ありふれない天の鎖の投影魔術師は世界最強   作:小説大工の源三

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投影魔術師と錬成師○○になる その2

メアシュタット水族館から出たボク達はおやつにアイスらしき物を食べている。

ひんやりしてて甘くて美味い。バニラのような味だ。

しばらく歩いていると、大地感知に人の気配が引っかかった。

 

「む?」

 

「士郎さん?どうしたんですか?」

 

「大地感知に人の気配が引っかかった」

 

「士郎さんも?」

 

「2人共それ使ってるんですね」

 

「常時展開してるわ」

 

「う~ん?でも、何が気になるんです?人の気配って言っても……」

 

周りは人だらけなので、何をさも当然のことを。と首傾げるシア。

 

「いや、引っかかったのは下なんだ」

 

「下?……って下水道ですか?えっと、なら管理施設の職員とか?」

 

「だったら、気にしないのよね。何か、気配がやたらと小さい上に弱い……多分、これ子供よ!?しかも、弱っているわ!」

 

「ッ!?た、大変じゃないですか!もしかしたら、何処かの穴にでも落ちて流されているのかもしれませんよ!2人共、急ぎましょう!」

 

言い終わると同時に駆け出すシア。

この行動力は彼女の優しさからくる物なのだろう。そう思いながらボクと雫は後を追いかけた。

その気配の進行方向の先に民の叡智を発動させて真下へ行く穴が開き、そこに飛び込む。

 

「いました!わたしが飛び込んで……」

 

「いや、それはしなくても大丈夫だよ」

 

再び民の叡智を発動。救い上げるように手が現れて、流されている女の子を拾う。

 

「だ……れ……?」

 

「もう、大丈夫だよ……」

 

「目覚めたの?」

 

「気を失ったよ」

 

「士郎さん、この子って……」

 

「うん、容姿からして海人族だね……ひとまず綺麗な場所に連れて行こう」

 

ボク達は一度宿に戻り、女の子の身体を洗うことにした。衣類も汚れていたので、買いに行くことにした。

宿に戻るとハジメ達もいた。しかも同じ海人族の女の子を連れて。

 

「ハジメ達も?」

 

「なんで同じ状況になってるんだ……」

 

服はユエに買いに行ってもらい、ボクは消化にいい料理を作る。

 

「ボクは天野士郎、それで君達の名前は?」

 

「……ミュウ」

 

「……リーニャ」

 

「ミュウちゃんにリーニャちゃんか。2人はなんで下水道に?」

 

─────────────────────────

 

2人の話によると、ある日、海岸線の近くをミュウの母親と泳いでいたらはぐれてしまい、彷徨っているところを人間族の男に捕らえられたらしいということだ。

そして、幾日もの辛い道程を経てフューレンに連れて来られた2人は、薄暗い牢屋のような場所に入れられたのだという。そこには、他にも人間族の幼子たちが多くいたのだとか。そこで幾日か過ごす内、一緒にいた子供達は、毎日数人ずつ連れ出され。戻ってくることはなかったという。少し年齢が上の少年が見世物になって客に値段をつけられて売られるのだと言っていたらしい。

いよいよ、2人の番になったところで、その日たまたま下水施設の整備でもしていたのか、地下水路へと続く穴が開いており、懐かしき水音を聞いた2人は咄嗟にそこへ飛び込んだ。三、四歳の幼女に何か出来るはずがないとタカをくくっていたのか、枷を付けられていなかったのは幸いだった。汚水への不快感を我慢して懸命に泳いだ2人。幼いとは言え、海人族の子だ、通路をドタドタと走るしかない人間では流れに乗って逃げた2人に追いつくことは出来なかった。しかし疲労により方向感覚がなくなり、再びは別々の方に流されてしまったという。

 

「客が値段をつける……ね。オークションか。それも人間族の子や海人族の子を出すってんなら裏のオークションなんだろうね」

 

「ハジメくん……どうする?」

 

シアと香織はリーニャとミュウを抱きしめる。その瞳は何とかしたいという光が宿っていた。亜人族は、捕らえて奴隷に落とされるのが常だ。その恐怖や辛さは、シアも家族を奪われていることからも分かるのだろう。

 

「ここは保安署に預けるのがベターだね」

 

「そっか……」

 

「そんな……この子や他の子達を見捨てるんですか……」

 

香織は納得したのだが、シアは納得がいかないようだ。

 

「あのね、シア。迷子を見つけたら保安署に送り届けるのは当然のことだよ。ましてや2人は海人族の子だ。必ず手厚く保護してくれる。それどころか、海人族をオークションに掛けようなんて大問題だ。正式に捜査が始まるだろうし、そうすれば他の子達も保護されるだろう。いい?おそらくだが、これは大都市にはつきものの闇なんだ。2人が捕まっていたところだけでなく、公的機関の手が及ばない場所では普通にある事なんだよ。つまり、これはフューレンの問題だ。どっちにしろ、通報は必要でしょ?」

