ありふれない天の鎖の投影魔術師は世界最強   作:小説大工の源三

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遅くなりました。
GWは仕事漬けで書く気力も沸かず力尽きてました。

書きたい話なので1日で仕上げました。
なので所々文章変かも


深淵卿vs教官

宴も終えた翌日。帰還の準備と平行して、各国の復興を士郎達は手伝っていた。

 

「リリィ。建物はこれでいいかな?」

 

ハジメは錬成で次々と建物を錬成していく。

 

「はい。ハジメさん、ありがとうございます」

 

「帰るまで時間あるから。それに恋人の国だ、力を入れるよ」

 

「ハジメさん……」

 

うっとりしたようにリリィはハジメを見つめていた。

 

「あらら〜リリィったらすっかりハジメくんの虜になっちゃってるよ」

 

「……ん。ハジメは優しいから仕方ない」

 

一方で士郎は投影魔術で備品を生成していた。

 

「兄ちゃん次こっちに釘頼む!」

 

「はいはい!」

 

「今度はこっちにネジお願い!」

 

投影した備品には強化魔術を施しており、壊れにくい上に不用になればゴミも残らないのだ。

逆にいえば素材にできないのが難点だが。

復興と言えば農業だが、作農師の愛子は魔人領にて、土地の改革を行っていた。

一部だけでも作物が安定して育てられるようになれば、生活が安定する。

愛子本人がそれを望んで魔人領に向かったのだ。

 

その夜、ハジメは士郎に呼び出された。

 

「遅かったね。何してたの?」

 

「ちょっとね……」

 

少し照れたようにハジメは顔を背けた。どうやら恋人達と何かあったようだ。

 

「僕のことはいいよ。それで用件って?」

 

「クリスタルキー今持ってる?」

 

「うん……これをどうするの?」

 

ハジメから鍵を受け取り、それを握り魔力を込め始める。

握る手からは虹色の光が放たれ、彼の視界を眩ませる。

数十秒後光は収まり、紅水晶の鍵は鮮やかなエメラルド色へと色を変えていた。

 

「よし……成功……だね」

 

士郎は自身の解析魔術を発動し、鍵の性能を調べる。

 

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ワールドキー

 

世界を越える鍵。

一度訪れたことがある世界には容易く繋げることができる。

 

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「うわぁ……なんか追加されてるぅ……」

 

「あはは。ボクの起源を投下したらそうなったみたい」

 

「毎度の事だけどやることがぶっ飛び過ぎたよ君ら……」

 

「君らってどう言う……恵里達の短刀?」

 

「そーだよ」

 

「概念魔法に新しい概念魔法をぶちこむなんて、解放者達も想像ついてないだろうね」

 

─────────────────────────

 

 

それから1週間が経過した。

 

出席確認の為に生徒全員が集まっている。

 

「それでは出席確認をしまーす!呼ばれた生徒は返事をして下さい!」

 

愛子は出席番号順に生徒を呼んでいく。その中にはユエたち異世界組や既に処刑された檜山達の名前もあった。

 

「最後に、天野士郎くん」

 

「はい」

 

愛子はやり切ったと言わんばかりの顔をしていた。

だが、生徒達の一部でクスクスと笑い声が漏れる。

そして、

 

「愛ちゃん先生―っ!浩介の名前を呼び忘れてますよー!」

 

遠藤が所属しているパーティーのリーダーである永山が楽しそうに笑いながらそう口に出した。

愛子はハッとなり、

 

「ご、ごめんなさい遠藤君!!遠藤君!遠藤 浩介君!!」

 

影が薄く、普段から忘れがちな遠藤に対し、謝りながら誤魔化すように大声で遠藤の名を呼ぶ。

しかし反応がなかった。

 

「え、遠藤君!?名前を呼び忘れてしまった事は本当に申し訳ありません!ですから、怒らないで返事をしてくださいぃ~!」

 

返事が返ってこないのは、遠藤が怒っている為だと思った愛子は半泣きになりながら返事をするように頼む。

だが、それでも返事は一向に返ってこない。

 

「先生、マジでいないみたいだよ」

 

士郎が大地感知で探すが、生徒のいるここにはいなかった。

 

「探せー!」

 

慌てて全員が遠藤を探しにかかる。

 

「カム…手伝ってくれる?」

 

「団長のご命令とあらば」

 

そう言ってカム達ハウリア族も総出で探し始めるのだが、ただ1人だけ顔に冷や汗を流して目を逸らしていた。

 

「む?どうした『風影』のラナインフェリナ?」

 

