ありふれない天の鎖の投影魔術師は世界最強 作:小説大工の源三
時系列を少しいじっています
あと少しだけグロがあります……
「〜♪早く帰って読もうっと」
とある夏の日、髪が少し長めに伸びている1人の少年が駆け足でカバンを背負い、帰路を辿っていた。
少年の名前は天野士郎。
この日は図書館で本を借り、その帰りなのだ。
いつも通る橋を渡ろうとしたその時、彼の目に1人の少女が橋の手摺りに乗り上げていた。
前日まで大量の雨が降り、川の流れは濁流になり、小学生が入れば流れに呑まれたちまち溺れてしまうだろう。
そして、飛び降りた。
「ちょ!?」
士郎は急いで駆け寄り、少女の手を掴み落下を止める。
手を掴まれた少女は忌々しそうに士郎を睨む。
存外軽い少女を橋の上まで引っ張り上げる。
「なんで助けた……」
「だって落ちたら危ないでしょ?」
「僕は死にたかったんだよ!」
士郎はその一言に衝撃を受けた。それと同時にこの子を1人にしてはいけないこと、一度家に連れ帰った方がいいと思った。
少女の手を引っ張り、無理やり家に連れて行った。
今日は土曜日なので両親共に家にいる。
最初は驚かれたが、少女が自殺しようとしたことを伝えると、カウンセリングの資格を持つ母──天野
「お名前、なんていうのかな?」
「……中村恵里」
「恵里ちゃんか。私は天野眞姫那よろしくね」
それから恵里と話をして色々聞いて、わかったことは、大きく分けて二つ。一つ目は家庭環境が荒れていること。二つ目はそれに耐えきれず、自殺を決心したことだった。
士郎は恵里の境遇に驚き、彼女を抱き締めようかと思ったのだが、流石にダメだと思い留まり、彼女を守る決心をしたのだった。
それから父──天野
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それから1年が経った頃。
恵里は天野家に養子として引き取られた。
「僕に構わないでって言ってるでしょ!」
未だに天野家に馴染めない彼女は士郎達と言い合いになってしまい、勢いに任せて家を飛び出してしまった。
「ちょっと恵里!」
その後を士郎が追いかける。
「やっぱり、まだ馴染めていないのね……」
「無理に引き取ったのもあるだろうし、彼女自身人間不信に陥ってしまっているからな……」
難しい顔をする2人。
恵里はまだ学校に行こうとしていない。学校で虐めもあったらしく、頑なに行こうとしない。
天野夫妻も彼女自身が行きたいと言わない限りは行かせないつもりだ。
士郎は恵里のことが心配でいつも早く帰って来ている。
ふと悠次郎がテレビをつけるとそこには男が刑務所から脱獄したと速報で報道されていた。しかもその男は去年逮捕された、恵里の義理の父親だったのだ。
「あなた、この男……」
「ああ……2人は!?」
「恵里が出て行ったのを士郎が追いかけていったわ!」
「マキ、今すぐ警察に電話してくれ」
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一方の恵里は、少し離れた誰もいない公園で1人ブランコに乗り、俯いていた。
「はぁ……なんであの家の人達は僕に構うんだ……どうせいつか裏切るのバレてるのに」
『キィ……キィ……』と金属が擦れる音が公園に響く。
すると突然人の足音が近づいてきて、公園の草を『シャクシャク』と踏む音がだんだん近づいてくる。恵里が後ろを振り向くと、そこには逮捕された筈の義理の父親が立っていたのだった。
「……へ、へへへよくも通報させやがったなこのクソチビ……」
清潔にしていなかったのか所々服が破け、髭は汚く生え、眼球は血走っていた。
「ヒッ!」
「今すぐお前を犯さねぇと気がすまねぇ!だから犯させろぉぉぉぉお!」
「キャァ!」
男が飛びかかってくるが、恵里は間一髪身を翻して避ける。
「避けるんじゃねぇぇぇぇえ!」
(嫌!誰か!助けてぇ!)
