ありふれない天の鎖の投影魔術師は世界最強   作:小説大工の源三

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魔物襲撃とパパ!?
ウルでの再会


現在ボク達はウルの町を向けてシュタイフと車で爆走している。

最初は車だけで行こうとしたのだが、シアがバイクで風を感じたいと言ったのでバイクを出して走ることにしたのだ。

 

「はぅ〜気持ちいいですぅ〜」

 

風の心地よさにシアはウトウトしている。かくいうボクもシュタイフに乗って走るのは好きだ。

ハジメが運転する車が地面を整地するので変にバウンドすることなく進む。

 

『このペースで行けば後1日だね。このままノンストップで行くよ』

 

『そうだな……なるべく早く着いた方がいい』

 

『みんな積極的……』

 

「ま、生きてる方が良いに越したことはないよ」

 

『うむ、生きてる方が、恩も大きくなるであろうし、これから先あのギルド本部長の力があるとはいえ、国や教会……面倒事が増える。一々構っている暇はない』

 

『……なるほど』

 

イルワという後ろ盾もどこまで働くかどうかはわからない。とりあえずその後ろ盾が強くなるよう動くだけだ。

 

『それに楽しみな事はあるし』

 

「そうね、なんたって彼処には……」

 

「「『『『『米がある!』』』』」」

 

「からね」

 

「米?なんでそこまで士郎さん達が楽しみなんですか?」

 

「そりゃあボク達の故郷の主食だからね」

 

『なるほど……ハジメ達の故郷の味……私も食べたい』

 

「味も期待しても良さそうだし」

 

『うん、湖畔の町なら私達の故郷と同じ味の可能性が大きいし』

 

それから一度野宿をして、ウルの町に向かうのだった。

 

─────────────────────────

 

三人称side

 

「ふぅ……皆さん今日もお疲れ様です!このまま晩御飯にしましょう!」

 

「「「「「はーい!」」」」」

 

ウルの町では畑山愛子、相川昇達愛ちゃん護衛隊が農地改革のために仕事を終えた直後だった。この世界に来てから、ハイスペックな身体能力を得た彼女達は農作業をし、自身の発言力を少しずつ高めていた。士郎が過去に貴重な能力である事を活かして欲しいと言ったことをやっているのだ。

 

「早くご飯食いてえ……」

 

「カレーがあった時はすげぇ嬉しかったな」

 

「見た目シチューなんだよね……ホワイトカレーとかあったっけ?」

 

「天丼だな俺は……清水の方が美味いがここのも美味い」

 

「チャーハン擬き一択。これはやめられないよ」

 

「それでも……」

 

「「「「「あの2人の料理が食いてえ/食べたい」」」」」

 

と、幸利や優花と交流のある5人。相川昇達は畑山愛子の護衛としてウルの町に来ていた。

護衛というよりも、畑山愛子に着いて来た理由は、教会から派遣されて来た神殿騎士から守るためだった。

教会側の狙いとしては神殿騎士に愛子を落とさせる目論見だったのだが、逆に落ちてしまうという事態になったのだ。

どこの馬の骨に畑山を渡すものかと5人は愛子に着いて行き、時折牽制していた。

『水妖精の宿』という場所に一行は滞在していた。

そこでは米料理を食べることができ、日本育ちの転生組はたいそう喜んだのだった。

美味しい料理で一時の幸せを噛み締めている愛子達のもとへ、六十代くらいの口ひげが見事な男性がにこやかに近寄ってきた。

 

「皆様、本日のお食事はいかがですか?何かございましたら、どうぞ、遠慮なくお申し付けください」

 

「あ、オーナーさん」

 

愛子達に話しかけたのは、この水妖精の宿のオーナーであるフォス・セルオである。スっと伸びた背筋に、穏やかに細められた瞳、白髪交じりの髪をオールバックにしている。宿の落ち着いた雰囲気がよく似合う男性だ。

 

「いえ、今日もとてもおいしいですよ。毎日、癒されてます」

 

愛子が代表してニッコリ笑いながら答えると、フォスも嬉しそうに「それはようございました」と微笑んだ。しかし、次の瞬間には、その表情を申し訳なさそうに曇らせた。何時も穏やかに微笑んでいるフォスには似つかわしくない表情だ。何事かと、食事の手を止めて皆がフォスに注目した。

 

「実は、大変申し訳ないのですが……香辛料を使った料理は今日限りとなります」

 

「えっ!?それって、もうこのニルシッシル(異世界版カレー)食べれないってことですか?」

 

