『遠く時の環の接する処で』【完結】   作:OKAMEPON

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『遠く時の環の接する処で』
『復讐者』


◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 叶えてはならない『想い』と言うモノがある事を、私は彼に出逢ってから初めて知った。

 

 遠い遠い……まだ幼く幸せであった頃の微睡む様な日々の中、夢見る幼子の為の寝物語の中で知ったその『言葉』が、息すら儘ならぬ程の苦しみを伴うものであると知っていれば。

 彼にそんな『想い』を抱く事も無かったのだろうか……。

 幼い頃に憧れたそれは、多くの人々から祝福される様な、奇跡だって起こしてしまえる様な素晴らしいものである筈だった。

 それがどうして、こんな……。

 

 何時か、大切なお父様を殺す人を。

 何時か、彼を信頼する全ての人を裏切る人を。

 何時か、この世界を『絶望の未来』へと導く人を。

 遠い『未来』の何時かで、私のお父様を殺した『彼』を。

 そして、必ず私がこの手で殺さねばならぬ人を。

 

 何故、私は──

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 『絶望の未来』を変える為に『過去』へと渡った時。

 ルキナが過去の『お父様』──クロムと最初の接触を果たした時点で、彼は既にクロムの傍に居た。

 

 何時か必ずクロムの命を奪う裏切り者である事は『知って』いたけれど、だからと言って即座に斬り殺して排除する事は出来ない程に、彼は『これから』のイーリスには無くてはならぬ存在である事もルキナは『知って』いた。

 彼の存在無くしてはイーリスは最初の大波であるペレジアとの戦争すらも乗り越えられなかったであろうとは、あの『未来』でも言われ続けていたし、実際彼と同等の知略を発揮出来る人間は今この時のイーリスには存在しないだろう。

 だからこそ、彼の存在が『絶望の未来』への分岐点であるとは承知していながらもその場で排除する事は出来なかった。

 少なくとも、ペレジアとの戦争とヴァルムからの侵攻。

 この二つの大波を乗り切らせるまでは、彼の首は繋げておく必要がある。

 また、その二つを乗り越えさせるまでは彼にイーリスを裏切らせる訳にはいかない。

 だからこそルキナは、これからの未来が自分が知る『歴史』から大きく外れない程度の干渉に留めなくてはならなかった。

 先ず第一に目指すべきは、『聖王エメリナの暗殺』の阻止だ。

 彼女が暗殺され国が混乱していた最中で始まったペレジアとの戦争は、長期に渡る泥沼の消耗戦へと発展してしまった。

 そんな中でも、クロムやあの裏切り者の活躍によって、何とか戦争はイーリスの勝利に終わったのだが……。

 しかし戦争の傷痕は深く、戦後復興も思うように進まぬ内に今度はヴァルムからの侵攻が始まってしまった。

 その二つの大波の所為で大陸全土が疲弊してしまっていたからこそ、ギムレーが蘇った後で急速に世界は滅びへの道を辿る事になってしまったのだ。

 『聖王エメリナ』が生存する事で、その『絶望の未来』へと至る道が少しでも変化する筈である。

 ……勿論、『聖王エメリナ』が生存すると言う事は、決して小さな改変ではない。

 ルキナが知る『未来』でエメリナの跡を継いで聖王となりイーリスを纏め上げたのは父クロムではあるが、エメリナが生存するならば当然その必要はなく。

 それによる変化によっては、どうかすれば『ルキナ』と言う存在が産まれる道すらをも絶つ可能性もある。

 ……その危険性は、既に承知している。

 

 この世界に産まれる可能性があった『ルキナ』を、存在そのものすら消し去る事になるのだとしても。

 

 それが、『絶望の未来』を防ぐ為の代償となるのならば、ルキナは支払わなければならない。

 その咎が、誰が知るものでは無いのだとしてもルキナの胸に一生刻まれる事になるのだとしても。

 