「えっと……その……」

 

「ラナさん?遠藤さんの事何か知ってるんですか?」

 

同じハウリア族であるシアが、ずいっ、と顔を寄せながら問いかける。

 

「あ、あの………何て言うか…………」

 

その姿はいつも厨二な発言を繰り返している『ラナインフェリナ』ではなく、ただの『ラナ』であった。

シアが尚も問い質そうとした時、

 

「おい!あそこ!」

 

生徒の1人が一点を指差しながら声を上げた。

その先には、ザッザッと地面を踏みしめる音を立てながら歩いてくる、黒い人影。

服はボロボロで髪はボサボサ。

どの様な目に遭ってきたのか簡単には想像できない程に傷付き、苦しんだであろうその姿に、その場に居た皆は唖然となった。

その歩いてきた人影こそ何を隠そう遠藤浩介その人だった。

 

「あ、ああっ!遠藤君、無事だったんですね!?もう、何処行ってたんですか!?心配したんですよ!」

 

愛子先生が一番に我に返り、先程の失態を隠すかのように遠藤に駆け寄った。

 

「………………………」

 

だが、遠藤は無言で愛子先生の横を通り過ぎると、少し俯いていた顔を上げてクワッと目を見開き指をさして幸利を見据える。

 

「清水幸利!俺と勝負しろ!」

 

突如として遠藤は幸利との決闘を望んだのだった。

 

「おいバカやめろ!」

 

「自殺行為だぞそれ!」

 

「白崎さんっ綾子ぉ誰でもいい!早く回復魔法をっ頭を念入りに頼む!」

 

「と言うか何故、ご主人様なのじゃ?」

 

「多分ハウリアの教官をしてたのが幸利だったからでしょ」

 

「なるほど」

 

焦るクラスメイトや不思議がる恋人達に対して勝負を挑まれた幸利は、大きく息を吸い込み叫んだ。

 

「シャラーップ!」

 

「幸利?」

 

「遠藤。オレは無用な戦いは望まねぇ……お前だってそうだろ。何が理由だ」

 

「俺はラナさんに一目惚れした!彼女から出された条件はほとんど達成した!あと一つ……お前に傷一つつけることだ!」

 

声高々に宣言する。

その覚悟を汲み取った幸利は一瞬で戦闘衣に着替え、ブラックロッドを取り出す。

 

「構えろ。お前の望み通り戦ってやる」

 

幸利は全身から魔力を溢れさせる。それだけで足元が数センチ陥没する。

対する遠藤は懐からサングラスを取り出し、装着すると同時に雰囲気を変える。

まるで別人になったようだった。

 

「疾牙影爪のコウスケ・E・アビスゲート、いざ参る!」

 

そう言い放つと、一瞬にして遠藤は幸利へと小太刀で切りかかる。

そのまま密着状態で激しく切りつけるも全てロッドにいなされる。

回し蹴りで幸利と距離を取りつつ、手裏剣やら苦無やらをばら撒き、それら全てを投げつける。

 

「甘ぇ!優花がいるってのにそんなの喰らうかっつーの!」

 

ガキキキィン!

 

ロッドを拘束で回して全て弾く。

次に取った行動は、小太刀を撫で、魔力を込める。

 

「闇の竜王よ!我が深淵の一端を見よ!七色の魔刀が唸る姿を!」

 

小太刀を地面に突き立てる。

 

「土遁・砂塵の嵐(我が姿を見ること能わず)!」

 

余りにも香ばしい詠唱。

刀を撫でる必要もないが。

ともかく詠唱によって砂嵐が幸利の周囲を包む。

 

(持ち前の気配の薄さを視界から無くすことで更に不意打ちしやすくしたか)

 

四方八方から切りかかり、傷をつけようとするも、全く当たらない。

 

「そろそろ次の技見せてみろ!」

 

魔力を放出して砂嵐を力尽くで吹き飛ばす。

 

「火遁・紅蓮の焔(我が身体掴むこと能わず)!」

 

小太刀から濃い赤色の焔が溢れ出す。

それを指揮棒のように動かし、幸利を焔で作り上げた芸術作品の中に閉じ込める。

 

「さしずめ焔の檻ってところか」

 

余りの熱量に視界が揺らぐ。

幸利の気配感知にも捉えることのできない遠藤を視覚で捉える戦いをしていることは遠藤もわかっているからこそ、視覚を惑わす戦法をとっている。

幸利もまともにこの中で相手する訳もなく、檻の天井を突き破り、脱出する。

 

「氷遁・氷鏡迷宮(我が本体、見抜くこと叶わず)!」

 