現在、カレーを食べている、菅原妙子が驚いた声を上げる。

材料の入荷が滞り、一部メニューが今日限りとなってしまったからだ。

 

「はい、申し訳ございません。何分、材料が切れまして。何時もならこの様な事が無い様に在庫を確保しているのですが、ここ一ヶ月ほど北山脈が不穏と言う事で採取に行く者が激減しております。つい先日も、調査に来た高ランク冒険者の一行が行方不明となりまして、ますます採取に行く者がいなくなりました。当店にも次にいつ入荷するか分かりかねる状況なのです」

 

「あの、不穏って言うのは具体的には?」

 

「何でも魔物の群れを見たとか。北山脈は山を越えなければ比較的安全な場所です。山を一つ越えるごとに強力な魔物がいる様ですが、わざわざ山を越えて迄こちらには来ません。ですが、何人かの者がいるはずのない山向こうの魔物の群れを見たのだとか」

 

「それは、心配ですね…」

 

愛子が眉をしかめる。他の皆も若干沈んだ様子で互いに顔を見合わせた。フォスは、「食事中にする話ではありませんでしたね」と申し訳なさそうな表情をすると、場の雰囲気を盛り返すように明るい口調で話を続けた。

 

「しかし、その異変ももしかするともう直ぐ収まるかもしれませんよ」

 

「どういうことですか?」

 

「実は、今日のちょうど日の入り位に新規のお客様が宿泊にいらしたのですが、何でも先の冒険者方の捜索のため北山脈へ行かれるらしいのです。フューレンのギルド支部長様の指名依頼らしく、相当な実力者のようですね。もしかしたら、異変の原因も突き止めてくれるやもしれません」

 

愛子達はピンと来ないようだが、食事を共にしていたデビッド達護衛の騎士は一様に「ほぅ」と感心半分興味半分の声を上げた。フューレンの支部長と言えばギルド全体でも最上級クラスの幹部職員である。その支部長に指名依頼されるというのは、相当どころではない実力者のはずだ。同じ戦闘に通じる者としては好奇心をそそられるのである。騎士達の頭には、有名な『金』クラスの冒険者がリストアップされていた。

愛子達が、デビッド達騎士のざわめきに不思議そうな顔をしていると、二階へ通じる階段の方から声が聞こえ始めた。男性の声が4つ、女性が5つだ。

 

「おや、噂をすれば。彼等ですよ。騎士様、彼等は明朝にはここを出るそうなので、もしお話になるのでしたら、今のうちがよろしいかと」

 

「そうか、わかった。しかし、随分と若い声だ。『金』に、こんな若い者がいたか?」

 

デビッド達騎士は、脳内でリストアップした有名な金クラスに、今聞こえているような若い声の持ち主がいないので、若干、困惑したように顔を見合わせた。

そうこうしているうちに金ランクとされる一行の話声が聞こえてくる。

 

「いやーこんなに米があるなんてね『香織』もご飯好きだったよね」

 

「うん!久しぶりにお米食べ放題だね『ハジメくん』」

 

「『士郎さん』と『雫さん』達の故郷の味どんなものか楽しみですぅ」

 

「……実際とは違うとは思うけど予行練習に打って付け」

 

「今度米の研ぎ方教えるわ」

 

「ここを立つ際に買い込んでおきたいな……」

 

「ここ以外じゃ作られて居ないらしいからね……」

 

「『幸利殿』、『優花殿』……買い込むといっても限度はあるぞ?」

 

その会話の内容に、そして少女達の声が呼ぶ名前に、愛子の心臓が一瞬にして飛び跳ねる。彼女達は今何といった?少年達を何と呼んだ?一行の声は、『あの少年達』の声に似てはいないか?愛子の脳内を一瞬で疑問が埋め尽くし、金縛りにあったように硬直しながら、カーテンを視線だけで貫こうとでも言うように凝視する。

他の生徒達も同じだった。彼らの脳裏に、およそ四ヶ月前に奈落の底へと消えていった、とあるグループが浮かび上がる。クラスメイト達に『異世界での死』というものを強く認識させたグループ。

尋常でない様子の愛子と生徒達に、フォスや騎士達が訝しげな視線と共に声をかけるが、誰一人として反応しない。騎士達が、一体何事だと顔を見合わせていると、愛子がポツリとその名を零した。

 

「……南雲君?」

 

無意識に出した自分の声で、有り得ない事態に硬直していた体が自由を取り戻す。愛子は、椅子を蹴倒しながら立ち上がり、転びそうになりながらカーテンを引きちぎる勢いで開け放った。

