「おおおおおお!?」

 

距離、だいたい良し。

両手、剥ぎ取り用ナイフあり。

着地体勢、難しい。

 

「ひぎっ!?」

 

暴れ回るイビルジョーの首元に着地。股への衝撃が背中を通って頭を貫いた。股関節がおかしいような気もするが、力はまだ込められる。脚でしっかりとイビルジョーの首を絞め、固定する。

 

「おぉらあぁ!」

 

両腕を振るい、全力全開絞り出す分の力も使って、悪魔の双眸へと狩人の証を突き立てた。

 

グジュリ。

 

──◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️!!!!!

 

「うるせえ!さっさと死ねやあ!」

 

耳も頭もグワングワンする。でも、まだ身体は動く。

眼球内へと侵入したナイフを、鍋をかき混ぜるような手つきで動かして、更に奥へ奥へと突っ込んでいく。

 

「おおおおあああああああああああ!!!!!」

 

──◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️!!!

 

 

最早、どちらも獣と化した根性勝負。

振り落としてミンチにするのが先か、脳まで到達させてデケェ生肉にするのが先か。

 

とてつもない悪臭に鼻をやられながらも、大きく息を吸い込んで杯を犯し、腕を奥へ奥へと突っ込み続ける。

脚はもう、腿で挟むことは出来なくなり、足の裏で押さえつける様にして固定するので精一杯だ。いつ吹き飛ばされてもおかしくは無い。

 

プシュッ、という音と共にイビルジョーの両目から血と、酷い悪臭とが溢れ出す。

 

「アアアアアアアアア!!!」

 

イビルジョーの体内という熱で腕を焼かれながらも、股関節がイカれそうになりながらも、脚が壊れそうになりながらも、ゆっくりと腕を伸ばしていく。

 

「ギィッ!?」

 

足が外れた。もう、身体を固定できない。

イビルジョーが暴れ、その度に己の振り回され、跳ね回り、腕が外れそうになり、身体はイビルジョーのクビに叩きつけられる。

 

「コフっ、おへっ、お、おああ!」

 

息ができないから血を吐いた。

血を吐いたから身体に力を入れられなかった。

力を入れて備えられなかったから、身体を貫く衝撃に意識が飛びかけた。

 

でも、腕だけは離さなかった。

 

もう、腕を伸ばすことすら出来なかったあの時とは違う。

 

今なら、腕を伸ばせる。

 

掴んだ手を離さないこともできる。

 

引き寄せることもできる。

 

だから、さあ。

 

「ぁ、たしの、ためにぃ!」

 

いいや、ちがう。

 

「み、ぃんなの為にも!」

 

腕にぐっと気合と力を込めて、押し貫く。

 

「お前を狩る!!!!!」

 

──◼️◼️◼️!

 

一鳴きすると、小刻みに痙攣を繰り返した後、貪食の恐王は地に顎をつけた。

 

「……さようなら」

 

瞳を閉じる前に見た空は、ギラギラと照りつける太陽と雲一つない青がユラユラと揺れていた。

 

……ああ、どうやらグッスリと熟睡できそうにない。

 

 

 

 

 

 

──昔は、デカイ武器を使っていたんだけどね。怪我をして、今はここで療養中。

 

──生まれはここだったけど、育ちは別。親が行商人でね、あっちをフラフラ、こっちをフラフラ。

 

──なんでかね、少し落ち着こうかと思った時、ここが思い浮かんだのさ。もしかしたら、悪い思い出が何もなかったからかもしれないね。

 

 

 

──アタシの師匠がさ、ライトボウガンを使っていたんだ。試しに使わせてもらったんだけど、療養中のアタシでも、それなり程度には使えるものみたいだね。

 

──師匠のライトボウガンは、なんというか、ヘビィボウガンみたいだった。ロックラックの方では、昔はミドルボウガン、とか言ったらしいよ。太刀と言うには重く、大剣というには頑丈さが足りない、みたいな中途半端な性能だったから廃れた、らしいよ。アンタも里を出ることがあれば、行ってみたらどうだい?