振り向く顔は気持ち悪い表情をしていた。その顔に恵里は怯んでしまい、蛇に睨まれた蛙のようだった。
恵里が目を瞑り諦めたその時、男から「グアっ」と声が聞こえ、目を開けた時には何者かが自分の手を取りその場を連れ出していた。
連れ出した者は自身の義理の兄、天野士郎だった。
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士郎が何故恵里の所にいて、男から恵里を引き離す隙を作れたのか、解説すると。
士郎がその場にあった手頃な石を男の頭に投げつけ、男がこちらに振り向く前に恵里の所まで走り、再度恵里の方を振り向く前にその場を離れるという、小学生が思いつきもしないことを咄嗟の判断で行動し、成功したのだ。
「早く!」
「う、うん……」
士郎は恵里の手を引いて闇雲に逃げる。先程の試みが成功して、思い描いた逃走ルートを忘れてしまったのだ。
(しまった!帰り道がわからない!早く恵里を家に帰さないといけないのに!)
士郎は周りを見ながら先程の公園から離れるように手を引きながら走る。
しかし、いくら刑務所にいたとはいえ相手は大人。いつの間にか追いつかれていたようだ。
「そこのクソガキ……お前が邪魔しやがったのか……ならまずは……」
男は一呼吸置いて、ポケットから何やら短くて細い棒を取り出す。士郎はゾワリと背筋に悪寒が走る。
それが何か確認する前に駆け出す。
「はぁ……はぁ……!」
士郎達は路地裏の細い道に隠れた。ここに隠れるところも見られていないので、見つかることはほとんどない筈だ。
「なんで……なんでボクだけこんな目に遭わなきゃいけないのぉ……」
恵里は恐怖で身体をガタガタと震わせ、涙を溢している。あの男に追われてしまった所為で情緒が不安定になってしまったようだ。士郎は恵里を安心させようと抱きしめる。
それから十数分が経過した。
不幸は突然やってくる。首輪をつけらたリードの繋がれていない犬が、こちらに来て吠えだしたのだ。
(止めろ!吠えるな!あっちへ行け!)
士郎の念が通じる訳もなく、犬は吠え続ける。そしてゆらりと人影が一つやってくる。
「なんだ……ここにいたのか」
男だ。ナイフを持った男が士郎と恵里を見下ろす。
「おい、クソガキ。今すぐそこから退くなら何もしねぇぞ?」
士郎の答えは──
「嫌だ。彼女を守るって決めたんだ。だから守らなくちゃならないんだ!」
拒否だった。
「そうかよ、ならお前を動けないようにして、その目の前で犯してやるよ」
男がナイフの刃を出して振り下ろす。士郎の背中に激痛が走る。
「グっ……!」
「嫌ぁ!」
痛みを噛み殺すが、深く入ったのか、それとも安物のナイフだからなのか、士郎の背中の肉が抉れるように切り裂かれ、血が出てくる。
恵里は士郎が切られたことに悲鳴をあげる。
「おらぁ!早く退きやがれぇ!」
「ぐっ……アグっ……」
「やめて!やめてよぉ!僕はどうなってもいいからぁ!」
「ほらぁ?クソチビは俺に犯されることを望んでいるぞ?」
「……あ"あ"あ"!」
ひときわ大きい士郎の苦しみ声が響く。それと同時に大人の声が聞こえた。
「そこまでだ!」
士郎は声の主を見る。どうやら警察官のようだ。
激痛が背中を走るが、それを堪えて恵里の手を取り走る。男は警察官に気を取られ士郎と恵里を取り逃す。
2人は警察官に保護され、士郎に至っては背中の傷の治療の為に病院に連れて行かれた。
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翌日、士郎は経過観察として数日病院で過ごすこととなった。
家では恵里が部屋に篭っていた。