存外に大きく響いたカーテンの引かれる音に、ギョッとして思わず立ち止まる一行。

 

「南雲君!?士郎君!?清水君!?白崎さん!?八重樫さん!?園部さん!?」

 

「「「「「「先生?」」」」」」

 

─────────────────────────

 

 

 

ウルの町に着いた士郎達は宿を取った後、夕食の時間まで時間を潰し、漸く楽しみにしていた米料理を頂けるという事で一行は嬉々として食堂へと向かう。

 

「いやーこんなに米があるなんてね香織もご飯好きだったよね」

 

「うん!久しぶりにお米食べ放題だねハジメくん」

 

「士郎さんと雫さん達の故郷の味どんなものか楽しみですぅ」

 

「……実際とは違うとは思うけど予行練習に打って付け」

 

「今度米の研ぎ方教えるわ」

 

「ここを立つ際に買い込んでおきたいな……」

 

「ここ以外じゃ作られて居ないらしいからね……」

 

「幸利殿、優花殿……買い込むといっても限度はあるぞ?」

 

と、ワイワイしながら席に向かう。するとカーテンの奥から近づいてくる気配がするので、士郎は視線を移す。そこから現れたのは……

 

「南雲君!?士郎君!?清水君!?白崎さん!?八重樫さん!?園部さん!?」

 

社会科担当の畑山愛子先生だったのだ。

 

「「「「「「先生?」」」」」」

 

「皆さん……生きていたんですね……」

 

「まぁ、色々と変わっちゃっいましたけれども、ボク達は無事、生きてます」

 

「よかった。本当によかった……」

 

「でも先生がここにいるのは驚きました」

 

「実は……」

 

簡単に説明すると、農地改革をしていたという。それで今では豊穣の女神とまで崇められているとか。

同じ金星の女神(あかいあくま)と同じ名前の教皇とはえらい違いだ。

 

「それで士郎君達は何故ここに?」

 

「フューレンで受けた依頼の道中で、休みに来た所です。ここに米もあると聞いたので楽しみにしてました」

 

するとどこからかグゥ〜と誰かのお腹の音が鳴る。士郎が後ろを振り向くと、顔を赤くしている雫が、少し恥ずかしそうにそっぽ向いていた。

 

「詳しい話はご飯の後でいいですか?」

 

「そうですね……それでしたら私達と同じ席で食べませんか?かなり広いので天野君達も座れるかと」

 

愛子先生達の席に向かう。

 

「「優花っち!?」」

 

「「「清水!?」」」

 

「妙子に奈々?」

 

「相川に仁村に玉井?」

 

幸利と優花が地球にいた頃、仲良かった人の名前をぽつりと溢す。

 

「久しぶりね」

 

「うん……2人とも生きててよかった……」

 

「優花っち達が落ちた時、生きた心地がしなかったよ……」

 

「俺達もだ……あの時真っ先に逃げちまったのに、清水達は冷静に立ち回っていて……」

 

「そのまま俺達だけ生き残って、戦いから逃げて……」

 

「結局はここにいて逃げてるようなもんだ……」

 

相川達5人は悔しそうに拳を握っていた。

 

「別に戦いから逃げてもなんの問題もないと思うけどな」

 

「「「「「え?」」」」」

 

「そうね。むしろ戦い続けてる方がすごいわよ」

 

「目の前で死人が出て戦いに行ける強さなんて簡単に身につくものじゃないしな」

 

と、その後も色々話してから注文したメニューが運ばれ、士郎達も食事を始める。

 

「うーむ、ボクらの世界のとは違うけど美味い」

 

「まぁ、わりかし似てると思うけどな」

 

異世界の米の味を楽しんでいる。ニルシッシルはカレーみたいな味で美味しい。ホワイトカレーみたいだ。

 

「それでみなさん生きていたのはよかったのですが、何故戻って来なかったのですか?」

 

「やる事が見つかったからですね。それにその内戻る予定も作ろうとは思ったんですが、色々忙しくて……」

 

「その見た目は?」

 

「奈落の底から這い上がる過程で」

 

「彼処は地獄だった……」

 

「そうだったんですか……」

 

少し落ち込んだ表情になる愛子先生。自身は生徒を守る立場にいるはずなのに戦闘能力を持っておらず、安全な所でしか能力を発揮出来ないことが悔しいのだろう。

 

「天野君達の目的は?」

 

