星と騎士と宝石と楽器と花の話   作:ドリベンタス

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前回までのあらすじ。

咲昏家と威世家の因縁は、幕末より続く呪いの物語だった。かつて威世家が拾い育てた不思議な鳥(鳳龍)は威世家の者を呪い、咲昏家の者によって一度は滅びた。しかし、強い呪いは未だ残り続け、現在に至る。ケイとラグルはそこにショウゾウ攻略のヒントを得たが、ショウゾウは強硬策として"あり得るはずの無いリバイバー"を使って襲い掛かってきた。


ケイ卿篇 ハルカトオキサクラ Ep. 10「戦略と謀略」

 

 

 

「カムラン」

 

 名を呼ばれて、カムランは頭を上げる。視線の先には、ハルカが立っていた。カムランは、もう一人の相棒の生還に安堵し、喜んだ。

 

「怖いの?」

 

 カムランは、視線を落とす。相手は未曾有の怪物。萎縮するのも無理は無い。

 

「でも貴方には、ケイを守る使命がある」

 

 カムランは、再び顔を上げた。ハルカは、カムランの頭部にそっと触れた。

 

「貴方なら大丈夫。それに、ブルーノ卿とブークリエもいる。皆、ケイを守ってくれる」

 

 ハルカは、穏やかな表情をカムランに向けた。カムランは奮起し、その大きな身体を起こして立ち上がった。

 

「私も行ってくる。ケイに伝えて。『私を信じて』って」

 

 カムランは、少しずつぼやけていくハルカを追いかけようとした。しかし、ハルカは霞の向こうに消えてしまった。ハルカからの「共鳴」のパスが切れたのだった。

 

 

 

 

〜〜

 

 

 

 

「───────分かった」

 

 ケイは、ヤマタノオロチの攻撃をギリギリの所で受け流すブークリエの後ろで、カムランのメダルを手に取った。

 

「勝つぞ、カムラン!!!」

 

 ケイの手から放たれたメダルは宙を舞い、眩しく光る。蛇の頭を押さえつけているブークリエに、別の頭が攻撃を仕掛けていた。飛んできた蛇の頭は、閃光に遮られ、黒い塊に斬りつけられた。

 

「遅かったじゃねぇか!」

「すみません、時間かかりました。もう大丈夫です!」

 

 ブークリエは、蛇の頭を薙ぎ払い、カムランと背中を合わせる。ニッチが似た者同士の”時を超えた競演”が始まった。

 

「ドロドロのウイルス野郎に続いて、伝説上のバケモンかよ・・・!最悪な連戦だな!!ケイ!!」

「はい、全くです!!」

 

 目の前にいるのは確かにヤマタノオロチだ。威圧感も質量も、そこに実体がある事を示している。

 

「でも、トリックは必ずある!!」

 

 ケイは、ラグルと視線を交える。”散開”の合図だ。二人はそれぞれの相棒を連れ、二手に分かれる。ヤマタノオロチの首は彼らの動きを捉えると、それぞれのリバイバーに首を差し向け、噛みついてきた。

 

「斬り刻め!!」

「叩き潰せ!!」

 

 カムランは、迫り来る頭部を華麗に回避し、六爪《ろくそう》による回転斬りで蛇の頭を斬り刻んだ。ブークリエは高く飛び上がると、片手を振り下ろして蛇の頭を叩き潰した。

 

「やっぱり、手応えが浅い・・・!このまま首を潰して───」

「待て!ケイ!こいつ、クソ生意気な再生力してやがるっ!」

 

 カムランとブークリエにそれぞれ別の頭が襲いかかる中、破壊したはずの二つの頭が瞬時に再生した。

 

「トカゲとナマケモノが力を合わせた程度では、神話の怪物を止めることなど出来まい───オロチ。一頭ずつ殺せ」

 

 ショウゾウは、冷酷な声でヤマタノオロチに指示を出す。ヤマタノオロチは、カムランに向かって三つの頭で攻撃を仕掛けた。

 

「無視してんじゃねぇぞっ!」

 

 ブークリエは、ヤマタノオロチの本体に向かって殴りかかった。しかし、多少位置がズレた程度で、ダメージは入らなかった。カムランは、迫ってきた三つの頭のうち一つを爪で斬り払うも、残る二つの頭に挟みつけられた。カムランは必死に抵抗するも、二つの頭による強い力に為す術もなかった。斬り払われたもう一つの頭が再生し、カムランの息の根を止めようと襲いかかった。

 

「ブークリエ!カムランを援護しろ!」

 

 ラグルの声に反応し、ブークリエは即座に身を翻すと、拘束されたカムランの元へ向かう。カムランに襲い掛かろうとした頭は、ブークリエの動きを目の端で捉えると、首を曲げてブークリエに向き直り、大きく口を開けた。

 

「攻撃が来る!構えろ!」

 

 ラグルは状況を瞬時に察知し、ブークリエに守りの体勢に入るよう指示を出す。その瞬間、蛇の口から強力な光の弾が発射された。ブークリエは爆風で後方に吹き飛ばされ、柱に激突した。

 

「クソっ、反撃はできねぇか・・・!」

「青二才が。手負いでこの怪物に挑むというのが間違いだろ」

「チッ、調子に乗りやがってジジイ!!」

 

