嗚呼 忙しなき日々よ   作:ノイフェル

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 さて、風呂敷を畳みに入ります

今回はかなり不愉快な表現があると思います
独自設定もいつもよりマシマシです

それでも宜しければ、どうぞ


 美醜

  勝負の世界である以上、勝ちを目指す事が悪い事ではない

 

だが、あくまでも『レース』であり、観客がいて、スポンサーがいて、興行であることもまた真実である

 

 

 

 

 

 

 

とあるレースにて

 

 

『皇帝の後継者』と自負するトウカイテイオーは苦戦していた

 

 

(っ!抜けない。何で邪魔するんだよっ!)

 

 

 

 

 

元々デビュー戦において『クラシック三冠』を獲ると豪語したテイオーである

 

 

マスメディアはこぞってその発言を取り上げた

 

 

 

 

 

 

トレセン学園サイドからの注意はあったが、テイオーからすれば取るに足らないものである

 

 

 

 

スカーレット組に属していた頃のトレーニングは基礎トレーニングばかりであった

 

テイオーが幾らデビュー戦に出たいと言っても、カブラヤオーを始めとした面々は承知しなかった

 

 

変わり映えしないトレーニング。憧れの背中に早く追いつきたいという焦燥感。それらはいつしかトレーナー達への不満に変わっていった

 

 

 

 

そんな中で、とあるトレセン学園分校のトレーナーが声をかけてきたのだ

 

「ルドルフを越えるため貴女のトレーナーになりたい」と

 

流石に初対面のトレーナー相手に気を許すほどではなかったが、テイオーの不満を理解し、テイオーの望むトレーニングを提示された為に決断した

 

 

その後、比較的温厚なサイレンススズカ先輩に今後はトレーニングへ参加できない旨を伝えた

 

そもそも、スカーレット組に居たのはトレーナーが見つからなかった為であり、トレーナーが見つかった現状において籍を置く必要を彼女は認めていなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、彼女は理解していなかった

 

 

スカーレット組の育成担当は他のウマ娘から見れば何としてでもお願いしたい程の面子であった事に

 

これはシンボリルドルフ以外に目を向けていなかった弊害であり、シンザンやミスターシービーの名前とて「聞いた事あるな?」位の認識であった

 

確かに強いのだろう

だが、『皇帝』には及ばないと決めつけていた

 

 

 

それだけ彼女から見たシンボリルドルフは圧倒的だったのだから

 

 

 

 

 

 

 

 

スカーレット組を離れたテイオーはトレセン学園分校に移籍し、そこでトレーナーの指導を受けた

 

彼女の望む以上のトレーニング内容を提示し、毎回成長を実感できていた

 

 

だが、実はトレーナーの提示したトレーニングはある程度の基礎的な能力が身についた前提でのものであった

スカーレット組において、テイオーもフィジカル面で大きく成長していたのである

 

残念ながら、同一トレーニングを行なっていたが為に、他のメンバーと走っても成長が見えづらかっただけだった

 

 

 

 

そうとも知らないテイオーは調子を目に見えてあげ、デビュー戦において2着を7バ身も離しての大勝をおさめた

 

その為に『クラシック三冠』という発言が出たのである

 

 

 

 

 

 

だが、レースである以上相手がいる

そして、少なくともお世話になった先達やトレーナーに何も言わずに移籍した事はウマ娘達の中で静かに、だが確実に広がっていった

 

 

 

 

 

 

 

 

嘗てルドルフはシンザンに「強いウマ娘とはなんでしょうか?」と問いかけた事があった

 

「強いウマ娘か。うーん、難しいものだ

だが、一つだけ言える事があるな。レースは1人でするものではない。故にこそ勝とうが負けようが相手に敬意を持つ事が肝要ではないか。とは思う」

 

「敬意、ですか」

 

「私達は1人で的確なトレーニングが出来るかな?

レースが出来るかね?出来ないだろう

故に私達は感謝と敬意を忘れてはならない」

 

「そう、ですね」

 

「ルドルフ君

学長からの受け売りだが『勝者には栄光と名誉が、勝者と敗者には等しく栄誉が与えられる』

負けたら敗者ではあるだろう。だが、負けたからとてウマ娘の努力には惜しみない賞賛があるべきだと思うのだよ

マスメディアや大衆が、ではない。他ならぬ私達ウマ娘からね」

 

「それは」

 

「私が思うに強いウマ娘とはその様なウマ娘であって欲しいとは思うがね

ただ勝ち負けに拘るのも良いだろう。だが、それに至る過程を重んじるのもまた一つではないかな?