 

「そ、それは……そうですが……でも、せめてこの子達だけでも私達が連れて行きませんか?どうせ、西の海には行くんですし……」

 

「その前に砂漠通るんだ。2人には酷だし、迷宮攻略する際に留守番させるの?」

 

「……うぅ、はいです……」

 

ボクとハジメは2人これからのことを話す。

 

「いいかい、リーニャ、ミュウ、これから、2人を守ってくれる人達の所へ連れて行く。時間は掛かるだろうが、いつか西の海にも帰れるだろう」

 

「……お兄ちゃんとお姉ちゃん達は?」

 

「悪いけど、そこでお別れだね」

 

「やっ!」

 

「いや、やっ!じゃなくてな……」

 

「お兄ちゃんとお姉ちゃん達がいいの!みんなといるの!」

 

駄々を捏ねる2人。駄々っ子のようにシアと香織の膝の上でジタバタと暴れ始めた。今まで、割りかし大人しい感じの子だと思っていたが、どうやらそれは、こちらの人柄を確認中だったからであり、信頼できる相手と判断したのか中々の駄々っ子ぶりを発揮している。元々は、結構明るい子なのかもしれない。

こちらとしても信頼してくれるのは悪い気はしないのだが、どっちにしろ公的機関への通報は必要であるし、途中で大火山という大迷宮の攻略にも行かなければならないので2人を連れて行くつもりはなかった。なので、「やっーー!!」と全力で不満を表にして、一向に納得しないミュウへの説得を諦めて、抱きかかえると強制的に保安署に連れて行くことにした。

2人としても、窮地を脱して奇跡的に見つけた信頼出来る相手から離れるのはどうしても嫌だったので、保安署への道中、ハジメの髪やら魔眼鏡やら頬やらを盛大に引っ張り引っかき必死の抵抗を試みる。隣におめかしして愛想笑いを浮かべるシアと香織がいなければ、ハジメこそ誘拐犯として通報されていたかもしれない。髪はボサボサ、魔眼鏡は奪われたまま、頬に引っかき傷を作った。ボクはリーニャを抱えて歩いた。道中は静かだったのだが保安署に到着すると、凄い力でしがみつき、中々離れない。大人しかったのはこういうことだったのか。しかし諦めたのかすんなり職員の所に行った。

ハジメは、目を丸くする職員に事情を説明した。

事情を知った職員は、今後の捜査や送還手続きに本人が必要とのことで、2人を手厚く保護する事を約束しつつ署で預かる旨を申し出た。予想通り、やはり大きな問題らしく、直ぐに本部からも応援が来るそうで、自分達はお役目御免だろうと引き下がろうとした。

のだが……

 

「お兄ちゃん達はミュウとリーニャが嫌いなの?」

 

「ミュウダメだよ。お兄ちゃん達に迷惑かけちゃ」

 

「うーー……」

 

ミュウをやっと引き離したハジメと保安署を出て、そのまま宿に戻る道中、保安署が見えなくなる所まで歩いたその時だった。

 

ドガァァァァアン!

 

背後で大爆発が起きた。黒煙が上がっているのが見えた。その場所は──

 

「士郎さん!彼処……!」

 

「ああ、保安署だ!」

 

「急ごう!」

 

急いで保安署のところに戻ると、表通りに署の窓ガラスや扉が吹き飛んで散らばっている光景が目に入った。しかし、建物自体はさほどダメージを受けていないようで、倒壊の心配はなさそうだった。中に踏み込むと、対応してくれたおっちゃんの保安員がうつ伏せに倒れているのを発見する。

 

「香織!回復魔法!」

 

「うん!《回天》!」

 

香織の回復魔法で職員のおっちゃん達は回復していく。

 

「大丈夫か?」

 

「あ、ああ……お嬢さんの魔法でなんとか……」

 

「よかった……何があったんですか?」

 

「実は……突然入ってきた黒ずくめの男達が海人族の女の子2人をさらったあと爆弾を起爆したんだ……」

 

「取り返しに来たのか……」

 

「士郎さん!こんな物が!」

 

シアが一枚の紙を渡してきた。紙にはこう書かれていた。

 

〈海人族の子供を殺されたくなければ、連れの女を連れて○○にこい〉

 

「士郎さん、これって……」

 

「どうやら向こうさんは欲張りで──傲慢みたいだね……」

 

ボクはグシャリとメモ用紙を握りつぶす。

 

「士郎さん、わたし!」

 

「皆まで言わなくていいよ……こいつらはオレの敵だ……全員ぶっ飛ばして、リーニャとミュウを奪い返すぞ!」

 

─────────────────────────

 

「んで、行ってもハズレばかりで何度もぶちのめしてる内にアタシ達のところに着いた、と」

 

「理解が速くて助かる」

 

「それに優花やティオも誘拐対象だったみたいよ」

 

「それなら変態だけ蹴り入れてやったのに」

 

