ありふれない天の鎖の投影魔術師は世界最強   作:小説大工の源三

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投影魔術師と錬成師パパになる その3

三人称side

 

オークション会場は、一種異様な雰囲気に包まれていた。

会場の客はおよそ百人ほど。その誰もが奇妙な仮面をつけており、物音一つ立てずに、ただ目当ての商品が出てくるたびに番号札を静かに上げるのだ。素性をバラしたくないがために、声を出すことも躊躇われるのだろう。

そんな細心の注意を払っているはずの彼等ですら、その商品が出てきた瞬間、思わず驚愕の声を漏らした。

出てきたのは二メートル四方の水槽に入れられた海人族の幼女ミュウとリーニャだ。

買ってもらった衣服は剥ぎ取られ、みずぼらしい服を着せられ、首輪と手枷をつけられている。

ミュウは白髪赤目の青年をリーニャは白緑髪紫目の青年のことを思い出しては悲しい気持ちになり、どんどん深く落ち込んでいく。

何がいけなかったのだろう。やはり駄々を捏ねたのがいけなかったのだろうか?

そんなことを考えるとさらに落ち込んでいく。

 

「全く辛気臭いガキ共ですねぇ。人間様の手を煩わせているんじゃありませんよ。半端者の能無しのごときが!」

 

ドカッと2人が入れられている水槽を蹴飛ばす。

すると上から2人の男の声が聞こえてきた。

 

「「そのセリフ、そっくりそのまま返すぞ?クソ野郎」」

 

水槽を蹴とばした男が天井から降りて来た男2人に蹴飛ばされ、壁に激突し何故か生えていた棘に突き刺さった。

そして白髪の男がミュウとリーニャの入っている水槽を義手で殴る。

 

「ひゃうっ!?」

 

「ひにゃぁ!?」

 

流れの勢いで、2人も外へと放り出された。思わず悲鳴を上げる2人だったが、直後ふわりと温かいものに受け止められて、瞑っていた目を恐る恐る開ける。そこには、会いたいと思っていた人が、声が聞こえた瞬間どうしようもなく期待し思い浮かべた人が……確かにいた。自分を抱きとめてくれていた。2人は目をパチクリとし、初めて会った時のようにジッーと士郎とハジメを見つめる。

 

「助けに来たよ2人共」

 

「ごめんね、怖い思いをさせて」

 

「……お兄ちゃん……?」

 

「そうだよ」

 

「「お兄ちゃん!」」

 

苦笑いする士郎とハジメに2人は泣きながら抱きつく。

士郎は毛布を2つ投影して片方をハジメに手渡す。リーニャとミュウを包む。

再会した二人に水を差すように、ドタドタと黒服を着た男達がハジメとミュウを取り囲んだ。客席は、どうせ逃げられるはずがないとでも思っているのか、ざわついてはいるものの、未だ逃げ出す様子はない。

 

「クソガキ、フリートホーフに手を出すとは相当頭が悪いようだな。その商品を置いていくなら、苦しまずに殺してやるぞ?」

 

大勢の屈強な男達に囲まれる2人。どうやら自分達を逃がさないようだ。

不安になり士郎とハジメを見る。

 

「大丈夫、目を閉じていればいいから」

 

そう言って、自分の目に手を被せる。

 

パチン!    パァン!

 

何かが弾かれた音と共に破裂音がなる。

目を閉じているので何が起きたかわからない。すると突然とんでもない速さで上に上がる感覚が襲いかかる。

 

「よし、もう目を開けていいよ」

 

言われた通り目を開けると、そこは町を一望できるほどの上空だった。地平の彼方には、まさに沈もうとしている夕日が真っ赤に燃え上がりながら空を赤く染め上げており、地上には人工の光が点々と輝きだし、美しいイルミネーションを作り上げていた。

 

「「わぁ!」」

 

2人は初めて見たその光景にキャッキャッとはしゃぐ。

 

「お兄ちゃん達凄いの!お空飛んでるの!」

 

「お兄ちゃん竜の上に乗ってる……すごいすごい!」

 

ハジメは空力を使い、士郎は大地龍を足場に浮いている。

 

「喜んでるとこ悪いけど、これから凄いのが見えるよ」

 

「お兄ちゃん……凄いのって何?」

 

リーニャは士郎に質問する。

 

「それはね……大爆発さ」

 

突然美術館が言われた通り大爆発する。

空からは雷の龍と闇の龍が美術館を破壊していた。

 

「「はわわわわ……」」

 

「どう2人共?」

 

「「コワイ」」

 

「あはははは!それもそうだよね。とりあえず降りないと」

 

そう言って士郎とハジメは地上に降りていった。

 

「ミュウちゃーん!」

 

「リーニャちゃーん!」

 

「「お姉ちゃん!」」

 

 

─────────────────────────

 

「倒壊した建物二十二棟、半壊した建物四十四棟、消滅した建物五棟、死亡が確認されたフリートホーフの構成員九十八名、再起不能四十四名、重傷二十八名、行方不明者百十九名……で?何か言い訳はあるかい?」

 

「「カッとなって計画的にやった。反省もしなければ後悔もしない!」」

 

