前話では些かアレだったテイオーさんですが、彼女もまた被害者だったという話
何故か10,000文字こえました(白目)
ご”め”ん”な”さ”い”
「あんの、ばっかやろう!」
「テイオー辛そうだったわね」
「そりゃそーだろ
あんなあからさまな事されて楽しい訳ねーだろ?」
トウカイテイオーの負けたレースをTVで見ていたスカーレット達は思い思いの感想を口にしていた
ウオッカは此処でトレーニングしていた時と変わって見えることに憤り、スカーレットは苦しそうな表情に顔を顰め、ゴールドシップもまた不愉快そうな顔をしていた
(ま、多分それだけじゃねーとは思うんだけどなぁ
マックイーンやカブラヤオー先輩達も何か動いてるみたいだけど、黙っとくか)
個性的なウマ娘であるゴールドシップであるが、空気の読めないウマ娘では決してない
寧ろ場の空気や、他者の感情の機微を察した上で奇行に走るのである
KY(空気読めない)でなく、言うならばAKY(あえて空気読まない)とでも言うものだろうか
実際、ゴールドシップのスタイルである追い込みもレース中盤から徐々にギアを上げていくロングスタイルであり、同じ追い込みタイプのナリタタイシンとは異なるものだ
終盤、第四コーナー付近からタイシンを始めとする追い込み型はスパートをかける事が多い中でゴールドシップのそれは異質である
だが、そのスタイルを貫く為には高い『洞察力』が必要になる
サイレンススズカの様な逃げタイプならば、そこまで他者を気にする必要はないだろう。しかし、差しや追い込みの場合は前のバ群を突破せねばならない。その場その場での判断が必要になる
レースは秒単位で状況が変化する以上、どうしても相手を見る力は必須であろう。まして、ゴールドシップの様に長い距離を使って追い込みする場合は特に
この特異なスタイルより、ウオッカやスカーレットは『ゴルシワープ』と呼んでいる。後方にいたはずがいつの間にか先頭集団に絡んでいる事から2人が言い始めたのだ
まぁ、最後方にいたはずのゴールドシップがいきなりトップ集団に現れたら、誰だって驚くだろうが
事実、ゴールドシップのデビュー戦では衝撃的すぎるデビューを彼女は飾る事になった
「あの、バカッ!」
ナリタタイシンもまた、テイオーのレースを見て不満を口にした
明らかにOPなど今のテイオーに不要である事は明白。それよりもテイオーなら自身を高める事に時間を費やしたであろう
しかも、重賞と異なり些か意識の低いウマ娘が集まるレースになりやすい。トレーナーの指示を平気で無視するウマ娘も多いのがOP.pre OPの特徴であるのは教えられている
であれば、ともすれば傲慢ともとれる発言をしたテイオーに対して団結してくる事も予想できただろう。にも関わらずレースに出させたテイオーのトレーナー、テイオー自身にも怒りが湧き上がる
「情けないレース!!」
タイシンもまたデビュー戦を終えた為に重賞へと挑む事が出来る様になったのである
そこで、テイオーと戦い真意を問いただすのがタイシンの望みであった。
勿論、レースでは勝たせてもらうが
「どういう事かね!!!
トウカイテイオーならばOPならば楽勝だと君は言っていただろうに!」
「そうだ!