「それは話せない」

 

「そうですか……」

 

「おい、お前。愛子が聞いているのだぞ。何故話さん?」

 

「別に強制じゃないでしょ?というか神殿騎士達は何でここにいるの?教会にいるもんだと思ってたよ」

 

ハジメがなぜ神殿騎士がここにいるのか聞く。

正直士郎も気になっていた。神殿騎士は教会の犬らしく、そこ守る番犬のように門番してると思っていたのだから。

 

「ふん、聞いて驚け。我等は愛子をお守りするために教会から派遣されたのだ!」

 

と、なんかポーズを取っていた。

 

「食事中なのによくそんなこと出来るね……行儀作法がなってないんじゃない?」

 

「行儀作法がなっていない?その言葉そのまま返してやる。薄汚い亜人をを人間と同じテーブルに着かせるなど、お前の方が礼儀がなってないな。せめてその醜い耳を切り落としたらどうだ?少しは人間らしくなるだろう」

 

侮蔑をたっぷりと含んだ眼で睨まれたシアはビクッと体を震わせた。ブルックの町では、宿屋での第一印象や、キャサリンと親しくしていたこと、士郎達の存在もあって、むしろ友好的な人達が多かったし、フューレンでも蔑む目は多かったが、奴隷と認識されていたからか直接的な言葉を浴びせかけられる事はなかった。

旅に出てから初めて、亜人族に対する直接的な差別的言葉の暴力を受けたのである。有象無象の事など気にしないと割り切ったはずだったが、少し外の世界に慣れてきていたところへの不意打ちだったので、思いの他ダメージがあった。シュンと顔を俯かせるシア。

よく見れば、デビッドだけでなく、チェイス達他の騎士達も同じような目でシアを見ている。彼等がいくら愛子達と親しくなろうと、神殿騎士と近衛騎士である。聖教教会や国の中枢に近い人間であり、それは取りも直さず、亜人族に対する差別意識が強いということでもある。何せ、差別的価値観の発信源は、その聖教教会と国なのだから。デビッド達が愛子と関わるようになって、それなりに柔軟な思考が出来るようになったといっても、ほんの数ヶ月程度で変わる程、根の浅い価値観ではないのである。

 

 

ブチッ!

 

と、何かが切れる音が響いた気がした。

 

今なんて言った?

 

「……んな!」

 

士郎はシアの侮辱発言に怒りを覚えた。

いくら教会の人間だからと言って仕方ないと思っている士郎だが、大切な人をここまで悪く言われればキレない訳がなかった。

 

お前達が教会の犬だという事は知ってる……だがな……シアを侮辱されて黙ってられるほどボクはバカじゃないんでね……

 

最後に全て食べ終えた士郎が立ち上がり、デビッドに思いっきり威圧と殺気をぶつける。あまりの圧力にデビッドが耐えられる訳もなく気絶した。

このまま寝泊まりしている部屋に戻ろうとする。

 

「それじゃあボク達はこの辺で……ああ一つ言い忘れてた」

 

くるりと首だけ愛子達に向ける。

 

「他の騎士も同じ事言うならそこで倒れている男と同じにするから」

 

そう言って部屋に戻って行くのであった。

 

 

─────────────────────────

 

部屋前の廊下でシアはわかりやすく落ち込んでいた。ウサミミは垂れ下がり、顔も暗い。

 

「シア、これが外での普通だよ。一々気にしてたらキリがない……」

 

「特にあの騎士は教会の教えを直に受けている。我々魔人族も亜人族を神に見放された種族なのに緑の地で生活している、憎むべき存在と教えられている……」

 

「はぃ、そうですよね……わかってはいるのですけど……やっぱり、人間の方には、この耳は気持ち悪いのでしょうね」

 

そう言うシアの頭を一度撫でて、垂れ下がっているウサミミをもふもふし始める。

 

「ボクはそう思わないよ。むしろ好きだし可愛い。ね、雫?」

 

「ひゃわ!?士郎さん!?」

 

「ええ、初めて出会った時からそう思ってたわ」

 

「えへへ〜士郎さん雫さん嬉しいですぅ〜」

 

落ち込んだ表情から一転、笑顔に戻る。

やはりシアは笑っている方がいい。そう思いながら2人はシアの頭とウサミミを撫でてもふもふするのだった。




キャラが多いと誰か喋らないことにならないようにしないといけないから大変ですね。
今回は士郎くんがブチギレ回となりましたが、まだまだブチギレ回はあります。
お楽しみにね?
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