ありふれない天の鎖の投影魔術師は世界最強   作:小説大工の源三

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悪食討伐戦

幸利達side

 

暗闇を抜けた先には魔法陣があり、そこに足を踏み入れるとどこかに転移した。

転移した先は神殿のような支柱が立っており、祭壇らしき場所に魔法陣が描かれていて、そこに幸利達が立っていた。

 

「……これで終わりか?」

 

「あっけなかったわね……こう、もっとやばいの来るのかと思ったわ……」

 

「ふむ……今回の試練は信仰か強い者だと達成するのが難しいやつじゃな」

 

「あとは迷宮に入るのも困難だろうな……今回はハジメ殿の潜水艇があったから良いものの……」

 

すると足音がこちらに近づいてきた。敵かと思い身構えたが、姿が明らかになったことですぐに警戒を解く。

 

「3番目は幸利達だったんだね」

 

「後は士郎さんと恵里ちゃんだけだね」

 

足音の正体はハジメと香織だった。

 

「3番目?ハジメ達の後は雫とシアかしら?」

 

「うん。僕と香織とユエの後に雫とシアがそこの魔法陣から出て来たからね」

 

「最初にクリア出来なかったのは残念だな」

 

と少し悔しがる様子を見せる幸利だった。

幸利達が魔法陣から出て、しばらくすると士郎と恵里が幸利達と同じように魔法陣から出てくる。しかし出てきた様子が少しおかしかった。

士郎の腕にべったりくっついている恵里とそれを苦笑いで受け止める士郎の姿だった。

 

「……恵里どうしたの?そんなに士郎さんにべったりくっついて」

 

「あ、雫にシア。実はね……」

 

魔法陣から出てくる前の出来事を恵里が話し始めた。

 

─────────────────────────

 

人間側の国王が教皇のように痛々しいトリップをしてそれ以外の種族を攻撃したあと、空間が歪み元いた場所に戻ってきた。

 

「……これが……この世界で起きた戦争の顛末なんだね」

 

「みたいだね……クソ神は早めに処理したい……もしかしたら地球にも干渉してきそうだし」

 

「うぇ〜……それはやだなぁ……義父さんや義母さんとかに何かあるのはやだだよ……」

 

そこから先に進むと何やら白くヒラヒラしたものがライトに照らされる。その正体は女の子だった。白いドレスを着て廊下に立っていた。

 

「うわっと……幽霊……香織がダメなやつだ……」

 

「『投影・開始(トレース・オン)』ほいっ!」

 

士郎は適当な剣を投影して幽霊に投げつける。しかし女の子がべしゃんと倒れ込みそのままその後ろに剣は飛んでいった。そしてそのまま女の子はありえない方向に曲がる。そしてそのまま蜘蛛のようにこちらに走り出してきた。

 

ケタケタケタケタケタケタケタケタ!

 

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁあ!」

 

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁあ!」

 

あまりの不気味さに2人は悲鳴をあげてしまう。そして士郎は飛び出してその頭を思いっきり蹴飛ばす。しかも豪脚と魔力を纏わせて。蹴飛ばされた幽霊は天井にビタン!と叩きつけられた後そのまま床にバウンドして奥に消えていった。

 

「はぁ〜驚いた……蹴飛ばしたけど……気持ち悪かった……」

 

「寿命がちょっと縮んだかも……」

 

「香織が暴走してないといいけどね……」

 

「多分地球組のみんなが同じ事考えてるよ」

 

そう言いながら先に進む。

どんどんと霧が濃く深くなっていく。そして霧の中から剣を持った男が現れる。士郎は指から魔力弾を放ち、脳天を撃ち抜く。恵里も杖で魔力弾を放ち倒していく。中には拳で襲いかかってくるのもいた。

 

「ふう、これで全部かな?」

 

「そうだね。先に進もっかお兄ちゃん」

 

そう言う恵里の額に指を突きつける士郎。突然の行動に戸惑いの表情を作る。

 

「お、お兄ちゃん?何してるのかな?」

 

「お前は誰だ?恵里の身体に入って何をしてる?」

 

「何言ってるの?!」

 

恵里の問いかけにも答えず指を突きつけたままだ。

士郎の解析眼には恵里の身体に重なるようにしてとり憑いている女の亡霊のようなものが映っていた。正体がバレていると悟ったのか、戸惑いの表情から一転して、ニヤニヤし始める。

 

「ウフフ、それがわかってもどうする事も出来ない……もう、この女は私のものッ!?」

 

そう話しながら、士郎に襲い掛かろうとしたのだが、顔を掴まれ、持ち上げられる。

 

