ありふれない天の鎖の投影魔術師は世界最強   作:小説大工の源三

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帝国からの使者

ベヒモスを倒した日から少なくない日時が経過した。 かつての悪夢を乗り越えた僕達は一度迷宮から城に戻った。今までは不完全なものの地図があったのだが、これからは地図が出来ていない全くの未知の領域なのだ。

今は疲労回復の為に一時帰還する事になったのだ。ただ休憩するならホルアドでも良かったのだが、王国からの迎えが来たから僕達は王国に戻ったのだ。

話によると勇者一行と謁見する為に、ヘルシャー帝国から使者が来るそうだ。

因みに帝国との顔合わせが遅れていたのは、まず僕達が召喚されるまで時間もなく、帝国に知らせが間に合わなかったこと。そして帝国は実力主義だからだ。

そのため僕達一行とすぐに顔合わせしても軽んじられる事があるかららしい。だが僕達は六十五層のベヒモスを倒したので、興味を持った、ということだ。

そんな話を馬車の中で聞いたのだが。

正直に言えば『どうでもいい』の一言だ。今僕はそんな事をするくらいなら強くなることの方が有意義だと思っている。

馬車から降り王宮で待つ待機組の生徒達の所に到着した。

全員が馬車から降りると王宮の方から一人駆けてくる一人の少年──ランデル王子が視界に入った。

 

「皆の者良く帰った!ベヒモス討伐の知らせ、聞いたぞ!余は誇らしく思う!」

 

最初に会った時よりかなり丸くなっているのを僕と鈴は実感している。何せお兄ちゃんがランデル王子にドラク○に出て来る嫌われ王子の話をしたのだから。

経緯としては、僕達の世界の王子はどのような者なのか聞いてきたのがきっかけだった。その時に7番目と8番目に出て来る王子の話をしたら、彼が少し不安になってしまい、どうしたら良い王子になれるのか聞いて来たのだが。当然お兄ちゃんは王族でもなんでもないので、何を言ったらいいかわからなかった。なので『権力を盾に我儘は言わない』とか『民の事をよく知り、悪い所ばかりを見ない』などを言ったのだ。それを心に刻んだのか、態度を改めたり、国の書類作業を見て学ぶようになったのだ。リリィも最初こそ驚いたものの、すぐにランデルの心意気を汲み自身の仕事を教えている。いつか立派な王になれるといいね。

 

「お帰りなさいませ。皆さまの無事の帰還、心から嬉しく思います」

 

そう言うと、リリィはふわりと微笑んだ。

クラスメイト達は挙って頬を赤く染める。香織達のような美少女が身近にいるとはいえ、彼女達にはない王族としての洗練された気品や優雅さには太刀打ち出来なかった模様。

無論ハジメ、幸利も出会った当初は赤くなっていた。打ち解けたのは3、4番目だ。

1番最初に打ち解けたのはこの男だ。

 

「ありがとうリリィ。君の笑顔で疲れも吹っ飛んだよ。俺も、君にまた会えて嬉しい」

 

さらりとキザなセリフを言う天之河。下心無しでこのセリフが浮かぶのだからすごい。

 

「えっ、そ、そうですか?え、えっと……」

 

王女である以上、お世辞混じりの褒め言葉を貰うのは慣れている彼女は、笑顔の仮面の下にある下心を見抜く事が出来るのだが、今回の場合は下心のない素の状態で言われてしまったので、どう反応したらいいかわからなくなってしまい、オロオロしている。

一方の天之河は相変わらずニコニコしている。

やはり自身の言動が及ぼした事を理解していないようだ。雫がいたらため息を吐きそうだ。

その後リリィが精神を立て直してこれからの事を説明してくれた。

僕は3日間で魔力幻影のレパートリーを増やす事にした。

 

─────────────────────────

 

そして3日が経ち、帝国の使者が訪れた。

謁見の間には迷宮攻略に赴いた面々、国の重鎮、イシュタル率いる司祭数人が勢揃いし、使者5人を出迎えている。

 

「使者殿、よく参られた。勇者様方の至上の武勇、存分に確かめられるが良かろう。光輝殿前へ出てくれるか?」

 

「はい」

 

勇者である天之河を筆頭に迷宮攻略のメンバーが紹介されていく。

 

「ほう、貴方が勇者様ですか。随分とお若いようで……失礼ですが、本当に六十五層を攻略したので?あそこには確かベヒモスという化け物が出るそうですが……」

 

使者の一人は天之河を観察するように見やると、若干疑わしそうな眼差しを向ける。

一応証拠として坂上くんと天之河の攻撃で得た角があるので、天之河はそれを見せようと提案したのだが、護衛の1人と模擬戦をすることで判断することとなった。

 

「これ、時間かかりそうだね……」

 

