ありふれない天の鎖の投影魔術師は世界最強 作:小説大工の源三
「ご主人様、この状態の者はどうするのじゃ?」
ティオは幸せそうな顔をした男達を指さす。
「放置して良いだろ。幸せそうな顔してるし」
「そうね。無理に起こすのもかわいそうだし」
そう納得する。
幸利達の唐揚げで骨抜きになっている、男達を尻目に、恵里は士郎の肩を叩く。
「ねぇお兄ちゃん、パパってどう言うこと?」
恵里がこの場にいるほとんどの人が思っていることを聞く。
「ええと実はね……」
士郎がフューレンであったことを話すと、恵里はリーニャの頭を撫でる。
「そうなんだ……よく頑張ったね」
リーニャは気持ち良さそうに顔を綻ばせる。
「ありがとうママ……あっ!」
リーニャは頭を撫でる恵里のことをママと呼んだ。
「!?リーニャちゃん?なんで僕の事をママって呼んだの?」
「えっとその……お姉ちゃんがママにそっくりだったから……つい呼んじゃった……」
「やっぱり恵里と似てると思ったのよ……」
フューレンでリーニャの母親の事を聞いた時に感じた既視感を思い出す。
『リーニャと同じ髪色で髪型なの。背も周りの人と比べると少し小さかったの』
今の恵里の容姿と同じだった。
「リーニャが呼びたいなら僕の事をママって呼んで」
「ありがとうママ!」
リーニャは恵里に抱きつく。
「お兄ちゃん、僕も着いていくね」
「言っておくけど、今回の件よりも過酷な旅だ。それでも着いてくるの?」
「うん、もうお兄ちゃんと離れ離れになるのは嫌だからね」
「わかった。荷物まとめて来て」
「やった!」
喜ぶ恵里。荷物を取りに向かおうとしたその時、待ったをかける人物がいた。
「な、恵里、君は着いて行くのか?」
「ん?そうだけど何か問題ある?」
天之河の質問に対して、恵里は「何を当然の事を」といった顔をして返す。
「大有りだ。天野先輩は人殺しなんだ。これ以上そんなことをさせない為にも王国に留まってもらう必要がある。それに君は人殺しの近くに居てはいけない」
天之河は地球だと真っ当な理由で恵里を引き留めようとする。
「香織も雫も、園部さんも俺達と一緒に戦おう。その力が有ればこの戦争に勝てる。君達もだ、そんな男の元にいるべきじゃない。俺と一緒に行こう!君達ほどの実力なら歓迎するよ。共に人々を救うんだ。それからシア………だったかな?安心してくれ。俺と共に来てくれるなら直ぐに奴隷から解放する。ティオも、もうご主人様なんて呼ばなくていいんだ」
物凄い自己完結で見当違いである。
誰も士郎やハジメ、幸利から離れたいとは思ってもいないのにだ。
爽やかな笑顔を浮かべながら、ユエ達に手を差し伸べる天之河。
「「「「「……」」」」」
「あれはなんか違うのじゃ……」
「この歳で厨二病患ったのかあいつ……」
「あれが人間の勇者なのか……力はともかく、内面に問題しかないな……」
香織達は絶句し、ティオが若干引いている。あのティオがだ。
幸利とヴェアベルトは天之河の一方的な発言に、呆れ果てている。
「光輝、私達は自分の意思で着いていってるわ」
「雫ちゃんの言う通りだよ。それにやることもあるから、冒険者をやってるんだよ?それに私ハジメくんと離れるつもりないし」
雫と香織は戻らないことを伝える。
「な、香織、何故南雲なんかと……南雲お前!香織に何をした!」
「何もしてないよ……」
あまりの言いがかりにハジメもため息を零しながら肩を下げる。
「ならまさか清水お前!彼女達を洗脳したのか!」
「言っとくが俺は闇魔法で洗脳の魔法を使ったことはないぞ。なんなら攻撃魔法くらいしか使ってないし」
「それといつまで恵里は先輩といるんだ。兄妹とはいえもういいだろう。恵里も恋人がいるんだから離れた方が、人殺しと離れられて一石二鳥だ」
(やっぱり言った方がいいのかもしれないな……)
(僕もそう思う……これ以上隠しても意味ないし……いずれバレちゃうよ……)
