ありふれない天の鎖の投影魔術師は世界最強   作:小説大工の源三

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最近寒くなってきましたね……今では布団が恋人です。
因みに作者は年齢=彼女いないです。


砂漠の国アンカジ

アンカジの入場門は高台にあり、そこから街が見渡せるようになっている。

アンカジの建物は乳白色で彩られており、素人目から見ても美しい都だと思った。

しかし、都は美しくても人々の活気は全く無く、建物の扉は固く閉じられており、人通りは殆どない。

ビィズは活気ある街を見せたかったと残念そうにそう言っていたが、今は一先ず問題の解決が先だという事で宮殿へ向かうことになった。

アンカジを出て一日で戻ってきたビィズに領主であるランズィは大層驚いていたが、そのランズィも衰弱している筈なのに執務室で気合いと根性で仕事に励んでいたので、よほどの人格者らしい。

そんなランズィに王国にいた王族や貴族なんかよりも好感が持てると感心した。

ビィズがランズィに事のあらましを説明し、トントン拍子で話が進んだ後、手分けして問題の解決に乗り出すことになった。

 

「それじゃあ……ボクとヴェアベルトは静因石擬きの制作。恵里、雫、シア、香織は治療院に収容されている患者の所に当たってくれ。魔晶石も持って行って、それが溜まったらユエに渡して。残りはオアシスを」

 

それぞれ手分けして、アンカジの救助に当たる。

リーニャとミュウは治療院で恵里達の所で待つことになった。

 

「ヴェアベルト、静因石の特徴を教えてくれる?」

 

「うむ、静因石は魔力を鎮める石と聞いた。生成魔法で作るのならば、魔力操作の技能を応用するのがよいだろう」

 

「なるほど……」

 

『ワタシモシラナイ……チカラニナレナイ……」

 

久しぶりに喋ったメルリアンは落ち込んでいた。

 

「私も本に載っている物しか知らない……仕方ないさ……」

 

ヴェアベルトはメルリアンの喉を撫でた。

 

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三人称ハジメside

 

「領主、最低でも二百メートル四方の開けた場所はある?」

 

「む?うむ、農業地帯に行けばいくらでもあるが……」

 

ランズィに案内され、農場に案内される。

 

「ユエ、お願い」

 

「……ん『壊劫』」

 

前方の農地に頭上に向けて真っ直ぐにつき出された右手の先に、黒く渦巻く球体が出現する。その球体は、農地の上で形を変え、薄く四角く引き伸ばされていき、遂に二百メートル四方の薄い膜となった。そして、一瞬の停滞のあと、音も立てずに地面へと落下し、そのまま何事もなかったかのように大地を押しつぶした。

凄まじい圧力により盛大に陥没する大地。地響きが鳴り響く。それは、さながら大地が上げた悲鳴のようだ。一瞬にして、超重力を掛けられた農地は二百メートル四方、深さ五メートルの巨大な貯水所となった。

ハジメがチラリとランズィ達を見ると、お付の人々も含めて全員が、顎が外れないか心配になるほどカクンと口を開けて、目も飛び出さんばかりに見開いていた。衝撃が強すぎて声が出ていないようだが、全員が内心で「なにぃーー!?」と叫んでいるのは明白だ。

魔力がなくなっな訳ではないが、かなり消耗したのでユエはハジメに噛みつき吸血する。

 

カプッ チュー

 

吸い終わるとハジメが貯水池を錬成で整地する。そして整地終了後、ユエが水魔法で水を貯める。

魔力が限界近くなると同時に雫とシアが魔晶石を持ってくる。

魔晶石から補給すると、再び水魔法を発動する。

 

「……こんなことが……」

 

ランズィは、あり得べからざる事態に呆然としながら眼前で太陽の光を反射してオアシスと同じように光り輝く池を見つめた。言葉もないようだ。

 