(僕が外に出なければ、彼は傷つくことはなかったんだ……僕の所為だ僕の所為だ僕の所為だ僕の所為だ僕の所為だ僕の所為だ僕の所為だ僕の所為だ僕の所為だ僕の所為だ僕の所為だ僕の所為だ僕の所為だ僕の所為だ僕の所為だ僕の所為だ僕の所為だ僕の所為だ僕の所為だ僕の所為だ僕の所為だ僕の所為だ僕の所為だ僕の所為だ僕の所為だ僕の所為だ僕の所為だ僕の所為だ僕の所為だ僕の所為だ僕の所為だ僕の所為だ僕の所為だ僕の所為だ僕の所為だ僕の所為だ僕の所為だ僕の所為だ僕の所為だ僕の所為だ僕の所為だ僕の所為だ僕の所為だ僕の所為だ……)
自責の念に苛まれていた。過去に自身の行動によって、父親を亡くしてしまった彼女にはとても重くのしかかる。
そして傷痕ことそ残ってしまったものの、それ以外は何も問題がなかったので、士郎はすぐに退院できた。
「お父さんボク恵里の所行ってくる」
そう言って恵里の部屋に向かう。キチンとノックをして確認をとる。
「恵里?今入って大丈夫?」
『お兄……ちゃん……?』
「うん、ボクだよ。入って大丈夫かな?」
『……いいよ』
恵里の許可が出たので士郎は部屋に入る。
彼が最初に目にしたのは、布団の中で蹲る、義妹の姿だった。
「恵里……おいで?」
「いいの?」
「何遠慮してるのさ?」
恵里は布団から出てくると同時に、勢いよく士郎に抱きついた。
「お兄ちゃん!ごめんなさい!ごめんなさい!僕があんなことしなければ!お兄ちゃんが怪我しなくて済んだのに!」
「大丈夫……大丈夫だよ。ボクはこうして恵里の前にいるから」
士郎はわんわんと泣く恵里の背中をトントンと撫でながら抱きしめる。
恵里の心は士郎を求めていた。自分を守ってくれる人を心のどこかで探していたのだ。しばらくして泣き止んだ恵里は士郎の胸の中で寝てしまっていた。この日の夜は恵里は士郎に我儘言って同じ布団で寝ることになった。
「ねぇお兄ちゃん。背中見せてくれる?」
「別にいいけど、傷痕見ても面白くないよ?」
「いいの」
士郎は服を脱ぐ。恵里の視界に映ったのは痛々しく残った傷痕だった。それを優しく撫でる。
(この傷はお兄ちゃんが僕を守る為に付けた傷……僕の為……えへへ……)
恍惚とした表情で傷痕を見る。
このまま傷痕を見て寝ていたいと思い、士郎が寝静まったあとも、恵里は服を捲り、先程と同じように恍惚とした表情で背中を見ていた。時折頬擦りしたり舐めたりもしていた。
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それから一か月が経過して、恵里の中で一つの想いが溢れてしまった。
「お兄ちゃん……大事な話があるの」
「?どこで話す?」
「今日の夜、僕の部屋に来て」
「わかったよ」
そう、学校の休み時間には約束する。それからしばらくしていつもの時間を過ごして夜になる。言われた通り士郎は恵里の部屋に入る。
「恵里、それで大事な話って?」
恵里は一呼吸置き想いを告げる。
「僕はお兄ちゃんのことが男の子として好きです!付き合って下さい!」
士郎は少し悩んだ。彼自身も恵里のことが好きだ。妹という壁があったが、そんなことはどうでもいいと思いすぐ受け入れた。
「こちらこそよろしくね」
想いが届いて嬉しくなったのか、恵里は飛び上がって士郎に抱きつく。
そしてそのままキスをする。しかも舌を絡める大人のキスだった。士郎はこれをどこでいつ知ったのか聞くことすら出来なかった。
「んっ……むぅ……んむ……」
「れろ……んちゅ……んれ……」
恵里の小さな舌は士郎の口内を舐め、士郎の舌を見つけると絡ませてくる。
「ぷはっ……お兄ちゃん、お兄ちゃん!」
「わわっ!恵里?」
「好き……大好きぃ……」
天野悠次郎
なんでも出来るお父さん。家族に手を出す輩には容赦しない。
士郎の敵対者への容赦のなさは彼由来。
有名企業のエリート社員だとか。
天野眞姫那
専業主婦。
カウンセリングの資格を持っていて、周辺の住民の相談相手になっている。
眞姫那本人は家族で癒されているのでストレスを感じることはないが、見えないストレスを悠次郎がケアしている。