それに報道各社がトウカイテイオーの評価を下げつつある。これは好ましくない流れだよ?」
「申し訳、ありません」
此処が事業所の一室
レース結果を受けて、テイオーのトレーナーは呼び出しを受けていた
理由は勿論、テイオーの負けについてである
デビュー戦以降強気な発言ばかりしていたテイオーだった為に、負けたとなれば批判も多くなる
あくまでも、今までテイオーが好き勝手言えたのは『勝者』だったからだ
「更に面倒なのは、本校の秋川理事長にも動きがあるらしい」
「面倒なっ!!」
彼等の予定としては今年、トウカイテイオーで取れるだけのレースを取るつもりであった
彼等からすれば、トウカイテイオーは所詮本校のウマ娘だったもの。本人の言う通り『クラシック三冠』が出来るのであれば、此方としても環境面においてアピール出来るだろう
だが、仮に成さなかったとしても本校のウマ娘を奪うと言う意味では存分に意味があるのだ
だが、それとて『トレセン学園』という組織を創り上げた秋川やよいが本気で動いたならばご破産となる可能性は高い
「まぁ、落ち着きたまえ。秋川の小娘とてウマ娘の現状に風穴を開けたからと、その立場が固まった訳ではあるまい
未だ、ウマ娘に対して懐疑的な動きはある。となれば我らを表立って非難する等出来ようはずもなし
我らを排除したならば、『トレセン学園』そのものにも疑念が生じようて。政府内部でも秋川の占有事項になっている事に不快感を持つ者もいる。早々我らを切り捨てる訳にはいくまいよ」
残念ながら、これは紛れもない事実である
トレセン学園は今年で漸く5年目であり、事業所も3年目
確かにシンザンやシンボリルドルフと言ったスターを生み出しはしたものの、あくまでも未だマイナー競技の域を出ていない
これは、ウマ娘保護の為とはいえ、メディアの取材に制限をかけた事や一部においてレースを利用して利益を得ようとする動きがあったからである
つまりウマ娘のレース結果を予想するギャンブルであった
メディア各社は『自由な報道』を妨害したトレセン学園に対する意趣返しとしてこれを大きく取り上げた
結果として、ウマ娘のレースを素直に楽しむ人間にすら懐疑的な視線を向けられることになってしまう
トレセン学園本校側が表立って動けないのは、この様な状況下で彼等事業所側の不正を暴いたとして、果たして世間からどう見られるかが不透明であった事が大きい
理事長としては、そんな事よりも早期の解決を切望していたが、トレセン学園は秋川やよいのみが出資した訳ではない
無論、やよいが筆頭出資者である。だからといって、他の出資者の意向を無視する事も出来なかった
学園内部の問題であれば、協定内容である『学園内部の事項については、トレセン学園生徒会並び秋川理事長の意向を優先する』というものがあるので問題ない
だが、事業所は経営者から異なるのである事より、トレセン学園内部とは言い難かった
しかし、世間からすればウマ娘とトレーナーの育成を掲げる以上、どうしてもトレセン学園と同じものに見えてしまう
トレセン学園が関知していないにも関わらず、あたかもトレセン学園内の問題と捉えられる可能性が高かったのだ
その上で今回のレースである
トウカイテイオーに対するレース妨害ともとれるレース内容だ
当然のように大手メディア各社はこれも問題視しており、理事長やトレセン学園は取材に対応するので手一杯だった
一部自称『識者』からは今の秋川やよいの独裁状態がこれを生んだのではないか?との指摘もある
勿論、的外れもいいところだ
そも、トレセン学園はウマ娘とトレーナーを育成する施設であって、地方や個人のトレーナーにまで、強制力のあるものではない
レース内容やレースの審判の内容とて、トレセン学園に出来ることはないのだ
だが、所詮は自称『識者』
知識は半端な癖に言いようだけは一人前の者である
だが、大衆にアピールしづらいトレセン学園と、容易に大衆に情報を流せるメディアでは、最初から勝負にならなかった
いつの間にか、トレセン学園の学園側が悪いかの様な世論へと移りつつあった
彼等事業所の狙い通りに
トウカイテイオーは必死でトレーニングに明け暮れていた
もう二度と負けない為に
トレセン学園非難の世論が醸成される最中、とある日の事であった
トウカイテイオーが明らかにハードなトレーニングをしていると
