嗚呼 忙しなき日々よ   作:ノイフェル

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サイレンススズカについては二話かけます

史実を知っている方からは批判の出る内容になっておりますので、事と次第によっては削除するかも知れません



それでも宜しければ、どうぞ


 進む サイレンススズカ

 『栄光を継ぎし者達』

 

 

それは創設、混乱、波乱という時代を見事に走り抜けた『神バ』シンザンを始めとしたトレセン学園一期生に対して『皇帝』シンボリルドルフを頂点とした所謂トレセン学園二期生へとつけられた呼称であった

 

 

一期生にはシンザンの他にも差しのミスターシービー、逃げのカブラヤオー等という錚々たるメンバーが揃っていた

 

 

 

その栄光を継ぐ者として期待されていた二期生。殆どのウマ娘はその見上げた先にある栄光を目指し、越えようと己を奮い立たせた

 

『栄光世代なにするものぞ』と

 

 

 

 

 

だが、殆どと言った以上、少数ながらにその重すぎる期待に押し潰されるウマ娘もいた

 

あるものは期待に潰され、あるものは期待に応えようとオーバーワークを行なった結果、ウマ娘として活躍出来なくなった

 

 

 

 

 

 

「はぁ」

 

ここにいる少女、サイレンススズカもまたその期待を負担に思うウマ娘であった

 

 

確かに先輩達は凄い

 

でも

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私はただ、気持ち良く走りたいだけなのに」

 

 

 

 

サイレンススズカはレースが好きなのではない

走る時のあの感覚、自分だけの景色が見える事が好きなのだ

 

 

 

だが、サイレンススズカにとって不幸なことに彼女は既に『カブラヤオーの再来』との期待をかけられている

 

 

先達であり『殺人ラップ』『狂気の逃げ足』との異名を持つカブラヤオーに勝るとも劣らない逃げ足と評価されてしまった

 

当然、スズカの元にはカブラヤオー越えを目指すトレーナーが数多く押し寄せる事となる

 

スズカは物静かな性格であり、それ故にトレーナー希望者達が押し寄せる事は正直、煩わしいことでしかなかった

 

 

最終的にはある女性トレーナーの熱意に根負けする形でトレーナー契約を結ぶ事になる

 

 

ここでスズカの不幸は相手のトレーナーが少なからずウマ娘の育成実績を持っていた事である

 

 

 

仮に新人トレーナーであれば、スズカの想いや走りも重視してくれただろう

 

だが、そのトレーナーは『栄光世代』に走ったウマ娘をサブトレーナーとしてとはいえ、育てた実績があった

 

 

勿論、そのトレーナーがかの『神バ』などと言った傑物を育て上げたのであれば良かったが、あろうことかカブラヤオーに負けたウマ娘の育成に携わっていた

 

 

 

 

カブラヤオーのライバルといえば誰か?

 

そう問われてシンザンやミスターシービーを上げるものはそういない。

東京ステークスにて世代においても、抜きん出た接戦を行なったテスコガビーか、皐月賞にて文字通りウマ娘としての選手生命をかけてカブラヤオーに挑んだレイクスプリンターが名前に上がるだろう

 

前者はステークス後に故障し、そのまま引退を余儀なくされ、後者はカブラヤオーの殺人的ラップに競り合った結果、予後不良となりそのまま引退した

 

 

ではスズカのトレーナーはいずれかのウマ娘のサブトレーナーであったかといえばそうでもない

 

彼女が担当していたのはカブラヤオーに日本ダービーで挑んだトップジローである

 

トップジローは先立っての皐月賞を見ておきながらもカブラヤオーに序盤から挑み、結果終盤にて大きく順位を落とす事になった

 

 

 

故にカブラヤオー越えには並々ならぬ意欲を示していた

 

 

 

 

 

 

 

だが、彼女の提示した作戦はスズカの想い描く走りとは相容れないものであった

 

 

それでもスズカはその指導に従って、幾つかのレースに出場したのだが

 

 

 

 

 

 

勝てない

 

 

それどころか、どんどん悪くなっていく様な嫌な感覚に襲われてすらいた

 

 

 

 

 

 

 

偶々、そのレースを見ていたあるウマ娘はスズカを呼び出す事にした

 

 

 

「あの」

 

「悪いな、突然呼び出しなんかしてよ」

 

「いえ。それでレイクスプリンター先輩、何の御用でしょうか?」

 

突然、しかも全く関わりのない先輩からの呼び出し

本来なら応じる必要はない

 

だが、スズカは鬱屈とした思いを抱えており、このままではマズイと内心で思っていたからこそ、応じた

 

経験も実績も自分より遥かに上の先達である

何か少しでも今の状況を変える為、藁にも縋る気持ちであった

 

 

 

 

 

 

 

「お前よ、レース楽しくねぇだろ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え」

 

 

スズカは呆然とした

 

何故この人が、今日初めて会ったはずの先輩がそれをわかるのか?

