ありふれない天の鎖の投影魔術師は世界最強   作:小説大工の源三

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ただいま、そして……地獄から救いに来たよ!

『憑依英雄譚』」

 

詠唱を終えた恵里から紫色の魔力が噴き出る。次第にそれが収まり薄い膜のように恵里の身体にまとわりつく。そして、髪色も紫に変色し、見開いた瞳は赤紫色になっていた。

 

「2人ともありがとう……あとは僕がなんとかする」

 

そう言って恵里はワンステップで魔人族の女に接近する。

 

「っな!?」

 

「せやぁ!」

 

勢いよく杖を振るうも間一髪避けられる。すると後ろにいるアハトドが恵里に向けて殴りかかる。それ紙一重でかわし、杖の下の棘の部分で拳を切り落とす。

さらに左右から金棒が振り下ろされるも、杖を一体の頭に投げて刺し、そのまま抜いてもう一体の頭を宝玉でかち割る。

猫顔の魔物の触手攻撃も全て捌き、的確に頭を潰す。

 

「恵里すごい……」

 

「なんだあの動き……まるで歴戦の戦士みてぇな戦い方だぜ……」

 

魔物の攻撃を全てかわし、更に的確に一撃一殺を繰り返す彼女に、呆然とする。

鈴達も気を取り直して魔物と相対する。

恵里は全てではないが魔物を蹴散らし、再び魔人族の女に攻撃を仕掛ける。

魔人族の女は砂塵を使い、攻撃を受け止めようとするものの、背後にある闇の塊が爆発、視界が煙に覆われ、恵里を見失う。

そして真横から杖を振るい壁に殴り飛ばす。

恵里はトドメを刺すべく、杖の先端で心臓を突き刺そうと突撃、しかしそれは別の人物によって阻まれてしまった。

 

「なんで邪魔するのかなぁ……!」

 

天之河だ。

 

「人殺しはいけないんだ……まだ話せばわかってくれるはずだ……!」

 

そう言って天之河は倒れた。

どうやら限界突破の時間が来てしまったようだ。

倒れた天之河を一度、檜山達の所まで蹴飛ばす。

 

「ホント甘ちゃんだね。あの勇者君」

 

「邪魔しかしないならどっか行ってほしいね……」

 

ため息を吐く恵里の身体は時間を経過する毎にボロボロになっていく。

『憑依英雄譚』

自身のステータスを一気に上昇させ、歴代の戦士達の戦い方を真似る。闇魔法と降霊術の複合魔法。

ステータスの上昇は言わば強制火事場のクソ力だ。無理矢理底上げされたステータスに身体が追いつかなくなっていき、最終的には動けなくなってしまう。

杖には今まで戦ってきたトータスの戦士達の記録が込められている。それを媒介に自身へと付与している。

 

(早くしないと時間(リミット)が……!)

 

魔人族の女は土煙を発生させる。死角から魔物の攻撃が襲いかかる。

 

「くっ……!」

 

恵里は攻撃を避けつつ反撃を的確に入れるのだが、焦ってしまい攻撃が1発逸れてしまった。魔物を倒すことも出来ず、カウンターを貰ってしまう。

 

「グハッ!」

 

なんとか杖を盾に防御したのだが、杖に寿命が来てしまい粉々に砕け散った。

壁にまで飛ばされた恵里の身体が薄紫色に点滅する。

起き上がろうとするのだが、点滅が消えた途端に力が一気に抜ける。

 

(もう……時間が……)

 

倒れて隙だらけの恵里にアハトドの金棒が振り下ろされる。

 

「恵里!『聖絶』ぅ!」

 

その寸前に飛び込んで来た鈴が全魔力の濃縮して作り出したバレーボールくらいの大きさの結界で防ぐも、そのまま砕かれ2人共々壁に叩きつけられる。

 

「なん……で、来たの……鈴……」

 

「え……へへ……勝手に……身体が動い……ちゃった……」

 

「バカだなぁ……鈴は……逃げてれば助かったのに……」

 

「親友を……置いて行く勇気……鈴にあるわけ……ないよ……」

 

互いに魔力も体力もなく、掠り声で力なく会話する。這いずりながら互いの身を寄せる。

坂上は既に別のアハトドに殴り飛ばされてしまい、意識が朦朧としていた。永山達も防御で手一杯だ。

『ズシン、ズシン』と大きな足音が2人に迫る。2人は互いを守り合うように抱きしめる。

 

(お兄ちゃん……再会出来ないまま死んじゃうのか……)

 

「嫌だよ……助けて……お兄ちゃん……」

 

アハトドの巨大な足が恵里と鈴の2人を踏み潰そうとしたその時だった。

 

ブウウウウウウウウウン!

 

突然、戦闘機のエンジンのような音が上から聞こえたのだ。その音はドンドン近くなっていき、遂には……

 

ドゴォ!

 

天井の岩盤を破壊し、出てきたのは巨大な鎖だった。

その鎖はアハトドを潰し、地面に突き刺さった。

 

「えっ……何?……おっきな……鎖?……恵里?」

 

恵里はぼうっと目の前に突き刺さった鎖を見ている。まるで何か懐かしい物を見るように。

 

(あの鎖……お兄……ちゃん……?)

 

鎖が空気に溶けていくように(ほど)けていく。

そこから1人の人影が現れる。

白緑色の髪、橙の外套、両手に握られる黒白の中華刀。

 

「お兄ちゃん……!」

 

恵里には見た瞬間わかっていた。自身の兄で恋人の士郎だと。

 

「ただいま……遅くなってごめん。そして……地獄から救いに来たよ」




次回、僕のヒーロー
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