「まてっ!なにをするの!この女は、あんたの女!傷つけるつもりッ!?」

 

「何言ってんだ?お前は恵里じゃない。お前だけを魔力弾で傷つけるだけだ」

 

「私が消滅すれば、この女の魂も壊れるのよ!それでもいいの!?」

 

「それがハッタリじゃないとしても、この破戒すべき全ての符(ルールブレイカー)でお前を剥がせば良いだけだ。人の大切な人に入り込んだんだ……それ相応の覚悟をするんだな」

 

士郎は殺気を込めて破戒すべき全ての符を投影し、肩に突き刺す。恵里の身体から幽霊が抜け出てくる。

 

「そのまま死ね……!」

 

『待っ……!』

 

銃剣の干将・莫耶を投影して数発、撃ち抜き消滅していった。

 

「……うん……お兄ちゃん?」

 

「どこか違和感とかない?」

 

「……うん、ありがとう……」

 

そう言って士郎の腕に抱きつく。

 

「……やっぱり、お兄ちゃんの腕は落ち着くなぁ……」

 

そのまま魔法陣の中に入って行った。

 

 

─────────────────────────

 

「……という感じなんだ」

 

「愛されてるわね恵里」

 

「えへへ〜……そうだ、ハジメ、ユエ。香織はどうだった?暴走してた?」

 

恵里がハジメに幽霊エリアでのことを聞く。

 

「えっとね……その……」

 

「……ん。香織無双だった。襲いかかる幽霊を杖と銃で次々と倒していった」

 

言い淀むハジメだったが、ユエがはっきりと答える。

 

「ちょっとユエってば……もう……ハジメ君も何か言ってよ……」

 

照れたように香織は顔を俯かせる。ハジメもハジメで事実だったので否定することもしなかった。

 

「神代魔法の魔法陣はと……あそこだね……」

 

全員が魔法陣に入ると攻略道中の記憶を確認するのか、それぞれが見た情報を共有するようだ。

記憶の確認も終わり全員が攻略者として認められ、士郎達の脳内に新たな神代魔法が追加された。

 

「ここでこの魔法……大陸の端と端じゃないか……解放者め……」

 

「……見つけた『再生の力』」

 

「絶対わざとだろ……ここにあるとか……」

 

今回手に入れた神代魔法はハルツィナ樹海で必要になる。それをこんなところに置くので、意図的になものだと思ってしまう。

すると魔法陣の輝きが薄くなると人型の光が現れる。

どうやら、オスカー・オルクスと同じくメッセージを残したらしい。

人型は次第に輪郭をはっきりとさせ、一人の女性となった。祭壇に腰掛ける彼女は、白いゆったりとしたワンピースのようなものを着ており、エメラルドグリーンの長い髪と扇状の耳を持っていた。どうやら解放者の一人メイル・メルジーネは海人族と関係のある女性だったようだ。

彼女は、オスカーと同じく、自己紹介したのち解放者の真実を語った。おっとりした女性のようで、憂いを帯びつつも柔らかな雰囲気を纏っている。やがて、オスカーの告げたのと同じ語りを終えると、最後に言葉を紡いだ。

 

『……どうか、神に縋らないで。頼らないで。与えられる事に慣れないで。掴み取る為に足掻いて。己の意志で決めて、己の足で前へ進んで。どんな難題でも、答えは常に貴方の中にある。貴方の中にしかない。神が魅せる甘い答えに惑わされないで。自由な意志のもとにこそ、幸福はある。貴方に、幸福の雨が降り注ぐことを祈っています』

 

そう締め括り、メイル・メルジーネは再び淡い光となって霧散した。直後、彼女が座っていた場所に小さな魔法陣が浮き出て輝き、その光が収まると、そこにはメルジーネの紋章が掘られたコインが置かれていた。

 

「証の数も四つですね、士郎さん。これで、きっと樹海の迷宮にも挑戦できます。父様達どうしてるでしょう~」

 

「他の兎人族も巻き込んで強くなってたりしてね……」

 

「「「「「「…………」」」」」」

 

「ねぇ、なんでみんな黙るの?」

 

「いや、ありえそうだと思ったから……」

 

「むしろやばいことになってなければなんもねぇよ……」

 

そうだなぁ……とハウリアに出会った地球組は思った。

突然、神殿が鳴動し、周囲の海水がいきなり水位が上がる。

 

「強制排出か!みんな!」

 