「はぁ~~~~~~~~~まぁ、やりすぎ感は否めないけど、私達も裏組織に関しては手を焼いていたからね……今回の件は正直助かったといえば助かったとも言える。彼等は明確な証拠を残さず、表向きはまっとうな商売をしているし、仮に違法な現場を検挙してもトカゲの尻尾切りでね……はっきりいって彼等の根絶なんて夢物語というのが現状だった……ただ、これで裏世界の均衡が大きく崩れたからね……はぁ、保安局と連携して冒険者も色々大変になりそうだよ」

 

「まぁ、元々、其の辺はフューレンの行政が何とかするところだろ。今回は、たまたま身内にまで手を出されそうだったから、反撃したまでだし……」

 

「唯の反撃で、フューレンにおける裏世界三大組織の一つを半日で殲滅かい?ホント、洒落にならないね」

 

流石にイルワが可哀想なのか彼に一つ提案する。

 

「一応、そういう犯罪者集団が二度と僕達に手を出さないように、見せしめを兼ねて盛大にやったし。支部長も、僕らの名前使ってくれていいんだよ?何なら、支部長お抱えの『金』だってことにすれば……相当抑止力になるんじゃないか?」

 

「おや、いいのかい?それは凄く助かるのだけど……そういう利用されるようなのは嫌うタイプだろう?」

 

「そこは持ちつ持たれつってことだよ。世話になるんだし、それくらいは構わないよ。支部長なら、そのへんの匙加減もわかるだろうし。僕らのせいで、フューレンで裏組織の戦争が起きました、一般人が巻き込まれましたってのは気分悪いし」

 

「ああ、それと報酬額から差し引きで水族館のリーマンを買いたいんだけど……」

 

「わかった、後で水族館と交渉してくるよ。でだ……そこのミュウ君とリーニャ君のことなんだけど……」

 

イルワがはむはむとクッキーを両手で持ってリスのように食べている幼女2人に視線を向ける。

2人はその視線にビクッと反応し、士郎達を見る。

 

「こちらで預かって、正規の手続きでエリセンに送還するか、君達に預けて依頼という形で送還してもらうか……二つの方法がある。君達はどっちがいいかな?」

 

「士郎さん……わたし……必ず2人を守って見せます……だから……」

 

「みなまで言わなくてもわかってるさ……2人を連れてくよ……ハジメもその気だし……」

 

「「士郎さん!/お兄ちゃん!」」

 

「まぁ大火山までの道のりは僕がなんとかするよ。冷房アーティファクト作ればいいかな?ただね……」

 

ハジメが一呼吸置く。先程から何か言いたいことがあるらしい。

 

「お兄ちゃんって言うのはやめてくれないかな?ハジメで良いよ。なんというか……少しむず痒い……」

 

ハジメの要求に、ミュウはしばらく首をかしげると、やがて何かに納得したように頷き……ハジメどころかその場の全員の予想を斜め上に行く答えを出した。

 

「……パパ」

 

「 ゑ゛?………………な、何だって?悪い、ミュウ。よく聞こえなかったんだ。もう一度頼む」

 

「パパ」

 

「……そ、それはあれ?海人族の言葉でお兄ちゃんとかハジメという意味?」

 

「ううん、パパはパパなの」

 

「うん、ちょっと待とうか」

 

お兄ちゃん呼びからパパ呼びになったことに戸惑いを隠せないハジメ。

ミュウのパパ呼びにリーニャも羨ましくなった。

 

「お兄ちゃん……」

 

「?どうしたのリーニャ?」

 

「お兄ちゃんの事パパって呼んでもいい?」

 

「!!!!!?????」

 

士郎はリーニャに『パパ』呼びされたことにハジメ以上の驚きを見せた。

 

「「士郎さん!?」」

 

「…………………ふぅ……なんでパパなの?」

 

「リーニャ、パパとママはどっちも神様の所に行っちゃった……リーニャ、ミュウのママのところに引き取られた……ミュウのママはママって呼んでもいいって言ってたけど……呼びづらくて……」

 

予想だにしない重い話を聞かされて、なんと言ったらいいのかわからなくなりかける。

 

「リーニャ……わかった……ボクをパパと呼んでもいいよ」

 

「ホント!やったあ!パパぁ!」

 

パァッと顔を明るくして士郎に飛びつく。

 

「リーニャちゃんわたしのことをママと呼んでもいいんですよ」

 

「……シアお姉ちゃんはお姉ちゃんなの。ごめんなさい……」

 

「そうですか……」

 

「リーニャのママってどんな人なの?」

 

雫がリーニャの母親のことが気になり質問する。

 

「うーんと、パパといっつもくっついてて、お料理が美味しくて、リーニャと同じ髪色で髪型なの。背も周りの人と比べると少し小さかったの」

 

リーニャの母親の事聞くと、どこか同じ印象を受ける人物が浮かぶ。

 

((まさかね……))

 

士郎と雫はとある人物を想像したのだった。

 

士郎とハジメはこの日18歳、17歳でパパになった!

これより子連れの旅が始まる!




リーニャ
CV:日高里菜
ミュウと同い年。
生まれてからしばらくした時に両親が亡くなり、両親と仲のいいミュウの母親が彼女を引き取った。
引き取られてからはあまり馴染むことが出来ず、心の底から楽しいと言えるように過ごすことが出来なかった。
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