ありふれない天の鎖の投影魔術師は世界最強 作:小説大工の源三
大迷宮から無事脱出できた勇者一行は王国に今回の件を報告しなければならない。メルドは報告内容を考えると憂鬱になり顔を顰めた。
王国に戻ると全員が全員死への恐怖で体が震えている。勇者である天之河と同等のスペックを持ち、数少ない年上の1人を失ったのだ、絶望するなと言う方が無理だ。
メルドが王国に報告する。上層部の貴族達は死んだ内の1人が無能のハジメで良かったなどと言い出したのだ。まだ国王やイシュタルは分別のある人だったのだろう。上層部連中はハジメが士郎達を道連れにしたなどと言い、さらには香織達に嫉妬した女性貴族達が彼女等を罵り始めたのだ。
天之河に龍太郎はそれに対して抗議したのだが、ハジメを庇う心優しい人物だと逆に株をあげることになってしまった。しかしそんなことで龍太郎は納得するような男ではなかった。
「ふざけんなぁ!」
龍太郎は貴族の数人を叫びながら殴り飛ばしてしまった。暴走した龍太郎を止める者はこの場にいなく、ハジメ達を罵った貴族の数人の顔が腫れ上がる。
「テメェらが南雲の努力を馬鹿にすんじゃねぇ!白崎達に嫉妬するくらいなら努力しやがれぇ!」
「やめるんだ!龍太郎!」
「離せ光輝!こいつ等はボコボコにしねぇと俺の気がすまねぇ!」
その後団長も加わり龍太郎は鎮められた。
流石に今回の件は貴族側が悪いことになり龍太郎は罪に問われなかった。
彼の他にも士郎達の死を知って落ち込んでしまった者がいた。まず畑山先生だ。教え子が死んだと言う事実にショックを受けない彼女ではない。他にはリリアーナとランデルの2人だ。リリアーナは以前から士郎達と話す仲なのはともかくランデルは最初、リリアーナと話している士郎達に詰め寄って来たのだが、リリアーナが説明すると納得し、ハジメの錬成などの様々な話をしていくうちに彼とも仲を深めることが出来たのだ。ランデルの初恋は儚く散ってしまったが、士郎達のことを兄、姉のように慕うようになった。その理由は後々語ることになるが。そんな彼等が死んでしまったという話しを聞かされ、2人は初めて出来た兄、姉のように慕う存在を失った喪失感が予想よりも大きく、食事が喉を通り辛くなってしまったのだ。
それからハジメ達に向けて魔法を放った疑いのある檜山を尋問しようとしたのだが、突然人が変わったように檜山は土下座をして罪を認めたのだ。
天之河はその姿を見て檜山を許そうと王国に掛け合い無罪判決が出る。その際鈴、龍太郎、遠藤が猛抗議したのだが判決は覆らなかった。
何故無罪にしたのか龍太郎達が天之河に問い詰める。
「光輝、なんであいつを無罪にしたんだ!」
「そうだよ檜山くんはワザと当てたんだよ!?」
「でも彼はきちんと反省したんだ。だから大丈夫さ」
「天之河……それでもあいつにはきちんと罰を受けて貰いたいんだが」
「遠藤、あれは檜山のミスで真っ直ぐ撃つはずが曲がってしまったんだ。あれは不幸な事故だ。だから彼は悪くないし、罰を受ける必要はないさ」
そう言って天之河はそのまま自室に向かって行く。その後姿を3人は信じられないものを見る目で見ていた。
「鈴、遠藤……俺もうあいつのこと信じられなくなってきちまった……」
「龍太郎くん、それは鈴もだよ。ハジが落ちた原因は檜山くんの自分勝手な行動の所為なのに、それで皆が命の危険に晒されたのになんで許せるのかな?もうわからないよ……」
「俺もだよ……あの時南雲が身体を張ってベヒモスを止めていたのに、恩を仇で返すようなやつを許すなんて頭おかしいだろ……」
3人はこれから自分達はどうしたらいいのかわからなくなっていった。
龍太郎と鈴は恵里にどう説明したらいいのか、そもそも報告してもいいのか悩み、遠藤は天之河の思考を理解出来ない。
「恵里になんて伝えたらいいんだろう……恵里が一番檜山くんのこと恨んでるから」
「正直に伝えるしかねぇだろうな……」
それから5日が経過して恵里が目を覚ます。
鈴と龍太郎はこの5日間に何があったのかを伝える。恵里は元から信頼などしてはいなかったが2人の評価が地獄の底まで落ちたのは言うまでもない。恵里が使っていた杖を確認すると、まだ強化魔術の効果が残っており、士郎達が生きていることがわかった。強くなることを決意したはいいが士郎達が生きていることを誰に伝えるか相談する。
「とりあえず天之河や檜山達には知らせないのは当然として……畑山先生にリリィとランデル、団長の3人には教えよう」
「天野、お前いつの間に王女、王子と仲良くなったんだよ……」
「それはいつか説明するよ」
彼等に時間を選んで説明することにした。
まずメルド団長に説明する。納得した表情を作った彼はこのことを世に公表することをしないことを約束したのだった。
次にリリアーナとランデルの2人に説明すると、2人は喜んだ顔になりいつ彼等が帰ってきてもいいように居場所を残しておく為に行動することとなった。無論、彼等が生きていることは内密にすることを約束してだ。
最後に畑山先生にも公表しないよう説明する。
恵里達4人は士郎達にいつ再会出来てもいいように訓練により一層打ち込むようになった。
その際天之河だけ、士郎達の死を乗り越えたと勘違いしていたが。
なんと言うかありふれのクラスメイトsideって『雁首、揃えてご機嫌よう』って曲がぴったりだと思う。(特に檜山と天之河)
今話はクラスメイトsideで何が起きたかを詳しく説明した話になります。
士郎達はリリアーナとランデルの兄、姉的存在になりました。士郎達の話や凄さに驚きランデルは香織の彼氏であるハジメのことを認めました。錬成師いえど侮ることは出来ないことがわかってます。