ありふれない天の鎖の投影魔術師は世界最強   作:小説大工の源三

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ハウリアブートキャンプ!&シアの告白!

フェアベルゲンを出て、士郎達はハジメがフェアドレン鉱石を使って、霧のない空間を作り、士郎はハウリア族に話し始める。

 

「これから10日間君たちには戦闘訓練を受けてもらいます」

 

「え、えっと、士郎さん。戦闘訓練というのは?」

 

ポカンとするウサミミの代表としてシアが聞き返す。

 

「いつまでもボク達君らを守り続ける事はできない。だから君達自身で身を守れるようにしてもらう」

 

「お前等に逃げ場はない。隠れ家も庇護もない。だが、魔物も人も容赦なく弱いお前達を狙ってくる。このままではどちらにしろ全滅は必定だ……それでいいのか?弱さを理由に淘汰されることを許容するか?幸運にも拾った命を無駄に散らすか?どうなんだ?」

 

1人のハウリア族がポツリとつぶやいた。

 

「そんなの良いわけない……!」

 

「そう、良いわけがないんだよ……だから強くなるんだ。僕は奈落に落ちる前……この世界に来たばかりの頃は最弱だった……ステータスも一般人と変わらなかった。だけど努力してここまで強くなるなった。君達の状況は前の僕と同じだ……どうする?」

 

ハウリア族達は直ぐには答えない。いや、答えられなかったというべきか。自分達が強くなる以外に生存の道がないことは分かる。士郎は、100%の正義感からハウリア族を守ってきたわけではない。故に、約束が果たされれば見捨てられるだろう。だが、そうは分かっていても、温厚で平和的、心根が優しく争いが何より苦手な兎人族にとって、士郎の提案は、まさに未知の領域に踏み込むに等しい決断だった。士郎達の様な特殊な状況にでも陥らない限り、心のあり方を変えるのは至難なのだ。

黙り込み顔を見合わせるハウリア族。しかし、そんな彼等を尻目に、先程からずっと決然とした表情を浮かべていたシアが立ち上がった。

 

「やります。わたしに戦い方を教えてください! もう、弱いままは嫌です!」

 

樹海の全てに響けと言わんばかりの叫び。これ以上ない程思いを込めた宣言。シアとて争いは嫌いだ。怖いし痛いし、何より傷つくのも傷つけるのも悲しい。しかし、一族を窮地に追い込んだのは紛れもなく自分が原因であり、このまま何も出来ずに滅ぶなど絶対に許容できない。とあるもう一つの目的のためにも、シアは兎人族としての本質に逆らってでも強くなりたかった。

不退転の決意を瞳に宿し、真っ直ぐ士郎達を見つめるシア。その様子を唖然として見ていたカム達ハウリア族は、次第にその表情を決然としたものに変えて、一人、また一人と立ち上がっていく。そして、男だけでなく、女子供も含めて全てのハウリア族が立ち上がったのを確認するとカムが代表して一歩前へ進み出た。

 

「士郎殿……皆さん、よろしくお願いします」

 

言葉は少ない。だが、その短い言葉には確かに意志が宿っていた。襲い来る理不尽と戦う意志が。

 

「わかった……妥協は許さないし手も抜かない、とことん厳しくいくからね。ちゃんとついて来なよ?生か死の二択だ」

 

10日間のハウリア族、地獄の強化トレーニングが始まった。

 

─────────────────────────

 

「はい、これ使って訓練してね」

 

士郎はハウリア族を訓練するにあたって、小太刀を大量に投影し、渡す。そして、その武器を持たせた上で基本的な動きを教える。もちろん、士郎に武術の心得などない。あってもそれは漫画やゲームなどのにわか知識に過ぎず他者に教えられるようなものではない。教えられるのは、奈落の底で数多の魔物と戦い磨き上げた《合理的な動き》だけだ。それを叩き込みながら、適当に魔物をけしかけて実戦経験を積ませる。ハウリア族の強みは、その索敵能力と隠密能力だ。いずれは、奇襲と連携に特化した集団戦法を身につければいいと思っていた。

