ありふれない天の鎖の投影魔術師は世界最強   作:小説大工の源三

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番外編の、えー上げ直しです。
ハジメ組達の分も書き上がったので。


ハッピーバレンタイン!

 

 

今日は地球ではとある催しに向けて女性達が準備を始めていた。

 

「良い?明後日にはバレンタイン……つまり好きな人にチョコ菓子を渡す日よ」

 

料理屋の娘、園部優花が取り仕切っていた。

 

「チョコレートというのはこの、茶色い板なんですか?」

 

チョコという物を初めて見るシア達異世界組は不思議そうにそれをじっくりと見る。

 

「ええそうよ。とりあえず、それぞれ一口食べて良いわ」

 

パキリと◯eijiのミルク板チョコを齧る。

固められた茶色の板が口内の温度で溶け出し、舌の上に広がる。

 

「あ……」

 

「あ?」

 

「「「「「甘ーーーい!!」」」」」

 

5名全員がチョコの甘さに感動していた。

 

「なんですかこれ、こんなものがこの世にあったんですねぇ」

 

「ん。なんで地球に来た時にすぐ食べなかったのかわからない」

 

「優花お姉ちゃん!もっと食べたいの!」

 

「ミュウ……食べ過ぎたら、パパ達にあげる分なくなるよ?」

 

「そうよ。リーニャの言う通りだから、また今度にしましょう?」

 

「これを使って菓子を作ればご主人様達も喜ぶじゃろうな……」

 

「はいはい。チョコに感動してるとこ悪いけど、さっさと作るわよまずチョコを細かく刻んでちょうだい」

 

優花主導の元でチョコ作りが始まった。

 

「で、僕達はあげる人わかってるけど鈴は誰にあげるんだい?」

 

このメンツの中で明確に、誰かと付き合っている話を聞いていないのである。

 

「うぇ!?」

 

「だって、鈴からはそんな気配感じなかったからさ」

 

「う……言わなきゃダメ?」

 

「そーだなー……気になるなぁ〜」

 

「わ、わかったよう……りゅ、龍太郎くんだよ……」

 

鈴が恥ずかしがりながら答える。

 

「鈴、貴女、龍太郎といつの間に?」

 

「えっとね……地球に戻ってから……龍太郎くんから告白されたの……」

 

「あの脳筋さんもやるもんですね」

 

鈴の恋模様に反応を示した所で、調理に意識を向ける。

この時、誰もが優花の料理スキルが有れば、指導も完璧だと、思われていた。

1時間が経過した……

 

「ユエ!直接鍋にチョコ入れない!!焦げる!」

 

直でチョコを溶かそうとする、吸血姫。

そう、ミュウ達以外を除けばユエが1番壊滅的であった。

思えばオルクス大迷宮でユエが料理した結果、悲惨な結末になっていた事を思い出したのだった。

 

「ユエさん!?チョコの中に何を入れたんですか!?一口サイズの鶏肉!?絶対合わないですって!果物が合うならいける?何言ってるんですか?」

 

「ユエ……ハジメの為にアレンジするのは良いわ……それをするのは料理スキルがシアクラスになってからよ……」

 

そう言って優花はユエの指導をメインに始めるのだった。

 

それからしばらくして。

 

「づ、づがれだ………」

 

ユエの指導にかかりっきりなった優花は自分のチョコを作る前に消沈してしまっていた。

メンタルが折れかけていた。

得意分野でここまで苦戦したのは初めてだった。

 

「優花さん……大丈夫ですか?」

 

「大丈夫よ……少ししたらアタシも作るから……冷えて固まったら完成よ。また明日呼ぶからみんな帰って大丈夫よ」

 

そう言って全員が帰宅し、優花は自身のチョコ制作に勤しむのであった。

 

─────────────────────────

 

一方で、男性陣はというと。

 

「バレンタインも近い事ですし、こっちからも何かプレゼントしようか」

 

「そうだね。逆チョコってのもあるし」

 

「士郎の家で作るか。オレの家と言いたいところだが、家族がめんどくさい。特に兄貴なんか『バレンタインなんぞに現を抜かしているなんて馬鹿か?』って言われかねん。オレだけなら兎も角、お前らまで不快な気分になられるのは困る」

 

幸利の家の設備もそうだが、家族側の問題があった。

異世界に飛ばされてから戻ってきて、完全に見切られていた。

 

「とりあえず僕の家で作ろっか。それなりにキッチンは広いし」

 

結果ハジメ達の家で作ることとなった。

道中で板チョコを買い、南雲家へと訪れた。

 

「お邪魔します」

 

「いらっしゃい。キッチンは空いてるから好きにして良いからね」

 

と、ハジメの母、南雲菫が出迎えた。

 

「ありがとうございます」

 

礼を言ってから靴を脱ぎ、キッチンへと向かう。

 

「んで……何作るんだ?オレはマカロンとか作るが…」

 

