夏も近づいてだんだん暑くなってきましたね。えっ、私ですか?私は円卓の騎士雑用係のトモクラフイミ。「フイミン」って呼んで下さい!……なかなか呼んでもらえた事ないんですけどね。
今日は訳あって、円卓の騎士の人事異動に伴い、アーサー王直属の部下の部下的ポジションからCN騎士の部下的ポジションに愛でたく昇進(?)しました!やったねフイミン!どうやら最近CN貰った騎士さんらしいけど、若い男の人って言ってたなぁ〜。イケメンだったらどうしよう!?いや〜ん!円卓騎士の許されざる恋物語来ちゃうかもぉ〜!?!?この扉を開けたら、私の青春ラブコメがついにスタートするんです!!!
「失礼しまぁ〜す!!今日付でケイ卿の元に配属となりました、トモクラフイミです!『フイミン』って呼んで下さいねっ!!」
「………………」
あれ?部屋には女性騎士さんだけ?クールな表情が素敵な方……。
「………………」
「………………」
「………………」
「………………」
「………………」
「………………誰?」
「長きに渡る沈黙の末分かったのは、この騎士さんはさっきの私の自己紹介を全く聞いていなかった事だけでした」
「ごめん、突然で何て返して良いか分からなかった。フイミンで良いんだっけ?」
「わあぁ〜!ありがとうございます!!」
「?どういたしまして?」
「何読んでたんですか?」
「『期末の付け焼き刃』」
「少年漫画好きなんですね!」
「好き」
「好きなキャラとかいるんですか?」
「富丘義優」
「あぁ〜、あの『生殺与奪』の人でしたっけ!?カッコいいですよねぇ〜!」
「………………」
「………………」
「………………」
「………………あの、どうかされました?」
「ごめん、趣味に関して一気に話しかけられたの初めてで頭が追いつかない」
「あっ、すみません」
やり過ぎました……第一印象は大事なので知らない話題でもひたすら明るく接してみたのですが……却って戸惑わせてしまいました。反省反省です。それにしても、綺麗な方ですね……整った顔立ちに程よく引き締まった腕。服の上からでも分かる贅肉の代わりに筋肉がインストールされたボディ。女性騎士の理想の姿って感じで羨ましいです。
「えーっと、失礼ですが、貴方はどちら様で?」
「私はハルカ。ケイ卿の付き添い」
「なるほど」
ん?今何て言った?
「ケイ卿は一人じゃ危ないから、私が傍に居てあげないと駄目」
「Oh……」
期待したイケメン王子様は、まさかの女の子のヒモでした……。いや、CN騎士の時点で立派に働いてるんですけどね。
「ハルカさん。悪い事は言いません。その人からは今すぐ離れた方が良いです。私ここに来て長いのでおすすめの部署を紹介しましょうか?」
「どうしてケイから離れなきゃいけないの?」
「!?」
眉一つ動かさず至極真面目な顔で返された!?これはもう共依存……手遅れか……。
「はぁ。仕方ありません。お仕事頑張りますよっと……」
「気を悪くしたなら、ごめん」
「大丈夫です。謝らないで下さい。愛の形は様々ですから……」
「愛?」
「もしかして:無自覚」
「…………?」
首傾げてる様も映えますねぇ。さすがケイ卿の保護者────
「あっ」
「どうかされました?」
どうしたんでしょう?ハルカさんが急に立ち上がって傍にあった長い棒を持ちました。棒の先を引っ張って出てきたのは薄く細長い、光り輝く金属の板……
「に、日本刀っっ!?!?」
「入隊試験。ケイ卿の元に就くのであれば、避けては通れない」
「いやいやいや聞いてないですっ!!そもそも雑用係的ポジションに入隊試験も採用試験もあるんですかっ!?!?」
「あっ、採用試験」
「言い直さなくて良いですっ!!」
「とにかく、ケイ卿の元で働きたくば、この私を倒してから」
滅茶苦茶な事言ってますけど、さっきから目がマジです。やばいどうしましょう。裏方勤務が長かったので対人戦闘は心得がありません……。ええい、ダメ元でリクエスト希望!!!
「え、えーっと……一旦場所と武器変えませんか…………??」
〜〜
ふぅ。何とかトレーニングスペースの一室に連れて来れました。武器も竹刀に変えてもらえてひと安心です。
「剣道場は私のホーム。難易度上がるけど良い?」
「さっきのお部屋はホームじゃないんですか!?…………まあ、私の命とお部屋の家具は助かるので難易度は寧ろ下がりましたね」
「剣道場」、と彼女が聞き慣れない呼び方でこの部屋を称していたのはさておき、ここからどうしましょうか。ハルカさんは対人先頭に特化しておられるようで(そもそもリバイバー戦闘なら刀を振り翳す前にリバイバーを召喚するはずです)、そうなると戦う本人のフィジカルやメンタル、経験値が直接勝敗に影響します。ハルカさんは見たところかなり鍛えてる感じしますし、まともにやり合って勝てる相手ではありません。格上との戦闘で勝つための作戦を練らなければ。ああ。こんな時、アイラさんだったらどうするんでしょうか…………
「そろそろ始めていい?」
「うぇっ!?」
返事を待たずに先制攻撃仕掛けて来ないで下さぁぁぁぁぁい!!!!!!