「ねぇ、貴女。いつまでそんな無茶なトレーニングをするつもりなのかしら?」
「煩い」
「そうね。私は貴女のトレーナーではないわね
けれど、このままなら貴女に来年はないと思うわよ?」
「それを信じろって?」
「ええ
私だって一応トレーナーの端くれよ。此処のトレーナー擬きと一緒にされたくはないわね」
「擬き?どういう事さ?」
「あら、やっと話を聞いてくれる気になったのかしら」
自分を育ててくれるトレーナーをあろう事か『擬き』などと言い切った女性にテイオーは不快感を抱いた
だが、何故か無視してはいけない気がしたのだ
テイオーと女性はトレーニング場の端に座っていた
「私はね、今年の初めまではトレセン学園にいたの
あるウマ娘の育成をしていたわ」
「ふーん」
「まぁ、あまり興味はないでしょうね
当時の私はね、そのウマ娘を勝たそうとするよりもデータを望んでいたの。今思い返せば、だけどね」
「データ?」
「そう、それを蓄積していけば何れは届く気がしたのよ」
女性は目を細めた。まるで眩しい遠くのものを見るかの様に
「でもね、私は忘れていたのよ
散々以前お世話になったトレーナーから教えてもらったのにね」
「何をさ」
『俺たちには時間がある。それこそ、無駄にする時間がある程に
だが、ウマ娘達はそうじゃねぇ。限られた時間の中で精一杯の事をやろうとしている。それを手助けし、時に正すのが俺たちトレーナーの仕事』
「え」
「そう言ってたわ。何で忘れてたのかしらね」
女性は悲しそうに目を伏せた
「当時の私は忘れてた
ただひたすらに自分の理想をウマ娘に押し付けていたのよ
だから、私はトレーナーを外されて此処にいるの」
「どういう事さ?此処もトレセン学園でしょ?」
女性は目を丸くした
「?確かに分校と呼ばれてこそいるわね
でも、それは通称。正式にはトレセン学園とは全く異なるわよ
貴女も気付いているはず。此処のウマ娘に自由はない」
「そう、だね」
それはテイオーとて気付いていた
移籍した当初、余りにトレセン学園と違いすぎたせいで驚くしかなかったのを今でも覚えている
「そして此処のウマ娘は『モノ』なの
利益を生み出す為の、ね」
「そんなこと」
「無いと言い切れるの?
確かに貴女はレースに幾度も勝ったわね
でも、負けてから扱いが変わったと思わない?」
「う」
テイオーに否定はできなかった
勝っていた頃はトレーナーが四六時中ついてのトレーニングであったが、今は朝トレーニングメニューを渡した後は次の日まで姿を見ない
信頼されているとも言えなくもないが、放置されているとも取れる状態であった
「それに、他のウマ娘を見た事があるかしら?」
「ないね」
おかしな話である。トレセン学園の分校と名乗っているにも関わらず、テイオーのトレーニング時には誰一人見かけない
「今、私が言える事は一つだけ
此処にいても貴女にとって良いことは一つもないわ。覚えておいて」
女性はそう言って立ち去った
彼女は以前、サイレンススズカのトレーナーをしていた
だが、トレーナーを解任され、分校に来てから自分を見つめ直す事が出来たのだ
「私にはもう、遅いのだけどね」
彼女の寂しそうな声が少しだけ残った
同時期、とある地方局がある生放送をした
数十人の記者がいる中で
「私はトレセン学園前生徒会長シンザンです
最近言われているトレセン学園に対する根拠なき非難に対して『第一世代』を代表して遺憾の意を表明します
そもそも、大手メディアが言われる所の『報道の自由の侵害』について。これについては当時のトレセン学園への無許可での入校。ウマ娘達への執拗な取材等に対して報道各社へ正す様、幾度も要請しました
しかしながら、この要請は無視される事となり、あまつさえ学園所属の者がメディア関係者により負傷する事にまでなりました
にも関わらず、謝罪も弁明も無かった為に安全確保の為、学園への立ち入りを全面的に禁じただけの事です
次に申し上げるのは、先のレースにおける妨害ともとれる行為であります。が、それを妨害であるかどうかを判断するのはあくまでも審判側でありトレセン学園側に判断する権利はありません
加えてトレセン学園の影響力はあくまでも府中トレセン学園のみであり、その他に対しては影響力を持ち得ないのです」
一人の記者が手を挙げた
「どうぞ」
「それはおかしくはありませんか?
