ありふれない天の鎖の投影魔術師は世界最強 作:小説大工の源三
スランプモードに陥った上で苦手な戦闘描写なので余計に時間がかかりました。
地上で激戦が起きている頃、神域でも激しく争いが行われていた。
「そろそろ、死ねよッ!」
ハジメはツェアシュテールングとマサーカーから変成魔法を付与したリビングバレットを放ち使徒の心臓を目掛けて襲いかかる。
「狙いがわかりやすすぎます」
「そりゃ狙ってるからねッ!」
ハジメは宝物庫から大量の砲門を展開する。
「派手に吹き飛べェッ!」
色鮮やかな弾幕が使徒の周囲に着弾する。
爆炎の中から、使徒が高速で飛び出し、ハジメに向けて大剣を振り下ろす。
それをツェアシュテールングで防ごうと大剣に銃身を向ける。
「ガハッ…!?」
腹部と背中に激痛が走る。
意識を痛みに移すと腹部には何も刺さっておらず、背中にも何も刺さっていない。
「何が…!」
ハジメはその場を空力と縮地で飛び退こうとするのだが、背中の痛んだ所から何かが貫通したのか、身体に穴が空く。さらに傷は分解されている。
「グフッ……何……が……」
魔眼鏡で辺りを見渡すものの、何も写らない。
自身の周りに銃弾を放つと、見えない何かに弾かれる。
(何かが浮いている?なんか見たことあるぞこれ……)
「理解する間もなく殺して差し上げます」
ハジメは全身に金剛で防御しながら、強引に何かの包囲を突破するが身体の至る所が切り裂かれ、更に一箇所貫かれる。
「ぐうっ…!ゲホッ……!(包囲を抜けたはいいけど目が…!)」
貫いていた何かは抜けたが、右の魔眼鏡を貫き眼球に細い何かが突き刺さる。
それを掴み、抜いて投げ捨てる。しかし、傷の表面からじわじわと分解されて行く。
「クソッ……!ガァッ!」
ハジメは目に指を突き刺し、眼球を取り出す。ブチブチと音を立てて視神経を引き千切り、眼球を投げ捨てる。
目の孔からボタボタて多量の血液が溢れ落ちる。
「ハァっ……ハァっ……!」
「……簡単に眼球を捨てるとは。合理的とは言え、異常ですよ」
「はっ!ジワジワ分解されるのに対応するくらいなら原因を取り除く方が良いよ」
ハジメは片目のまま、銃を乱射する。
宝物庫からも砲身だけを出しながら、使徒の周囲を砲撃する。
直接攻撃するのではなく、逃げ道を制限し、更に宝物庫から追加の兵器を取り出してばら撒く。
「弾けろ!!」
ズガガガガァン!!と大爆発の連鎖が使徒を襲い、火傷や切り傷などを付ける。
だが、煙幕の中から傷を回復しながら、拳を振りかぶる使徒が現れる。
ハジメは銃撃しながら、拳をいなし、躱し、蹴りを蹴りで受け止め、頭突きで反撃する。
「片目になりながらもよく私と戦いますね」
「大変だと思うのならとっとと死んでくれない?」
「お断りします」
右目だけになった彼の視界は、遠近感を掴むことに苦労している。
基本的に中〜遠距離の戦闘を得意とするハジメにとって、この視界はかなり辛いものとなっていた。
「チッ……『限界突破』!」
灰色のオーラを纏い、瞬光で攻撃をいなしつつ、反撃の銃撃を浴びせる。
「『炎害豪雨』」
天から黒い焔が降り注ぐ。その火の粉一つ一つが着弾すると火柱を上げる。
「クロス・ヴェルト!」
クロス・ヴェルトの結界で防ぐ。
何度も火柱を受け止め、ヒビが入っていく。
流石に防ぎきれないと判断し、火柱の無いところを結界から飛び出して突き抜ける。僅かに火が燃え移るものの、すぐに消火して射程外に逃れる。
