ありふれない天の鎖の投影魔術師は世界最強   作:小説大工の源三

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過去の真実

「けほっけほっ……!」

 

「ふう……恵里、大丈夫?」

 

「うん……なんとか……他のみんなは?」

 

「わからない……おそらく水流に呑まれてはぐれたと思う」

 

「そっか……」

 

二人は当たりを見回す。そこにハジメ達はおらず、波が岩礁に打ち付けられているだけだった。

水流が流される時、色々となんとかしようとしたのだが、ランダムな流れだったりでうまく集まることができなかったのだ。そのため、念話で近くにいる人と手を繋ぐように指示をした。

ハジメは香織、ユエと、雫はシアと、幸利は優花、ティオ、ヴェアベルトと。

士郎は雫達と繋ごうとしたのだが、遠く離れていて、恵里としか繋ぐことは出来なかった。鎖を使おうにも激流でコントロールが出来なかったのだ。

 

「とりあえず、先に進もうか」

 

「うん。ここにとどまっても何も無いしね」

 

二人ははぐれた仲間たちを探す為に歩き始めた。

しばらく歩いていると、座礁した船があった。それも大量に。

 

「まるで船の墓場だな……」

 

「戦争でもあったのかな……」

 

「それにしても戦艦ばかりだ……」

 

「でも、あそこ。豪華な客船……」

 

しかし砲門がある訳ではなかった。

おそらく魔法を大砲代わりににしているのだろう。

そして、その推測は、士郎達が船の墓場のちょうど中腹に来たあたりで事実であると証明された。

 

──うぉおおおおおおおおおおおおおおお!!!!

──ワァアアアアアアアアアアアアアアア!!!!

 

「ッ!?なんだ!?」

 

「お兄ちゃん!周りがっ!」

 

突然、大勢の人間の雄叫びが聞こえたかと思うと、周囲の風景がぐにゃりと歪み始めた。驚いて足を止めた士郎達が何事かと周囲を見渡すが、そうしている間にも風景の歪みは一層激しくなり──気が付けば、士郎達は大海原の上に浮かぶ船の甲板に立っていた。

そして、周囲に視線を巡らせば、そこには船の墓場などなく、何百隻という帆船が二組に分かれて相対し、その上で武器を手に雄叫びを上げる人々の姿があった。

 

「な、なんじゃこりゃ……」

 

「お兄ちゃん……これどういうこと……?」

 

士郎も恵里も度肝を抜かれてしまい、何とか混乱しそうな精神を落ち着かせながら周囲の様子を見ることしかできない。

そうこうしている内に、大きな火花が上空に上がり、花火のように大きな音と共に弾けると、何百隻という船が一斉に進み出した。士郎達が乗る船と相対している側の船団も花火を打ち上げると一斉に進み出す。

そして、一定の距離まで近づくと、そのまま体当たりでもする勢いで突貫しながら、両者とも魔法を撃ち合いだした。

士郎達の乗る船にも火炎弾が飛んでくる。試しにハジメ製の銃を撃つのだがそのまますり抜けていく。

 

「なにっ?!」

 

次に熾天覆う七つの円環で防ごうとする。それは問題なく防げる。

 

「……ん?」

 

「お兄ちゃん、これって」

 

どうやら魔力で作られた物なら防げることに2人は気づいたようだ。士郎は銃剣の干将・莫耶で魔力弾を狙撃すると消滅した。

 

「魔力が込められていれば防げるみたいだね……」

 

「じゃあ杖に魔力を込めたらいける?」

 

「たぶんねただの幻覚ってやつじゃ無さそうだ……」

 

さらにこちらに気づいた者に攻撃されたものの投影品や魔力を込めた攻撃で倒していく。

 

「お兄ちゃん、これどうしたら終わると思う?」

 

「出口を探すか、この戦いを終わらせるくらいだよねぇ……」

 

「出口なんてどこにあるかわからないし、倒していくしかないね……」

 

「それだとちまちま倒していくのは面倒だね……赤原猟犬は血がないと追尾しないし……」

 

「これ、攻撃魔法じゃなくても良さそう……『堕落識』!」

 

恵里は闇属性魔法の『堕識』の広範囲版を唱える。範囲内にいた人が消滅していく。

 

「なるほど直接作用できる幻覚みたいなものか……『禍界』!」

 

士郎は前方180°の重力場を発生させる。

消費魔力は範囲の大きさによって異なるが、攻撃用でもないのであまり消費しない。

すると士郎後ろから狂ったような叫び声がこちらに向かってくる。

 

「全ては神の御為にぃ!」

 

「エヒト様ぁ!万歳ぃ!」

 

「異教徒めぇ!我が神の為に死ねぇ!」

 

そこにあったのは狂気だ。血走った眼に、唾液を撒き散らしながら絶叫を上げる口元。まともに見れたものではない。

相対する船団は、明らかに何処かの国同士の戦争なのだろうと察することが出来るが、その理由もわかってしまった。これは宗教戦争なのだ。よく耳を澄ませば、相対する船団の兵士達からも同じような怒号と雄叫びが聞こえてくる。ただ、呼ぶ神の名が異なるだけだ。

 

「ヒッ……」

 

恵里はその光景を目にすると、視界にノイズが走る。

 

『ここにいやがったなぁ……へへへ……あの女もチョロいぜ……』

 

『今すぐお前を犯さねぇと気がすまねぇ!だから犯させろぉぉぉぉお!』

 

過去に自身を襲ってきた男の姿がフラッシュバックし、発動している魔法を解除してしまった。

 

「いや……いやぁ……嫌ぁぁぁぁぁぁあ!」

 

