ありふれない天の鎖の投影魔術師は世界最強   作:小説大工の源三

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幕間の物語part③ 虹を写す一雫

時は遡って樹海を出た時。

シアは気になっていたことがあった。

 

「雫さん、一つ聞きたいことがあるんですが」

 

「いいわよ」

 

「士郎さんと出会ったのはいつなんですか?」

 

「士郎さんと出会った時ね……あれは11歳の頃で……」

 

─────────────────────────

 

『ザァー』と音を立てて雨が勢いよく降っている中青い傘と紫の傘をさし、二人で帰る少年少女──天野兄妹は水溜りを避けて歩いていた。

 

「雨強いね……」

 

「雷がないだけマシだよ……」

 

とまぁ雨が好きではない会話をして下校していた。2人は図書室で本を読み耽り過ぎて完全下校時間ギリギリに学校を出たばかりだ。

すると雨の音に混じって誰かの啜り泣く声が士郎の耳に入る。音の場所を探すようにキョロキョロと辺りを見回す。

 

「お兄ちゃん?」

 

「恵里、誰かの泣いてる声が聞こえたんだけど……」

 

「え?……本当だ……誰なんだろう……こっちの方みたい」

 

恵里も耳を澄ますと彼女にも啜り泣く声が聞こえた。

 

「とりあえず行ってみよう……」

 

2人は音源の所まで行く。

そこは明らかに誰も目につかないような路地裏だった。中も暗くて見え辛いが1人が蹲って泣いていた。

 

「あの〜そんな所で泣いて、どうしたの?」

 

泣いてる当人に士郎は話しかける。話しかけられたショートカットの人は振り向くと、2人を警戒したように見る。

 

「誰……?」

 

女の子の声だ。しかしその声は弱々しく、怯えを含んでいた。まるで初めて恵里と出会った時のようだった。

足下には雨と泥で汚れたストラップ人形が落ちていた。

恵里はそれを手に取ってまじまじと見る。

 

「これ君の?」

 

「……うん」

 

恵里が手に取った熊の人形には泥以外にも足跡が付いていた。

 

「酷い汚れだね……踏まれた後もある……誰にやられたの?」

 

「……クラスの友達に」

 

「いやいや……人形にこんなことする人を友達とは言わないよ?」

 

「……何があったの?……あ、ボク天野士郎。それでこっちが妹の」

 

「天野恵里。君の名前は?」

 

「……八重樫雫」

 

「八重樫さんか……君が良ければだけど一旦、ボク等の家に行こう……それでなんでこんなことになったか教えてくれる?」

 

士郎が雫にそう聞くと、彼女は少し俯く。どうやら話していいのか悩んでいるようだ。

数十秒が経過して、口を開く。

 

「お願いします……」

 

─────────────────────────

 

雫を連れて帰宅し、熊の人形を洗う。両親は出かけていていなかった。

話によると雫が学校の友人と放課後の時間、一緒に遊んでいて自分が集めてる人形をその友人に見せたりしてたのだが、突然友人達から呼び出されて友人から言われたのが、「あんた女だったの?」である。さらに人形をぐちゃぐちゃにされてしまった。そのことを幼馴染に相談したのだが、話し合わせられてしかも何故かいじめられた雫も謝ることになった。その時に言ったのが「彼女達がやったことは悪いことだ。俺が謝らせてくる。だけど雫も彼女達に何かしたんだろう?だからお互いに謝り合おう」という虐めてきた側も庇うようなものだった。

それだけならまだ抑えられた。今日も呼び出されこの路地裏に訪れて言われたのが、「光輝くんにチクりやがって。嫌われたらどうすんだよこの男女!」そう言われて、お気に入りであるストラップの人形を踏み潰され、雫自身も泥に突き飛ばされた。

 

「……酷い話だね」

 

「……もうどうしたらいいの?」

 

諦めたように俯いてしまう。

 

「というか光輝って呼ばれてる君の幼馴染は何を考えてるのかな……余計に悪化させて……まず味方をするのは八重樫さんの方なのに」

 

雫の幼馴染のあんまりな対応に恵里は呆れ果てたようにため息を吐く。

 

「でも光輝くんは私を皆と仲良くするために「それで君が傷ついたら意味ないよ」……」

 

雫が幼馴染を庇おうとするのだが、士郎はそれを遮る。

 

「その幼馴染は結局、『君』じゃなくて君を含めた『皆』という物しか見てないんだと思うよ……」

 

士郎は幼馴染の行動から、その幼馴染が見ているものを推測する。

士郎は恵里を護る為に父親から、あらゆる知識を吸収している。真っ先に学んだのが虐め関連の物だ。

 

「……それじゃあ光輝くんは私を助けてくれないの……?」

 

「根本的にはね……」

 

雫は士郎の話に絶望する。

頼みの綱である幼馴染さえダメだと言われた。あとは何を頼ればいいのかわからなかった。

 