「オラオラオラオラオラオラァ!」
メツェライ・デザストルを撃ち放ち、火の粉を相殺する。
使徒の魔法の発動が終わると、それと同時に再び接近戦遠仕掛けに来る。
使徒から振るわれる拳と蹴りの乱舞には当然、分解が発生しており、受け止めるだけでも着実に削られる。
ハジメも馬鹿正直に真正面から戦う気は更々ない。宝物庫を経由して至る所から砲撃をし、使い捨ての
刀剣は彼方此方に弾かれ、自身からもかなり遠くまで飛んでいく。
ふとハジメは自身の弾かれた武器や血液を見て思いついた。
「試す価値はある…か」
ハジメは血液で溢れる右目の孔を塞いでいる瞼を開き、血液を手に溜めてそれを空間魔法を付与した銃弾で穴を開けそこに溢し、孔にも同じように溢す。
その後に、刀剣を放ち、使徒を狙い、ものすごい勢いで飛んでいくが、躱される。
最後に仕込みを進めて行く為に、一度地上へ降りて駆け抜ける。
「何をしているのです?」
「ないしょ」
地点地点に宝石を捨てて行く。
大量の宝石を捨て終え、再び空中に跳ぶ。銃撃を再開し、使徒の動きを止める。
ゴプゴプと止めどなく溢れる血を左手に溜め、その血を錬成し、使徒に向けて投げつける。
「むっ……」
使徒は鬱陶しそうに振り払う。
振り払うついでに建物を倒壊させる。
「チッ……」
ハジメはフェアニッヒトゥングで落ちてくる建物を破壊し、破片をメツェライ・デザストルで消し飛ばす。
それでも破壊対応の出来なかった建物は避ける。
ハジメの走った後に点々と落ちている血から高密度の魔力が溢れ、突然鋭い棘が使徒に向けて一斉に伸び始める。
「邪魔です」
淡々と血の棘を破壊しながらハジメへと距離を縮めて行く。
「『破壊拳』」
使徒の黒い拳撃がハジメの義手を粉々に破壊する。
無いはずの左腕の骨が粉々に砕け散る痛みが走る。
「……………かかったなぁ阿呆が!」
激痛を堪えたハジメの方から距離を縮め、砕け散った義手を錬成で魔力で繋ぎ合わせた左腕で頭を掴み、アイアンクローでミシミシと握り、右手で付着した血液を錬成する。
「『血液錬成!技名を付けるなら
血を錬成し、鋭く凶悪な棘へと作り変え使徒の身体を串刺しにする。
「錬成!」
義手の破片が使徒の身体に纏わりつく。ギチギチと使徒の身体を締め上げる。骨を軋ませ、血肉が潰れ、破片の端が食い込み、出血する。
「何のつもりですか」
「わからない?攻撃を当てるためだ!」
「無駄なことを……私に致命傷は致命傷にならないことを理解できていないのですか?」
「理解しているさ。身内にもいるからね……だから勝ち誇ったまま消失しちまいな……」
音も無く使徒の脳天を光が貫く。
「……バルス・ヒュベリオン。ヘリオス・イレイザー!」
荒廃した世界の至る所から純白の光線が使徒に向けて襲いかかる。
「破片一欠片からでも再生するなら消し去ってしまえは良いだけの話……」
ハジメは宝物庫から最後の兵器を取り出す。全身が真っ黒にコーティングされた巨大な砲身が使徒に向けられている。
「『フォーリン・エンゲル』天使の見た目したお前にはピッタリだね」
黒いエネルギーがすでに溜まっており、紫電が迸っている。
「これで消え去れぇぇぇぇぇええ!!!」
叫び声と共に放たれたエネルギー光線は使徒を呑み込み焼き尽くす。
(これ……は……我々の……分解…?)