「恵里!?」

 

遂には耐えきれなくなり、しゃがみこんでしまった。

士郎は振り向き様に風爪を放ち、叫び声をあげる人を消す。しかしまだ襲ってくる人は多数いるので恵里を抱き締めながら空力で空に浮かぶ。

大地龍は地面がないと使えない。

 

「恵里、しっかりして……ここにアイツはいないし、アイツは二度と日の目を見ることはないから……」

 

士郎はそのまま中に浮きながら恵里の抱き締めながら背中をさする。震えていた身体は段々と落ち着きを取り戻していった。

 

「うん……………もう大丈夫……ありがとうお兄ちゃん」

 

「よかった……」

 

そうして再び殲滅を始めて、1時間ほどで2つの艦隊は壊滅したのだった。

 

─────────────────────────

 

最後の兵士達を消滅させた直後、再び、周囲の景色がぐにゃりと歪み、気が付けば、士郎達は元の場所に戻っていた。

 

「どうやら殲滅が正解だったね」

 

「うん……これって、この船の墓場と何か関係あるのかな……」

 

「迷宮には何かコンセプトがあるから、たぶん今のは過去にあった宗教戦争で、コンセプトは狂った神の悲惨さを知れってことだと思う」

 

「なるほど……ああ〜怖かった!」

 

一気に息を吐き出す。

 

「気持ち悪かったな……」

 

「うん……」

 

「吐き気とかはない?」

 

「大丈夫、フラッシュバックでそれどころじゃなかったよ……」

 

「ならあの船に行ってみようか……」

 

一番遠くに鎮座する最大級の帆船へと進んでいく。

 

 

─────────────────────────

 

幸利side

 

「ふぅ……なんだったんだありゃ……」

 

「この廃船からするに過去にあったことみたいね……」

 

「なるほど……この迷宮のコンセプトは狂った神の悲惨さを知ることのようじゃな」

 

3人が迷宮の幻覚の一つを乗り越え、考察をしている中、1人落ち込んでいる者がいた。

 

「やはり、全種族が手を取り合うことはできぬのか……いや、それだと雪原の迷宮で説明されたことが嘘になる……」

 

「ヴェアベルト?……どうしたんだよヴェアベルト」

 

「っ!……すまない、なんでもない……訳ではないな。全種族が手を取り合うことはできないのかも知れないと思ってしまってな……」

 

ヴェアベルトは自身の掲げている目標を達成することが不可能なのではないかと、思い込んでいるようだ。

 

「そうか……それはねーんじゃねぇか?」

 

しかし幸利はそれを否定した。

 

「?……どういうことだ?」

 

「だってよ……それができないなら、俺たちとお前が仲間になってないだろ?」

 

その一言に、ヴェアベルトの不安は少し軽くなった。

 

「……ふっ……そうだな。私は諦めない……(■■■■)……絶対、和平を結んで見せる」

 

そう言ってヴェアベルトは覚悟を決め、メルリアンを巨大化させ、遠くの船に飛ぶ。その船の全長は300メートル以上でそこかしこに装飾が施されている。

そのままテラスに降り立つと、案の定、空間が歪む。

 

「また、どうせ碌な光景じゃねぇだろうな」

 

「そうね……ミレディといいメルジーネといい、女性の試練はまともなのないのかしら」

 

「この後行くであろうハルツィナも女性らしいからのぉ……相応の覚悟をしておいた方が良さそうじゃな」

 

そう話しているうちに景色の変化が終わり、今度は海の上に浮かぶ豪華客船の上に立っていた。

時刻は夜で、満月が夜天に輝いている。豪華客船は光に溢れキラキラと輝き、甲板には様々な飾り付けと立食式の料理が所狭しと並んでいて、多くの人々が豪華な料理を片手に楽しげに談笑をしていた。

 

「パーティー……だよね?」

 

「みたいだな。随分と煌びやかだが……メルジーネのコンセプトは勘違いだったか?」

 

「いや、今の時代に至るまでの何かがあるんだろうな……この後にどんでん返しがあるだろうな……」

 

予想したような凄惨な光景とは程遠く肩透かしを喰ったような気になりながら、その煌びやかな光景を、4人は見下ろす形で眺めていた。

聞き耳を立てて見れば楽しげな話し声が聞こえてくる。中を覗けば、種族関係なく仲良さげに談笑していた。

 

「このような時代もあったのだなぁ……」

 

「神がこれを乱したんだろうな……」

 

「やっぱエヒトに敵意しか湧かないわね……」

 

そして予想通り、狂信者であろう人族の国王らしき人物が人族以外の種族の殺害を命じる。しかも最初イシュタルがエヒトを見上げるように恍惚とした表情でだ。

人族の国王が入った部屋に入るとそこは真っ暗だった。

さらにケタケタケタと笑い声が聞こえてくる。

 

「ゾンビぃ……」

 

「これ香織ダメなやつね」

 

「大暴走してなきゃいいが」

 

「む?香織はこういったものが苦手なのか?」

 

「ああ、ホラーものが嫌いって大分前に言っててな……」

 

「杖だの銃だのをぶっ放してなければいいが……」

 

その後何事もなく幸利達は暗闇を抜けるのだった。

 

 

 




今回はまぁトータスであった過去を追体験する話でした。
エリリンが狂気にまみれた人を見てトラウマが呼び起こされてしまったり、ヴェアベルトが何故ここまで全種族の共存を望むのかの理由の一端の一端が明らかになりました。
なんか幸利くん変わり過ぎてないか?
あとブチャラティはエヒトに対してブチギレそう。
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