ありふれない天の鎖の投影魔術師は世界最強   作:小説大工の源三

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ウル襲撃戦 後編

「きゃぁぁぁぁあ!」

 

ウルの町から悲鳴が聞こえた。それも聞き覚えのある人物のだ。

 

「畑山殿!」

 

真っ先に向かったのは、最年長のヴェアベルトだった。ありえないスピードで走っていった。

そのスピードのまま壁を飛び越え、町の中を見ると魔人族の一人が愛子を捕まえ、ナイフを片方の手で掴んでいる首に当てていた。

 

「この女が殺されたくなければ、この町の食糧を全てもってこい!」

 

「き、貴様!愛子を離せ!」

 

「おっと、そこの騎士、動けばこの女の首を掻っ切ってやるからな?」

 

「ぐっ……おのれ……」

 

神殿騎士も愛子を人質に取られてしまい、何も出来ない。

 

「『蒼槍』……はぁっ!」

 

ヴェアベルトは氷の槍を魔人族の男に向けて放つ。速度は音速を超え、並の人間では反応することすら出来ないほどだ。

当然魔人族の男は氷の槍を喰らう。辛うじて愛子を突き飛ばしながら避けた為死ぬことはなかったものの肩を貫かれてしまった。

愛子の体格が小さい事も幸いし彼女には掠り傷一つ付かず、魔人族の男から遠ざけることが出来た。

 

 

「畑山殿!」

 

ヴェアベルトは突き飛ばされた彼女を受け止める。

 

「ヴェアベルト……さん……?」

 

「怪我はないか?」

 

「はい……捕まっただけなので……何処も切られたりはしませんでした……」

 

「そうか……それならばいい」

 

愛子は意識を失い、力なくヴェアベルトに倒れ込む。ヴェアベルトは愛子を抱える。

 

「貴様……おのれ……人間族風情が……我々魔人族に傷をつけるだと……」

 

その発言にヴェアベルトは少し寂しげな表情をする。

 

「(今の私は人間族に見えるのだったな……)『氷柱雨』」

 

男の頭上に氷の棘が現れ、一気に降り注ぐ。無数の氷柱に貫かれ男は絶命した。

 

「ヴェアベルト!何があった!?」

 

壁の上から士郎が降りてくる。

 

「畑山殿が人質に取られていてな」

 

「それで助けてくれたんだ……ありがとう」

 

「当然のことをしたまでだ。それより遺体処理をせねば。あまり見せていいものではない」

 

愛子を宿に預けた後、男の死体を町の外れに処理する。

ヴェアベルトはまだ彼女が不安なのか、気絶している愛子の様子を見ている。

 

「……む?」

 

愛子を見ていると、彼女とは別の魔力を感じ取った。それも闇属性のものだっだ。

 

「念のため前に士郎殿からもらった破戒すべき全ての符(ルールブレイカー)を使用しておくか……」

 

彼女の右腕にチクリと刺しておく。魔力が霧散し、彼女はそれと同時に目を覚ます。

 

「……ここは?……水妖精の宿?」

 

「目を覚ましてよかった。ゆっくり休んでいるといい」

 

「ヴェアベルトさん……助けていただきありがとうございます……」

 

「貴女が無事ならそれでいい。私はここを出る」

 

そう言ってヴェアベルトは部屋を出ていこうとする。

 

「あの……待ってください」

 

愛子は彼を呼び止めたのだった。

 

 

 

 

─────────────────────────

 

愛子side

 

私は天野君達が襲撃してくる魔物を倒すのを町の中で待っていました。

凄まじい轟音が壁の外から聞こえ、戦闘の激しさがこの場でもわかります。

そして轟音が鳴り止み魔物が殲滅され尽くしたことがわかりました。

 

「先生……終わったんですか?」

 

「音も聞こえないようなので終わったのではないでしょうか……」

 

町の方々もそう思ったのか、歓喜の声が上がる。

かく言う私も終わったと思い、ふぅ、と息を一気に吐いたその時だった。何かが私の目の前に落ちてきた。あまりに突然だったので悲鳴をあげてしまった。そして背後から何者かに首を掴まれてった。