カム達にはボク、雫、幸利、優花で教える。

雫に小太刀の振り方を教えさせようと思ったのだが……

 

「あの〜これ痛そうなのですが……」

 

「当たり前だよ?だって敵を殺す物だからね」

 

そう言うと士郎はシアとユエ、ハジメ、香織を連れて別の場所に移動する。

 

「あの士郎さん、なんでわたしだけここに?」

 

「シアはボク達について行きたいんでしょ?だったらボクの出す条件を満たして欲しい」

 

「……それでなんで私とハジメと香織を?」

 

「シア、ボクが出す条件は二つある。一つ目は一度でもいいからユエにダメージを与えること。二つ目はボクを説得することだ」

 

「わ、わかりました!」

 

「士郎、なんでユエなの?」

 

「この中でユエが一番肉弾戦弱いから。シアよりは強いけど、ボク達と比べるとね。ユエの間合い管理の特訓も兼ねてね。ハジメは審判役、香織は治療をお願い。メニューはそっちで決めて」

 

「「わかった(よ)」」

 

「それとシア、カム達に話しはしたの?」

 

「はい、父様達も了承は得ました。わたし自身が付いて行きたいと本気で思っているなら構わないって…」

 

「わかった」

 

士郎はハウリア族のいる場所に戻る。

雫に小太刀の振り方を教わっている。次に魔物を殺させているのだが……

 

「ああ、どうか罪深い私を許しくれぇ~」

 

それをなしたハウリア族の男が魔物に縋り付く。まるで互いに譲れぬ信念の果て親友を殺した男のようだ。

 

ブシュ!

 

また一体魔物が切り裂かれて倒れ伏す。

 

「ごめんなさいっ!ごめんなさいっ!それでも私はやるしかないのぉ!」

 

首を裂いた小太刀を両手で握り、わなわな震えるハウリア族の女。まるで狂愛の果て、愛した人をその手で殺めた女のようだ。

 

バキッ!

 

瀕死の魔物が、最後の力で己を殺した相手に一矢報いる。体当たりによって吹き飛ばされたカムが、倒れながら自嘲気味に呟く。

 

「ふっ、これが刃を向けた私への罰というわけか……当然の結果だな……」

 

その言葉に周囲のハウリア族が瞳に涙を浮かべ、悲痛な表情でカムへと叫ぶ。

 

「族長!そんなこと言わないで下さい!罪深いのは皆一緒です!」

 

「そうです!いつか裁かれるときが来るとしても、それは今じゃない!立って下さい!族長!」

 

「僕達は、もう戻れぬ道に踏み込んでしまったんだ。族長、行けるところまで一緒に逝きましょうよ」

 

「お、お前達……そうだな。こんな所で立ち止まっている訳にはいかない。死んでしまった彼(小さなネズミっぽい魔物)のためにも、この死を乗り越えて私達は進もう!」

 

「「「「「「「「族長!」」」」」」」」

 

いい雰囲気のカム達。そして我慢できずに突っ込む幸利&優花。

 

「だぁもぉう!やかましいわ!何なんだよその三文芝居は!魔物に向かって彼とか気持ち悪いだろうが!」

 

「黙って殺せないの!?」

 

そう、ハウリア族達が頑張っているのは分かるのだが、その性質故か、魔物を殺すたびに訳のわからないドラマが生まれるのだ。この二日、何度も見られた光景であり、士郎達もまた何度も指摘しているのだが一向に直らない事から、いい加減、堪忍袋の緒が切れそうなのである。

 

幸利の怒りを多分に含んだ声にビクッと体を震わせながらも、「そうは言っても……」とか「だっていくら魔物でも可哀想で……」とかブツブツと呟くハウリア族達。

更に幸利の額に青筋が量産される。

見かねたハウリア族の少年が、幸利を宥めようと近づく。この少年、ライセン大峡谷でハイベリアに喰われそうになっていたところを間一髪士郎に助けられ、特に懐いている子だ。

しかし、進み出た少年は士郎に何か言おうとして、突如、その場を飛び退いた。

訝しそうな士郎が少年に尋ねる。

 

「?どうしたの?」

 