「取り敢えず、これで当分は保つだろう。あとは、オアシスを調べてみて……何も分からなければ、稼いだ時間で水については救援要請すればいい」

 

「あ、ああ。いや、聞きたい事は色々あるが……ありがとう。心から感謝する。これで、我が国民を干上がらせずに済む。オアシスの方も私が案内しよう」

 

ランズィはまだ衝撃から立ち直りきれずにいるようだが、それでもすべきことは弁えている様で、ハジメ達への態度をガラリと変えると誠意を込めて礼をした。

ハジメ達は、そのままオアシスへと移動する。

オアシスは、相変わらずキラキラと光を反射して美しく輝いており、とても毒素を含んでいるようには見えなかった。

 

「……ん?」

 

「……ハジメ?」

 

「今、魔眼鏡に反応があった……領主。調査チームってのはどの程度調べたんだ?」

 

「……確か、資料ではオアシスとそこから流れる川、各所井戸の水質調査と地下水脈の調査を行ったようだ。水質は息子から聞いての通り、地下水脈は特に異常は見つからなかった。もっとも、調べられたのは、このオアシスから数十メートルが限度だが。オアシスの底まではまだ手が回っていない」

 

「オアシスの底には、何かアーティファクトでも沈めてあるのか?」

 

「いや。オアシスの警備と管理に、とあるアーティファクトが使われているが、それは地上に設置してある……結界系のアーティファクトでな、オアシス全体を汚染されるなどありえん事だ。事実、今までオアシスが汚染されたことなど一度もなかったのだ」

 

「で、どんな効果なんだ?」

 

「オアシスに害意を持つ者や邪な考えを持つ者の侵入を防ぐ物だ」

 

「ほう……ティオ!」

 

幸利は何を思ったか指パッチンでティオを呼び、オアシスの結界に突撃させた。

 

「ラジャーなのじゃ!ご主人様とサンドワームプレイがしたい!」

 

バチィッ!

 

「ヴッ!」(低い声)

 

そう言って突撃したティオは最も容易く結界に弾かれた。そしてティオからは焦げ臭いにおいがした。

 

「なるほど……優秀なアーティファクトだな」

 

「我が国、自慢のアーティファクトだ」

 

「幸利、あんた……」

 

幸利は感心した。そして優花は呆れた。

ハジメはオアシスの中にペットボトルサイズの金属の塊を投げ入れる。

 

ドゴォオオオ!!!

 

凄まじい爆発音と共にオアシスの中央で巨大な水柱が噴き上がった。再び顎がカクンと落ちて目を剥くランズィ達。

 

「うーん……意外にすばしっこい……いや、防御力が高いのか?」

 

ハジメはそんなことを言いながら、今度は十個くらい同じものを取り出しポイポイとオアシスに投げ込んでいく。そして、やっぱり数秒ほどすると、オアシスのあちこちで大爆発と巨大な水柱が噴き上がった。

ハジメが投げ入れたのは魚雷である。

 

「おいおいおい!ハジメ殿!一体何をやったんだ!あぁ!桟橋が吹き飛んだぞ!魚達の肉片がぁ!オアシスが赤く染まっていくぅ!」

 

「まだ捕まらないか。よし、あと五十個追加で……」

 

ハジメの魚雷投下により、オアシスから何かが盛り上がって現れる。

現れた何かはハジメ達に向けて触手を放つ。

ハジメは銃撃でユエは氷結魔法で、優花は苦無で触手を破壊する。

 

「なんだ……これは……」

 

ランズィの呆然としたつぶやきが、やけに明瞭に響き渡った。

オアシスより現れたそれは、体長十メートル、無数の触手をウネウネとくねらせ、赤く輝く魔石を持っていた。スライム……そう表現するのが一番わかりやすいだろう。

だが、サイズがおかしい。通常、スライムといえば腕で抱えられるほどの大きさだ。しかしこの大きさはウルトラスライムとでも言うべき存在だ。それに周囲の水を操るような力もなかったはずだ。少なくとも触手のように操ることは、自身の肉体以外では出来なかったはずである。