士郎と恵里は耳打ちしながら自分達のことを話すか相談する。
「この際言うけど僕の恋人はお兄ちゃんだよ」
恵里がその事を伝えると、鈴以外の全員の顔が驚愕に染まり、騒つく。
「き、兄妹で付き合うなんて間違っている!恵里、今すぐ別れるんだ」
当然、天之河は反対する。
「因みにボクと恵里は血は繋がってないよ。恵里はある理由でボクの家の養子になったからね」
立て続けに明らかになる事実に、動揺が大きくなっていく。
「な、血の繋がりがないだって……」
天之河も当然驚く。しかし何を思ったかとんでもない発言をした。
「血が繋がっていないなら家族でもなんでもないじゃないか!」
と、士郎と恵里の関係を完全に否定する発言をした。
その時何かが切れた。
ブヂッ
「今なんつった?」
士郎はウルでシアが侮辱された時よりも激しく怒っていた。恵里は天野家の一員ではないと言われ、自身の家族を、それまでのことを、思い出を、全てを否定されたような気持ちになった。
「恵里と天野先輩は家族じゃないと言ったんだ!2人は早く別れるんだ!」
さらに士郎の怒りが増幅する。威圧を出さない辺り、まだ冷静な部分から残っているのだろう。声が少し荒くなっただけだ。
「何が気に入らないんだよ……」
「気に入らないんじゃない、お前が間違っているから俺は指摘しているだけだ!まさか恵里を家族にしたのも、付き合う為なのか!それに香織達が神の使徒として戦わないのも、お前が洗脳したのか!」
天之河の中での士郎がどんどんおかしな方向へ進んでいく。
「天野士郎!俺はお前を許さない!決闘しろ!」
士郎の中で一つの結論が出た。
こいつは一度徹底的に叩きのめさないと
「わかった、早く来な、やるんだったらさっさとやろう」
士郎は挑発するように、手をクイクイと動かす。
「はあぁぁぁあ!」
天之河は聖剣を縦に勢いよく振り下ろす。
しかしそれは士郎の右腕によって防がれる。
「な!これなら!」
天之河は連続で切りかかってくる。しかし、その動きも雫の剣速よりも圧倒的に劣り、最も容易く捌かれる。
「ふっ!」
バギィ!
「ガハッ……!」
士郎は天之河の鳩尾を殴る。鎧には一切ダメージは入らなかった。しかし、内部の天之河本体に多大な衝撃が襲いかかる。
襲ってきた魔物が持っていた技能[衝撃変換]である。じつは士郎、戦闘中にいくらか食べてみたのだ。軽く痛みが走ったが、耐えられない物ではなかった。
「ぐっ……まだだ……俺は香織達を助ける為にお前を倒すんだ……」
聖剣を杖のように地面に突き刺し、フラフラと立ち上がる。側から見ればまるで強大な敵に立ち向かう正義のヒーローのようだ。
しかし相手は奈落の底から這い上がった化け物。奈落よりも上の階で戦っていた、天之河が勝てる相手ではなかった。
「『限界突破』!」
今度は限界突破を使用して、ステータスの底上げをする。先程よりもスピードとパワーが上がっている。オルクス迷宮を攻略していた人達は、天之河のスピードに、目が追いついていなかった。
「たあぁぁぁあ!」
横一文字に斬りかかる。
ガキン!
またも聖剣は士郎の右腕に受け止められる。
「いい加減諦めたらどう?」
涼しげな顔をして聖剣を受け止める士郎。その様子が天之河の怒りを煽るには充分だった。
「うるさい!俺はお前を倒して香織達を取り戻し、ユエ達も救ってみせる!」
諦めの悪い天之河。ハジメ達のいる所で、ユエ達が冷たい目をしていることに気づくことはなかった。
士郎はふとあの時の天之河に対して思ったことがあった。それを今問いただしてみることにした。
「君ってちゃんと中学で歴史の授業、受けたの?」
「受けたに決まってるだろう!」
「じゃあ、戦争のことは?」
「習った!」
当然のことだろう。むしろ今まで中学で習わないのが不思議だ。
「ならなんで参加しようって声高々に言ったの?」
「俺なら……みんなとなら出来るからだ!」
「ふーん……」
メキョオ!