間一髪で躱して体勢を立て直します。床を叩いた時凄い音しましたけど、竹刀ってあんな音出るんですか!?いや、それよりもまずは…………えいっ!!
「ぅぐっ!?」
部屋を変えたのは、家具が所狭しと並ぶスペースで戦うのを避けたかったからだけではありません。広いけれど床や壁、天井の材質により音が反響しやすいこの一室において、私の手首に装着された「音響兵器」は有利に働きます!若年層〜成人の最高可聴域に近いとされる14 kHzから16 kHzの高周波音をMAX音量で飛ばす事で、相手の平衡感覚を一時的に狂わせる奥の手です(ちなみに私は部屋に入る前にワイヤレスイヤホンでノイズキャンセルをしてます)!アイラさんに「裏方でも安全とは限らない。万一のための備えはしておけ」とのアドバイスを頂き、機械担当の方に特注で作ってもらった思い出の品でもあります。ハルカさんの動きが止まるその一瞬を狙って竹刀を取り上げます!
「あっ!!」
あと少しというところでハルカさんが身を翻しました。スピードが足りなかったんでしょうか……気付けばハルカさんに足を蹴られ、前のめりに転倒。
「へぶっ!?」
電池の都合上、高周波音が出るのは10秒まで。うつ伏せになった私の左腕は踏み付けられ、竹刀を後頭部に突きつけられて一本。私の完敗です……
「こ、こんなの無理ゲーですぅ!!!」
「いや、なかなか良いアプローチだった。もう少しフィジカルを鍛えれば余裕で前線に立てる」
「そもそも前線志望じゃありません!!秘書兼事務員兼雑用係ですっ!!」
「?そんな役職あるの?」
「あるんですっ!というか私が作りましたっ!!」
足を退けてもらって、立ち上がって、ハルカさんの目を真っ直ぐ見つめて。
「ケイ卿の話聞きました。戦い方に知識と経験を重ね合わせた頭脳派な側面が見受けられます。よって、私の目標とする『参謀』になるためには、ケイ卿の元で修行を積むべきと判断しました。付き添いであるハルカさんに認められないのは悔しいですが、ここでおいそれと引き下がるわけにはいきませんっっ!!!」
ハルカさんは、一瞬目を見開いていましたが、すぐにクールな表情に戻って告げました。
「その気高き志、受け取った。今日から貴方────フイミンは、私たちの部下」
「何やってるの?」
入口の方から見知らぬ男の声が聞こえてきました。大事な所で台詞を遮られたハルカさんに同情の目を向けようとしましたが、ハルカさんの瞳は寧ろ、ほんの少しだけ、色付いていました。
「ケイ。入隊……採用試験が今終わったとこ」
「えっ、何それ……あっ、俺はケイです。よろしくお願いします。あの、怪我とかありませんか?」
「…………は、ひゃい」
思ってたより数倍イケメンでした!!何か良い香りする!?この人ほんとにハルカさんが居ないと何もかもダメな人なんですか!?!?
「あっ、申し遅れました。トモクラフイミです……」
「フイミさんね!了解です!ハルカに何か変な事されませんでした?」
「ケイ。変な事じゃない。採用試験」
「その内容は?」
「私と勝負して私に勝ったら合格」
「…………はぁ、ハルカ。やってみたかったんだろうけど、俺の居ないとこで勝手にそういう事しちゃダメだって。試験難易度もエグいし」
「弱い奴は死に方も選べない」
「漫画の台詞を引用しない。あと、フイミさんは基本事務作業を担当してくれるから、前線を考慮した戦闘じゃ却って不向きだと思う」
「そう。分かった」
「ほら、ちゃんとフイミさんに謝って」
「……ごめんなさい」
「あっ、いえいえ。大丈夫です……」
今ようやく分かりました。保護者なのはケイ卿の方でしたか。お二人とも何だかんだ仲が良さそう……
「そういえば、ケイはどこ行ってたの?」
「買い出しの途中で木の上から降りられなくなった猫を見かけたから、登って手助けしてあげてたら最後自分が降りる時に足滑らせちゃって……医務室でちょっと診てもらってた。まあ、何て事無かったよ」
「もう、ケイ!やっぱり私が付いてないと危なっかしい。これから寝る部屋も一緒にする」
「えっ、ちょっ!?フイミさんも配属されたのにそれは余計マズイって!!」
………………ああ、なるほど。これは共依存ですね……でも、少し羨ましいです。しっかりしてて真面目だけど自分の事を後回しにしがちなケイ卿と、やる事なす事マイペースだけど実力は確かで常に冷静なハルカさん。素敵なコンビです。私も、もしかしたらアイラさんとこんな風なやり取りが出来ていたかもしれないのに…………
「すみません、フイミさん。今から色々ご説明致します」
「それじゃあ、よろしくお願いします。あっ、一つ良いですか?」
「何ですか?」
ケイ卿とハルカさんの方を見て、自分の過去を思い出しながら、悔いが残らないようにしっかり伝えておきます。
「お二人のこと、応援してますね!!」
アイラとかあの辺の人達のキャラデザはもう少し待ってほしいです……すみません