ありふれない天の鎖の投影魔術師は世界最強 作:小説大工の源三
今話はそれが関係していますのでまずはそちらを確認してから読んでください。
もう読んだって人はこのまま
砂漠って暑いし寒いから好ましい場所じゃないよな。そんな所の事件って……
ホルアドマジデの宿にて
士郎は昨日の夜、恵里達3人を抱いた。そのことについては後悔はしていない。
「とりあえず3人を起こさないと」
恵里達を起こして、出発の準備をする。朝食は軽く済ませて、ブリーゼ(車)に乗って大火山を目指す。
「わぁ……本当に車だ……」
宝物庫から現れたブリーゼに恵里は感動する。
「その内空中要塞も作るつもりだよ。なんたってロマンがあるからね」
「それじゃあ出発するか。今回の運転は俺がする」
「幸利殿、今回は私に任せてくれないか?君は最近運転することも多かっただろう」
「……そうだな。頼むわヴェアベルト」
今回の運転はヴェアベルトがするようだ。
士郎達は真ん中の列に座る。
座席はこんな感じになっている
○運
○○○○
○○○○
○○○○
荷物置き
荷台
とかなり広く作られている。
ブリーゼがホルアドから出発して、数十分が経過した。
「パパすごいの!とっても涼しくて目も痛くないの!」
「ハジメお兄ちゃんすごい……!」
幼女2人はハジメ制作の車に感動し、キャッキャッとはしゃぐ。
砂漠の上も錬成整地の能力で進んでいるので、沈む事はない。
しばらく走っていると、何かが大地感知に引っかかった。
「ヴェアベルト、三時方向になんかいる」
「む?あれは……サンドワームか?」
「だとするとおかしいのう。まるで食うか食わざるか迷っておるようじゃ」
「まぁ、そう見えるな。そんな事あんのか?」
「妾の知識にはないのじゃ。奴等は悪食じゃからの、獲物を前にして躊躇うということはないはずじゃが……」
ドMの変態であるティオだが、ユエ以上に長生きな上、ユエと異なり幽閉されていたわけでもないので知識は結構深い。なので、魔物に関する情報などでは頼りになる。その彼女が首をかしげるということは、何か異常事態が起きているのは間違いないだろう。
しかし、わざわざ自分達から関わる必要もないことなので、こちらは避けて進む。
「っ!全員何かに捕まれ!」
ヴェアベルトはブリーゼを突然加速させる。後方から突如サンドワームが飛び出してきたようだ。
ヴェアベルトは、さらに右に左にとハンドルをきり、砂地を高速で駆け抜けていく。そのSの字を描くように走る四輪の真下より、二体目、三体目とサンドワームが飛び出してきた。
「きゃぁあ!」
「ひぅ!」
「ひゃあ!」
「わわわ!」
「おおっととと」
ゴチン!
「「いったぁ!」」
ブリーゼが左右に大きく揺さぶられ、士郎達は体勢を崩す。香織がユエとハジメの上に乗り、その上にミュウが乗り。幸利と優花の頭がぶつかったりした。
サンドワームはブリーゼの前に大口を開いて待ち構えている。
「何気にこれを使ったところは今まで見た事なかったな……!」
ヴェアベルトはブリーゼをドリフトさせて車体の向きを変え、バック走行すると同時にブリーゼの特定部位に魔力を流し込み、内蔵された機能を稼働させる。
ガコンッ! カシャ! カシャ!
機械音が響き渡るのと同時に、ブリーゼのボンネットの一部がスライドして開き、中から四発のロケット弾がセットされたアームがせり出してきた。そのアームは、獲物を探すようにカクカクと動き、迫り来るサンドワームの方へ砲身を向けると、『バシュ!』という音をさせて、火花散らす死の弾頭を吐き出した。
オレンジの輝く尾を引きながら、大口を開けるサンドワームの、まさにその口内に飛び込んだロケット弾は、一瞬の間の後、盛大に爆発し内部からサンドワームを盛大に破壊した。サンドワームの真っ赤な血肉がシャワーのように降り注ぎ、バックで走るブリーゼのフロントガラスにもベチャベチャとへばりついた。
残りの2匹も内蔵シュラーゲンで撃ち抜く。
「うわぁ……スプラッタ……恵里、リーニャの目、隠してくれる?」
「そうだね……」
「ママ見えないよ?」
「見ちゃいけないよ……」
体勢を崩しながらもリーニャの目を手で覆う。
「たしかに見せられないわね……」
「血塗れですぅ……」
「悪い優花……」
「不可抗力よ……」
幸利と優花の2人はぶつかり合った頭を押さえる。
「香織……降りて……苦しい……」
「ご、ごめんねユエちゃん!」
ユエは顔が座席を向いていたので呼吸がし辛くなっていた。
慌てて香織はミュウを抱えて降りる。
「とりあえず、何があったか調べてみるとしよう」
サンドワームが食うか悩んでいたのは人だった。その人はエジプトの民族衣装に似た白い服を身に纏った20代半ばぐらいの男だった。
苦しそうに歪められた顔には大量の汗が浮かび、呼吸は荒く、脈も早い。
服越しでもわかるほど全身から高熱を発している。
しかも、まるで内部から強烈な圧力でもかかっているかのように血管が浮き出ており、目や鼻といった粘膜から出血もしている。
香織が『浸透看破』で診察する。
「魔力暴走?摂取した毒物で体内の魔力が暴走しているの?」
「香織?何がわかったんだ?」
「うん。これなんだけど……」
