ありふれない天の鎖の投影魔術師は世界最強 作:小説大工の源三
ごめんね?
FGOのサムレムイベントサボって、焦って終わらせて来ました……
恵里と雫は剣を鞘に収めて隕石の残骸の上を走る。
上からはエヒトからの弾幕が降り注いでいる。
「走ったところで無駄だ!我が流星からは逃れることなど出来ぬわ!」
自身の上昇した敏捷にモノを言わして、駆け回る。
当たりそうな光弾は拳や蹴りで弾く。
「……結構キツイね」
「怒りに任せて攻撃してる……そのうち明確な隙が生まれるわ……」
「うん……」
互いに顔を見合わせる。恵里は鞘に収めたデュランダルに魔力と祈りを込める。仄かに金色に光る。
「『捻れ狂え、我が視線』!」
恵里が睨んだ先が渦を巻くように捻れる。弾幕はそこに吸い込まれるように集約する。
「『圧空』!」
吸い込まれた弾幕を空間魔法の箱で閉じ込める。
「お返し!」
箱を破壊して閉じ込めた弾幕を撃ち返す。
同威力の弾幕が相殺し、辺りが爆煙に包まれる。
「ここから一気に仕掛ける!」
雫が空中を駆け上がり、エヒトに急接近、そのまま格闘戦を仕掛ける。殴る蹴るを繰り返すが、やはり当たらないか当たっても全く通用していない。
恵里も挟み撃ちするように広げた翼でエヒトの周りを覆って、使い捨ての槍で突き続ける。
「鬱陶しいぞ貴様ら……」
攻撃を捌いているエヒトのイライラがどんどん溜まっていき、動きが単調になっていく。
攻撃の威力は強くなるがムラが増している。
「ここッ!」
「見えているわ小娘が!」
硬質化した裏拳に菊一文字がへし折られる。
破片がダイヤモンドダストのようにキラキラと散らばる。
「そりゃ見える位置から行ったからね!」
雫は高速回転し、自身を中心とする竜巻を発生させ、刀の破片による細かい斬撃を起こす。
「……小娘にしてはよく足掻いたと褒めてやろう。だが死ね」
エヒトが彼女を睨むと、回転している身体が硬直し、身体の末端からパキパキと石化していく。
石化耐性すら貫通しているようだ。
「そのまま砂になるがいい…」
徐々に石化している身体を注視している雫を見るとほくそ笑む。まるで自分と同じようにだ。
背後からとてつもない速度で何かが羽交締めしてくる。短い水色の髪の少女が揺らいだ空間から現れる。
「漸く隙を晒しましたね!」
「兎……貴様何処にいたっ!」
「ずっとお前の後ろですよ。兎人族が誇る気配の操作を舐めんじゃねーですよ!」
シアはエヒトの背後にずっと立っていたのだ。どんなにエヒトが激しく動いたとしても真後ろに立ち続け、必ず訪れるであろう
「これでこの戦いは終わりです!」
シアは神断の刃をエヒトの首、頚動脈の辺りに突き刺す。
「くっ……ククク……フハハハハハ!!貴様達の奥の手は我には通用しなかったようだな!」
3人の想いを込めた概念が何も効果を発揮することがなかった。
「そん……な……こと……ある筈が……な…い…ですよ……」
突如シアの身体から力が抜けていく。
現人神薬が効果を失い、身体強化も出来なくなって、そのまま落ちる。
エヒトは落ちるシアの耳を掴みぶら下げる。
「うあ……」
再度背後から人影が現れる。
それに対して、エヒトはシアを振り回して対処しようする。
人影はエヒトの手から彼女を取り戻し、石化を解除した雫の隣へと転移する。
「雫さん……」
「まだ諦めるには早いわよ……」
エヒトの真正面に白髪の少女が突っ込んでいく。
「これで終わりダァァァァア!!」
エヒトの腹部に黄金に輝くデュランダルが突き刺さる。魔法文字がエヒトと恵里の周囲を覆い、グルグルと回転し2人を縛るように巻き付く。
デュランダルを握る手と反対の手で、神断の刃を掴み、心からの願いを吼える。
