ありふれない天の鎖の投影魔術師は世界最強   作:小説大工の源三

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奈落の底で……

ザァーと水が流れる音にボクは目を覚ます。何が起きたのか起きかけの頭で考える。

 

「そうだ落ちたんだボク達。それで……そうだハジメ達は!?」

 

あたりを見渡すもそばにいたのは雫だけだった。落ちる前に握っていた鎖も手元にはなく、ハジメ達とは完全に逸れてしまったようだ。

 

「って早く水から雫を引き上げないと」

 

ボクは雫を地下水から引き上げる。

 

「魔法陣がないから火属性魔法使えない……そうだ、こんな時のための投影魔術だ!」

 

ボクは木材と火打ち石を投影して簡易的な焚き火を作る。

火の付いた木材から『パチパチ』と音を立てる。揺らぐ炎とその音にボクは少し焦る心が落ち着く。

 

「う……ん……?ここは?」

 

「雫、目が覚めたんだね」

 

「士郎さん……?」

 

「痛い所とかない?」

 

「ええ、何も負傷してないわ……」

 

「よかった……これからハジメ達の捜索に出るけど雫、君はどうする?」

 

「私も行くわ。早くみんなに会いたいもの」

 

「わかったけど、武器手元にある?」

 

「……ないわ」

 

「それじゃあ投影するね」

 

ボクは刀を一振り投影する。脳内にその刀の使い方が入って来る。握ってもいない(・・・・・・・)のにだ。刀の銘は空也とした。村正が打った刀の一つだ。骨だろうが空を切るような切れ味を誇る名刀だ。

 

「はい」

 

「ありがとう」

 

自分の双剣も投影して自身の気配感知を頼りに捜索を始める。

しばらく進むと人の反応が遠くに2人、多数の獣の気配を近くに感知する。壁から顔を覗かせるとウサギ1羽と狼が3匹いて、狼がウサギを囲んでいる異様な光景に驚く。これを見るにウサギの方が狼より強いことがわかる。そのウサギの足は筋肉が盛り上がっていて心臓あたりから赤い血管のように浮き出ている。某聖杯をめぐって戦うマスターの回路のようだった。

ウサギは1羽だけで狼を蹴り倒してしまっていた。今はここから離れようとした時だった、小石を蹴飛ばしてしまい居場所がバレてしまった。外見通り耳がいいのだろう、すぐさまこちらに走って来る。

 

「雫!戦闘準備!来るよ!」

 

「わかった!」

 

ウサギは勢いよくこちらに飛んで来て蹴りを入れようとする。

これを受け止めるのは確実にまずい、双剣で勢いを利用して自爆させるのが一番。軌道上に剣を構えるのだが、空中を踏み込み後ろに回り込む。さっき見たことを忘れるほどボクはバカではない。もう片方の剣でウサギを切り裂く。そのウサギは2つに別れる。

 

「とんでもない魔物だな……雫大丈夫?」

 

「ええ」

 

「それじゃあ進もう」

 

再び人の反応がする場所に向かう。着いたところには一つ暗闇が濃い場所があった。そこから2人の反応がある。恐らくあの黒いのは幸利の魔法なのだろう。

 

「幸利!ボクだ!士郎!」

 

「士郎……なのか……?」

 

暗闇から出てきたのは幸利と優花だった。優花は気を失っているのかわからないが目を閉じたままだった。

 

「助かった……化け物の唸り声が聞こえて咄嗟に認識阻害魔法の『暗識』を唱えなかったら食われてた」

 

「ナイス判断ね幸利、優花は大丈夫なの?」

 

「優花は寝てるだけだ。疲れちまったからな……ハジメと香織は!?」

 

ボクは首を横に振る。

 

「そうか……俺達も探す」

 

「わかったけどとりあえず魔力が回復するのを待とう」

 

「そう……だな……『暗識』は魔力消費が少ないとは言えかなり長い間使ってたからな。魔力が半分もない」

 

幸利の魔力が回復するのを待つ。ボクはその間に自身の能力を確認していく。投影魔術で出来る物を脳内でイメージする。出てくるのは主に剣ばかりだ。かの守護者が投影している物ばかりだが、今回は使える物ばかりで助かった。

幸利の魔力も回復し、優花も目を覚ましたので気配感知を使って再び捜索する。しかし中々見つからない上に反応もない。階層が違うのかそれとも遠すぎてハジメと香織の場所が見つからない。2人が見つからないまま一週間が過ぎようとしている。遠いところに2人の反応を感知した。すぐさま幸利に認識阻害の魔法をかけてもらいハジメ達のところに急ぎ足で向かう。道中、地面が赤く水滴が落ちたように染まっていて、もしかしたら2人の身に何かあったのではないかと焦る。2人の気配のある壁の前に着く。そこには不自然にまん丸い穴があり、錬成痕もあったのでわかりやすかった。