 

「なんだ……この魔物は一体何なんだ?バチェラム……なのか?」

 

「まぁ、何でもいい。こいつがオアシスが汚染された原因だろ?大方、毒素を出す固有魔法でも持っているんだろう」

 

「……確かに、そう考えるのが妥当か。だが倒せるのか?」

 

「問題ないよ捉えたからね。でも一応ユエ、幸利お願い」

 

「……ん、任された」

 

「あいよ」

 

ユエと幸利は重力魔法を使いバチェラムの魔石を固定する。それをシュラーゲンで破壊する。

バチェラムの魔石はあまりの威力に消滅した。

 

「……終わったのかね?」

 

「はい、もう魔力反応はないです」

 

「まぁバチェラム排除したからといって、毒素が無くなったかはわからないが」

 

自分達アンカジを存亡の危機に陥れた元凶が、あっさり撃退されたことに、まるで狐につままれたような気分になるランズィ達。それでも、元凶が目の前で消滅したことは確かなので、慌ててランズィの部下の一人が水質の鑑定を行った。

 

「……どうだ?」

 

「……いえ、汚染されたままです」

 

ランズィの期待するような声音に、しかし部下は落胆した様子で首を振った。オアシスから汲んだ水からも人々が感染していたことから予想していたことではあるが、オアシスバチュラムがいなくても一度汚染された水は残るという事実に、やはり皆落胆が隠せないようだ。

 

「まぁ、そう気を落とすでない。元凶がいなくなった以上、これ以上汚染が進むことはない。新鮮な水は地下水脈からいくらでも湧き出るのじゃから、上手く汚染水を排出してやれば、そう遠くないうちに元のオアシスを取り戻せよう」

 

ティオが慰めるようにランズィ達に言うと彼等も、気を取り直し復興に向けて意欲を見せ始めた。ランズィを中心に一丸となっている姿から、アンカジの住民は、みながこの国を愛しているのだということがよくわかる。過酷な環境にある国だからこそ、愛国心も強いのだろう。

 

「……しかし、あのバチュラムらしき魔物は一体なんだったのか……新種の魔物が地下水脈から流れ込みでもしたのだろうか?」

 

気を取り直したランズィが首を傾げてオアシスを眺める。それに答えたのはハジメだった。

 

「おそらくだけど……魔人族の仕業じゃないかな?」

 

「確かに……ウルやオルクスにも襲撃されたからな……魔人族も何かあったんだろうな……」

 

幸利は魔人族が関わった件に遭遇した場所を思い出す。

ウルでは畑山愛子を狙い、オルクス迷宮に関しては士郎から聞いた話だが、勇者一行を襲ったのはついででオルクス迷宮の攻略をしていたらしい。それをランズィに話す。彼は低く唸り声を上げ苦い表情を見せた。

 

「魔物のことは聞き及んでいる。こちらでも独自に調査はしていたが……よもや、あんなものまで使役できるようになっているとは……見通しが甘かったか」

 

「仕方ないと思うわ……王都でも新種の魔物の情報が出てなかったもの。それにこの事はかなり最近起きたし」

 

「いよいよ、本格的に動き出したということか……ハジメ殿……貴殿達は冒険者と名乗っていたが……そのアーティファクトといい、強さといい、やはり恵里殿と同じ……」

 

ハジメが、何も答えず肩を竦めると、ランズィは何か事情があるのだろうとそれ以上の詮索を止めた。どんな事情があろうとアンカジがハジメ達に救われたことに変わりはない。恩人に対しては、無用な詮索をするよりやるべき事がある。

 

「……ハジメ殿、幸利殿、ユエ殿、優花殿、ティオ殿。アンカジ公国領主ランズィ・フォウワード・ゼンゲンは、国を代表して礼を言う。この国は貴殿等に救われた」

 

