ありふれない天の鎖の投影魔術師は世界最強 作:小説大工の源三
仕事を覚えることなどの準備で慌ただしくなり、執筆の時間が取れずにいました……
更新ペースがかなり落ちるかもしれません……
母子との約束と異端者認定
メルジーネ海底洞窟の攻略を終えて、士郎達はエリセンまで戻り、数日を過ごしていた。本来ならば、すぐにでも出発したかったのだが、ハジメとミュウが中々離れられないのである。
ミュウはハジメが離れてしまうのを直感で感じているのか、無言の懇願で中々言い出せずにいる。
リーニャには一度エリセンに預けて、全てが終わったら迎えに行くと伝えている。
「パパ、ママ、お姉ちゃん達、起きて。朝だよ」
「……おはよう、リーニャ……」
士郎に馬乗りになりながら身体を揺すって起こそうとする。かなり広めのベッドに寝ていて、士郎と恵里の間にリーニャが寝ている。
リーニャに起こされた士郎達は顔を洗って、着替える。
朝食を済ませて、今日は何をするか考える。
ここ数日は空間魔法と再生魔法の習熟に費やした。偽・螺旋剣には空間魔法をきちんと付与し、空間を抉る力を強化した。
エリセンは海の幸が多いので、幸利と優花の作る海鮮料理がとても美味しい。エリセンの料理人も教えを乞いに来ていたのは全員が驚いていた。
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キュー○ー3分○ッキングのOP
「はい、久しぶりに俺たち清水幸利と園部優花によるお料理のお時間となりました」
「今回作っていく料理はアクアパッツァよ」
「まずはアイザリー貝を1〜2時間ほど塩水に付けておくわ」
「で、その1〜2時間ほど経過したのがこれだな。これを流水でよく洗って別の場所に置いておく」
「次にカタライドの切り身をキッチンペーパーで水分をとって塩胡椒をふる」
「そしたらアタマトのミニサイズを半分に切って、スメズはいしづきを切り落としてバラバラにしてマッスルーミーは水気をきって、パセリをきざんでおく。これで下準備が完了だな」
「ええ。次は熱したフライパンにカタライドとニギンニギュを入れたらを両面こんがりなるように焼いていくわ」
「ホントハジメのアーティファクトは便利だな…」
「さっき下準備したものと調味料を順番に煮ていくわ」
少女調理中〜
「15分くらい経過したら皿に盛り付けてパセリ、粗挽き胡椒をふりかけて完成よ!」
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幸利と優花のアクアパッツァを食べ終えた士郎達は、海で遊んでいる。
士郎は恋人達の水着にしばらく見惚れてしまい、鼻から血を垂れ流していた。
「お兄ちゃん?」
「ごめん……みんなの水着が……綺麗すぎて……鼻血が……」
「やりました!わたし達の水着で士郎さんを悩殺できたですぅ!」
「それよりも大丈夫?ボタボタ出てるけど……」
「ちょっと待っててね……よし!治った!」
大量に溢れ出る鼻血を完全なる形で止血する。
下を見ると相当出血していたのか大きな血溜まりができていた。戦闘も行っていないのに、この出血量はおかしい。
そして今はミュウとリーニャを海中で追いかける、変則的な鬼ごっこをしている。
海人族の特性を活かし、逃げ回るので、鬼役は中々捕まえることが出来なかった。
かくいう士郎も全然捕まえることが出来なかった。
ミュウの悪戯でシアとティオの水着の上を取られていた。手ブラでミュウを追いかけるシアと、偶々近くにいた幸利の顔面を咄嗟に押さえ込む優花、残念そうな表情をするティオの姿が目に入る。
「幸利、あんた見た?」
「見てねぇよ……(少し見たいと思ったのは男の性だ……)」
「ミュウちゃ〜ん返して下さ〜い!」
「ふむ……見てもらえんかったか……」
向こう岸にはハジメとレミアさんが2人で座っていた。おそらくミュウのことを話しているのだろう。
「パパ、ミュウは連れていけないの?」
「そう……だね……ハジメとしては、危険なところや元いた世界から連れ出すのを躊躇っているんだよね……」
「なら、ミュウのママが一緒なら大丈夫?」
「レミアさんが良いって言うならね……そこはハジメの問題だ……別の事を考えよっか。なにする?」
「ママとお姉ちゃん達呼んで海の中、自由に泳ぎたい」
「わかった。3人呼んでくるよ」
士郎は恵里達を呼びに行く。未だにミュウを捕まえることが出来ずにいたシアが慌てて雫の後ろに隠れた。
「あの〜士郎さん……ミュウちゃんに水着を取られて上、裸なので、見ないでくれますか……」
「ご、ごめん……」