ハジメが潜水艇を取り出す暇もないと考え、士郎は地面からかなり長めの鎖を作り出し、全員に巻きつける。ハジメも同じ事を考え、酸素ボンベを宝物庫から取り出す。

天井部分が開き、そこに勢いよく海水が流れ、全員がそこに流れ込む。そして、遺跡の外──海中に放り出される。

ハジメが潜水艇を取り出し、乗り込もうとしたのだが、半透明の触手が潜水艇を弾き飛ばす。

 

『ユエ!』

 

『『凍柩!』』

 

ハジメが念話でユエに指示すると同時にヴェアベルトも氷魔法を使う。

 

『30秒くれ!そしたら空間魔法で一気に外に出る!』

 

士郎が魔力を練り始める。

魔法組は氷魔法で障壁を、炎魔法で触手を焼き、重力魔法でクリオネに圧をかける。

ハジメは魚雷を連射する。

 

『くっそ!再生速度が早すぎる!』

 

『焼いても焼いてもキリがないわよ!』

 

『魔力を分解する性質が特に厄介過ぎる……ここではメルのブレスが使えん……』

 

炎魔法が有効打なのは分かっているのだが、海中ではそこまで効果が出ない。

 

すると士郎が目を見開く。

 

『みんな準備できた!行くよ!』

 

そうして開いたゲートに飛び込み、出た先は上空百メートルほどの高さだった。

ティオの竜化とメルリアンの巨大化で全員を拾い上げる。

 

「ふう……助かったですぅ……」

 

「とにかくティオ上に逃げてくれ……」

 

『承知したのじゃ』

 

海面から一気に離れる。しかしそれを逃すまいと巨大な津波に呑み込まれる。その際に香織とユエが結界を張る。

 

「また海中に逆戻りか……」

 

「なんとかあのクリオネを一気に焼き尽くせれば良いんだけど……それを作る時間は……」

 

「時間が……足りないね……私の聖絶でも稼げて数十秒……ユエと合わせても1分強が限界だね……」

 

結界を維持する香織がクリオネの魔力分解の時間を計算する。

それでもハジメは限界突破のオーラを纏いながら武器制作に専念する。

時間が欲しいと切に願ったその時、士郎の脳内に聞き覚えのある声が聞こえた。

 

『よう、シロ坊苦戦してるみたいだな。おっちゃんが手助けしてやるぜ』

 

『この声って……リーさん!?』

 

『おうよ!シロ坊の友、リーさんだ』

 

かつてフューレンの水族館で出会った人面魚のリーマンだった。

突然、銀色の巨大な影が横合いから巨大クリオネに体当たりをぶちかました。大口を開けてまさに捕食態勢だった巨大クリオネは、完全な不意打ちを受けて吹き飛ばされ、押しやられていく。

 

『シズクの嬢ちゃんにシアの嬢ちゃんも息災か?』

 

『久しぶりね……』

 

『ふぇ!?えっと、は、はい!健康ですぅ!』

 

『そりゃ、重畳。で、そこの坊主は何ぼさっとしてやがる。あと三分ありゃあ、悪食をどうにか出来んだろ?やること、さっさとやりな。そう長くは持たないぜ?』

 

『あ、うん……ありがとう。』

 

ハジメは武器制作に戻る。

銀色の巨大な影は、巨大クリオネに特攻したり、攻撃をかわしたりして時間を稼いでいる。どうやら、銀色の影の正体は、魚群のようだ。それも魔物などではなく、ただの魚だ。ただの魚でも数万、あるいは数十万匹という数が揃えば、怪物相手でも時間稼ぎくらいは出来るらしい。物凄い勢いで数を減らしているので、確かに、そう長くは保たないだろうが。

なぜ、ここにリーマンがいるのか、その疑問を顔見知りらしいからと無理やり前に出されたシアが代表して聞く。

 

『あ、あのリーさん?でいいですか?えっと、一体何がどうなっているんですか?』

 

『ふん、別にどうってことはねぇ。この近くを適当にぶらついていたら、でっけぇ上に覚えのある魔力を伴った念話が聞こえたもんでよ。何事かと駆けつけてみりゃあ、シロ坊が悪食に襲われてるじゃねぇか。色々疑問はあったが、友の危機だ。何もしないなんて男の恥ってもんよ』

 

「えーと、あの魚群は……それに悪食?」

 

『悪食ってのは、あれのことだ。遥か昔、太古から海に巣食う化け物…いや、天災ってやつよ。魔物の祖先なんて言われてたりもするな。あの魚の群れは、俺の能力で誘導したんだよ。俺達の種族が使う念話には、普通の海の生物をある程度操る能力があるんでな』

 