そう言うと、ランズィを含め彼等の部下達も深々と頭を下げた。領主たる者が、そう簡単に頭を下げるべきではないのだが、ハジメ達が『神の使徒』の一人であるか否かに関わらず、きっと、ランズィは頭を下げただろう。ほんの少しの付き合いしかないが、それでも彼の愛国心が並々ならぬものであると理解できる。だからこそ、周囲の部下達もランズィが一介の冒険者を名乗るハジメ達に頭を下げても止めようとせず、一緒に頭を下げているのだ。この辺りは、息子にもしっかり受け継がれているのだろう。仕草も言動もそっくりである。

そんな彼等に、ハジメと幸利はニッコリと満面の笑みを見せる。

 

「そうだね、たっぷり感謝してね」

 

「今回の恩は絶対に忘れるなよ?」

 

思いっきり恩に着せた。それはもう、清々しいまでに。ランズィは、てっきり「いや、気にしないでくれ」等と言うと思っていたので、思わずキョトンとした表情をしてしまう。別にランズィとしては、救国に対する礼は元からするつもりだったので、それでも構わなかったのだが、まさか、ここまでド直球に来るとは予想外だった。

 

「アンタ達……」

 

優花は呆れた顔をまた作っていた。

すると向こう側から白緑色の髪を靡かせながら士郎が飛んで来た。手には袋が握られており、おそらくその中に静因石擬きが入っているのだろう。

 

「おーい、静因石擬きを作ったけどこれで大丈夫かな?」

 

士郎はそのまま降りて、袋の中から石ころ一つハジメに手渡す。ハジメはその石ころに鉱物鑑定をかける。

 

=====================================

 

魔力抑制石

魔力の暴走を抑圧することができる。

あくまでも抑圧させるだけなので、鎮める事はできない。それでも1ヶ月は余裕で抑えることができる。

 

=====================================

 

「これなら充分かな……延命措置にしかならないけど……」

 

「いや、これで患者にも希望が持てる!ありがとう士郎殿!」

 

ランズィは士郎にも頭を下げた。

 

「どういたしまして。それで静因石はどれくらい取っておけば?」

 

ランズィは士郎に静因石の必要数を話す。

一方で治療院では、香織が回復魔法、恵里が闇魔法の応用で患者の症状進行を抑え、雫とシアがその力を持って、患者を運んでいく。

そして袋の中に入っている大量の魔力抑制石を持った士郎が治療院にやってきた。

 

「恵里、静因石擬きを作って持ってきた。これで1ヶ月は持つ」

 

「ホント!流石お兄ちゃん!香織!これを患者に使って!」

 

「うん!士郎さんありがとう!」

 

袋に入っている大量の魔力抑制石を軽々持っていく香織。一応言っておくが、あの袋はかなりの重さになっている。普通なら車や重機で運ぶような重さだ。それを軽々持っていく彼女も怪力だということだ。

魔力抑制石を服用した患者達は全員、安定を取り戻した。

しかしこれは最低でも1ヶ月しか持たないということ。

そして大火山の攻略をすることになったが幼女2人は預かり施設で預かられることになった。もしものことが有れば2人が着けている腕輪が防御結界を展開し、さらにはLB○が危害を加えた者に制裁を与えることになっている。さらに士郎のゴーレムも配置されている。しゃべる事はないが戦闘力なら奈落の底の中層あたりなら勝てるほど強い。

因みに用意したLB○は戦闘機に変型するのと二刀流の機体が三機、槍の機体と狙撃型が二機となっている。

 

「2人とも良い子で待っててね」

 

「早く帰って来れるよう頑張る」

 

「わかったよパパ」

 

「パパも頑張ってなの!」

 

幼女2人の声援を受けて士郎達は大火山に向けて、ブリーゼを走らせるのだった。




原作と違い幼女以外全員参加することになりました。
これも士郎くんの行動と、ヴェアベルトの知恵のおかげですね!
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