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状態:魔力の過剰活性 体外への排出不可
症状:発熱 意識混濁 全身の疼痛 毛細血管の破裂とそれに伴う出血
原因:体内の水分に異常あり
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「おそらくだけど、何かよくない飲み物を摂取して、それが原因で魔力暴走状態になっているみたい……しかも、外に排出できないから、内側から強制的に活性化・圧迫させられて、肉体が付いてこれてない……このままじゃ、内蔵や血管が破裂しちゃう。出血多量や衰弱死の可能性も……『万天』!」
香織は中級の治癒魔法を使う。万天の効果は状態異常の解除だ。
「……効果が薄い……どうして?浄化しきれないなんて……それほど溶け込んでいるということ?」
「治せないのか?」
ハジメがそう聞く。
「わからない……『廻聖』!」
廻聖は一定範囲内における人の魔力を他者に譲渡する魔法だ。
それを使いこの人の余剰分の魔力を吸い出し、彼女の所持している神結晶の指輪に魔力を溜める。
「とりあえず今は大丈夫。だけど、根本的な治療は出来てないからまたその内症状が出てくると思う」
つまり香織が行ったのは症状を悪化させないための保存療法という事だ。
「この世界の病気にはあまり詳しくないけど、ユエちゃんやティオさんは何か知らないかな?」
香織がこの世界の年長者であるユエとティオに問いかける。
だが、2人とも覚えが無いのか首を傾げたり、首を横に振るだけだ。
「香織、念のため僕達も診察しておいてくれ。未知の病だというなら空気感染の可能性もあると思う。まぁ、魔力暴走ならミュウとリーニャの心配は無用だけど」
「うん、そうだね」
ハジメの言葉で香織は士郎全員を診察したが、異常は見当たらなかった。
その事に一先ずホッとしていると、先程の男が目を覚ました。
「………う」
「あっ、大丈夫ですか?」
香織が心配そうに声を掛けると、その男は香織をボーっと見つめた後、
「………女神?そうか、ここはあの世か……」
香織に見惚れた様にそう言った。
そのまま白崎さんに熱っぽい視線を向け、香織に触れようと手を伸ばし始めたのた。ハジメはそんな行為を看過することが出来ず、その男の手を『パシン!』とはたく。
「おふっ!?」
「ハ、ハジメくん!?」
(ハジメは独占欲が強いというかなんというか……ボクも人のこと言えないけど)
「まず、助けてくれた事に礼を言う。本当にありがとう。あのまま死んでいたらと思うと……アンカジまで終わってしまうところだった。私の名は、ビィズ・フォウワード・ゼンゲン。アンカジ公国の領主ランズィ・フォウワード・ゼンゲン公の息子だ」
どうやらこのビィズと名乗った男は結構な大物だったようだ。
彼の話によると、最近アンカジで流行病が広まり、倒れる人が続出。医療院は飽和状態となり、公共施設を全開放して医療関係者も総出で治療と原因究明に当たったが、進行を遅らせることは何とか出来ても完治させる事は出来なかった。
処置を受けられなかった人々の中から死者が出始め、発症してから僅か二日で死亡するという事実に絶望が立ち込める。
飲み水やオアシスを調べたところ、魔力の暴走を促す毒素が含まれていることがわかった。
治療する為にはグリューエン大火山でしか採れない静因石を使うという。
外部に助けを求める為にビィズが出たのはよかったが、護衛はサンドワームに襲われ、彼の身体にも症状が現れ始めて死にかけたところに士郎達が現れたと言う。
「……君達に、いや、貴殿達にアンカジ公国領主代理として正式に依頼したい。どうか、私に力を貸して欲しい」
そう言って、ビィズは深く頭を下げた。車内にしばし静寂が降りる。窓に当たる風に煽られた砂の当たる音がやけに大きく響いた。領主代理が、そう簡単に頭を下げるべきでないことはビィズ自身が一番分かっているのだろうが、降って湧いたような僥倖を逃してなるものかと必死なのだろう。
(アンカジにリーニャとミュウを預ける予定ではあるし、大火山にも行く……アンカジを助ける代わりのギブアンドテイクになるね……)
士郎は長考していた。早く大迷宮を攻略しなければならないこと、リーニャとミュウの安全の確保。この二つのことで悩んでいた。
「パパ……助けてあげよう?」
リーニャの懇願するような瞳に士郎は了承することにした。
「……わかりました。その依頼受けましょう。元々アンカジも大火山も行く予定だったし」
「感謝する……」
ビィズは感極まった様に涙を流した。
その後、すぐに気を取り直す。
「士郎殿が『金』クラスなら、このまま大火山から『静因石』を採取してきてもらいたいのだが、水の確保のために王都へ行く必要もある。この移動型のアーティファクトは、士郎殿以外にも扱えるのだろうか?」
「リーニャとミュウ以外は扱えるけど……わざわざ王都まで行く必要はないかな。水の確保はどうにか出来るだろうから、一先ずアンカジに向かいたい」
「どうにか出来る?それはどういうことだ?」
怪訝そうに聞くビィズに内容を説明しながら、士郎達はアンカジへと向かった。