少年は、そっと足元のそれに手を這わせながら士郎に答えた。

 

「あ、うん。このお花さんを踏みそうになって……よかった。気がつかなかったら、潰しちゃうところだったよ。こんなに綺麗なのに、踏んじゃったら可愛そうだもんね」

 

優花の頬が引き攣る。

 

「お、お花さん?」

 

「うん!士郎兄ちゃん!幸利お兄ちゃん!僕、お花さんが大好きなんだ!この辺は、綺麗なお花さんが多いから訓練中も潰さないようにするのが大変なんだ~」

 

ニコニコと微笑むウサミミ少年。周囲のハウリア族達も微笑ましそうに少年を見つめている。

幸利は、ゆっくり顔を俯かせた。元から長い白髪の前髪が垂れ下がり幸利の表情を隠す。そして、ポツリと囁くような声で質問をする。

 

「……時々、お前等が妙なタイミングで跳ねたり移動したりするのは……その《お花さん》とやらが原因か?」

 

幸利の言う通り、訓練中、ハウリア族は妙なタイミングで歩幅を変えたり、移動したりするのだ。気にはなっていたのだが、次の動作に繋がっていたので、それが殺りやすい位置取りなのかと様子を見ていたのだが。

 

「いえいえ、まさか。そんな事ありませんよ」

 

「はは、そうよね?」

 

苦笑いしながらそう言うカムに少し頬が緩む優花。しかし……

 

「ええ、花だけでなく、虫達にも気を遣いますな。突然出てきたときは焦りますよ。何とか踏まないように避けますがね」

 

カムのその言葉に士郎の表情が抜け落ちる。幽鬼のようにゆら~りゆら~りと揺れ始める幸利に、何か悪いことを言ったかとハウリア族達がオロオロと顔を見合わせた、幸利は、そのままゆっくり少年のもとに歩み寄ると、一転してにっこりと笑顔を見せる。少年もにっこりと微笑む。

そしてノールックで闇の塊(非殺傷性)をカムに向けて放った。塊が顔に当たり、吹き飛ぶカム。さらにナイフを優花が数人の女性ハウリアに投げつける。「ぎゃん!?」と悲鳴をあげる。

 

「幸利殿!?優花殿!?いきなり何を!?」

 

「今俺と優花が放った攻撃はお前達なら避けれる物だ。それなのに何故お前達は当たったかわかるか?」

 

「そ、それは……」

 

「貴方達が花や虫に気を取られてるからよ」

 

2人の言葉に黙るハウリア族。

 

「だけど、君達の優しさを否定するわけじゃない。むしろそれは大切にするべきものだ」

 

「だが、それを家族ではない草木や虫にも向けるのは、はっきり言って、優先することじゃないわ」

 

「草木の心配するよりも、まず自分、そして家族だ。お前達は草木や虫を心配出来るほど強くない。そんなに大切にしたいなら、まずは強くなれ。いいな?」

 

「「「「「はい!」」」」」

 

「よし、それじゃあ訓練再開だ」

 

─────────────────────────

 

一方、シアの訓練

 

ズガンッ!ドギャッ!バキッバキッバキッ!ドグシャッ!

 

樹海の中、凄まじい破壊音が響く。野太い樹が幾本も半ばから折られ、地面には隕石でも落下したかのようなクレーターがあちこちに出来上がっており、更には、燃えて炭化した樹や氷漬けになっている樹まであった。

この多大な自然破壊はたった二人の少女によってもたらされた。そして、その破壊活動は現在進行形で続いている。

 

「でぇやぁああ!!」

 

裂帛の気合とともに撃ち出されたのは直径一メートル程の樹だ。半ばから折られたそれは豪速を以て目標へと飛翔する。確かな質量と速度が、唯の樹に凶悪な破壊力を与え、道中の障害を尽く破壊しながら目標を撃破せんと突き進む。

 

「……『緋槍』」

 

それを正面から迎え撃つのは全てを灰塵に帰す豪炎の槍。巨大な質量を物ともせず触れた端から焼滅させていく。砲弾と化した丸太は相殺され灰となって宙を舞った。

 

