オレシラナイ
とある少女は憧れのトレセン学園に入学が決まってから、とある人に会いに行った
おや、君かい
どうしたというんだい、嬉しそうな顔をして
ふうん、トレセン学園への入学が決まったのか
それは素晴らしい事だ
うん、私かな?
君の予想通り、私も元トレセン学園の生徒さ
ははは、そうは見えなかったかい?
うん?
受験勉強を手伝って欲しかった
いやいや、それはキミ自身が乗り越えねばならない壁だよ
あそこには良い思い出もあれば、苦い思い出もある
だが、全ては自分が決めて進んだ道だ
後悔などないし、いい生活だったと思うよ
うん?
私のパートナーの話かい
流石にそれは勘弁願いたいものだね
ああ、そうしょげないでほしい
いやいや、だからと言って話をして欲しいというのは卑怯ではないかな?
ふむ、トレーナーについて。か
トレーナーとはウマ娘を支え、導き、共に進むものだと私は思っているよ。まぁ、この意見には是々非々あるだろうがね
良い出会いだったか、だって?
勿論さ。彼には口に出して言うつもりは毛頭ないけど、彼と出会えた事は間違いなく私の人生最大の幸運だったと思うよ
うん、顔が赤い?
やれやれ、キミも年上をからかうんじゃないよ
しかし、気が変わった
時間があるなら、少し話をしようじゃないか
彼と私が出会ったのは、まだ深緑の残る季節だったね
私は他の皆と比べてそこまでレース自体に価値を見出していなかった
寧ろ、私のテーマの追求こそがあの学園で私がすべき事だと当時は思っていたよ
実際、当時の生徒会からは良く呼び出されていたし、特に生徒会長からは睨まれていたな
うん?
テーマかい
私達ウマ娘は生まれながらに高い身体能力を有しているのは有名な話だ
だが、私達は『何処まで行ける』のか気にした事はないかな?
ああ、すまない
少々難しい話だったかな
そうむくれる事もないだろう
実際に今でも結論の出ないテーマだ
今の様な少しのやり取りで答えが出るはずもない
話が逸れたね
そのテーマの追求こそが当時の私の至上命題だった
だからこそ、問題にならない程度に成績は出していた
それが逆に周囲からすれば不満だったんだろうな
今でこそ理解出来るが、あの頃の私には理解出来なかった
いや、違うか
目を逸らしていたのだろうね
本当に今思い返せば、情けなくなる話だ
当時なんだかんだ言って面倒をかけたカブラヤオーくんには頭が下がるよ。良くこんな面倒な人物と3年間付き合えたものだ、とね
やる気のある同期は、それこそ春のうちにはトレーナーを見つけ、デビュー戦に向けてトレーニングに明け暮れていた
大体の同期は夏前までにはトレーナーを見つけていたね
当たり前だ。夏の合宿は重要なんだから、それを棒に振るなんて褒められたものではない
まして、当時のトレセン学園は開校したばかりだったんだ
実績を残そうとするのは極当たり前の理屈だったんだよ
ある意味では学園長、いやあの子に私は救われたんだろうな
うん?
興味があるのかい
やれやれ
あれはあまり話したくない類の話なのだけどね
わかっているよ
私から話すと言ったんだ。約束は守るさ
あの時のトレセン学園の理事長室には5人の姿があったね
トレセン学園理事長 秋川やよい
その秘書 駿川たづな
トレセン学園生徒会長 シンザン
生徒会書記 カブラヤオー
そして呼び出された私
正直な話、此処までかと思ったよ
会長であるシンザンくんならば、まだ対応のしようもあった
だが、理事長まで出て来るのは予想外だったね
「疑問っ!何故トレーナーを見つけようとしない?」
実際、私にも最初はそれなりにトレーナー希望者がいたんだ
だが、私には価値のあるものには見えなかった。だから断った。それだけさ
それを言葉を変えて伝えたところ
「別に君の言う事を否定するつもりはない
だが、この学園は出来たばかりだ。少なくとも、方針には従ってもらわざるを得ない」
「か、会長の言う通りです
勿論、貴女が目指すものを聞いて、わ、私は素直に凄いと思いましたし、手伝える範囲でなら手伝いたいと思ってます
で、でもその為に本業を疎かにするのは違うと思うんです
か、会長に理事長。でも彼女は真剣にしています。もう少しお時間を頂くことはできないでしょうか?」
顔を蒼白にしながらも、私を擁護してくれようとするカブラヤオーくんは印象深かったね
「カブラヤオーさんの言いたい事も分かります。ですが、ここはトレセン学園という組織なんです
その方針について行く事はこの学園に入学する時に理解しているはずです」
理事長は顰めっ面、会長は仏頂面、たづなさんは非難、カブラヤオーくんだけが心配そうな顔をしていたね
これまでと思ったよ
「む、どうしたミリー」
今まで動かなかった理事長の頭上にいた猫がいきなり理事長から降りて、理事長の服の裾を噛んで引っ張っていたんだ
「にゃお!」
私や会長達にはただの鳴き声にしか聞こえなかったが、理事長には別の意味があったらしい
「驚愕っ!ミリーは不服なのか?」
唖然としたね
猫が鳴いただけで何を言っているのか、と
だが
「にゃおっ!」
あの時、猫は確かに『首を縦に振った』
理事長とたづなさんは驚いていなかったが、私達は驚いたよ
偶然にしては出来すぎていた
理事長は少しの間、目を閉じたのち
「妥協っ!今暫くの猶予を設ける」
と言ったのだ
ああ、驚いたさ
しかも、たづなさんはそれに異を唱えなかった
そこで私に秋口までにトレーナーを見つけなければ、退学になるという事を通知された
カブラヤオーくんは涙ながらに喜んでくれたよ
私も正直ホッとしたね
その時、そんな私の服が引かれた気がした
下を見ると
「にゃおー」
あの時の猫がいたんだ
「理事長の猫、か
どうしたんだい?
いや、その前に礼を言わせてほしい。きみのお陰で私は何とかまだ残れた。ありがとう」
「にゃー」
私のお礼が分かったのか、一鳴きして理事長室へと戻って行ったよ
その後、私はあの人と出会った
「キミのモルモットになる!」
そう聞いたときには我が耳を疑ったよ
素直な意見を言えば、狂ってるのかってね
だが、不思議と嫌な気分にはならなかったねぇ
後はキミも知っているだろう?
ふうん、そう言うことさ
なっ!だ、だ、誰からその話を聞いたんだ!
彼には口封じをしてい
ううっ、その話は誰にもしない事!
分かったね!
何?私にも可愛いところがある?
「いい加減にしたまえよっ!」
はぁはぁ、先ほども言ったと思うがね、年上をからかうものではないよ。全く
ん、ああ
もうこんな時間が
そうだね、そろそろ準備したまえ
別に居なくなるわけでもない。また話を聞きに来るといい
ああ、いってらっしゃい『スカーレット』
名前は敢えて伏せた
とはいえ、原作やゲームプレイしてるとバレバレだと思われるが、それはそれでヨシッ!(現場猫)
よかったら感想くれると嬉しいです
ではご一読ありがとうございました