 

 

 

──アタシが現役だった頃は、尖っていてね。今じゃ恥ずかしい話だけど、何にでも噛み付いていたさ。でも、ひと段落ついてから、なんだか生きる理由、ってものが分からなくなってね。師匠の言葉を思い出してどうにか生きてはいるけれど、なんにもする気は起きなくなったんだよ。

 

──師匠になんて言われたかって?バカ、言うわけないだろう。

 

 

 

──百竜夜行、ぶっつけ本番みたいな状態でライトボウガンで手伝いに行ったけど、意外と動けたね。師匠の動きをよく見ていたからかな?基本的な動作は流れる様にできたよ。もしかしたら、才能があったのかもね。

 

──センセイと同じ武器の才能か……フフッ。今ならセンセイとパーティ、組めるかな。いやでもセンセイG級だし、どこにいるのか分からないし……なぁっ!? お、お前、いつから!? 今聞いたこと誰かに話したらお前の家にマタタビばら撒いてやるからな!覚悟しておけよ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──おめでとう。アンタは、この村を救った英雄だ。世界を救った奴と比べたら大したことない、なんて言うかもしれないが、村一つ救えるのも、英雄なんだよ。

 

 

 

 

 

 

 




今のうちに少しだけ溢しておく
またモチベ上がったら書く。
書きたいネタはそれなりにあるから。
今はエルデンリングで忙しい。

インキャソロハンター
パーティを組めないガンナー

主人公(オリ主転生者)とアヤメ(メスガキ)のこと。

アヤメ

親が行商人だから読み書き計算ができたので雑貨屋でバイトできた。この世界の識字率とか計算とかどの程度か知らん。だからギルカ番号と口座番号連結参照で直接引き落とすシステムを雑貨屋バイト回でチラ見せした。ちゃんとパスワードってか、割札的なのもないとダメよなこれ。

なんにでも噛み付いていた

当然誰もパーティを組んでくれない。

アヤメのその後

ライズのG級が来ないと分からん。でもどうせ「里の英雄と一緒に狩に行くにはまだアタシの実力が足りない…」とか言ってソロハン決め込む。

アヤメ
センセイ(オリ主)のことが好き。自分の素(黒歴史)を知ってる上に、それを受け入れていたんだから仕方ないね。そもそもセンセイ以外の人間をまともに知らない。コミュ障。人の心がわからない。
そもそも好きだと思い込んでいるだけでそれは亡き父に対するものに類するものである。ラブではない。
最も嫌っている存在はイビルジョーだが、初恋の相手でもある。

ハモン
オリ主のことが好き。
過去にカムラの里に来たことがある。ボウガンについて盛り上がった。
技術の流出はしてない。このジジィはなんだかんだで強か。

エロ同人に出ることが確定してる双子
オリ主の事があまり好きではない。
竜人族は調和()の一族だから、転生者、あるいは、異界の記憶が流入した存在に対して何か思うところがあったのかもしれない。知らんけど。
なんか電波受信しててもおかしくは無い。共鳴()

ロックラックの加工屋
オリ主に対して複雑な思いがある
丁稚奉公の最中にハンターになりやがったから半分キレてる。自分で作った武器の使い心地は、自分がハンターにならないと分からないだのなんだの言われて丸め込まれた。現在は息子もハンターやってる。キレた。



ギルマス
竜人族
オリ主のことが好き。
竜は光物が好きで独占欲が強く、なんでも手元に置きたがる。
束縛系。

ミラボレアス
何度も歴代シリーズ主人公に討たれてるはずなのにワラワラ湧いて出てくる。
ゴジラみてえな人間の怨念の集合体だったりしない?

狂竜症
人間は発症しない

獰猛化
人間は発症しない
バルファルクが原因の可能性が微レ存
龍脈が関連している可能性があるといいな

これって実は逆で、『両方、あるいは片方発症しているからハンターは人間としてあり得ない力を発揮できたりする』のでは???
自然の調停者であるハンターは、自然の猛威に対応する為に自然の恩恵を受けて立ち向かう。獰猛化の方は掠ったりしない? まあ妄言だから気にする必要はない。モンハン考察者様に任せる。

この小説ってメインはインキャソロハンターのガンナーつまりはオリ主のことでは?

……せやな



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