ハジメは分解を解析済みだったが故にエネルギー光線に分解を組み合わせて放っていた。
再生する身体は、分解によりドンドン消えていき、絶命の叫び声を上げることもできずに、エネルギー光線が消えた後には何も残っていなかった。
「……生体反応は気配感知にない……終わった……」
ハジメはドサリと前のめりに倒れる。
「なーんか厨二病みたいな名前の発言出ちゃった……まぁいっか。………あれ?……身体が重……それに……なんだか少し眠い……」
使徒を倒し、気が抜けたのか、全身から力も抜けていきその場にうつ伏せで倒れてしまう。
「力が……香織……ユエ……ごめん…手伝えないや……」
ハジメの意識は暗く沈んでいった。
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香織は銃撃と光魔法のレーザーを使い分け、至近距離でぶっ放し、格闘戦を仕掛けていた。
(決定打がかけてて倒しきれない……倒す方法ならある、接近してる今なら……)
香織はニュンフェ・スヴェートの銃口を密着させ弾丸打ち込む。
スヴェートは既に破壊されていたが、旧式の予備分だった為そこまで慌てることはなかったが破壊された隙を突かれ、頸動脈を切られた。
打ち込んだ弾丸は使徒の身体の中に留まり、魔力を吸収し始める。
「……猪口才な…」
埋まった弾丸を取り出し、投げ捨てる。
「せえい!」
香織は回し蹴りで使徒の顳顬を狙うが、受け止められ、ぶった斬られる。
傷は使徒同様、彼女も即時回復し、戦闘を続ける。
「……『聖光剣・多連蒼』!」
蒼く光る光の剣が香織の周囲に現れると。
「『護封剣』!」
使徒の周囲に8つの聖光剣を放ち、結界を張り、一時的に封印する。
表情がここまで全く変わらないことに不気味さを感じる。
「ふぅ………ふっ………!」
魔力を空気中から吸収し始める。
結界を維持しながら吸収するのは効率が悪く、魔力が溜まらない。
(結界維持に殆ど持ってかれる…!)
結界内から凄まじい光が香織の目を眩ませる。
硝子が割れる音共に結界が破壊され、大剣が彼女の脳天目掛けて振り下ろされる。
「ぐっ!」
香織は杖で受け止めつつ、左にいなす。
「『天獄炎』」
灰色の火柱が下から噴き上げる。縦横無尽に襲いかかる。
それを『絶界』で防ぐ。
「『獄雷槍』」
使徒の背後から黒い稲妻の槍が降り注ぐ。
香織は銃弾で撃ち落とし、避けていくのだが、雷の密度が多くなっていき、遂に貫かれ、建物の外壁に磔にされてしまう。
「ゔあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!」
貫いた雷から全身に電撃が奔る。
「このまま標本にするのも一興ですね」
細身の大剣を香織の腹に突き刺す。
「ガフッ……!」
グリグリと大剣を動かして、傷を弄ぶ。
すると、彼方から無数の刀剣が飛来する。香織の近くに何本か突き刺さり、使徒に向けられて来たものは、翼によって破壊される。
「これって……」
突き刺さっている武器を見て誰の物かすぐにわかった。そして何故それがここにあるのか。
杖をぶん投げて大剣を破壊、銃をしまい、近くの刀剣を握る。
「八重樫流抜刀術……『登龍』!」
突き刺さっている刀を抜きながら切り上げる。そして飛び上がった状態で 回し蹴りから、もう一本の刀による横薙ぎを繰り出す。
「何ッ!?」
「雫ちゃん……貴女の剣…借りるよ!八重樫流……『霞穿』!」
神速の突きを三連続それを右手と左手の刀で何度も繰り出す。
「八重樫流……『叢雲』!」
右薙、袈裟斬り、唐竹割り、逆袈裟斬り、左薙と刀を振る。
親友の剣術をずっと見て来た香織は見様見真似で振ることができた。
「八重樫流『暁闇』!」