府中トレセン学園だけど今仰られましたが、トレセン学園分校もトレセン学園の影響下であるのでは?」
シンザンは目を細めた
「失礼ながら、そちらの記者殿は事前にしっかりとした調査や精査もされずに質問をなさっておられる様ですね」
質問した記者の顔色が赤く染まる。侮辱されたとでも思ったのだろうか
「では逆にお伺いしますが、貴方が言われる所のトレセン学園分校の正式名称は当然ご存知でしょうね
生憎と私はトレセン学園にて3年間生徒会長を務めましたが、分校という物を存じ上げません
私に正式名称を教えていただけますか?」
会場内がどよめいた
当然であろう。先代とはいえ、生徒会長が分校の存在を否定したのだから
「トレセン学園分校でしょう」
質問を返された記者は憮然とした顔をして答えた
「シンザンに変わって返答させていただきます
私は先代生徒会副会長、ミスターシービーです
あなた方が仰るところのトレセン学園分校とは、正式名称『ウマ娘関連事業育成所』といいます
更に申し上げるならば、学園では分校という呼称を使う事は初めはありませんでした。どちらかの報道関係者の方が『分校』との通称をつけたと記憶しておりますが?
後、質問なさる事に対して問題ありませんが、事前の準備くらいはお願いしたいものです」
シービーの視線が記者達を貫いた
元々理事長は元より、トレセン学園生徒会は『事業』などと言い切った組織に良い感情を抱ける筈もなかった
だからこそ、彼女達は『事業所』と侮蔑を込めて呼んでいる。決して育成所などとは呼ばない
記者達は互いに顔を見合わせた
彼等の想いは一つ
『やり辛い』だった
そもそも槍玉に挙げたのは現在のトレセン学園である
何故ならば『皇帝』や『女帝』などと持ち上げてられたとしても、メディアに対する対応は拙い。メディア関係者が優位に立ち回れるのは造作もない事であった
それに対して、先代生徒会は世間の荒波をかき分けてトレセン学園の基礎を創り上げた連中だ
メディアに対する対応も苛烈とは言わないものの、少しでも油断したが最後、そこから食い破られる恐れすらあるのだ
だからこそ、迂闊な一言を言った馬鹿な同業者に記者達は怒りすら覚えていた
「お静かに願います」
ざわめきの収まらない状況に生徒会側からの注意が飛ぶ
場が一瞬で静まり返った
(馬鹿野郎ども、相手を見て喋れ!)
彼は内心毒づいた
彼はウマ娘関連の記事をトレセン学園設立来書いてきた筋金入りの記者であり、それ故にこの会見を開いた先代生徒会の心中を誤解なく受け止めていた
(怒り心頭ってとこか。馬鹿な記事を振り回しやがって!
これだから、部数稼ぎの奴らの仕事は嫌なんだ
俺たちが築き上げたモノを一瞬でぶち壊しやがる!!)
彼はウマ娘や秋川理事長の努力と精神に敬意を持っている
世の中、どれだけ崇高な理念を持とうとも世間の無理解や悪意に押し潰される事は多々あるものだ
そんな中、まだ若い秋川理事長や学生の身分でありながら大人と対峙してきた先代生徒会は傑物と言って差し支えなかった
今回の件においても、彼はトレセン学園擁護の記事を会社に提出したが、会社側よりNGを受けた
曰く
「トレセン学園を擁護するなどあり得ない。批判の記事を書け」
だった
彼はその決定に従う事を良しとせず、会社を退職
フリーの記者として此処にいる
そもそも、前の会社とてトレセン学園関係の記事で相当部数を稼いだはずだと言うのに、いきなり背中から撃つかの所業。
彼には到底受け入れられなかったのだ
「では、続けます
シンザン、お願いします」
「うむ。カブラヤオーありがとう
先程、シービーからあった通りですが、世間で分校と言われている事業所について府中トレセン学園との上下関係といえるものは存在しません。故に事業所に対して行えるのは要請のみとなります」
記者の1人がまた手を挙げた
「どうぞ」
「お話の途中失礼します
ですが、ウマ娘関連の補助金をどちらも受け取っておられる。更に今回話題となっているトウカイテイオーは元府中トレセン学園所属と聞いております。全くの無関係という事はないのでは?」
「なるほど。この件は私よりもカブラヤオーに説明してもらった方がいいか
カブラヤオー頼む」
「わかりました
では一つずつ回答します
まず補助金についてですが、これの判断はあくまでも政府の判断であるため、トレセン学園との関係の有無は議論する必要はないかと思われます。確かに当時学園に政府より役人の方が来られましたが、その際に理事長と我々生徒会は事業所とは全く別の組織であると伝えてあります。それ以上になると、政府に問い合わせしていただきませんとわかりませんね
次にトウカイテイオーについてですが、私のトレーナーが中心となったウマ娘育成チームに一時期在籍していました
しかしながら、トウカイテイオーの意思により同チームを離脱。恐らくは事業所のスカウトがあったのではないかと思われますが」
「では」
質問した記者の声が出かかる
それをカブラヤオーは手で制すると
「ですが、一般の高校でも転校はある事。企業でも転職はあるでしょう?