 

 

 

「何でわかんのかって顔してやがんな

見りゃ分かる」

 

 

何でもない様に言い放つ

 

 

そう、スズカを呼び出したのはレイクスプリンター。カブラヤオーとの死線の末、破れ引退したウマ娘であった

 

 

 

「私らウマ娘ってのはな、車やバスじゃねえ

私らの気分ひとつでどれだけ有利なレースもひっくり返るし、その逆もある

だからこそ、私らはトレーナーとの関係を密にせざるを得ない

でないと、実力を発揮できねぇからな

当然だが、お前さんの内心はレースを見てりゃあ分かる」

 

「でも」

 

「お前のトレーナーには伝わらない、か?

そりゃそうだろ。お前のトレーナーはお前を見ている様で見てない

偶にいるんだよ、ああいうのが」

 

「っ!」

 

 

「私はな、確かに皐月賞でカブラヤオーの奴に負けた

しかも、トレーナーと相談したとは言え、限度を超えたレースをしちまった

情けねぇ事にそれで終いだ

だがな、私はあのレースを後悔してねぇし、忘れねぇ」

 

次第に話にも熱がこもる

 

「あのレース、終わったときに思ったのはな『勝てなかった』って気持ちだけだった

カブラヤオーの奴を恨むつもりもねぇし、寧ろ誇って欲しいくらいさ」

 

「誇る」

 

「そうだ。レースである以上、必ず勝者と敗者が生まれる

そりゃ、レース中に明らかな不正があるなら気分悪いぜ?

だけどよ、んなもんはあの勝負に無かった。あったのは私の勝ちたいと言う思いと、奴の負けたくないっつう思いだ

それがぶつかり合って、あのレースを生んだ」

 

「私のトレーナーはレース後にカブラヤオーの事を『化け物』っつてた話は知ってるか?」

 

「はい」

 

「だがな、あれはあいつの発言の真意を汲み取ってねぇんだよ」

 

「真意、ですか」

 

「当たり前だ。確かに私は無理し過ぎて、あのレースを最後に引退した。だがな、当の私が納得してるんだ

それをあいつがわからねぇはずがない

あいつはなカブラヤオーの努力にかける執念こそが『化け物』だっつったんだよ」

 

「執念」

 

「ああ、カブラヤオーの奴はそこまで人付き合いのいい奴じゃねぇ

寧ろ人付き合いは極力避ける奴だ

だが、勘違いすんなよ?

それはカブラヤオーの奴のレースにかける想いが軽いなんて事に繋がりはしねぇ

元々体格もそこまで良くねぇカブラヤオーの奴は差しや追い込みには向かない。バ群の中に入って抜け出すにはそれなりのパワーと体格がいるからな」

 

「そうですか」

 

「だがな、それでもアイツは勝ちを諦めなかった

その結果生まれたのが」

 

「殺人ラップ」

 

「そうだ。他のウマ娘を圧倒的にねじ伏せる速さをアイツは求めた

同じトレセン学園の同期だ。当然練習風景を見る事は幾らでもあった

アイツのトレーナーってのも普通なら凄くアイツに甘々だった

だが、勝利を目指すアイツの為にトレーナーも鬼になった」

 

「鬼」

 

レイクスプリンターは一息ついた

 

「ああ。ありゃ鬼だった

世代最強であるシンザン、その次に位置するミスターシービーもあそこまでの特訓をする事はなかった

あのシンザンとミスターシービーが止めに入るほどだぜ?」

 

「っ!」

 

スズカは息を呑んだ

 

「だから、あいつは『化け物』っつたんだ。レースへの、勝利への執念に対してな

というか、カブラヤオーの奴のトレーニング見てりゃわかんだろうによ。言葉を仕事にする割には読み取る能力が低いのには呆れたがな」

 

 

「後よ、私が好きな言葉がある『勝者には栄光と名声が与えられる。されど勝者と敗者には栄誉が与えられる』ってのがな」

 

スズカは声も出なかった

 

「お前さんも精々悔いのないレースをしろよ?

私たちのレースは後に続く者達への贈り物なんだからな」

 

 

レイクスプリンターはそういって帰っていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





というわけでサイレンススズカといいながらもカブラヤオーメインになった様な気がしなくもない四話目でした



ではご一読ありがとうございましたー
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