「……デュランダル!応えろ!僕の雫のシアの……皆のお兄ちゃんを返して!」
辺りが眩い光に包まれる。
「どうなったの……?」
恵里とエヒトが重力を無視したように浮遊している。
ピクリとエヒトの身体が動く。そして恵里の身体を抱き締めた。
雫もシアもそのことに何も不安や焦りを抱くことはなかった。
「……お兄ちゃん?」
「そうだよ……ボクだよ……全く……無茶をして……おまけにデュランダルのそれを使うなんて……デュランダル?なんで恵里に伝えたの?ダメだって言ったよね?」
声色から伝わる、彼の困ったような感情。
エヒトではなく、士郎が身体に戻ったのだ。
『だったら油断しないであの邪神に身体を取られなければ良かった話だろ?だからオレ様は悪くない』
「それを言われると耳が痛いね……」
デュランダルの能力、それは奇跡を起こす力。この剣は元来、折れないという奇跡を内包しており、自身の何かを捧げることで望んだ奇跡すらも引き起こす。
宙に浮遊したままのデュランダルに軽く怒られている士郎は、恵里に向き直り、肩を掴み彼女の瞳に視線を合わせる。
「恵里、代償は何?」
「ごめんねお兄ちゃん。僕もわからない……」
「そっか……」
恵里自身も何が代償なのかもわかっていなかった。
それもそうだ。恵里が捧げたのは自身の記憶だ。いつからいつまでの記憶なのかが全くわからない。『記憶』がなくなっているのだ思い出せる訳もなかった。何故なら元から無いものとして扱われている。
「「士郎さん!!」」
後ろから雫とシアが飛びつく。バランスを崩す事なく、士郎はその背中で受け止める。2人は大泣きしていて、今着ている白い服が、涙と鼻水でぐしょぐしょになる。
「本当に……本物の士郎さんなのね……!うん……わかる……士郎さんの心が……」
「うん。君達の恋人の天野士郎だよ」
「よかった……よかったです……!わたし達の士郎さんだ……あったかい……アイツと違ってちゃんと優しい血が巡ってる……」
「シアもお疲れ様……似合ってるとは言え長かった髪がこんなになるまで……ありがとうって言えば良いのかな?」
エヒトの呼び出した黒龍の顎門に噛み砕かれそうになった時に彼女の髪が溶けてしまったようだ。
「えへへ……そのうち髪は伸びますので、大丈夫です」
隕石の残骸に降りて、現状を確認する。
「恵里抜いて良いこれ?」
「あ、ごめんね」
突き刺さったままのデュランダルに意識を移す。
刺さっているもののそこからは血は出ていないようで、士郎自身にも痛みは生じていない。
「後は、ボクの中にいたエヒトがどうなったのかだね……」
「普通に消えたのでは無いですか?」
「この空間はエヒトが魂だけで生きれる空間だ。ここのどこかにいるはずだ」
『その通りだイレギュラー共!』
上空から声が響く。
見上げると、光が人の形をしたナニカがいた。
『殺す!殺すっ殺すっ殺してやるぞっイレギュラーッッ!』
怒りに染まったエヒトの叫び声が神域に響き渡る。
空気が震え、隕石の残骸がピシピシとひび割れていく。
「うるさいな……ガキの癇癪じゃあるまいし……」
「長く生きすぎて、何度も転生したみたいになったんじゃない?」
「あー確かに恵里の言う通りだね」
いつもの調子に戻ったのか、兄妹してエヒトを煽り始める。
『良いだろう……そこまでして死に急ぎたいようだな……』
足元が崩れ落ち、開いた大きな穴から士郎達は神域から放り出された。
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一方でハジメ達は神域の奥へと進んでいたが、エヒトが士郎の身体から追い出された頃、彼らの居る空間にも異変が訪れていた。