着地をした場所には新しく氷によって作り出された迷宮が現れる。

 

「うおっ……今度はミラーハウスか」

 

鏡のように光る氷壁から、遠藤が複数現れ包囲しながら攻撃する。

本物がどれかわからないので、全てをかわし続ける。

 

「チィッ…暗黒波・集」

 

幸利は闇魔法のレーザーを放ち鏡に反射させる。

反射したレーザーはあっちこっちを飛び回り、魔力が尽きたのか消えてしまう。

 

「なるほど……」

 

何かを理解したのか幸利はロッドを両手で握り、襲いかかる遠藤の軍隊の内1人を見つめる。

 

「……そこか、フン!」

 

本体は貴様だと言わんばかりのフルスイングをぶちかます。

 

「グハァッ!」

 

鏡に写った遠藤も地面に叩きつけられる。

 

「何で遠藤さんの居場所がわかったんですか?」

 

試合を見ていた外野のシアはよくわかっていなかった。

 

「レーザーを反射させて反射の具合から、居場所を察知したんだね…」

 

「アレをあの一瞬でですか!?」

 

「幸利、脳筋戦法取るけど、そういう判断早いからね」

 

「スマブラとか格ゲーで即死コンでボコボコされたの思い出したわ」

 

外野が感心していた。

 

「さてと、これで終わりか?」

 

「クククッ……我が深淵は一つに有らず我が意思は無数に有る!」

 

遠藤が笑うと殺気を感じ取った幸利は身体仰反らせ、背後から迫りきた謎の存在を視認する。

 

「オイオイ……こんなこと俺でも出来ねぇぞ」

 

視界に入ったのは、2人の遠藤浩介だった。

 

「なぁ!?浩介が3人!?」

 

「アイイエ!?ニンジャ!?ニンジャナンデ!?」

 

「アイツいつの間に禁術の巻物読んだんだ!」

 

まるでそれは某忍者漫画の主人公が一番使った術のようだった。

更に遠藤が手を鳴らすともう1人、ゆらりと増える。

そして4人は幸利に突っ込み、小太刀や拳による攻撃を放つ。

 

「フッ……フハハハハハ!面白れぇ……楽しくなってきたじゃねぇか!」

 

全て捌き切った幸利は大きく笑った後、後ろに大きく跳び、魔法陣を展開し、あの大戦で呼び出した4竜を召喚する。

 

「そっちが数を増やすならこっちも増やしてやるよ……」

 

ヨルムンガンド達は分身と本体の遠藤を捉えて氷の迷宮を飛び出していく。

 

「さーて、アイツはどうするかねぇ。限界超えてくれるかぁ?」

 

突き破った氷の迷宮の屋根の上に立ち、様子を見ていた。

遠藤が出せる分身が3人までなのは理解していた。

 

「クッ……これが闇の竜王の配下四天王……我らには荷が重すぎる……」

 

竜の一体一体が遠藤以上のスペックを備えており、まともにやり合えば勝てない。

防具により牙や爪の攻撃はかろうじて防いでいるがこのままだとジリ貧だ。

 

「ならば我が深淵は更に深くなろう!」

 

更に遠藤の分身が1人増える。

アジ・ダハーカを相手していた本体と入れ替わり、幸利へと駆け出す。

 

「良いね良いねぇ……愛する人の為に超える奴はこうでないとなぁ!」

 

己も優花とティオの為に限界を超え、勝利を掴んだ。やってくれると信じていた。

 

「雷遁・雷光飛電(汝、深淵まで振り向かず)!」

 

今までよりも明らかに速く移動し、幸利の反応がギリギリ追いつく攻撃を仕掛ける。

 

「うおっ!(攻撃が重く強くなった!?)」

 

深淵卿の力により、上がっているステータスによるものもあるが、幸利は遠藤の持つ小太刀が身に覚えのある魔法が使われていることに気づいた。

 

「なるほど、お前ミレディの迷宮クリアしたな?」

 

「然り。歴史の闇に飲まれし守護者から受け継ぎし魔法」

 

「やるじゃねぇか。深淵卿!」

 

「フッ……全ての守護者から受け継いだ貴殿から褒められるとは」

 

このやり取りの間にも激しい攻防は続いていた。

幸利も身体強化でステータスを上昇させていた。

 

「だからあの時、ミレディはまたまたなんて言ってたんだ」

 

「そうなの?恵里」

 

「うんしかもゴーレムも3号って言ってたし」

 

「うわお」

 