「ボクは、ドーナツ、マフィン、バウムクーヘンだね。バウムクーヘン作る機械は投影して魔力で動かせば如何とでもなる」

 

「僕はカップケーキだね」

 

「おっけ。んじゃ作るか」

 

士郎が専用機を投影し、調理が進む。

久しぶりの本格的な菓子作りに3人はかなり時間をかけた。

ハジメが最終決戦の準備期間中に作ったアーティファクト、アワークリスタルのおかげで、実際の時間はそこまで経っていない。

 

「うし、できたな」

 

「明後日に渡すだけだね」

 

「包装は投影したから問題なし」

 

「流石の投影だな……」

 

出来上がった完成品を包み、特別製の宝物庫に収納し、バレンタインを迎える。

 

─────────────────────────

 

士郎組side

 

少し遠くの街の高台で3人は向かい合っていた。

リーニャにはハート型のチョコリングを渡し、天野家の両親に預けている。

 

「さて、お兄ちゃん。今日は地球に戻ってから、初めてのバレンタインです」

 

「私達の手作りチョコ、どうぞ!」

 

「わたし達の想いを込めたチョコを食べてください!」

 

3人から渡されたチョコレート、恵里はチョコでデコレーションされたカップケーキ。雫はフルーツにチョコをかけてスプレーチョコで飾った物。シアがハート型のチョコだった。

 

「ありがとう3人とも。で、これがボクからだね。恵里にはドーナツ、雫にはマフィン、シアにはバウムクーヘンだよ」

 

包装されたお菓子を交換する。

恵里は手渡されたドーナツを見て、士郎の瞳を見る。

 

「ねえお兄ちゃん。これの意味わかってるよね?」

 

「当然。理由含めて渡したからね」

 

「そっかぁ……フフッ……」

 

恵里は嬉しそうにドーナツの入った袋で顔を隠す。

 

「確かに私達、個人個人に合わせているのね……」

 

「あのみなさん…わたしだけわからないのですが……」

 

「シアのだけ、中に紙いれてあるからそれで意味もそこでわかるよ」

 

異世界出身のシアだけ、意味を知らないので、士郎は中にある手紙を入れていた。

その手紙を読んだ彼女はとても嬉しそうな顔を見せた。

お互いの菓子を食べ終えた士郎達はソファの上で寛ぐ。

 

「それじゃあ、お菓子食べた後は……何を食べるかわかるよね?」

 

恵里は色っぽく、士郎に尋ねる。

 

「良いの?」

 

「むしろ士郎さんが来なかったら私達から行ったわよ」

 

「ベッドに行きましょう?わたし達も準備は既にしてますよ?」

 

3人に連れられ、長い夜を過ごすこととなった。

 

─────────────────────────

 

 

ハジメ組side

 

ハジメは洒落た箱に詰められたカップケーキを持って香織達に呼ばれた街のホテルに向かっていた。

 

「ハジメくーん!」

 

入り口付近で香織が手を大きく振りながら笑顔で自身の存在をアピールしている。

隣で小さくユエが手を振っている。リリアーナは緊張しているのかモジモジしている。そんな彼女とは真逆にレミアは余裕のある笑みを浮かべている。

 

「それじゃあ中に入ろっか」

 

ホテルでチェックインを済ませて、予約していた一室に入る。この部屋で数日過ごすのである。

 

「あなた。まずは私とミュウからよ」

 

レミアから渡されたのは弾丸の形をした複数のチョコだった。

 

「ミュウと話して私達で作れる形且つ、貴方のイメージに合う物がこれよ」

 

弾丸チョコを一つ口に運ぶ。

最初は普通のチョコだと思っていたが、パキッと噛み砕くとパチパチと何かが弾ける。

 

「!?パチパチする…!」

 

「ふふふ……ミュウの提案で、中にぱちぱちきゃんでぃー?というのを入れてみたんです」

 

「良い刺激で美味しいよ。ありがとう」

 

次に渡してきたのはリリアーナだった。

 

「私のはこちらです……あまり凝った物は作れませんでした……」

 

渡されたのはパンの間にチョコクリームをたっぷりと塗った、サンドイッチだった。

 

「この世界でランチパックというのがあったので、それを参考にしました……お口に合えば良いのですが……」

 

リリアーナからのチョコを食べる。

柔らかいパンととろけたチョコの甘さが懐かしい。よくスーパーで手頃な菓子パンとして良く食べていた。

 

「美味しいよリリィ。でもサンドイッチなのは珍しいね」

 

「はい……実は、ハジメさんと王都でデートした際にサンドイッチを食べたのを思い出して……簡単に作れる物だったので」

 

「なるほど……ありがとう」

 

「次は私。はい」

 

ユエが手渡したのはチョコでコーティングされた果物。チョコフォンデュだ。

 

「私は料理下手だから……私は1番簡単な物にした……来年はもっと凝った物を作る」

 