 ラグルの傷は、デスペラード戦以後、まだ完全に癒えていない。ブークリエにもその影響は現れていた。光の弾丸を発射した蛇の頭は、再びカムランに向けて口を開いた。

 

「まずは一頭だな。咲昏」

 

 閃光と轟音が放たれ、カムランのいた場所が爆炎に包まれる。カムランを押さえつけていた二つの頭は高熱でドロドロに溶けていたが、瞬時に再生した。カムランの姿は無い。

 

「見破ったよ、ショウゾウ」

「!?」

「これが、”ヤマタノオロチ”のトリックだ───!」

 

 どこからともなくケイの声が聞こえる。ショウゾウが彼の姿を探すと、ケイは、あろうことか、ヤマタノオロチの首の根元に至近距離まで近づいていた。

 

「貴様ッ!?」

 

 ショウゾウは、ケイが屋敷に連れられて以来、初めて焦燥の表情を見せた。ケイは、カムランのメダルを掲げた。

 

「ヤマタノオロチは、リバイバーが変身した姿───だが、空想上の怪物の形を維持し、動かすのは普通のリバイバーには出来ない。首が一つしかないリバイバーは、三つ以上の首を同時に動かすのに慣れていない!」

 

 ケイは、再びカムランを召喚する。この時、ショウゾウはカムランが攻撃を喰らう直前にケイによってメダルに戻されたことを悟った。ショウゾウは車椅子の電池残量を確認するも、まだ完全に回復し切っておらず、すぐには動き出せなかった。

 

「そして、首を動かすことにエネルギーを集中的に注ぐため、エネルギー供給源は首の根元付近に存在する。カムラン!」

 

 カムランは六爪を首の根元に突き刺した。その一撃を阻止しようと三つの首が動き出したが、ブークリエによって軽々と薙ぎ払われた。カムランの爪の先端は、根元の深くまで突き刺さり、ヤマタノオロチは悲鳴をあげた。傷口の先端からは光が漏れ、”鳥の姿”が見え隠れしていた。ケイはヤマタノオロチから距離を置き、ラグルと合流した。

 

「やはり、しそちょうの『太古の力』による変身で間違いないですね!!」

「しそちょうにそんな力ねぇぞ!!」

「呪い師の呪いの力を使って、空想上の怪物を似たリバイバーの姿から再現したんでしょう。同じ無属性リバイバーであるティタノンと、見た目・攻撃が酷似しています!」

「最初に首を落とされたリバイバーがしそちょうで、それがトラウマになったから首の多いヤマタノオロチに化けたのか。はっ、笑えるな!」

 

 ヤマタノオロチの八つの首は、天を仰ぎ、痛みに悶えていた。だが、一向に消える様子は無い。

 

「危なかったな。久々にここまで追い詰められた・・・」

 

 ショウゾウは、暗い部屋の奥で不敵な笑みを浮かべていた。

 

「貴様の推論通りだ、咲昏ケイ。流石は”あの女”の息子だな」

「”あの女”・・・母さんのことか!?」

「咲昏愛《アイ》。非力で貧弱な身体のくせに、憎たらしいほどに聡明で、誰よりも逃げ上手・隠れ上手だった女だ。奴の弟の咲昏慈英《ジエイ》は腕っぷしもまあまま良かったが、豪運・剛腕・豪傑の父親、咲昏叡智《エイジ》には遠く及ばなかった」

「急に何だ・・・!」

「一族の血が絶える瞬間だ!憎たらしい奴らの顔が思い浮かんだだけだ!」

 

 ヤマタノオロチが咆哮を上げる。カムランが攻撃をした箇所は首と同様に瞬時に再生した。八つの首がそれぞれ別の動きで、ケイ達に狙いを定める。

 

「やられた・・・」

 

 ケイは、悟った。しそちょうが本体であることは既に知られている前提で、ショウゾウは偽の”急所”を作っていたのだ。ケイは、ショウゾウの手のひらの上で踊らされていたのだ。

 

「っ!!───────すみません、ブルーノ卿。失敗しました・・・」

「いちいち細かいこと気にすんな。こうなったらもう、やることは一つだろ」

 

 ラグルとブークリエの身体から、緑色のオーラが湧き上がる。彼らの加護が目を覚ます。

 

「立て、ケイ。俺達で八つの首とその根元、全部斬り刻むしかねえ」

「・・・そうですね!神話通りいきましょう!」

「今の俺の身体だと2分が限界だ。いけるか?」

「十分です!」

 

 ケイとカムランの右目も緑色に光る。暗かった大広間が、鮮やかな緑色に包まれた。

 

「ほぅ、それが噂の『円卓の加護』か・・・良い機会だ!本気で迎え撃て!オロチ!」

 

 ヤマタノオロチが八つの首を騎士達に向ける。ある頭は牙を剥き、ある頭は光弾を装填する。鳳龍の一族最終決戦、残り118秒───────。

 

 

 

 




「大層な警備してる割にザルじゃねェ゛か」
「私も行きます」
「元気だったか?」
「元気そうで何よりッ!」
「今、永久の蒼穹へ。解き放たれて、舞い踊る───」

次回、Ep. 11「寵愛の子」
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