再び士郎の拳が天之河の腹部を捉え、めり込む。
「ガハッ……」
「君は自分が今まで他人に迷惑をかけたことがないの?」
「ゲホッゲホッ……ああ!」
「ならなんで雫や香織が、君と関わった人に謝ってるのさ」
「うるさい!出鱈目言うなぁ!」
そう怒鳴ると天之河は力を溜める。
「『覇潰』!」
叫び声と共に天之河の身体に光の奔流が収束する。遂に限界突破の終の派生技能を使用する。
「天野士郎ォォォォオ!」
今までとは桁違いの速度で聖剣を構えた天之河が士郎に突撃する。
ドゴォ!!
物凄い、音がした。
士郎の拳がカウンターで天之河の腹部を3回目も捉え、後ろの岩壁まで飛んでいき、そのままめり込んだ。自身の突撃した勢いと士郎の拳の威力により、気絶していた。
「ふう……勝負あり……でいいよね?」
誰も文句を言う者はいなかった。
─────────────────────────
壁に激突し、気絶した天之河が医務室に運ばれる。このまま騎士団と勇者パーティーはホルアドから一旦、王国に戻るようだ。
すると坂上が士郎の元に走ってくる。そして勢いよく頭を下げる。
「天野先輩!光輝が本当にすいません!」
「いや、別に君が悪い訳じゃないから、謝る必要はないよ?」
坂上のあまりの謝罪の勢いに、士郎はたじろぐ。
「それでも俺の気が済みません!」
坂上は頭を下げ続ける。
「とりあえず頭上げて」
「はい……」
「道中、恵里から聞いたよ。前衛として頑張ってたこと」
「はい……」
「だからまぁ気にしないで」
「わかりました!」
「ハジメ!坂上くんと鈴、遠藤くんに渡す物があるんだけど……」
士郎は鈴がどこに居るか探す。どうやら恵里と会話しているようだ。
「私、鈴呼んでくるわ」
雫が鈴を呼びに行く。
3人揃い、ハジメが宝物庫から袋を三つ取り出す。
「オニーサン渡す物って何ですか?」
「3人には武器と防具を渡すね」
士郎とハジメはそれぞれに袋を手渡す。
坂上に渡した袋には、小手と服。鈴に扇とローブ。遠藤には短剣と衣だ。
「使い方は同封されてる紙を読んで」
「えっと……本当にいいんですか?紙を見た感じ、とんでもないアーティファクトなんですけど……」
「用意出来たのが君達と恵里の分だけなんだよね……檜山達には渡すつもりはないけど。他のメンバーの分も用意したかったんだが……サイズやら天職、使用武器を把握してなかったから作れなかったんだ。その点は謝る。状態異常耐性上昇の腕輪も作ったし、檜山達以外に渡しといて」
「光輝の分は?」
「多分受け取らないだろうから、預かってもらうよ」
「あはは……頑張って使い熟してみせます!」
「そうしてくれると嬉しいよ」
「恵里も頑張ってね!」
「うん、鈴も」
─────────────────────────
士郎が天之河の相手をしている間──
「そういえば、僕に向けて魔法を放ったの誰か知ってる?」
ハジメは特に恨みを持っていないわけではない。あの時奈落の底に落ちたのは後悔してない。それとは別に、香織が悲しんだ事が許せなく、いつか犯人を問い詰めてやろうと思っていた。
ただここで素直に名乗り出るのなら、少しだけ優しくしてやろうと思っていた。
「……」
名乗り出ることはなかった。
「まぁ良いやどうせ檜山なんでしよ?」
「な、なんで知ってんだよ!」
「畑山先生から聞いたからね」
「ハジメくんに謝りもしないんだね……」
「……あいつがハジメに魔法を当てた奴?」
するとユエはウルで愛子から聞いた事を思い出す。「真っ直ぐ撃つ筈の魔法が何故か南雲君に向かって曲がってしまった」と。魔法のエキスパートである自身からすれば、それはあり得ないことだ。
魔法は撃てばその通りに放たれる。つまり真っ直ぐ撃つなら、真っ直ぐにしか進まないのだ。
「……貴方が騎士団の団長?」
「ああ……お嬢さん……君は一体?」