 

「ハジメ!生きてる!?」

 

ボクは壁を叩く。すると唸り声が聞こえてくる。

 

『士郎……?』

 

「ああ!そこに香織もいる?」

 

『うん、疲れて寝てる……士郎こそ大丈夫?』

 

「ボク達は大丈夫、入っても大丈夫?」

 

『うん、今やるよ』

 

「いや、ボクが開ける」

 

『気をつけて……血の海になってる……から……』

 

ボクはまず壁に穴を開けて血を流す、その後扉のように変化させてみんなが入れるような大きさに広げる。中にはハジメと蹲るように寝ている香織の姿があったのだが、ハジメの左腕がなかった(・・・・)のだ。

 

「ハジメ、お前左腕はどうした!?」

 

幸利が慌てる声で聞く。

 

「喰われた……幸いここには神水があったから水分もとれて魔力も回復したし傷も塞がったけど、幻肢痛が辛い……」

 

「そんな……ハジメは何に喰われたのよ!?」

 

「名前はわからないから仮称で言うけど、爪熊にやられた。香織はダメージを受けなかったけど、奴の腕が奮われた時にはもう……」

 

「鎌鼬みたいなものね……2人とも生きててよかったわ……」

 

 

すると香織がもぞもぞと起き上がる。ボク達の姿を確認すると雫に抱きついて、泣き出してしまった。

彼女が泣き止むまで待つ。

 

「ごめんね雫ちゃん服汚しちゃった……」

 

「これくらいなんともないわよ……それよりも2人が生きていて良かったわ」

 

「とりあえずこれからどうするかだな。水はその水を飲むとして、問題は食糧だ」

 

全員携帯食糧なんて持っていなかった。ボク達はこのままだと飢えて死んでしまう。

 

「その神水って毒も治せるんだよね?」

 

「うん、僕が読んだ本だとありとあらゆる傷と病を治すって書いてあったから」

 

「ねぇ士郎アタシ嫌な予感がするんだけど……」

 

「奇遇ね優花、私もよ」

 

「2人の予想通り魔物肉を食べる」

 

「「「「いやいや!死ぬよ!」」」」

 

「なるほど……最終手段としてはそれしかないな」

 

「ちょっと!幸利はなんで納得してるの!?」

 

「かなりの激痛が走るが、神水の回復効果で治るそれの繰り返しで強くなれる可能性がある。高速で超回復が出来る」

 

「なに理屈っぽく言ってるのよ!確かにそれならいいと思うけどさ!」

 

「覚悟は必要になるね……」

 

「ただ神水に限りがあるから、ボクは使わないよ」

 

「それは無謀よ!士郎さんも飲んだ方がいいわよ!」

 

雫が反対する。それも当たり前だ、死ぬかも知れないことを防げるのにそれをしないのだから。それでもボクは使わない。代用か効くのならそれで代用して限りある物を長続きさせるのがいい。ボクはみんなをなんとか説得して神水を使わないことになった。万が一の場合は飲むことで落ち着いた。

 

「とりあえず狼から食べよう。強さ的にはこれが一番弱いからね」

 

「血抜きは俺がやったし火も優花が通した」

 

「それじゃあ……」

 

 

「「「「「「「いただきます!」」」」」」

 

─────────────────────────

 

全員肉にかぶりつく。酷い味だ、全員不味い不味い言っている。生で食べていたら飲み込めてすらいなかっただろう。

飲み込んだらすぐに神水を飲む。

 

「アガぁ!?ぐぉぁぁぁぁぁぁぁあ"!?」

 

「いだい"い"い"い"い"!?」

 

「か、がら"だがぁぁぁぁぁあ"!?」

 

「あ"あ"あ"あ"あ"あ'あ"!?」

 

「死"ぬ"う"う"う"う"う"う"う"!?」

 

絶叫、洞穴の中で士郎達の叫び声がこだまする。バキバキと身体が作り替えられていく。筋肉は何度も千切れては再生し千切れては再生を繰り返し、骨は砕け治る。恐らく神水を飲んでいないからなのだろう、気配感知でハジメ達の骨が砕ける気配は無かった。皆は神水を飲んで、士郎は『完全なる形』で猛毒による破壊を治す。