「まだです!」

 

『緋槍』と投擲された丸太の衝突がもたらした衝撃波で払われた霧の向こう側に影が走ったかと思えば、直後、隕石のごとく天より丸太が落下し、轟音を響かせながら大地に突き刺さった。バックステップで衝撃波の範囲からも脱出していた目標は再度、火炎の槍を放とうとする。

しかし、そこへ高速で霧から飛び出してきた影が、大地に突き刺さったままの丸太に強烈な飛び蹴りをかました。一体どれほどの威力が込められていたのか、蹴りを受けた丸太は爆発したように砕け散り、その破片を散弾に変えて目標を襲った。

 

「ッ!『城炎』」

 

飛来した即席の散弾は、突如発生した城壁の名を冠した炎の壁に阻まれ、唯の一発とて目標に届く事は叶わなかった。

しかし……

 

「もらいましたぁ!」

「ッ!」

 

その時には既に影が背後に回り込んでいた。即席の散弾を放った後、見事な気配断ちにより再び霧に紛れ奇襲を仕掛けたのだ。大きく振りかぶられたその手には超重量級の大槌が握られており、刹那、豪風を伴って振り下ろされた。

 

「『風壁』」

 

大槌により激烈な衝撃が大地を襲い爆ぜさせる。砕かれた石が衝撃で散弾となり四方八方に飛び散った。だが、目標は、そんな凄まじい攻撃の直撃を躱すと、余波を風の障壁により吹き散らし、同時に風に乗って安全圏まで一気に後退した。更に、技後硬直により死に体となっている相手に対して容赦なく魔法を放つ。

 

「『凍柩』」

「ふぇ!ちょっ、まっ!」

 

相手の魔法に気がついて必死に制止の声をかけるが、聞いてもらえる訳もなく問答無用に発動。襲撃者は、大槌を手放して離脱しようとするも、一瞬で発動した氷系魔法が足元から一気に駆け上がり……頭だけ残して全身を氷漬けにされた。

 

「づ、づめたいぃ~、早く解いてくださいよぉ~、ユエさ~ん」

 

「……私の勝ち」

 

そう、問答無用で自然破壊を繰り返していたこの二人はユエとシアである。二人は、訓練を始めて十日目の今日、最終試験として模擬戦をしていたのだ。内容は、士郎の出した条件であるシアがほんの僅かでもユエを傷つけられたら勝利・合格というものだ。その結果は……

 

「うぅ~、そんな~って、それ!ユエさんの頬っぺ!キズです!キズ!わたしの攻撃当たってますよ!あはは~、やりましたぁ!わたしの勝ちですぅ!」

 

ユエの頬には確かに小さな傷が付いていた。おそらく最後の石の礫が一つ、ユエの防御を突破したのだろう。本当に僅かな傷ではあるが、一本は一本だ。シアの勝利である。それを指摘して、顔から上だけの状態で大喜びするシア。体が冷えて若干鼻水が出ているが満面の笑みだ。ウサミミが嬉しさでピコピコしている。無理もないだろう。彼女は自分が着いて行きたい人にOKを出される条件をクリアしたのだから。

 

「……見事だったシア。正直、私も驚いてる」

 

そう言いながら、シアの氷を溶かす。

 

「えへへ〜、これであとは士郎さんを説得するだけですぅ!」

 

「士郎には自分の覚悟と想いを伝えるといいよ。士郎そういうの弱いから」

 

「それにしてもシアちゃんの身体能力はすごいね。ハジメくんが作った戦鎚を軽々振り回すなんて」

 

「香織さんありがとうございますぅ。ハジメさんもこれを作っていただきありがとうございますぅ」

 

シアが自身の拳だけではユエに勝てないと思い、ハジメに超重量の大槌を頼み、作ってもらい、それを駆使してユエに掠りキズをつけることが出来た。シアが、真剣な表情で、ユエに勝ちたい、武器が欲しいと頼み込んできたのは記憶に新しい。ユエ自身も特に反対しなかったことから、ハジメは作った。