そも、ここはトレセン『学園』だ。一つのみに拘ってみるのも良いかもしれないが、ウマ娘の未来について考えるのも上に立つ者の責務だよ」

 

「......」

 

トレセン学園に入ったばかりだった当時のルドルフには衝撃だった

 

「シンボリルドルフ。勝ち負けに拘るのも当然だろうさ

誰しも好んで負けたいとは思わないし、思ってはならない

だがな、私達は仰ぎ見られる者なんだ

私達の行動、言動一つ一つが私達の後輩達に見られている

そうやって、少しずつ未来へと繋がるのさ

私達を『栄光世代』なんて持ち上げているけどな、私達は君たちを高みに導く為の礎なんだよ。君たちだけじゃないな。これからウマ娘として生きていく。そんな者達への道標になることが、少なくともシンザンや私達生徒会役員の願い。忘れてくれるな」

 

「シービー先輩」

 

いつもはおちゃらけているミスターシービーの発言にルドルフは驚愕した

 

「やれやれ、いつもそのくらい真面目にしてくれたなら、私やカブラヤオー達の負担も減るんだがな、シービー?」

 

「はっ!真面目過ぎたら息が詰まるだろう?

アンタらは真面目に。私は自由に。それでバランス取れてるだろうに」

 

「やれやれだな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

強いだけで尊敬を集める事も出来る

 

 

 

だが、それは『強い』うちだけの事。負ければそっぽを向かれるだろう

特に傍若無人な振る舞いをすれば尚更

 

 

 

 

 

『品位』という言葉を勝負の世界でも耳にする

武道の世界においては何よりも先に『礼節』を教えられる

 

強さだけでは駄目。つまりそういう事なのだろう

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、テイオーは強さのみを追い求めた

 

 

故に周りのウマ娘から反感を買うのは必然であった

 

 

無論だが、シンボリルドルフはトウカイテイオーと話をするべく彼女のトレーナーに申し入れたが、トレーナー側はこれを拒否した

 

曰く「余計な『雑音』を入れたくない」と

 

 

 

あくまでも生徒会が影響を持つのはウマ娘であり、トレーナーには学園サイドが働きかけるのが筋であった

 

だが、トウカイテイオーの所属は府中トレセン学園でなく、トレセン学園分校だ

 

 

 

 

ここでトレセン学園本校と分校の対立が影響した

 

 

常に脚光を浴びるのはトレセン学園本校であり、分校は必要に応じて本校のウマ娘やトレーナーを受け入れたり、逆に本校へと送ったりする

 

 

トレセン学園本校と異なり、分校はシンザン達の活躍を受けて急遽作られたものである

 

言い方は悪くなるが、ウマ娘というものにビジネスチャンスを見出したからこそ、分校は出来た

 

 

言うまでもなく、本校の秋川理事長の思想とは相容れない考え方であり、トレセン学園分校と言うのは通称でしかない

 

 

 

 

ウマ娘関連事業育成所

 

 

 

 

これが分校の正式名称である

 

 

 

つまり、分校サイドは事業としか見ていないのである

 

 

 

 

これは余りにもトレセン学園の理念に剥離したものであるが故に、理事長はトレセン学園の名称を認めなかったからである

 

 

 

 

 

 

だからこそ、分校の本校に対する隔意もまた相当なものであるのは自明であろう

 

 

 

この様な事情により、如何にウマ娘の時代を切り拓いた実績を持つ秋川やよいとて分校に対する影響力は持ち得なかった

 

 

更に分校というが、彼方には生徒会などと言うウマ娘による組織は存在せず、経営会議があるのみである

 

 

 

 

 

通称分校なのは、分校サイドとも協調しなければならない為であり、叶うならば理事長や生徒会メンバーはこの名称を使いたくなかった

 

 

 

 

 

 

故にルドルフの想いはテイオーに届かなかった

 

 

テイオーは言ってしまえば育成所が目的とする『勝利至上主義』に染まりやすい状態であり、彼女にとっても強さの追求こそが最優先であった事も災いした

 

 

 

 

 

 

 

 

テイオーのトレーナーの発言もこうした背景があった訳だ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、分校の育成環境はお世辞にも良いとは言えない

 

 

嘗てレイクスプリンターがサイレンススズカに語った『ウマ娘の事を見ている様で見てないトレーナー』は大体此処の所属である

 

表立ってはトレーナーやウマ娘の再教育と言っているが、その様な『無駄』に時間や施設を費やす気はない

 

 

自由で開かれたトレセン学園本校と異なり、分校はメディアからの取材等に事業所内で応じる事は決してなかった

 