左薙、唐竹割り、2連突き、左袈裟斬り、右薙、左逆袈裟斬りと刀を振る。
「不慣れな剣術もそこまでです」
「そうだね。この戦いも終わりだよ!」
香織は刀を突き刺し使徒を外壁に磔にする。
「『過剰聖典』!」
使徒の身体が崩れ始める。
「っ!?」
「『縛光刃・重縛』!」
光の十字架が動きを封じる。
「くっ!離しなさい!」
今までと違い、焦りの声を上げる使徒。
その姿は香織から滑稽に写った。
「これはおまけだよ!」
さらに追い討ちにニュンフェ・スヴェートを肩、胸、腹に打ち込み、首を掴む。弾丸からも過剰聖典と同じ力が発現する。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!」
「これでお終い!」
過剰聖典を昇華魔法を更に上乗せの上乗せで崩れるスピードを早める。
「あ……あ……」
使徒はボロボロになって死んだ。
「いくら再生できても、細胞組織が死ねば再生しなくなるもんね。草木に水をあげ過ぎると根腐れする。読んだ本に載ってたし」
刀を宝物庫にしまい、ユエとハジメの元へと走っていった。
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ユエは追い詰められていた。
他の2人と違い、彼女が相手にしている使徒がユエを殺すために作り出されていた。
「魔術師型……やり辛い……」
双大剣での攻撃頻度が少ないのと、翼での魔法陣生成や魔法攻撃が多いことから目の前の使徒は魔術師型だと判断した。
魔法も相殺していたが、徐々に押されていき、弾いたり、受け流すことも出来なくなってきていた。
「『灰獄蒼槍』」
灰色の氷槍が降り注ぐ。
「『蒼天・連槍』!」
蒼い炎の槍で相殺しようとするものの貫かれてしまい、聖絶で防御することしか出来なかった。
「『闇焔豪鬼』」
黒い焔の二本角の鬼が産み出され、その手に持つ金棒を肩に乗せ、威圧するように睨みつける。
「『輝氷堕龍』」
光り輝く白い龍も現れ、鋭い牙と何もかもを貫きそうな眼光をユエに向けて飛ばす。
「っ!『五天悪鬼』!」
五色の魔法を纏う蝙蝠の羽を生やした鬼を呼び出す。
「『無属英神』!」
透明なエネルギーで生成された、槍を持つ神兵が現れる。
互いの鬼が咆哮を上げてぶつかる。
焔の拳と氷の拳がぶつかり合うと、拳が弾ける。風の拳と焔の拳がぶつかれば、風の拳により黒い焔の鬼は宙に舞い上がる。
『ゴアァァァァァァア!』
ユエの鬼が咆哮と共に雷のレーザーを吐き出し、使徒の鬼の胸を貫く。核を破壊できたようで、魔力が霧散していった。
一方で龍と神兵の戦いは龍が優勢だった。
『キシャァァァァァァァァァァア!!』
白い破壊光線が龍の口から放たれ、神兵がラウンドシールドで受け流す。
透明ではあるものの、空間の揺らぎで神兵の姿は誰でも見ることはできる。
神兵の槍を龍が身体をうねうねと躱し、巻きつけてへし折り、そのまま勢いで神兵の身体にも巻きつき締め上げる。
『…………っ!』
氷神兵は翼を広げて、魔弾を放ち龍の身体を撃ち抜いていく。
龍は神兵の頭にその顎門で暗い突き、潰す。
頭を潰されたことで、神兵の身体からだらりと力が抜け落ち、消滅する。
「ここまで良く相手になりますね」
「……舐めるな」
「ですが……これで終わりにしましょう……我が主よこの力を使う事をお赦しください。『天焦がす破壊の龍』」
橙の焔を纏う龍が現れる。焔の熱気で着ている服から煙が上がり、龍の周囲が歪んでいる。
ユエの着ている服はそう簡単に燃えるものではないのにも関わらず、燃えそうになっている。
『グォォォォォォォォォォォォオ!!!』
咆哮ですら、熱気で周囲の建物が崩れ落ち灰になる。