生徒が編入した事で、また社員が途中入社したとして、元の高校や会社と繋がりが出来たとお考えになりますか?」
「うっ」
「これがスポーツの世界でも難しいでしょうね
もっとも、スポーツの世界は広い様で狭い。無関係とは言い難いでしょうが、それを以て関係者と断ずるのもおかしな話ではありませんか?」
「一つ宜しいでしょうか?」
「どうぞ」
別の記者がまた手を挙げた
「ありがとうございます
先程、シンザン元生徒会長よりの発言にトレセン学園関係者がメディア関係者により負傷したとありましたが?」
「それが何か?」
「事実だとすれば、何故公表なさらなかったのですか?」
「先方側が厚かましくも公表は控えてくれと要請してきたからですね」
「であれば、何故今回公表なさったので?」
「既にトレセン学園内への無許可での入校。学園関係者への傷害。二度ペナルティを犯しています
今回、根拠ない記事でトレセン学園の名誉を大きく傷付けた。これ以上の理由が必要ですか?」
「いえ、失礼しました」
シンザンはこう言ったのだ
「一度目は許そう。二度目も不愉快だが見逃す。だが三度目はない」
と
ある記者が顔面蒼白で挙手をした
「どうぞ」
「今、名誉を傷付けたと仰いましたが」
記者は恐る恐る尋ねた
「ええ、既に名誉毀損での訴えを提出しています
更に前回まで見逃していた者についても、今回関わっていた者については立件する事も視野に入れています」
カブラヤオーは冷ややかに言い放った
「記事を書くのが記者各位の仕事であるのは、理解している
されど貴殿らの仕事は根拠なき記事を以て、世論を誘導するものでないと私は信じたい。なればこそ、正す事も必要と学園関係者として学園側に提案した」
シンザンが続けた
「そ、それは」
「横暴ではないのか!」
怯える声と怒号がない混ぜになった会場内
だが、彼等は失念していた
地方ローカル局とはいえども、これを『生放送』で発信している事を
「カメラを止めろ!!」
とある記者がカメラマンに詰め寄る
だが、ガードマンがいる以上、接近はゆるされない
「おや、どうされましたか?
随分と落ち着きの無い方々の多い様ですね?」
シンザンの声が会場内に響く
(馬鹿どもが、よりにもよって寝てたはずの『魔王』を起こしやがって!)