 ……それに、エメリナを生かそうとするのにはある種の打算的な目論見もあった。

 エメリナの生存は、二つの大波のその根本には強く干渉する事は無いからだ。

 エメリナ暗殺が起こったのはペレジアとの開戦直後であるし、聖王が誰であろうとヴァルム大陸からの侵略は起きる。

 戦争と言う二つの大波が変わらないなら、大局的に見ればルキナが知る未来と大きくは変わらない道を辿る可能性は高い。

 聖王であろうとなかろうとクロムの傍を彼は裏切るその瞬間までは離れる事は無いだろうし、その能力を遺憾無く発揮して戦争を勝利へと導いてくれる筈だ。

 それに。

 

 彼の目的が『聖王』であるのならば、彼がその命を奪おうとするのはクロムではなく聖王エメリナになるのかもしれない。

 そうでなくとも、ファルシオンを扱えるクロムが命を狙われる可能性は少しでも下がるであろう。

 クロムが生きていれば、そしてその手にファルシオンがあれば。

 きっと、『絶望の未来』に至る事は無い筈だ。

 結局の所、ルキナがエメリナの命を救おうとするのは、それがクロムの生涯に渡る悔恨であったからなどではなく、そうする事でクロムが死ぬ未来が少しでも遠ざかる可能性があるからである。

 幾ら繰り返し繰り返しクロムの口からその非業の死を語られ続けてきた伯母なのだとしても、ルキナにとっては生まれる前に既に故人であった人でしかない。

 父親よりも優先される人間には決して成り得なかった。

 クロムを死なせない。

この世界を『絶望の未来』になど至らせない。

 それが、ルキナの目的の全てである。

 その為ならば、『死んでいた者』をも利用するし、裏切り者を有効活用する為に泳がせておく事もする。

 自分のそう言った判断は、決して誉められたモノではない事はルキナも重々承知している。

 そもそも今のルキナの行動は、所詮は己れの世界を守り切る事が出来なかった敗者が、過去を改変すると言う禁じ手を行ってでも自らの望む結果を手にしようとしている……そんな悪足掻きでしかないのだろう。

 自分ではギムレーを倒せないからとあの未来から逃げ出して、『過去』の父達にその解決を委ねようとしているのと、本質的には大した違いはないのかもしれない。

 だが、ルキナはそれでも良かった。

 どんな言葉で飾り立てようとも、そもそも『過去』を変えると言う行為とは何処までいってもエゴ以外の何物でもないのだから。

 そう、ルキナは幼い頃に喪ってしまった父を助けたかった、あんな破滅的な未来をどうにかしたかった。

 詰まる所、それだけなのだ。

 だからこそ、ルキナはその為に全てを賭けるのだし、その為ならばどんな咎を背負う事になるのだとしても躊躇わない。

 例え、生まれる筈だった誰かを『存在しない者』にしてしまうのだとしても。

 例え、何れ『絶望の未来』へと辿り着くのだとしてもそこに確かにあったであろう数多の『幸せ』や『願い』を踏み躙り『無かった事』にしてしまうのだとしても。

 ……………………それでも。

 

 …………守られるだけであった無力な幼子であったあの日に喪ってしまった『父』が、生きていてくれるのなら。

 ……父亡き後の国を必死に支え我が子を守る為にその身を捧げてしまった『母』が、生きていてくれるのなら。

 例えそれが、『ルキナ』の親ではないのだとしても、ルキナが変えてしまった『未来』ではそもそも二人が結ばれる事はなくなってしまうのかもしれなくとも。

 ルキナには、ただただそれだけで良いのだ。

 

 それは剰りにも独善的で傲慢にも過ぎる想いなのであろう。

 咎人となる覚悟は既に定まってはいるが、そもそもその罪もその罰も、一体誰が正しく裁けると言うのだろうか。

 咎を背負う覚悟ですら、あまりにも自惚れた考えであるのかもしれない。

 しかしかと言って。

 世界を救う為なのだから、ギムレーがもたらす滅びからこの世を守る為なのだから、と。

 そう自分の行為を正当化する事は出来ない程度には、ルキナは傲慢には成りきれなかった。

 

 だが、決して自らを正当化出来ないのだとしても。

 最早ルキナは既に選択し、ここまで来てしまっている。

 今更、後戻りなど出来はしない。

 戻った所で一体何が出来るのか。

 全ての命が燃え尽きた滅びの大地で、自らの無力を嘆きながら無意味に死ぬのか? 