驚愕の事実が発覚した。人面魚リーマンは魚使いだったらしい。と、リーマンの話が終わったタイミングで魚群がほぼ壊滅し、巨大クリオネが再びハジメ達に向かって大口を開けながら襲いかかってきた。

だが、尊い犠牲の上に稼がれた時間は……きっちり三分。

通常のものより大きい魚雷群がハジメ達を囲む聖絶の周囲に整然と展開された。その数は凡そ百二十。そして、不敵に笑うハジメの周囲には同数の円環が浮かんでいる。

ハジメは手元の感応石を起動すると、一斉に魚雷群を射出させた。百二十もの魚雷が気泡の線を引きながら高速で大口開ける巨大クリオネに向かって突貫する。しかし、ただの魚雷では、爆発したところで巨大クリオネの体を四散させるだけで、実質的なダメージもなく直ぐに再生されてしまうだろう。

さらに続けてフラム鉱石が液状化したタールを円環に大量に投下する。

円環を通ったタールは魚雷群の元に現れ、クリオネを黒く染め上げる。

分離して逃げようとするもののユエとヴェアベルトの氷魔法、ティオのブレスに幸利の重力魔法、士郎の空間魔法により動きを妨害される。

 

「城炎!」

 

タールをぶち込んだ際にやることを理解していた優花がタールに向かって炎魔法を放ち一気に炎上、大爆発。赤い炎に内側からクリオネは焼かれて灰になっていった。

 

「お兄ちゃん……」

 

解析眼にはクリオネの存在を示すものは写らなかった。

 

「悪食の討伐完了……みんなお疲れ様」

 

一気に疲れが来たのかハジメは結界内で片膝をつく。限界突破の赤いオーラも消えている。

 

「ふぅ……」

 

「大丈夫、ハジメ君?」

 

「魔力切れだね……」

 

「えぐい殺し方をする。ゾクゾクしたのじゃ」

 

『よお、シロ坊。爆破するってんなら言ってくれよ。危なかったじゃねぇか』

 

『ごめん。あれ殺すのことしか頭になかった』

 

『まぁ悪食、殺ろうてっんなら仕方ないか。何はともあれ見事だったぜ』

 

『リーさんが来てくれなかったら、本当不味かったよ……ありがとう』

 

『どういたしましてだ。まぁ、仁義を貫いただけさ。気にするな』

 

『漢だね……流石リーさんだ。ここに居てくれた偶然にも感謝だよ』

 

『シロ坊、積み重なった偶然は、もはや必然と呼ぶんだぜ?おっちゃんがお前さんに助力できたのも必然、こうして生き残ったのも必然さ』

 

ニヤリと笑うおっさん面の魚と同じくフッと口元を緩める士郎。何かが通じ合っている二人に、背後の数人がヒソヒソと話している。

 

「おい、ハジメ……あれがイケおじとの男の友情ってやつか……」

 

「男子の誰もが一度は憧れる関係だね……羨ましいなぁ……」

 

「お兄ちゃんが異世界でできた友達がシー○ン……なんだか頭が混乱してきたよ……」

 

「前もあんな感じでしたよ。ガールズトークならぬボーイズトークってやつですかね?まぁ、相手はおっさんですが……」

 

『じゃあ、おっちゃんはもう行くぜ。シロ坊。縁があればまた会おう』

 

『ああ。リーさんも元気で』

 

互いに一つ頷くと、リーマンは踵を返した。しかし、少し進んで振り返ると、雫とシアに話しかけた。

 

『嬢ちゃん達、ライバルは多そうだが頑張れよ。子供が出来たら、いつか家の子と遊ばせよう。カミさんも紹介するぜ。じゃあな』

 

それだけ言い残すと、今度は振り返らずに、そのまま大海へと消えていった。

後に残ったのは……

 

 「「「「「結婚してたのかよぉーーー!!」」」」」

 

『ダメオヤジ……』

 

「メル、それ以上はいけない」

 

まさかの妻子持ちだとは思わなかった。

そう聞くと風来坊からメルリアンの言ったダメ親父にしか見えなくなってしまった。




皆さんお久しぶりです。ゲンさんこと異次元の若林源三です。
コロナワクチン3回目も終わり副作用で大変でしたが私は元気です。
なんか4回目の話が上がってると母から聞いて内心『もう射ちたくねぇ』と思いました()
FGOではBOXイベントが始まりました。前イベで引いたネモくんとジュナオの宝具が火を吹くゼェ。
今回は原作からのあまり変化はないですね。
士郎がリーさん助けて友情の向く相手が変わったくらいです。
それではいつになるかわかりませんがまた次回。
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