『魔王』シンザン
一部の報道関係者が何より恐れる最悪の相手である
更に
『魔王の側近』ミスターシービー、カブラヤオー
この三人が揃うとマトモでないマスコミは一瞬で崩壊する
近年のマスコミはスクープを求める余り、無茶、無法な取材を行ない続けた。
そして、まだ大した実績のないウマ娘業界は格好の餌食になる『はず』だった
だが、耳の良い記者は知っている。トレセン学園側からの取材自粛要請に従わなかったある記者が理事長の飼い猫に暴行を加えた事を
これにより、今まで生徒会の抑えに回っていた会長シンザンも怒り心頭。手段を問わずトレセン学園内へのメディア関係者の立ち入りを禁じることになったのだ
それに対してマスコミ各社は会見を要請
そこで『自由な報道』に対して妨害したトレセン学園を非難するつもりだった
理事長は渋るだろうが、比較的理性的な生徒会長は応じるだろうとの見通しがあったからだ
だが、各社の思惑とは裏腹にトレセン学園側は会見を拒否。文面にて痛烈に取材方法を非難した
この際の主導者が事もあろうにシンザンであった事。その文面も苛烈だった事より、いつしか『魔王』と密かに呼ばれる事になった
理性的な記者達は動揺の一つもせずに席についたまま
逆に思い当たる節のある記者は電話をしたり、カメラマンに詰め寄ったり、元生徒会メンバーに詰め寄ろうとしたりしていた
一方で元生徒会メンバーは冷たい視線を記者達に向けたまま、無表情で席に着いていた
会場内はまさに混沌の様相を呈していた
そして、この映像は余す所なく電波に乗って発信されていた
ローカル局では?
「部長、流して良いんですか?これ」
「構わん。続けろ」
と部下が報道部長に質問する場面もあったが、滞りなく放送は続いた
この放送を見て仰天したのは他ならぬ大手マスコミであった
何せ醜態を晒しているのは大手マスコミ関係者ばかりであるのだ
これでは、「私達は後ろ暗い事してます」と言っている様なもの。地方ローカル局とはいえ、今はネットもあるしSNSもある
拡散するのは一瞬である
既に質問や抗議の電話が殺到してあり、電話係を急遽増員して対応に当たっている。が、大半が抗議であり、質問にしても答えられない。だから、そのうち抗議になってしまう
更に裁判所の協力者よりもトレセン学園からの訴えが届いている事が知らされており、非常に危険な状態といえた
これに追い討ちをかけるかの様にスポンサー企業からも早期の事実公表を求められていた
ここで、事実を捏造する事は出来る。出来るが、果たしてトレセン学園側にどう対応するか?
対応にしくじれば、間違いなく不満は今の比ではなくなるだろう事は容易に想像できる
特にこの会社は傷害の当事者の所属する企業。しかも、その人物は昇進しており、トレセン学園側に知れた場合のリアクションが想像出来ない。しかも、警察もその辺りをキチンと証拠などを押さえている事は疑いの余地がない。当時、警察関係者から聞いた情報があるからである
更に面倒なのはこの会社は育成所のスポンサーである事だ
実は『分校』という単語を出したのはココであり、それを浸透させることにより、トレセン学園の実績の分け前に与ろうとしたのだ
更にトレセン学園本校を将来的には廃校に追いやり、育成所を中心としたウマ娘ビジネスの展開を目論んでいた
どれか一つが発覚しても致命傷になる
幾ら主要メディアといっても、信用がなければ成り立たないのが企業である。このままではどうにもならなかった
手を打たなければならない。だが、打つ手が見当たらない
彼等の現実だった
故に
「テイオーを有馬記念に出走させる!?」
「そうだ、やれるな?」
「待ってください!幾ら何でもそれは!」
テイオーは尋常でない頻度でレースに出場していた
明らかにオーバーワークである
幾らウマ娘を出世の道具と見ているテイオーのトレーナーとて、それは看過出来なかった
寧ろ年末年始は休ませるつもりだったからこその、強行スケジュールだったのだ
テイオーの最終レースは11月末を予定していた
トレーナーとして見れば、テイオーの脚は限界に近かった
絶対に許容出来ない
「無理。そう言うのかね?」
不愉快そうに眉を吊り上げる
「元々その様なスケジュールであれば、如何ともしました
ですが!いきなりそう言われた所でどうにもなりません!」
「これはスポンサーの意向なのだ。それでも、かね」
「承服出来かねます!!」
「分かった、いってよい」
「っ!失礼します」
トレーナーの退室した後
「絆されでもしたか、役に立たんな」
「次のトレーナーを立てるか?