僕は早く訓練したいので、なるべく天之河か使者のどちらかが瞬殺されるのを望んでいる。どちらかと言うと天之河が瞬殺されてくれればなぁと思っているが。

出てきた護衛の姿は何処にでも居そうな雰囲気を纏っていて、特徴という特徴がない。人混みにすぐ紛れ込みそうなほどだ。

構えらしい構えも取らず剣をだらりと下げている。

ただ少し不思議に思った。いくらヘルシャー帝国と言えども、人智を超えたような強さを持つ天之河に対して模擬戦をいきなり挑むなんて、少し違和感を覚える。僕は直感で護衛の正体を察する。

 

「坂上くん、相手はおそらくメルドさん級だよ」

 

「やっぱりか……隙がねぇと思ったらそういう事かよ……」

 

「一応『強敵だ』って教えといて……」

 

「わかった」

 

坂上くんは天之河に注意した。

そうして模擬戦が始まった。

『縮地』によって高速で踏み込む。並の戦士なら視認することすら困難なものだ。しかし護衛の男はそれにカウンターをかけたのだ。

天之河は一撃目こそ防いだものの、続く第二撃目は防げず、前蹴りで吹き飛ばされてしまったのだ。

 

「おいおい、勇者ってのはこんなもんか?まるでなっちゃいねぇ。やる気あんのか?」

 

平凡な顔に似合わない乱暴な口調で呆れた視線を送る護衛の男。

その表情には、失望の色が浮かんでいた。

確かに、護衛の男を見た目で判断して無造作に正面から突っ込んでいき、あっさりと返り討ちにあったというのが今の構図だ。失望されたとしても仕方がない。

 

「すみませんでした。もう一度お願いします」

 

「戦場に次はないが……まあいい、かかってこいよ」

 

天之河は今度は油断なく攻撃する。超高速で剣を振るうその姿はまるで嵐のようだった。しかしそれを躱し、捌き、避け、反撃を入れる。

力で押す天之河に対して護衛の男は技量で天之河を押す。

一度天之河が護衛の男に吹き飛ばされ、剣をくらいかけるも『限界突破』の技能で吹き飛ばす。そしてしばらく言葉を交わした後に殺気で動けなくなった天之河の前に光壁が現れ模擬戦は終わった。

 

「それくらいにしましょうか。これ以上は、模擬戦ではなく殺し合いになってしまいますのでな。……ガハルド殿もお戯れが過ぎますぞ?」

 

「……チッ、やはりバレていたか。相変わらず食えない爺さんだ」

 

護衛の男が右耳につけていたイヤリングを取ると、周りの空気が霧がかかったかのように白くぼやけていき、それが晴れると全くの別人が現れた。

 

短く切り上げた銀髪に鋭い碧眼、スマートだが極限に鍛えられ肉体を持つ偉丈夫。齢にして四十代……いや、三十代後半でも通用する野性味溢れる男。

その姿を目にした瞬間、周囲が一斉に喧騒に包まれた。

 

「ガ、ガハルド殿!?」

 

「皇帝陛下!?」

 

「これはこれはエリヒド殿。碌な挨拶もせずに済まなかった。ただ、どうせなら自分で判断したかったからな。一芝居打たれてもらった。今度の戦争にも関わる重要なことだ。無礼は許していただきたい」

 

謝罪すると言いながらまるで反省の色がない皇帝ガハルド。それに溜息を吐きながら、「もうよい」と頭を振る国王エリヒド。

 

「それで結果なんだが……そのガキを上に立つ人間として認めるつもりはない」

 

「なっ!?どうしてですか!?」

 

「人を殺す気のない奴が魔人族との戦争で何が出来る?」

 

皇帝陛下の言葉に天之河が目を見開く。しかし、反論の言葉を口にするよりも先に、皇帝陛下は勇者一行に目を向ける。

ん?あれ?これって僕のこと見てる?

 

「坊主のことなら兎も角として、そこの女なら話は別だがな」

 

一応後ろを振り向く。僕じゃないかもしれないからね。

 

「そこの後ろ振り向いてるちっこいのだ」

 

「僕ですか?」

 

「おう。そこの勇者よりもよほど見所がある。何なら俺の妻に迎え入れたいくらいだ」

 

「なっ!?ちょ!?恵里を妻にするぅ!?」

 

あまりにも突飛な話に鈴は理解が追いつかない。

 

「陛下の申し立てはお断りさせていただきます」

 

幸利なら『だが断る!』なんて言いそうな雰囲気だなぁ

 

「つれないな。だが、そうでなくちゃ面白くない。元の世界よりも、俺がいいと言わせてやろう。その顔が赤く染まる日が楽しみだ」

 

「そんな日は絶対に来ないよ。だって──

 

僕は一呼吸置いて理由を話す。

 

僕は付き合っている人がいるからね」

 

その一言でクラスメイト達が騒ぎ出したのは言うまでもなかった。

 




アンケート結果……
























両者ヒロイン化です。
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