皆の髪から色素が抜けていく、黒かった髪は白くなり筋肉や骨格は太くなり、身体つきが大きく変わっていく。男性陣は筋肉が大きく発達し、女性陣は胸の出るところは出て引っ込むところは引っ込む、女性として魅力的な身体つきに、雫は男性陣と同じように筋肉もついていた。髪に関しては痛みによるストレスで抜け落ちたのかは定かではないが、ハジメと幸利は黒から白へ香織はシルバーに雫は空色に優花はピンク色になった。

変質した魔力によって魔物は身体能力が脅威的なものになり頑丈にする。

その変質した魔力が人間には猛毒なのだ。

あれから数分、士郎達にとっては永遠にも近い時間の激痛が治る。そこからさらに激痛が始まる。

 

「皆……生きてる?」

 

「な、何とか……」

 

「死ぬかと思った……」

 

「これで何か得られていればいいがな……」

 

「士郎さんは……!?」

 

しかし士郎は神水より効果値の低い技能で回復しているので復活が遅い。声も叫べる余裕がないのか声もぐぐもっている。

 

「はぁっ……!はぁっ……!死ぬかと……思ったよ……」

 

「当たり前じゃない!」

 

それに対して苦笑する士郎。そんな彼の髪は白緑色になっていた。

 

「なんだろう、どんどんエ○キドゥになっていく感じがする……そうだステータスプレートはどうなった!?」

 

士郎はステータスプレートを確認する。

 

=====================================

 

天野士郎 17歳 男 レベル:15

天職:■の■/投影魔術師

 

筋力:505×α

体力:520×α

耐性:455×α

敏捷:490×α

魔力:410×α

魔耐:400×α

 

技能:対魔力・変容[+気温耐性]・投影/解析魔術[+複製投影][+イメージ投影]・憑依継承[+刀剣審美][+様物]・民の叡智[+■の■][+イメージ生成]・魔力操作・狙撃・■■■■・鷹の目[+業の目]・完全なる形・心眼・強化魔術[+永続強化]・気配感知・胃酸強化・纏雷・言語理解

 

=====================================

 

レベルが1上がっただけなのにステータスが恐ろしく上昇していた。恐らく成長限界が伸びたのだろう。

全員で纏雷の確認をする。それぞれの雷の色も違っていた。士郎が緑、ハジメが灰色、幸利が黒、香織が銀色、雫が水色、優花が赤だった。

その後ウサギ肉も食べて新しい技能、『天歩』派生技能[+空力][+縮地]が追加された。

天歩の技能を確認すると空中を歩くことができるようだ。縮地は雫から教えてもらい。ハジメの左腕を喰らった爪熊を討伐するために探すことにした。

その際、ハジメが銃を作り爪熊への復讐心がものすごく高いのがわかった。笑いながら銃を作っていたので正直、士郎達は引いていた。優花には投擲用のナイフを大量に錬成し、短刀術用に士郎が短刀を投影する。ハジメが作った銃の名前はドンナー、香織用の銃はスヴェートとジーズンとなった。

 

「よし!あの熊公を撃ち殺しに行きますか!」

 

「そうだねハジメくん!ハジメくんの腕を食べた熊にお返ししないと!」

 

流石ハジメ至上主義の香織、思考回路が似てきている。

士郎の気配感知を頼りに熊を探し出す。

 

「いたよ……」

 

「よし、僕と香織だけで仕留める。皆はそこで待ってて」

 

右腕だけのハジメと2丁拳銃の香織が爪熊に向かって歩き出す。

ハジメと香織の復讐劇が始まる。

ハジメのドンナーからドパン!と炸裂音を響かせ弾丸が熊に襲いかかる。それを避けるのだが、その先には香織が撃った弾丸が熊の目に当たる。そのまま熊は片腕で撃たれた目を抑える。その隙に縮地で近づいたハジメが、肉体錬成で下半身を破壊、倒れ込んだ上半身を再び肉体錬成で息の根を止めた。

 

「呆気なかったね」

 

「うん、あれだけわたしとハジメくんを追い詰めたのに」

 

この時4人の心が一つになった。「ハジメと香織を怒らせてはならない」と。

倒した熊の肉を食べると、再び、激痛が襲いかかったのは驚いたもののすぐに神水を飲んで事なきを得た。神水なのだが士郎が周りの壁を掘っているとゴロゴロ出てきた。その為士郎も飲む事を強制された。




今作のハジメくんの性格は原作ほど荒れてはいませんが、敵対者対して容赦がなくなっています。それに伴い香織も同じように容赦がなくなっていて、4人は少しビビります。あまり話に問題はありません。あくまで敵対しなければいいだけです。
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