「彼女はユエ。僕達のパーティーのメンバーの中でもトップクラスの魔法使いです」
「なるほど……そんなお嬢さんが何のようだ?」
「……私は魔法の事……ハジメに撃った魔法の事を話にきた」
「坊主に向かった魔法……何か仕掛けがあったと言うのか?」
「……ん。魔法が自分でも知らないのに曲がったなんて真っ赤な嘘。魔法は決められた詠唱、魔法陣によって、撃ち方とか細かいことは全部、決められている。つまりそこの男はハジメに向けて魔法を撃ったということ」
「で、出鱈目言うんじゃ「黙ってろ大介」……ぐっ」
檜山は突かれたくない所を言われたのか、怒鳴って誤魔化そうとしたのだが、メルドの一喝に怯む。
「……動機なんてものはどうでもいい。ただそいつは殺意を持ってハジメに魔法を放った、それだけ。どう対応するかは貴方次第」
その言葉に檜山の顔は顔面蒼白というのを通り越した白さだ。
「なるほど……ユエ殿が言うのならば本当なのだろう。大介の処罰は王と相談してみよう」
─────────────────────────
「クソっ!クソっ!なんなんだよ!白崎が生きていたのは良いが、キモオタ共まで生きてやがった!」
時間は深夜。
思わぬ方向から罪を告発され、再び監視下に置かれることになった檜山は拳を叩きつけながら、押し殺した声で悪態をついていた。彼の瞳は、憎しみと動揺と焦燥で激しく揺れていた。それは、もう狂気的と言っても過言ではない醜く濁った瞳だった。
「クソが……どうしたら白崎を俺のものに出来る……」
檜山は士郎が天之河と戦う前に香織がハジメと離れるつもりがないと言った。つまり香織とハジメが恋人関係にあると言うことだ。
すると突然、何かの羽ばたきの音が檜山の耳に入る。
音の元を探すと、どうやら上のようだ。
音の主は背中に銀色の翼を持ち、銀色の髪、美しさと不気味さを兼ね備えた顔を持つ女だ。
「私はノイント、主の名で貴方を主の元へ連れて行きます」
ノイントと名乗った女性によって、檜山は神域と呼ばれる場所へ連れて行かれることになった。二人は光りに包まれ、薄れた時には、そこにはもう誰もいなかった。
─────────────────────────
勇者パーティー達が王国に戻り、士郎達はホルアドにあるちょっと良いところの宿屋に向かう。
マジデの宿
この宿名に既視感を感じた。
「いらっしゃいませ!マジデの宿へようこそ!本日はお泊りですか?それともお食事だけですか?」
「宿泊で、部屋割りは……」
「いつも通りで、恵里は士郎と一緒で良いしょ?」
「勿論だよ」
いつも通りの部屋割りで部屋に入る。リーニャはミュウと一緒に寝ると言ったので別室になった。
そして風呂にも入り、そろそろ寝ようと支度をしたその時だった。
ネグリジェ姿の恵里が士郎に抱きついてきた
「お兄ちゃん……僕のハジメテ貰ってくれる?」
「恵里……それって……」
「お兄ちゃんの考えてる通りだよ。あのね僕、お兄ちゃんと再会出来た時にそうシたいって思ってたからね……勿論、雫とシアさんも一緒にだよ?2人と相談して、2人共一緒にヤるって」
士郎は恵里の事を当然大切に想っている。その彼女から夜の誘いをされたのだ。
「恵里さーん、わたし達も準備できましたよ〜」
「これで大丈夫なのかしら……」
備えつけの更衣室から雫とシアが露出度の高い格好で出てきた。
「ふ、2人共……」
「恵里さんも合流しましたし、わたしの……処女を貰って下さい!」
「私も……お願い、貴方の手で奪って……女にして」
ここまで言われてしまえば、士郎も男として応えねばならない。
「わかった……3人のこと……抱かせてもらうよ……」
この日、士郎達は大人の階段を一斉に登るのだった。
以前士郎組のR18を書いたけど、他のペアのもの読みたい?
-
読みたい
-
読ませろ
-
本編進めろアホ
-
士郎組だけ
-
読まぬぅ!