何せウマ娘関連の事業については、国よりの補助金も出ている

 

 

 

国としてはウマ娘という者に活躍の場を用意しようとする秋川理事長の実績からウマ娘関連の補助金を認めている

 

下手に取材されて、事業所内の問題が発覚すれば秋川理事長の不興を買うばかりか、ウマ娘関連の事業から叩き出されかねない

そうなれば、折角作り上げた事業所も無駄になるし、ことと次第によっては補助金の全額返還を要求される可能性すらある

 

今はトレセン学園本校の受け皿として機能していると主張しているが、それだけでは利益を上げるには弱いし、いつまでも本校のおまけ扱い

 

 

 

 

 

 

そこでトウカイテイオーというウマ娘に目をつけたのである

 

 

事前調査から、充分な基礎能力を有し、かつ現状に不満を抱いている事が判明しているのだ

 

ざっくばらんにいうならば『多少手荒に扱っても問題ない』といえた

 

 

そして、予想通りデビュー戦において華々しい結果を残し、『クラシック三冠』を宣言した

 

 

 

 

 

事業所の上層部の狙い通りに

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それ以後もG IIIで勝ちを重ねたトウカイテイオー

 

 

だが、遂に試練がやって来たのだ

 

 

 

 

 

 

 

「おっと、トウカイテイオー囲まれましたか?」

 

「そうですね、明らかにトウカイテイオーを勝たせないレースになってますよ、これは」

 

 

 

 

 

「ちっ!なんなのさぁっ!」

 

トウカイテイオーは何と6人ものウマ娘に包囲されていた

 

「アンタに勝たせるわけにはいかないっ!!」

 

「絶対にッ!」

 

 

如何に基礎能力において優っていようとも、この状況ではさしものテイオーとてどうにもならない

 

 

 

 

今回のレースはOP戦であり、トレセン学園本校所属でないウマ娘ばかりである

 

 

本来ならテイオーは出る気はなかった

 

 

だが、レースの賞金を出来るだけ多く稼ぎたい上層部の意向により出場が決まっていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ひどいものだな」

 

「とはいえ、ルドルフ。貴様も分かっているだろう

あのトウカイテイオーとやらはやり過ぎた。出る杭は打たれるではないがあまりに不遜に過ぎた」

 

 

 

事実として各レースに勝ったテイオーは、勝って当然の様な態度であった

 

驕りとも傲慢ともいえるその姿に怒りを覚えないウマ娘はいないだろう

 

 

 

故にこれは必然であった

 

 

 

「後で話をしないといけませんね」

 

「しかし、出来るか?

事業所所属ともなると此方の意見など聞くまい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「トウカイテイオー五着となりました!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「く、くそっ!!

何で?どうしてだよっ!!」

 

レース後のテイオーは荒れに荒れていた

 

「テイオー。帰ってトレーニングだ」

 

「う、うん

ねぇトレーナー。ボク勝てるよね?」

 

トレーナーは内心舌打ちしながらも

 

「勝てるだけのトレーニングをする。それだけだろう?」

 

とだけ返した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「テイオー!!」

 

「あ、」

 

レース場から出る際にシンボリルドルフと出会った。出会ってしまった

 

自分のレースが出来ていれば、勝てた

でも出来なかった。だから負けた

 

 

だから

 

 

 

「待て!トウカイテイオー!!!」

 

 

今のボクに『皇帝』と話をする資格はないんだ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「トウカイテイオー、何故だ」

 

トウカイテイオーが走り去った後、シンボリルドルフは立ち尽くしていた

 

ルドルフとしてはキチンとした話をする訳でも無かった

ただ、少しでも彼女の力になりたかった

 

 

だが、アレは何だ?

 

 

負けて全てが否定された様な怯えた目

 

 

 

少なくとも、あんな目をしたトウカイテイオーに会いたかった訳では無かった

 

 

「事業所、か」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日の新聞には

 

 

 

 

 

『クラシック三冠』宣言のトウカイテイオーOP戦でのまさかの敗退!!』

 

 

 

 

 

 

 

と各紙が報じた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何やってんだよ、あのバカ」

 

この記事を読んだとあるウマ娘がそう呟いたという

 

 

 

 

 

 

 




 とりあえず会長にはしょんぼりルドルフになってもらいました

必要だから、許して?


この話はパッピーエンドだから、大丈夫だよ?多分(小声)


後3話で風呂敷畳まないと


えっと、お気に入りや評価ありがとうございます
感想も初めて頂けて嬉しいっす

こんなのですが、完結まで後少しとなりましたので、宜しければお付き合いください
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