これを作ったハジメは当初、これを作ったところでユエにダメージを与えられるとは思わなかった。

しかしシアはハジメの思惑を覆し、ユエにダメージを与えたのだった。

ハジメ達はカムに達の訓練をしている所に向かう。

 

 

─────────────────────────

 

「士郎さん!士郎さん!聞いて下さい、わたし、遂にユエさんに勝ちましたよ!大勝利ですよ!いやぁ士郎さんにもお見せしたかったですよぉ私の華麗なる戦い振りを!」

 

「そっか、おめでとう。3人共、シアの魔法適性は?」

 

「ハジメくんと同じ位だよ」

 

「あらら、せっかく魔力も持ち腐れかな?でもユエに勝ったってことは何かあるの?」

 

「身体強化に特化してる。強化してない僕の6割」

 

「おぉう……それまたすごいね……勿論それは最大値だよね?」

 

「……ん、鍛錬次第では上がる」

 

「わぁお……」

 

士郎はハジメ達から聞いた、シアのチートっぷりに驚く。

強化していないハジメの六割と言えば、本気で身体強化したシアはほとんどステータスが6000を超えるということだ。これは、本気で強化した勇者の二倍の力を持っているということでもある。まさに『チートレベル』だ。

シアは急く気持ちを必死に抑えながら真剣な表情で士郎のもとへ歩み寄った。背筋を伸ばし、青みがかった白髪をなびかせ、ウサミミをピンッと立てる。これから一世一代の頼み事をするのだ。いや……むしろ告白と言っていいだろう。緊張に体が震え、表情が強ばるが、不退転の意志を瞳に宿し、一歩一歩、前に進む、そして、訝しむ士郎の眼前にやって来るとしっかり視線を合わせて想いを告げた。

 

「士郎さん!わたしをあなたの旅に連れて行って下さい。お願いします!」

 

「一応聞くけど、何で付いて行きたいの?今なら一族の迷惑になるどころか一族の守護者になりえる、カム達の負担どころか役に立てるんだよ?それを投げうってまで何故ボク達に?」

 

「で、ですからぁ、それは、そのぉ…」

 

士郎は察した。この雰囲気は……

 

「士郎さんの傍に居たいからですぅ!しゅきなのでぇ!」

 

言っちゃった、そして噛んじゃった!と、あわあわしているシアを前に、士郎は頭を抑えている。

 

「そうなるのかぁ……」

 

士郎の後ろにいる雫は納得したような顔をして、少し複雑な顔をしている。

恵里にどう報告しようか考えているようだ。それでも彼女ならなんとかしそうだと、思った。

 

「前に話したと思うけどボクには雫以外に、恋人が1人いる」

 

「それは承知の上です。なら逆に考えました。2人いるなら自分が加わっても良いよね?と」

 

「ボク達はこの世界の神を殺す為に戦っている」

 

「化け物でよかったです。お蔭で皆さんの足手纏いになりません」

 

「ボク達の望みはこことは違う世界にある故郷に帰ることだ。ハジメ達は同じ故郷で、ユエは帰る場所がなくなってしまったから一緒に来ることになったけど、君は家族がいる。それを捨てることになるんだよ?」

 

「それも話し合いました『それでも』です。父様達もその事も納得してくれました」

 

「ボク達の故郷は、魔力すらない世界で。ウサミミを着けたまま歩いていると、騒がれる世界。窮屈なものだよ」

 

「何度でも言います『それでも』です」

 

士郎は様々な言葉を使ってシアを思い留まらさせようとする。

既に2人いる恋人上に、危険な旅、ずっと守ってくれた家族との別れ、様々な問題を話したのにもかかわらず、彼女の想いは止まらなかった。

 

「……降参だよ。君の気持ちは受け取った。これからよろしくね、シア」

 

笑みを浮かべながらそう言って、士郎はシアを抱きしめて、頭を撫でる。

その行動にシアの顔は熟れた林檎のように赤く染まり、目にハートを写して飛び上がった。

 

「はい!お任せくださいぃ!士郎さんの為ならどこへだって着いて行きますぅ!」

 

シアの想いは溢れ出て、暴走状態になるのだった。

 

 

 

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