「お前……この魔法……!」
「貴女の思う通りです。これは我が主から唯一許された魔法……美しいでしょう……」
焔の中心にいる龍の鱗は闇のように真っ黒で牙は形は不揃いで歪ながらも、喰らい付いた物を切り裂きながら噛み砕けば骨すら砂にされるだろう。
「悪趣味……」
「この素晴らしい龍がわからないとは……貴女には物を見る目はないようですね」
失望したような言葉を吐き、ユエを睨む。
「龍よ。喰らいなさい」
雄叫びを上げてユエに向かってその顎門を開き、加速して噛み付く。
近づくだけで熱気によるダメージを受けるので、動きを見せる前に龍から距離を取る。
「『五天龍・血彗』!」
五色の龍が緋いオーラを纏って現れる。
「その程度の龍で我が龍に叶うとでも?」
使徒の呼び出した龍にユエの呼び出した龍が喰らい付き、氷と風のの属性ブレスを吐き出して橙色の焔を消そうとする。
「引きちぎりなさい」
使徒の龍の爪がユエの龍の炎龍の顎門をこじ開け、そのまま下顎を引きちぎり、雷龍の身体を三枚おろしにする。
残った三色龍もブレスにより焼き尽くされ、消滅する。
「っ……」
「これで終幕です」
ユエの眼前で首が三つに分かれ、赫い焔が溜まる。溢れ出る熱量に服が燃える。
「くっ…!『水星龍』!」
深い蒼色の龍がユエを護るように蟠を巻く。
ブレスが水星龍にぶつかり、大爆発を起こす。爆風により建物の壁に飛ばされ、いくつかを貫通し、めり込んだ。
「ガハッ………」
自動再生で傷を再生するものの、魔力が枯渇しているのか治りが遅い。
今までの傷や攻防で魔力を消費しすぎたようだ。
ふと、上からポタポタと何かが垂れてくる。使徒の攻撃かと思ったが、違うようで、垂れてきていたのは赤い液体──血だった。
誰の血かと一瞬警戒したが、匂いでハジメのものだと分かった。
「……なんで」
見上げると穴が空いており、
何故ここに彼が血を垂れ流しているのかはわからないが、失った魔力を取り戻す為に、その血を摂取する。
摂取した血から濃密な魔力を吸収し、血液そのものも魔力へと転換。
愛する彼からの血はユエの思考をクリアにしていく。
「……そっか。何も新しい名前を考える必要なんてない」
ユエは腕を切り、振り回し血液で大きな円を描く。
「……
魔法陣から、金色の立髪と紅い瞳、白い角、青い身体、黒い爪の巨大な龍が現れる。
『よく呼び出してくれました』
「……喋るの?」
『もしや無意識にですか?』
「…もしかして、変成魔法と魂魄魔法も込めてた?」
『ええ。ワタシは意志を持った、生ける魔法。貴女の、貴女だけの龍です。尤もワタシは貴女ですけれども』
魔法龍の名前に
「なら、私のしたいことわかるよね」
『勿論。さっさとアレを倒してハジメ様と合流しましょう』
ユエは吸血龍姫に乗り、空へと駆け上がる。雲のような物を突き抜けた所に連中がいた。
「まだ落ちていなかったのですか」
「……当たり前。そんな悪趣味な龍を倒して、ハジメの元に行く」
『本当に悪趣味な龍。余計に負けられません』
「魔法が喋った?」
「お前と違って道具として扱っている訳じゃない」
『ふふふ…仲間を除いて1番頼られた魔法ですから』
吸血龍姫は嬉しそうに笑う。
「魔法にある価値は道具として使うことだけです」
「『なら見せてあげる(あげましょう)。私(ワタシ)達とお前との決定的な格の差を』」
使徒の龍が吠える。吸血龍姫は黙る。涼しそうに流している。
「負け犬の遠吠え……ワタシ切り裂いて」
吸血龍姫は尻尾を高速で回し、真空波を飛ばす。使徒の龍は切り刻まれていき、魔力が漏れ始める。
「焼き尽くしなさい」
再び三つ首になり赫い焔ブレスを吐き出す。
『この程度、火もいらないわ』
息を吸い込み吐き出すだけで、焔が逸れる。