恵里は重力魔法を会得するためにミレディと対峙した時のことを思い出していた。

 

「オラァ!」

 

「グホッ!?」

 

幸利のロッドが遠藤の腹部を捉えそのまま上へとかち上げた。

 

「風遁・旋風の通り道(深淵は貴様に近づく)

 

風を使い、宙を駆け抜ける。

何度も幸利の容赦のない、攻めが続いたが、深淵卿の力で何度も喰らいつく遠藤。

その2人の戦いは終わりに近づいていた。

 

「ハァッ……!ハァッ……!」

 

「そろそろ終いにするか……」

 

「良いだろう……」

 

2人は距離を取る。

それぞれが対峙していた分身や竜も2人の決着を見るために戦いを止める。

深淵卿の力が高まり、魔力を自身巡らせ、目をカッと開いたその時、遠藤は誰も視認することができないほどの速度で駆け抜け、幸利との距離を詰める。

それは奈落から這い上がってきた士郎達ですら目が追いつかなかった。

 

ガキィィィン!!!

 

「ど、どうなったんだ!」

 

「どっちが勝ったんだ!?」

 

幸利の後ろで小太刀を振り切った姿の遠藤が崩れ落ちる。

誰もがダメだったかと諦めたその時、

 

「遠藤……いや、浩介(・・)……お前の勝ちだ」

 

幸利の脇腹から出血する。

彼に傷を付けたのだ。

 

「…………………ッ!!いよっしゃぁああああああっ!!!やってやりましたよ!!ラナさん!!!」

 

浩介は立ち上がり手を掲げて叫んだ。

自分の勝利を声高々に叫んだ。

 

「はわぁ……♡」

 

全員が彼女が浩介に完全に惚れたのを察したのだった。

幸利が浩介に歩み寄ると、既に限界だったのか、背中から倒れる。

 

「おっと……お疲れさん。名実共にラナはお前のもんだ……ま、こんな事なくても惚れてたんだろうけどよ……って気絶してやがる」

 

浩介は幸利に支えられながら気絶していた。

 

「きょ、教官!」

 

「ラナか。コイツを頼むわ」

 

「は、はいっ!」

 

そう言って幸利はラナに浩介を預ける。

 

「コイツのこと大事にしてやれよ?」

 

「勿論です」

 

そう言って幸利は優花とティオの元へ飛ぶ。

 

「お疲れ様」

 

「お疲れ様なのじゃ」

 

「だーくそなんか悔しいわ」

 

そう言う幸利だが、その顔はとても満足そうだった。

光輝との戦いもそうだが、人間が人間らしく自分に挑んでくるのが何故か心地よくなっていた。

自分が化け物だと思っているからなのだろうか。

 

「奈落に落ちなかった人に初めて負けたから?」

 

「いや、そうじゃねぇし。俺の初黒星の一般人はフリードだ」

 

「アレは負けじゃないわよ」

 

「なんでお前が否定してんだよ……とにかく疲れたわ」

 

「フフフ……ならば今日はたっぷりと癒してやらねばのう」

 

「そうね……アタシ達の身体全部を使ってね」

 

「ん?帰還は伸びたのか?」

 

「ええ。アンタらの疲れを取る為に2日遅らせるそうよ」

 

「そうかい……」

 

─────────────────────────

 

その日の夜、幸利との決闘に勝利した浩介は王国の一室で目を覚ました。

 

「俺は……確か清水の奴と決闘して……ハッ!?結果は!気絶して寝てたってことは負けたのか……?」

 

「違うわよ」

 

「ら、ラナさん!?」

 

ボヤけた視界がクリアになっていき、自身の目に1人のウサミミ女性の顔が写る。

自身が惚れたハウリア族のラナだった。

 

「貴方は勝ったのよ。教官に」

 

「ほ、本当なのか!」

 

少し呆れたような表情になる。

 

「もう……一度、声を上げて喜んだのに忘れちゃったの?」

 

「い、いや〜夢とかそんなもんかと思ってて……」

 

「ふふっ……それじゃあ改めてあの時の返事をするわね。これからよろしくねこうくん♡」

 

「は、はいッ!……ってこうくん?」

 

「うん!これからそう呼ぶわ。それじゃあ早速……」

 

その日遠藤浩介は眠れない夜を過ごすのだが、彼にとっては最初の幸せな夜だった。

 

 

 




これは書きたかった話なので頑張りました。

皆様、2回目のライセン迷宮でのミレディの発言や原作のアフターを読んでいればわかっていたでしょうが、あの時既にアビスゲート卿は重力魔法を会得していたのです。
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