「ハジメ君……なんかおかしくない?」
「うん……」
何か異様な空気を感じ取る。
「もしかしたら士郎を助け出したのかもしれない」
ユエがそう推察すると、奥の方で何か人影が3人分、おまけに固まっているようだ。
魔力的に幸利達のものだ。
そっと近寄ると優花とティオの2人が幸利に覆い被さってキスをしていた。
「3人共敵陣で何してるの?」
ハジメが呆れたような声で問いかける。
「んっ……あ、ハジメ」
「あ、じゃないよ……全く」
「しょうがないじゃない。幸利が死にかけに行ったんだから。今それのお仕置き中よ」
「とりあえず、それは後にしてとっとと行くよ」
ハジメがそう促した途端、周囲の建物が崩れ落ち、何処かへと吸い込まれていく。
ティオも幸利から離れて様子を伺う。
「とにかく神域から出た方が良さそうだね…」
そう言って離れた位置にいる光輝達の元に転移する。
「南雲……」
「3人共無事だね」
鎧は所々砕けた光輝と上半身裸の龍太郎、その彼に膝枕をされている鈴に、龍太郎の頭の上で毛繕いをするウサギ──イナバがいた。
「ああ……けどかなりボロボロだけどな」
「生きてるからベストだよ。それよりもイナバが血塗れなんだけど」
「使徒に勝った後、疲れすぎて動けない時に、魔獣が来て全部イナバが蹴り殺したんだよ……」
「ワオ……」
自分が褒められていると気づいたのか、イナバは魔獣の死骸の上でキュウ!と小さな前足を天に掲げて勝利のポーズを取る。
「さてと、ここから出るから集まって」
そう言い、クリスタルキーでゲートを開き地上へと転移する。
「ハジメさん!」
転移した先でハジメは金髪の少女──リリアーナが飛びついてくる。
「リリィ!無事だったんだね」
「はい……地上に残った反逆の戦士達の尽力で私たちは無事でした……ですが……」
リリィは何かを堪えるように顔を俯ける。
要塞の下から見える大地は、割れており、所々にクレーターが出来ている。
「犠牲者は出ちゃったか……」
「はい……私がもっと正確な指揮を取れていれば被害は出なかったはずです……」
「結果論だよ。リリィは最善を尽くそうとしたんだ。それで良いじゃないか」
ハジメはリリィの頭を撫でながら抱きしめる。そのまま彼女は小さく声を漏らしながら泣いた。
「パパッ!」
「ミュウ…!」
「おかえりなさい!」
「うん…ただいま」
それぞれが帰還した彼等と会話していると、空から黒い塊が落ちてくる。
金色の鎖に巻かれた人が4人。人の頭からウサミミが生えている。
「アレは士郎達だ!」
「意識はあるのか!?」
周りが慌てていると、4人の影はフワリと浮き上がりゆっくりと地上へと降りていく。
「士郎…!」
「ただいまみんな……心配かけてごめんね?」
「ホントだ士郎……自分だけ犠牲になろうとしやがって……「それはアンタもでしょうが!」ぬおっ!?おい優花!?離せッ!」
士郎に説教くさく言おうとした幸利だったが、自身が彼女2人に同様の理由で説教されているので、人のことが言えないと優花に頭を胸に埋められて連れて行かれた。
「エヒトはどうなったんだ?」
「邪神はまだ生きてるしこれからが本番だよ……とりあえず相手は僕がするから…みんなは安全なところに避難して。こらそこ迷宮組。サラッと参加しようとしない。特にハジメ、君右目ないんだから」
「……けどさ」
「この戦いが終わったら治すから、今は休んでて」
「わかった……負けないでよ?」
「当然……もう油断はしないし、絶対アイツは消し飛ばす」
そう言って士郎は飛び立ってしまい、姿が薄っすらとしか見えなくなった。
「ひとまず、安全な所まで僕がクリスタルキーでゲート開くよ」
ハジメが王都へと避難し、人数を確認する。
「3人足りんだけど……」