「くっ……」
「本当の龍の焔に見せてやろう」
吸血龍姫からノータイムノーモーションで火焔ブレスが放たれ、使徒の龍を焼き尽くしていく。
「凍てつけ」
『温度差攻撃……良いわ!』
氷ブレスによる追撃で黒い鱗が割れてパラパラと落ちていく。
そのまま螺旋回転しながら、突撃する。
そのまま貫かれるような龍ではないようで、吸血龍姫の頭を掴む。
『掴むだけなら問題ないわ』
ユエが立髪に隠れたのを確認し、爆破ブレスを放ち、手を破壊する。
そのまま回転して、貫通させて、使徒の龍は霧散していった。
「後はお前だけ」
『伯父さまの仇……まずは貴女からよ』
吸血龍姫はその顎門で喰らい付き、そのまま火炎ブレスを口内に溜め込み、焼き尽くす。
牙から出ている使徒の身体を掴み上へ投げ飛ばしブレスの狙いを定める。
「そのまま死ね」
『木偶の棒には相応しい結末を』
溜め込んだブレスは真っ白に輝き、龍を失った使徒は翼を前に覆い被せ、防御する。
翼は一気に燃え上がり、手に持つ双大剣すら溶かす。
全身真っ黒焦げになるが、ユエを上回る再生能力で元に戻っていく。
「しぶとい……」
『生き汚いのはあの邪神にそっくりね』
吸血龍姫は口から消滅ブレスを放ち、再生仕切る前に使徒は消え去っていった。
「終わり……」
『そうね……私、お疲れ様』
「ワタシこそ。助けてくれてありがとう」
『さ、急いでハジメ様と合流しないと』
そのまま吸血龍姫に乗ったままハジメの元へ飛んでいく。
「ユエちゃ〜ん」
下の方から1人の少女の声が聞こえる。
「香織…!」
「勝ったんだね!」
「当然。ちょっと厄介だったけど」
『香織様もお疲れ様』
「ふぇ?もしかしてユエの乗ってる龍が喋ったの…?」
「……ん」
ユエが喋った龍について説明する。
「そうなんだ…」
『今後ともよろしくお願いね?』
「うん!」
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さらにしばらく飛んで行き、ハジメの気配の元に辿り着き、ハジメの元に駆け寄る。
そこで彼女達が目にしたのは──
うつ伏せに倒れ大量の血液を流し、左腕の義手が失われたハジメの姿だった。
「「『ハジメ(くん/様)!!』」」
慌てて駆け寄、血の出所を探す。
「右目が…!『絶象』!」
再生魔法で右目を治そうとするが、傷が塞がるだけで眼球が戻ることはなかった。
「そんな……!」
他の傷は治っていくが眼球だけは再生しなかった。
「……ごめんなさい。治らない」
「香織は悪くない……ハジメをここまで痛めつけた使徒の所為」
ハジメの身体がピクリと動く。閉じられていた左の瞼が開く。
「っく……僕は……香織…?ユエ…?」
「「ハジメ(くん)!!」」
意識を取り戻した彼に抱きつく。
「イタタタッ…」
「……ごめんね!」
「2人とも無事だったんだね……」
「うん……でもハジメ……右目……」
「あはは……油断しちゃった」
そう言って、申し訳なさそうに謝る。
「義手も予備の出さないとね……後で義眼も作らないと……」
「私達も手伝うよ!」
「……ん」
「ありがと……2人も休もう?」
「……そうだね。このまま加勢に行っても足手纏いになるだけだし」
しばらく休息を取ることとなった。
今作の使徒の再生の原理。
ドラゴンボールで例えると、セル以上ブウ未満の再生力。どんな状態でも完璧に再生するものの、核が無ければ再生できない。
核を完全に消し飛ばされなければいくらでも復活可能。
ただし超魔生物のようにマホイミのような攻撃を喰らうと再生しなくなる。
正直香織が1番のメタ。
自身の過去に折り合いをつけたこの世界線のユエが編み出した生きた魔法。
幸利のヨルムンガンド達も同じである。