 そんなものは何の価値もない自己憐憫であろう。

 後悔に心が引き裂かれようとも、自分への憎悪と無力感に死を望みたくなろうとも。

 それでも、『過去』に戻り自分の傲慢を貫く事を選んだのは、  ルキナ自身である。

 それだけは、忘れてはならない。

 

 だからこそ、ルキナは何を対価とするのだとしても、『未来』を変えなければならないのだ。

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 『聖王エメリナの暗殺』は阻止する事に成功したが、エメリナを生き延びさせる事は出来なかった。

 一度は救えた筈のその命は、ルキナの足掻きを嘲笑うかの如く、悪意の荒波の中へと沈み消えてしまった。

 暗殺で命を落とすか、敵国であるペレジアで自ら身を投げたかの違いはあるが。

 ルキナの行動は、エメリナの死期をほんの僅かに延ばしただけに過ぎなかった。

 その違いに、ルキナが足掻いた『意味』は、世界を救う為の変化への『兆し』があるのかは、今のルキナには分からない。

 結局の所、一つ一つの出来事や選択の〈善し悪し〉と言うモノは、歴史を大局的に見られる後世になってからでないと判別するのは難しい。

 例え『未来』を知る者であるのだとしても、当事者として精一杯に生きて足掻き続けるしかないルキナには、そう言った大局的なモノの見方など出来はしないのだから。

 

 エメリナの死に、彼が関ったのかはルキナには分からなかった。

 身を潜めながらも彼の動向には常に注意していたのだが、少なくとも、内通や何らかの裏切り行為を働いている様には見えなかったのだ。

 しかし、裏切り者である事は確定されているのだから、完全に白とも言い難い。

 ……まあ、彼が狙っているのはあくまでもクロムの命であり、『その時』までは忠実な軍師で在り続けるのかもしれないが。

 何にせよ、エメリナは死に、細部こそ異なれど、大局的な歴史としては概ねルキナが知る『歴史』とは大きくは外れてはいないのだろう。

 エメリナの死が少しだけ変わった影響からなのか、ルキナが知る『歴史』よりも早くにペレジアとの戦争は終結し、イーリスは早期から復興に取り掛かる事が出来ている。

 フェリア兵の損耗も、ルキナが知る『歴史』よりは少ない。

 凡そ二年後にヴァルム帝国が侵略してくる未来は変わらないのだとしても、復興により力を蓄えたイーリスと兵力の損耗を抑えられたフェリアなら、ルキナが知る『歴史』よりもよりイーリス側に優位に戦局を運べるのかもしれない。

 万が一に備えて各地に散らばっているであろう『宝玉』の位置を確認しておくべきではあるが、それでも、イーリスの手の内に『炎の台座』と『白炎』がある事を考えると、ルキナの知る『歴史』よりも遥かに状況は良いと言えよう。

 

 その差は一体何なのであろうか。

 『聖王エメリナの暗殺』を阻止した事によるのだろうか。

 それは、分からないけれど。

 しかし、もしもそうならば。

 エメリナ自身の死の運命は変えられなかったのだとしても。

 そうやって、ほんの僅かでも世界の状況を『良い』状態に変えられたのならば、少しでも『絶望の未来』を遠ざけられたのなら。

 …………ルキナが、『過去』にやって来て足掻いている『意味』はあったのだと、そう思えるのだろう。

 

