今日も弁当を持ち、旧校舎へと向かう。その途中で友人に声をかけられる。
「お前、最近どこで弁当食べてんの?」
「秘密の場所だよ」
「へー、そっか。なら、詳しく聞こうか」
「後で気が向いたらな」
「それ、向かねぇやつだろ!」
ギャーギャーと騒がしい友人を置いて、教室を出る。いつもの足取りで、旧校舎へと入る。
ノックをして教室に入る。
「こ、こんにちは・・・・・・。ぼ、牡丹さん・・・」
「おう、今日もビカラは早いな」
そこには、既に彼女はいた。これはいつも通りだ。1年生の教室が近い事もあるのだろう、ビカラは必ずここに先にいる。
「じゃあ、いただきます」
「い、いただきます・・・」
彼女は俺と話すのは慣れてきたのだろう。相変わらず自身とかは無いが、だいぶ話せるようにはなった。
「そういえば、ビカラは部活決めたのか?」
「ぶ、部活ですか・・・?まだ、迷っていて・・・・・・」
もうすぐ部活動の体験入部が始まる。この学校では、1年生は部活動には必ず所属しなければいけない。2年生からは自由になるが、1年生のうちは頑張らなければいけないのだ。
なので、目の前の彼女はどうするのか気になり、話題に出してみた。
「迷ってるか。あー、候補とかあるのか?」
「こ、候補ですか・・・?えっと・・・と、特には・・・・・・」
ふむ、どうやら彼女は何も考えていないようだった。しかし、俺はビカラが何部に所属するのか気になるし、心配になっている。
だから、少しからかい混じりに聞いてみる。
「じゃあ、テニス部なんてどうだ?ほら、人がいっぱい集まるし、友だち沢山できるんじゃないか?」
「て、テニス部ですか・・・!そんな、あ、あたしみたいな陰キャが、陽キャが集まるようなうぇーいってした、部活に、な、馴染めるわけないじゃないですか・・・・・・!」
食い気味な否定だ。てか、うぇーいってした部活ってなんだろう?
そうか、テニス部はダメか。なら、他の部活だな。
「なら、バスケ部とか、バレー部はどうだ?」
「ど、どちらも陽キャ部じゃないですか・・・。そ、それにチームですよ・・・?あ、あたしがチームの一員になれるはずが、あ、ありません・・・・・・。それに、ああ、足を引っ張る未来が見えてます・・・・・・」
またもや新単語登場だ。陽キャ部ってなんだろう?
しかし、そうか、チームはダメか。なかなかに難しいな。個人技か、うーん。
「よし、じゃあ水泳部だ!どうだ、個人で極めるスポーツだと思うんだが?」
「あ、あたし、お、泳げません・・・・・・」
「そ、そうか」
スタートラインがダメだった。人の部活を考えるってなかなかに難しい。うーん、どうしよう。
「あ、あの・・・。ぼ、牡丹さんは何部なんですか?」
「俺か?俺は陸上部だ。ああ、そういえば忘れてたな、陸上部はどうだ?」
ビカラが自ら質問をしてきた。なんだかそれだけで嬉しくなってきてしまう。
しかし、自分の部活のことを忘れていたなんてマヌケな話だ。まぁ、でも競技は個人技だし、そこまで陽キャ?してないと思うから、案外いいんじゃないか?
「あ、あたし足が遅いので・・・。」
「いやいや、足が遅くたって大丈夫だって。それに、なんだ、俺もいるぞ?」
「うっ・・・。そ、それは、すす、す、少し魅力的、です・・・・・・」
ビカラは俯きながらもそう答えた。少しだけ、前向きに捉えてもらったようで嬉しく感じる。
「見学日って今日からだっけ?」
「そ、そうです・・・。あ、あたしなんかが見学に行っても迷惑だと思うんですけど・・・せせ、せっかくなので頑張ってみます・・・・・・」
「まだ、見学だから気楽に行けよ」
「かしこみです・・・・・・」
ビカラが頑張ると言ったのだ、後輩を見守るのが先輩の役目だ。とにかく彼女が望む部活に辿り着くことを祈るばかりだ。
なんだか、今日の部活は気合いが入りそうだ。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
〈side ビカラ〉
授業が終わり、とうとう放課後が来てしまう。今日は部活動見学が始まる日なのだ。
あたしなんかが部活動が出来るとは思えなかったが、学校のきまりなので所属はしないといけない。ぅぅ、鬱い・・・。
3年間日陰で過ごすことにはなりそうだ。それでも、少しでも馴染めるようにはしたい。
あわよくば、仲間が出来ると嬉しい、なんて思ってしまう。
(えっと、どこに行けば・・・・・・?)
部活動の活動場所が記されている紙を見ながら、グラウンドにでる。
そこには、サッカー部や野球部などの運動部が部活動をやっていた。そして、そのまわりには、見学に来ていると思われる多くの1年生たちの姿があった。
(ヒィィ・・・・・・!人が多い・・・。帰りたい・・・・・・。で、でも、ぼ、牡丹さんに頑張るって言っちゃったしな・・・・・・がが、が頑張るぞ・・・・・・)
帰りたくなりながらも、独りで陸上部が練習している所へと向かう。そこには、沢山の見学者が集まっていた。
そこはどこよりも人が集まっているように思えた。
(な、な、なんで・・・・・・こんなに人が・・・。ひ、人が多すぎて前が、見えない・・・。人がいなくなるまで待とうかな・・・・・・)
人集りの外から隙間を探し、頑張って陸上部の練習を覗く。すると、ちょうど見学の生徒たちが色めき立った歓声をあげた。
どうしたものかと、頑張って隙間から覗く。目の前を1人の男子生徒が走っていく。その姿は普段見ているものとはかけ離れていた。
「すげー、佐倉先輩だ!」
「本物だ、本物!」
「カッコイイなぁー!」
走っている姿を見た生徒たちは、そう声を上げた。あたしはその言葉たちで理解してしまった。
(えっ・・・・・・?!も、もしかして、ぼ、牡丹さんってゆ、ゆ、有名人・・・・・・?)
あんなに気軽に話しかけてくれていた人が、有名人だった。その衝撃は大きく、なんだか今までの事が恐れ多く感じてきてしまう。
それに、そんな有名な彼と毎日一緒にお弁当を食べていると知られたら、何が起こるのか考えただけでも恐ろしく思える。
あたしは何だか、いたたまれなくなってしまい、その場から姿を消した。
なんだか、少し不穏な感じになってしまった。さぁ、部活動編どうなる!