 

「がっ……!?」

 

酸素を上手く肺に取り込むことが出来ず、意識か朦朧とする。段々と自分ではないナニカが私の中に入り込んでくるところで意識を手放しそうになった時だった。

 

「『蒼槍』……はぁっ!」

 

私の首を掴んでいたナニカは私を突き飛ばし、飛んでくる氷の槍を避けようとしたのだ。

私はそのまま地面に倒れるかと思ったのだが、暖かいところに倒れたことに意識が少し戻る。

 

「怪我はないか?」

 

「はい……捕まっただけなので……何処も切られたりはしませんでした……」

 

「そうか……それならばいい」

 

そう安心した声が聞こえると私は意識を完全に失った。

 

「うん……ここは……?」

 

目を開くとそこは真っ暗な空間で足元はドロっとした液体で、ズブズブと身体が沈んでいく。

 

「ひっ……!」

 

沈まないようにもがくのだが、そんな抵抗も虚しく身体はどんどん沈む。さらに何粘っこい声も聞こえる。

 

『カラダヲ……ヨコセ……ヨ゛ゴゼェ゛ェ゛ェ゛!』

 

「だ、誰か……助け……!」

 

遂に顔と上に伸ばした右手だけとなったその時、誰かが私の右手を掴み、液体から引っ張り出してくれた所で目が覚めた。

 

「……ここは?……水妖精の宿?」

 

少し息が荒くなって、背中がじっとりと脂汗て濡れていた。

 

「目を覚ましてよかった。ゆっくり休んでいるといい」

 

隣にはヴェアベルトさんが座っており、私の様子を伺っていたようだ。

 

「ヴェアベルトさん……助けていただきありがとうございます……」

 

重い身体を必死に動かし、お礼を言う。

 

「貴女が無事ならそれでいい。私はここを出る」

 

一つ気になった事があった。それを聞きたいので、彼を呼び止める。

 

「あの……待ってください」

 

「?……やはり何か身体に異常かあったのか?」

 

「いえ、なんでもありません。すみません呼び止めてしまって」

 

「そうか、では」

 

ヴェアベルトさんはそのまま部屋を出ました。

 

「はぁ……何故彼は──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──あんなにも寂しそうな顔で私を見るのでしょうか……」

 

私の呟きは部屋の中で響くだけでした。

 

─────────────────────────

 

士郎side

 

水妖精の宿からヴェアベルトが戻ってくる。

 

「待たせてしまったか?」

 

「いや問題ない、このままウィルを連れてフューレンに戻るから荷物取ってきて」

 

「わかった」

 

宿に荷物を取りに戻る。しばらくして戻ってきたヴェアベルトを車に乗せて、フューレンに向けて走り出すのだった。

最初は愛子先生が魔人族に捕まってしまったので、町の人に何か言われると思ったものの、特に何も言われなかった。

 

「皆さんこの度は本当にありがとうございます!私の命の恩人です」

 

ボクが「どういたしまして」と返そうとした時だった。

 

「お〜いウィル坊。胸がつっかえて入れぬ。すまんが引っ張ってくれんか?」

 

「「「「「「で…出たァ!」」」」」

 

「ティオお前いつの間に乗り込んでる!?」

 

ドドドン!

 

幸利がティオの頭に魔力弾を3発打ち込む。

 

「……どこまでも妾の好みをわきまえたご主人様よ」

 

「この変態……マジでついてくる気なのか……」

 

「はぁ……わかった……なぁ、こいつ連れてっていいか?」

 

「幸利が面倒見るならね」

 

「結局は俺か……邪魔はしないでくれよ」

 

「ご主人様それはつまり……」

 

「好きにしろ……相手するのが疲れる」

 

「え……それは嫌なのじゃ……放置プレイじゃダメなのじゃ……もっと罵って……」

 

「やっぱり里に帰れよもう」

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