それを一口食べる。

果物の甘さと酸味をチョコで底上げしたり、補ったりしている。

 

「美味しい……来年も楽しみにしてるよ」

 

「ん…」

 

最後は香織だ。

 

「はい!ハジメ君!私のチョコだよ!」

 

香織が取り出したのは色とりどりのマカロンだった。

 

「おお……あむ……美味っ……」

 

「ふふん……!自信も当然あるからね」

 

そのまま全員から貰ったチョコを食べ切る。

満足したハジメは、自分の作ったお菓子を宝物庫から取り出す。

 

「はい、これカップケーキ流石に僕も凝った物は作れないから簡単な飾り付けだけになっちゃった。料理と物作りは違うからね……」

 

そう言ってそれぞれに渡す。ミュウには両親に渡すように頼んでいる。

 

「かわいい……」

 

「食べてもよろしいでしょうか」

 

「勿論」

 

各々がハジメのカップケーキを食べる。

表情を見るに大丈夫そうだった。

 

「ご馳走様…美味しかったよハジメ君」

 

「それは良かった……」

 

「さてと……今日から数日はここで過ごす……これの意味がわからないハジメじゃないでしょ?」

 

こちらも長い夜になりそうだった。

 

─────────────────────────

 

幸利組side

 

幸利達も遠出しており、3人で買い物をし、その帰りに、夜景が綺麗な高台に優花とティオに連れられて眺めていた。

 

「結構綺麗だな……」

 

「そうね。昔来た時と変わらない景色で良かったわ」

 

「自然が減った地球が故にここまで綺麗に見えるのかもしれんのう……」

 

しばらく夜景を眺めてから、幸利が宝物庫の中からマカロンを取り出す。

 

「これがオレのバレンタインだ」

 

そう言って、二人にマカロンを渡す。

箱を開け、マカロンの上を見るとそこには、それぞれの顔が精巧に描かれていた。

 

「ハジメのアワークリスタルで時間は余裕だったからな……」

 

「流石ね……アタシのチョコも結構凝ったけどここまでじゃないわよ……」

 

「うむ……これを見ると自信がなくなってしまうのじゃ……」

 

そう言いながらも、2人はお菓子を渡す。

受け取ったお菓子は幸利のそれに劣らないほどのホワイトチョコなどで装飾されたチョコとマロングラッセだった。

 

「いやいや……お前らの方がすごいだろ……」

 

彼も驚いたような表情を見せる。

お互いに渡したお菓子を口へと運ぶ。両者共に美味しそうな表情を浮かべるので、満足したようだ。

 

それからは何もなく、家へと戻るのだった。

 

─────────────────────────

 

ピンポーン

 

「うーい……」

 

気怠げな声を出しながら、出迎えたのは龍太郎だった。

 

「おはよう龍太郎くん」

 

「おー……鈴じゃねぇか…」

 

寝起きのようで、目を擦りながら扉を開けた。

 

「今日何の日かわかる?」

 

「あー……何だっけ……」

 

ぼやぼやとした脳を動かして考えている。

 

「バレンタインだっけ……」

 

「『ピンポーン』正解だよ!はい!これ鈴からのバレンタインチョコ。味わって食べてね!」

 

「おお…?おお?!マジ!?サンキュー鈴!」

 

受け取った瞬間、意識が一気に覚醒し、声を出して喜び、そのまま鈴を抱きしめた。

 

「うえ!?龍太郎くん!?」

 

突然の事に驚く彼女に気づかず、そのままグルグルと回る。

 

「龍太郎!落ち着いて!一回離してぇぇぇええ!」

 

「おっと……悪い悪い…」

 

「もう……いきなりだから驚いちゃったよ……」

 

「いやー……本命チョコなんかもらったの初めてだからな……嬉しすぎてさ……」

 

「あははっ……鈴も本気の本命チョコなんて作るの初めてだからさ……食べて感想聞かせてよ」

 

「おう……んじゃ……いただきます……」

 

袋から取り出し出てきたのは、ちょっと形が崩れた焼きチョコだった。

 

「どう……?」

 

「………」

 

「龍太郎くん……?」

 

チョコを口に入れてから何も喋らない。

 

「美味いッ!!」

 

「わぁッ!?」

 

「すげーーうめえ……」

 

龍太郎の口に合ったようで、鈴は心の底から安心し喜んだ。

 

「もう……食べてから何も言わないから怖かったんだよ?」

 

「済まんかった。幸利の奴と飯の食い歩きしてる時、めちゃくちゃ味わうように食ってたからさ。それに倣って俺も味わうように長く確かめながら食う事にしたんだよ」

 

「そっか……」

 

「流石、俺の彼女だ」

 

「えへへ……」

 

異世界で遅れて恋人になった2人はこの後も買い物デートに出かけるのだった。

 

 

 

 

 




作者の世界のユエさんは料理スキルが壊滅的です。

そして作者バレンタインの日付忘れてましたw
この馬鹿野郎!
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