「ねぇ八重樫さん、親には相談しないの?」

 

「お父さん達には迷惑をかけられないから……」

 

すると恵里は雫の両肩を掴む。

 

「八重樫さん……親って言うのは迷惑かけてなんぼだよ?僕だったお義父さんやお義母さんに迷惑かけたことがあるし」

 

しかし雫は中々納得しない。まだ何か懸念していることがあるようだ。

 

「もしかして、自分以外……自分の次に虐められそうな人がいるの?」

 

雫はハッとした顔になる。どうやら図星のようだ。

 

「……私も虐められるのは嫌よ……でも香織が私の代わりに虐められるのはもっと嫌……どうしたら……どうしたらいいのよ……!」

 

彼女自身の心の支えになっている、少女の名前を叫びながら、心に溜まっていたモノを叫ぶ。

 

「……とりあえず、君を虐めてきた人を教えてくれるかな?」

 

─────────────────────────

 

あの後ストラップが乾くのに時間がかかるので明日、指定した所で待ち合わせを決めた。

しかし翌日、雫はいじめっ子に再び同じ場所に呼び出される。断ることも出来ず、昨日の路地裏に連れて行かれる。そこに居たのは自身よりも背の高い男子が数人いた。

どうやら遂に完全に武力行使に出るようだ。

雫自身負けるつもりはなかったが多勢に無勢の上体格差もあるため勝ち目がなかった。

 

「あんたが光輝くんから離れないから悪いのよ?」

 

そして数人の男子生徒が雫を囲う。雫はなるべく痛みを堪える為に蹲る。

 

カシャ!カシャ!

 

2回学校などで聞くシャッター音が路地裏に響く。

 

「八重樫さん……大丈夫?」

 

雫が顔を上げた先に立っていたのは、昨日自身のストラップを返すと言った少年だった。

 

「寄ってたかって年下の女の子虐めるとか……男としてのプライドないの?」

 

「誰だお前!」

 

「ボク?そうだな……悪いやつをやっつけに来た通りすがりの「邪魔すんな!」うわァ!自己紹介は邪魔しちゃいけないって習わないの!?」

 

長ったらしい自己紹介をしようとした士郎に、我慢出来なくなった1人が殴りかかる。

しかしそれを避けられる。

 

「危ないなぁ全く……」

 

そう呟くと再び自己紹介を始める。

 

「ボクは悪いやつをやっつけに来た通りすがりの別の学校の生徒さ!」

 

そう言うと、男子の1人が笑い始める。

 

「ダッセェ自己紹介だな!」

 

「まぁそんなダッセェ奴に君は注意されてる訳だし……もっとダサいね!」

 

士郎は煽られたかと思うと逆に煽り返すのだった。その言葉にキレたのか雫を囲んでいた男子は士郎を囲い始める。するといつのまにか雫の後ろに恵里が立っていた。

 

「八重樫さん……こっち、早く」

 

「でもお兄さん……」

 

「お兄ちゃんは大丈夫。だから早く」

 

恵里は雫の手を引いて路地裏を抜け出す。

一方の男子は手をポキポキと鳴らす。

 

「テメェみたいな生意気なやつはこうだ!」

 

また殴りかかる。今度は士郎の後ろの男子が羽交い締めしており、避けることが出来なくなっていた。

しかし士郎は頭を自らぶつけに行く。

 

ゴキン!

 

「イッデェェエ!」

 

「ごめんね、ボク石頭だからさ?」

 

そういうと士郎は羽交い締めしている男子にも後頭部をぶつけて男子から離れる。

 

「それじゃあみなさんバイビー!」

 

士郎も恵里達とは別の方向に逃げる。

 

「待ちやがれ!」

 

残りの男子が後を追う。士郎は突然逃げるのをやめ、回し蹴りをする。

 

「ゲフっ!」

 

「せい!」

 

さらに飛び蹴りをもう1人の頭にかまして、残りの2人には鳩尾に正拳をめり込ます。

そのまま士郎は恵里達と合流する。

 

「恵里!八重樫さん!」

 

「お兄ちゃん!あいつらは?」

 

「蹴りと正拳かましてやった」

 

「そっか……」

 

「あの……なんで、ここに来たの?」

 

「待ち合わせ場所に来なかったから、もしかして……って思って昨日の場所に行ったら」

 

「君がいたんだよ。いじめっ子と一緒にね」

 

「……なんで助けてくれるの?」

 

「そりゃあ昨日知り合って、助けて欲しそうだから勝手に助けただけだよ?」

 

士郎は雫の問いに対して、『何を当然のことを』と言った感じで答える。

 

「とりあえず虐めの証拠も抑えたし。あとは教育委員会に提出しちゃおう」

 

─────────────────────────

 

「と言った感じよ」

 

「士郎さんは皆さんの故郷にいた頃から優しいのですね……」

 

「そうね……」




士郎のお父さんはエリート社員ですので、士郎に色々と教えているのです。
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