ともかく、本編どうぞ
〈side ビカラ〉
牡丹さんについて行って辿り着いたのは、旧校舎の一室。2人でお弁当を食べている場所だ。
あたしが今日、勝手に行くのを辞めたから、牡丹さんは怒っているのだろうか?陸上部の見学をしなかった事を怒っているのだろうか?
でも、牡丹さんはそんな人ではない、と思っている。それに、さっきだって怒っているという感じは無かった。
でも、でも、怒っているのを表に出さないタイプなのかもしれない。
うう、吐きそう・・・。
そんな中、少し時間をあけ牡丹さんが話を切り出した。
「えっと、様子はどうだ?」
聞いてきたのは、ふんわりとした質問。どう答えていいか分からず、固まってしまう。
その様子を見た牡丹さんは、少し慌てたように言葉を続けた。
「あー、えっと、どう言ったらいいのかなー。だー、さっきビカラに避けられてるって感じてさ、何かあったら聞かせて欲しい!」
牡丹さんはストレートに聞いてきた。その気持ちを受け、昨日あったことを話すべきか、誤魔化すべきか迷ってしまう。
それに、牡丹さんとあたしが一緒にいる姿を誰かに見られたら、彼が困ってしまう。こんな陰キャと一緒にいるところなんて、見られたくないだろう。
「あ・・・。そ、その・・・・・・」
お断りを入れる。自分からもう関わらないように言わなければ、彼はあたしに構ってしまう。
でも、でも、その優しさに頼ってしまいたくなる。どうしたらいいのか分からない。
自分では分からないから、人に判断を委ねてしまう。
結局あたしは、全部話した。見学に行ったこと、人気を知った事、迷惑じゃないかと思った事全部。
ゆっくりと、あたしなりに丁寧に。全部伝えるために、頑張って。
牡丹さんは真剣に聞いてくれた。そして、口を開いた。
「そうか、そうだったのか。全部話してくれてありがとう。俺が迷惑かけてたみたいだな、悪かった」
彼は感謝の後に、あたしに頭を下げてきた。あたしは驚いて、慌ててしまう。
それに、牡丹さんが迷惑をかけていたなんて思っていない。迷惑をかけているのはこっちだ。
だから、謝らなければ。
「俺がビカラに嫌がられているとも知らずに。そうだよな、断りづらかったよな」
悲しそうに牡丹さんが続ける。
違う、そんな事を思ってない。嫌がってないし、断ろうなんて思ってない。
思わずあたしは、牡丹さんの手を取る。驚いた表情の牡丹さん。
「ビカラ?」
「あ、あたしは、牡丹さんと一緒に居られてた、楽しかったです・・・!お昼も、ひ、独りじゃなくて、が、学校が楽しくなりました・・・!だ、だから、で、出来ればもっと一緒に居たいです・・・・・・!!」
自分で言っていて、恥ずかしくなってきてしまう。これはもう、もはや、告白だ。
何を言おうか考えていなかったのもある。良く考えればよかったと思ってしまう。
でも、これがあたしの気持である事は間違いがない。
正面の牡丹さんは驚き、少し照れたような表情になった。
恥ずかしそうに、笑った。
「・・・そっか、そうなのか。はー、よかった。そうだな、もっと一緒に居よう」
「ヒィッ・・・・・・!か、勘弁してください・・・・・・」
安心したという感じで、牡丹さんがからかうように、笑いながらそう言ってきた。
「ははっ、悪い。今度さ、どっか遊びにいこうぜ?」
遊びに誘われたのなんて初めてだ。いつもあたしは独りだった。
友だちなんてあたしが飼っているネズミだけ。その子とは遊んでいたけど、人と遊びに行けるチャンスなんて初なんだ。
ああ、でも・・・
「あたしなんかと、は無しだぜ?」
牡丹さんがあたしの心を読んだかのように、そう言ってきた。
そうだ、牡丹さんはいつもそうだった。優しく、強引で、カッコつけたがりなんだ。
だから、回答は決まってる。
「ぜ、是非に・・・!!」
「よし、決まりだな!」
あたしはこの人と知り合えたよかったと心から思う。
誰にでも優しい人なのかもしれないが、あたしに関わってくれて感謝をしているんだ。先輩で、あたしの友人だ。
「・・・部活、見学行くか?」
「そ、そうですね・・・い、行きます・・・」
「じゃあ、一緒に行くか?」
牡丹さんがそんな提案をしてくる。部活動の時間なんてとっくに始まっていて、彼は部活に行かなければならないはずだ。
だけど、今は彼に甘えてみよう。ほんの少しだけ、勇気と我儘を。怖がらなくても大丈夫だ。
「・・・はい、お、お願いしてもいいですか・・・・・・?」
牡丹さんは少し驚き、すぐに笑った。
「おう、行こう!」
私たちは、旧校舎を後にした。
陰トピアと部活動はこれで終わりです。
次回はちゃんと遊ぶかな?