 ルキナの知る『未来』と同じくこの世界でも父と母は結ばれた。

 そうなれば、この世界にも『ルキナ』が産まれてくる可能性は高いのであろう。

 この世界の『ルキナ』を『存在しない者』にする覚悟は既に決めていたけれど、それでも…………父と母の元へ『ルキナ』が娘として産まれる事が出来るのならば、それ以上に嬉しい事はない。

 そこに居るのがルキナ自身でなくとも、『ルキナ』が両親から愛されていれば、ほんの僅かにでも救われた気持ちになれる。

 その『幸せ』を守る為に『未来』を変えようと、この胸に抱いた決意を新たに出来る。

 

 ルキナの本当の願いは、決して叶う事はない。

 例えこの世界の父を救いギムレーの復活を阻止した所で、ルキナの『お父様』は還っては来ない。

 いや、あの置き去りにしてしまった『未来』で、過去を変えた事によって死者が生き返る様な事が起こり得るのだとしても。

 ルキナが喪ってしまった時間は決して戻りはしない。

 幸せだった子供の頃に戻る術など、存在しない。

 何度過去へ戻ろうと、どんな神に縋っても。

 今ここに存在するルキナが。

 『絶望の未来』で希望なんて抱けないままに足掻いて抗い続け、そして悪足掻きの様に『過去』へとやって来たルキナが。

 『あの日々』に帰る事は、出来はしないのだ。

 

 だからこそそれは、一番の願いは決して叶わないと分かっているが故の、ルキナの自己満足でしかないのだろう。

 ルキナは『ルキナ』に己を重ね、両親から愛されている『ルキナ』を通して、もう二度とは手に入らない『両親』からの愛を幻視しようとしているだけなのかもしれない。

 それは、この世の何処にも存在し得ないものへの、決して取り戻せぬと知りながらも諦める事など出来はしない強い強い『憧れ』の様なものなのだろう。

 そんな歪な『願い』を抱いていれば、何時か『ルキナ』へと歪んだ感情を向けてしまう事になるのかもしれない。

 まだ存在してすらも居ない『自分』へそんな恐れを抱くなんて、馬鹿げてもいるが。

 

 

 国を挙げての盛大な婚礼の儀式を執り行う両親の姿を遠目に見詰め、ルキナは静かにその場を離れるのであった。

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 踏み込みながら、斬り捨てる様に一撃。

 抵抗する為に剣を抜こうとするならば利き腕を潰し、魔法を行使しようとするならば発動する前に喉を潰す。

 蹴り倒すようにして拘束して、首を刎ねる……。

 

 前を歩く彼──何時かクロムを裏切り殺す大罪を犯す事になるルフレのその一挙一動に注視しながら、ルキナはルフレを殺す為の手順を何度も頭の中で描いていく。

 ルフレの細かな重心のかけ方の違いや咄嗟の動きを分析しては適宜修正して、ルフレを殺す為の『最適』な手順を探していた。

 

 勿論、ルキナは『まだ』ルフレを殺すつもりはない。

 ヴァルム帝国との戦争が始まった今、ルフレの力は無くてはならないものだ。

 ルフレが裏切るのはヴァルム帝国との戦争が終結してからの事。

 ならば、この大波を乗り切るまでは、ルフレには生かしておくべき『価値』がある。

 

 あの『絶望の未来』で裏切り者の名を知ってからずっと殺意を研ぎ澄ませてきたルキナであったが、当人を前にしている状況でそれを晒け出す程愚かでもない。

 能天気にもルキナを前にして無防備なこの裏切り者は、ルキナがそれに気付いているとはまだ分かっていないのだろう。

 いや、薄々感じていてそれを探る為に、ルキナと接触する機会を多く持とうとしているのかもしれないが。

 もしそうならば、大した役者である。

 ルフレを知る誰もが騙されたのも頷けよう。

 人畜無害そうな顔で他人の心に自然と入り込み、信頼出来る雰囲気を纏う事にかけてこの男の右に出る者は居ないのだろう。

 だがそれは、この男が裏切り者であると最初から知っているルキナには何の意味も無い。

 人畜無害なその顔の下にどんな醜悪な本性が隠されているのか、彼を信じる者達全員の前で暴き立ててやりたくなる程だ。

 まあ、それはもう暫し先の事になるだろうが。

 