アレではまずかろう」
「だが、アレより有能なのはおらぬぞ?」
「夏前にトレセン学園から来たアレはどうか?」
「???」
「!ああ、トップジローのか」
「うーむ、しかし彼方の思想に染まっておらぬか?
少なくとも2年は居ったのではないか?」
「とはいえ、このままではマズイのも事実」
全員が顔を顰めた
というのも、来年の一月には政府の役人が此処に視察する事が通達された為である
最初は施設が出来た時であった為に問題なかった。2度目はトレセン学園分校という通称と賄賂で乗り切った
しかし、少し前の会見でそのメッキは剥がれてしまった
更に事が大きくなった為にいつもの役人のみでなく、二十人ほどの大人数での視察となるとの通知である
そして、肝心のスポンサーである大手マスコミも今や自身への抗議や不満を解消するので手一杯
スポンサー側はこの空気を払拭する為に、トウカイテイオーによる有馬記念制覇を望んでいるのだ
しかしそれとて、当のトウカイテイオーのトレーナーが反対しているのである
苛立つのも無理はないだろう
では、ウマ娘事業からの撤退は?
と問われるとそれも難しい
建物こそ、廃校になった高校を再利用しているとはいえ、それでも改修や増築もしているし、少なくないトレーニング機材も購入した
更に成功を確信した一部の役員は別荘を購入しており、それも含めるとまだ足りないのである
つまり、彼等は前に進むしか無いのである
それから、数日後の事
府中トレセン学園における動物虐待と不法侵入により、一人の報道関係者が逮捕される事になった
最後まで抵抗したが、所轄の警察官により証拠を提示され漸く大人しくなって連行されていったとされる
それを聞いたシンザンは
「漸く、漸くお前の無念が果たせたよ、ミリー
遅くなってすまなかった、な」
と自宅で力なく泣いていたとされる
「は?トレーナー今何てったよ?」
「ええっ!本気ですか?トレーナーさん!」
「へえー、いいじゃんか、それさ」
「ふーん。出て良いんだ、有馬記念」
チーム『スカーレット組』のトレーナーはウオッカ、ダイワスカーレット、ゴールドシップ、ナリタタイシンを集めて話をした
「次のレースに全員を出し、そこで1着を取った者に有馬記念出走の権利を預ける」と
「1番は譲らないからね!」
「負けるかって!」
「いやー、今回ばっかはゴルシちゃんも本気で勝ちに行くぜッ!」
「は?誰であろうと負ける訳にはいかないし」
レースはOP戦でありながらも壮絶なレースとなった
先行するスカーレットに追走するウオッカ。最後尾手前で構えるのはゴールドシップ。最後尾はナリタタイシン
中盤にてゴールドシップが追い込みをかけ、先頭集団に肉薄する
スカーレットは先頭に、ウオッカは4番手。ナリタタイシンは未だ最後尾だった
最終コーナー手前よりナリタタイシンが加速、一気に追い込みをかけると先頭集団を直ぐに捉えた
スカーレットとウオッカの差は僅か半バ身、ゴールドシップは4番手
しかし、ゴール僅か20メートルにてナリタタイシンが全バを追い抜き先頭へ
「嘘っ!」
「おいおい、マジかッ!」
「畜生、それはゴルシちゃんの得意技だっての!」
しかし、ナリタタイシン先頭でも2番手スカーレット、3番手ゴールドシップ、4番手ウオッカ
有馬記念に出走できるのはどのウマ娘だ?
『みんな違ってみんな良い』『時には間違える勇気も必要』『人生には遠回りも近道もない』
私が恩師や友人から貰った大切な言葉です
と言うわけで小説にも反映してみました
以前も書いた気がしますが、ウマ娘といっても、まだ子供。大人に振り回されてしまうのです。悲しい事ですが
さて、今回に限りアンケートを実施したく思いますので宜しければご協力の程、宜しくお願いします
ではご一読ありがとうございました
誰がレースに勝った?
-
ダイワスカーレット
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ウオッカ
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ゴールドシップ
-
ナリタタイシン
-
同着