「ご主人様!?N○Rが御所m「黙れ変態!」アヒィン!」

 

「……そうと決まれば私達も手伝おう、胸糞の悪いことはすぐ収めるのが一番だ」

 

「ありがと」

 

現在判明してる居場所を伝え、ボク、雫、シアとハジメ、香織、ユエ。幸利、優花、ティオ。ヴェアベルトとメルリアンと別れて探すことにした。

 

─────────────────────────

 

士郎グループがフリートホーフ本拠地前まで歩いていると、扉の前に数人の男が立っていた。

 

「なんだあいつら」

 

「緑髪のガキ、空色のポニテ女に白髪の兎人族……連絡にあった連中か」

 

「確かに女は上玉だな」

 

「男の方は?」

 

「構わん殺せ」

 

パチン!

 

ドガガガガン!

 

士郎の幻想の爆針(ファンタズム・ニードル)が男達2人残して全員爆散した。

 

「は?」

 

残った2人も雫が首を刎ね、シアが星砕きで叩き潰す。

 

「見張りならまず警笛鳴らせよ。馬鹿なの?って死体に言っても無駄か」

 

そう言いながら中に入っていく。

奥に進み、人が集まっている所まで進む、すると1人が壁越しにも聴こえるほどの怒声を上げていた。

 

「ふざんけてんじゃねぇぞ!アァ!?てめぇ、もう一度言ってみやがれ!」

 

「ひぃ!で、ですから、潰されたアジトは既に五十軒を超えました。襲ってきてるのは3人組が3組と1人です!」

 

「じゃあ、何か?そんな10人のクソ共にフリートホーフがいいように殺られてるってのか?あぁ?」

 

「そ、そうなりまッへぶ!?」

 

室内で、怒鳴り声が止んだかと思うと、ドガッ!と何かがぶつかる音がして一瞬静かになる。どうやら報告していた男が、怒鳴っていた男に殴り倒されでもしたようだ。

 

「てめぇら、何としてでも、そのクソ共を生きて俺の前に連れて来い。生きてさえいれば状態は問わねぇ。このままじゃあ、フリートホーフのメンツは丸潰れだ。そいつらに生きたまま地獄を見せて、見せしめにする必要がある。連れてきたヤツには、報酬に五百万ルタを即金で出してやる!一人につき、だ!全ての構成員に伝えろ!」

 

男の号令と共に、室内が慌ただしくなる。男の指示通り、組織の構成員全員に伝令するため部屋から出ていこうというのだろう耳をそばだてていたシアは背中から戦鎚を取り出し大きく振りかぶった。

そして、室内の人間がドアノブに手をかけた瞬間を見計らって、超重量の戦鎚を遠心力と重力をたっぷり乗せて振り抜いた。

 

ドォガアアア!!

 

爆音を響かせて、扉が木っ端微塵に粉砕される。ドアノブに手を掛けていた男は、その衝撃で右半身をひしゃげさせ、更に、その後ろの者達も散弾とかした木片に全身を貫かれるか殴打されて一瞬で満身創痍の有様となり反対側の壁に叩きつけられた。

 

「探す必要はありませんよ。既にここにいますからね」

 

「……てめぇら、例の襲撃者の一味か……その容姿……チッ、リストに上がっていた奴らじゃねぇか。士郎に雫、シアだったか?あと、他にも色々いたな……なるほど見た目は極上だ。おい、今すぐ投降するなら、命だけは助けてやるぞ?まさか、フリートホーフの本拠地に手を出して生きて帰れるとは思ってッ!?『ズドンッ!』グギャアアア!!!」

 

シアが太った男を冷め切った目で見ながら星砕きで壁に吹き飛ばす。さらに星砕きで腹を潰しにかかる。

 

「リーニャちゃんとミュウちゃんはどこですか」

 

「リ、リーニャ……ミュ、ミュウ……?」

 

「惚けないで下さい。あなた達が攫った海人族の子供達です。内臓がぐちゃぐちゃになって飛び出る前に答えることがオススメです」

 

「わかった!言うから助けてくれ!観光区にある、美術館の地下だ!そこに裏オークション会場がある!開始は遅めの夕方だから向かえば間に合うはずだ!」

 

「そうですか」

 

「助けてくれ……」

 

「子供の人生を弄んで置いて助かるなんて都合の良い話はありません。あなたはわたし達と敵対しました。それだけです」

 

シアは大きく振りかぶる。

 

「さよならです」

 

グシャァァ……

 

「なんか言動といい行動といいボクに似てきてない?」

 

「士郎さんの恋人ですから!」

 

「……そうね。リーニャちゃんとミュウちゃんを助けに行きましょう」

 

男の言った場所に向かおうとしたその時、机の上にある資料に目が止まった。

 

「士郎さん、それは?」

 

「会場とその他諸々資料みたい。ついでだ、後顧の憂いも絶っておくか」

 

そう言ってボクは資料を丸めてジャケットの内ポケットに仕舞った。

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