 紆余曲折あったがルキナはクロムと行動を共にする事になった。

 それにはやはり、この裏切り者を最適なタイミングで始末する為と言う理由が大いにある。

 その目的を思えば、こうしてルフレが度々向こうから共に過ごそうとしてくるのはルキナにとっては都合が良かった。

 別にこの裏切り者を絆そうなどと言う意図は無い。

 そんなものが有効であるのならば、そもそもクロムを裏切る事も無かったであろうから。

 『半身』とすら呼び合う程の信頼を得ていたのに、それでもこの裏切り者は結局の所クロムの命を奪う事を選ぶのだ。

 そんな相手にマトモな『情』を期待するだけ無駄と言うものであろう。

 

 しかし、こうしてより近くで監視する機会を得られると言うのは思いの外良い収穫であった。

 観察する機会があればある程、相手の動きを読み易くなる。

 卑劣な手を用いたのだとしても、あのクロムを殺した男だ。

 剣の腕ではルキナでもルフレに遅れを取る事はない様に思えるが、この底の見えない男が果たして何処まで自分の実力を見せているのかは分からない。

 武器になるものは一つでも多い方が良い。

 

 

 

「──ここまでで何か分からない事はあったかい?」

 

 物資の補給などの行軍の際に必要な手続きについて歩きながら説明していたルフレが、振り返りながらルキナに尋ねてくる。

 思考は別の所に囚われていたとは言え、聞き逃した様な事もなく、ルフレの説明が理解し易かった事もあって、重ねて訊ねなければならぬ事もない。

 

 

「いえ、大丈夫です。お心遣い、感謝します」

 

「え、ああ別にそんな気にしなくても……。

 僕が好きでやってる事なんだし……。

 それに、内部の混乱を避ける為に一将兵の扱いをしているとは言え、本来の立場で言えば君は僕が仕えるべき相手だからね。

 寧ろ、これ位は当然の事だと思うよ」

 

 

 そう言ってルフレは人好きのする笑みを浮かべた。

 だが、どうせその笑顔の仮面の下では、悍ましい本性のままに裏切りの算段を立て続けているのだろう。

 

 

「常に忙しい筈なのにこうして私を気に掛けてくれるだけで、私には十分です」

 

「いやいや、こうやって誰かと話すのは良い気分転換になるよ。

 それに……君が人知れず僕達を助けてくれていた事への恩返しもしたいんだ。

 ……『未来』でも、そして今も、僕達が力及ばなかった所為で、君にはとても辛い想いをさせてしまっていただろうから」

 

 

 悲しみの様な、寂しさの様な、そんな感情に僅かに表情を歪め、ルフレは少し俯く。

 自分の裏切りの所為でその様な未来になるのだろうと理解しているだろうに。

 

 例えそれがルキナを騙す為の演技なのだとしても、その表情はルキナの神経を逆撫でするだけだ。

 反射的にその首を絞めたくなるのを何とか抑えて、ルキナは努めて平静を装った。

 

 

「それは……。……いえ、良いんです。

 この世界をあんな『絶望の未来』にさせない。

 それが、私の使命なので。

 その為に、必要な事をしただけです」

 

 

 そう、『世界を救う』事こそが、世界の理をねじ曲げて時をも越えてしまったルキナに課せられた、絶対の使命である。

 その為ならばルキナは何でもするのだ。

 この憎い仇を生かし利用する事も、その為にこうして憎悪している彼に近付く事だって。

 全ては、『世界を救う』為だけに。

 何時か訪れるその時を、ここで待ち続けるのである。

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

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