「雫ちゃん達だね……」
「……仕方ない。私もハジメが残って闘うなら私も行く」
「そうだね……私もいっちゃうよ」
ユエと香織は3人の行動に納得していた。
一方で、目が隠れた少年が次の戦いの為に備えており、そんな彼を1人の兎人族の女性が見守っていたのは誰一人気づくこともなかった。
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「……で、わかってたけどさ。3人とも残ったんだね」
「あったりまえじゃん」
「ここまで来て、戦わない選択なんて無いわよ」
「あの野郎を消し飛ばすまで終わりでは無いですからね」
気合いを入れなおして、恵里達は武器を構える。
士郎は頭の中に浮かぶ光景に意識を半分傾けていた。
(澄み渡る雲ひとつない青空……青く生えわたる緑の大地……それに対して、焼け焦げたような赤黒い空……火の粉舞う火の海に包まれた市街地……これがなんなのか……)
「お兄ちゃん…?」
「ん?」
「上…エヒトが来たよ」
見上げると、岩片が超圧縮されて人型に固められておりエヒトの魂がガタガタになっているのか、バランス悪く型取られており、レオナルド・ダ・ヴィンチがキレそうなほど歪だ。
素材となったものは神域にあった建物の残骸だろうか、ガラスらしき破片の輝きや木片、鉄屑が見える。
『貴様ら……我への侮辱……我が計画の妨害……!幾多の屈辱……決して許さぬ……!』
怒りのオーラが表情のない岩面からでもわかるほど溢れ出ている。
「五月蝿いな……許さないんだったらとっととかかって来なよ」
『最悪の結末を貴様らに与えてやろう……』
空間が揺らぐとそこからエヒトと同じ形をした岩人形が産まれる。
「怒り狂っても自分の大好きな数攻めは変わらないんですね」
「仕方ないわよ。長い間ずっとボッチだったんだから」
シアと雫は憐れむような目で岩人形を見る。
数を増やしていき、球体のように士郎達を包囲している。
「ボクはエヒトを直接やる。3人は増えたカスをお願い」
「「「了解(ですぅ)!!」」」
士郎がエヒトに真っ先に空中を駆け上がりソスタンボイを投影して切りかかる。
エヒトは今までとは打って変わって禍々しい靄がかった剣を生成し、受け太刀する。
『貴様の魂を完全に消し去ってから、改めてその身体を我が手中に入れてやろう!』
「もう二度と彼女達と離れるのはごめんだよ」
皆々様お久し鰤大根です。
漸く士郎君が解放されました。
因みにルート分岐がこの章もあります。
第91話にて恵里が概念魔法を会得するかどうかで変わります。
会得しないで修行をメインに進めると、エヒトに神殺しの短剣刺した時のダメ押しの際に彼女の記憶を全て消耗して士郎君を助けることになります。
結果恵里は士郎達の事も自分自身の事も忘れ、何故ここに居るのかもわからないまま、地球に帰還することとなり、ハッピーエンドとは言えないビターエンドで幕を閉じます。
今回は概念魔法を会得しているので、神断の刃にパワーアップすることが出来ました。
会得しないルートだとシアも会得しないので雫1人のみとなります。
彼女1人では概念魔法を使ったとしても神殺しの短剣をパワーアップする事ができません。
雫はハジメよりはましですが神代魔法への適正値が低いからです。概念の上書きはかなりの難易度があります。
そして何故、代償になった記憶が何かもわからないのは、このネタの元のFGO第2部6.5章のトラオムにて、何故門が開いたのかも誰が開けたのかもわからないという現象ですね。
この辺は自己解釈が大きく含まれていますが。
次回がいつになるかわかりませんが3月か終わるまでには本編ストーリーを終わらせたい…