「ホルアドの宿屋であんなに乱れてたのに今更恥ずかしがるの?」
「それとこれとは別なんですよ!恵里さん!」
顔を赤く染めて雫の影から反論するシア。
ミュウから水着を返してもらい酸素ボンベを使い、海の底へと潜って行く。リーニャの案内で進んでいく。
太陽の光が筋のようにさして海藻や魚の鱗に反射して綺麗な光景だ。
『ダイビングなんてしたことなかったから、こんな綺麗な景色初めてよ……』
『そうですね……フェアベルゲンでもこういった幻想的な景色は見れませんからねぇ……』
雫とシアは海中の景色に声を漏らす。
『リーニャ、ありがとうねこんな綺麗な場所に連れて来てくれて』
「ここは、リーニャのお気に入りの場所だよ。ミュウとミュウのママにも教えてない秘密の場所なんだ。でもパパやママ、お姉ちゃん達には特別」
リーニャにとって特別な場所に連れて来てもらった。彼女が士郎達のことが本当に大切な人と認識しているということだ。
士郎と恵里はリーニャを抱きしめるのだった。
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そして夕方になり夕食を食べ終えて、明日の出発の準備をし始める。
「リーニャ、必ず迎えに行くから。良い子で待っててね」
「うん。リーニャは良い子で待ってるよ」
「僕達の住んでる世界に必ず連れて行ってあげるからね」
「うん!」
2人で海中で抱きしめたように抱きしめる。
「パパ!ママ!お姉ちゃん達!いってらっしゃい!」
「「「「いってきます!」」」」
リーニャに見送られた士郎達はブリーゼに乗り込む。そこには既にヴェアベルトとメルリアンが乗っていた。
「ハジメ殿もどうやら踏ん切りがついたようだな」
ヴェアベルトの視線の先にはハジメ達がいた。しばらくして彼らがこちらに戻ってくる。
「もう大丈夫なのかハジメ」
「幸利。うん、迎えに行くって約束した。だから早く迷宮を全部攻略しないとね」
そう言って全員ブリーゼに乗り込み、手に入れた神代魔法、再生魔法を使うためにアンカジへと走り出した。
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1日半かけてアンカジへと到着した。
再生魔法ならばアンカジの毒素も無効化できると思い、士郎達は立ち寄ったのだ。
アンカジの入り口は多くの隊商で溢れていた。
「随分と大規模な隊商だね……」
「……ん、時間かかりそう」
「物資を運んでるんだろうね」
しかしこっちも急ぎなので、ハジメは順番待ちする気もなく、入場門に車を走らせる。
門番の兵士がブリーゼを目にした途端に、こちらに走り寄って来た。
ブリーゼを宝物庫にしまう。
「ああ、やはり使徒様方でしたか。戻って来られたのですね」
兵士は此方の姿を見ると、ホッと胸を撫で下ろした。
使徒としては恵里の知名度が高いので、恵里が前に出る。
「はい。オアシスを浄化できる手段が手に入ったので、試しに来ました。領主様にも話を通しておきたいのですが……」
「オアシスを!?それは本当ですかっ!?」
「は、はい。あくまで可能性が高いというだけですが……」
「いえ、流石は使徒様です。と、こんなところで失礼しました。既に、領主様には伝令を送りました。入れ違いになってもいけませんから、待合室にご案内します。使徒様の来訪が伝われば、領主様も直ぐにやって来られるでしょう」
やはり、国を救ってもらったという認識なのか兵士の士郎達を見る目には多大な敬意の色が見て取れる。VIPに対する待遇だ。士郎達は、好奇の視線を向けてくる商人達を尻目に、門番の案内を受けて再びアンカジ公国に足を踏み入れた。
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「久しい……というほどでもないか。無事なようで何よりだ。香織殿達に静因石を託して戻って来なかった時は本当に心配したぞ。貴殿は、既に我が公国の救世主なのだからな。礼の一つもしておらんのに勝手に死なれては困る」
「一介の冒険者にそこまで心配しなくても……まぁ無事だったよ。この通り元気だ。この国も支援を受けていて安心したよ」
「ああ。備蓄した食料と、ユエ殿が作ってくれた貯水池のおかげで十分に時間を稼げた。王国から援助の他、商人達のおかげで何とか民を飢えさせずに済んでいる」
そう言って、少し頬がこけたランズィは穏やかに笑った。アンカジを救うため連日東奔西走していたのだろう。疲労がにじみ出ているが、その分成果は出ているようで、表情を見る限りアンカジは十分に回せていけているようだ。
「領主様。オアシスの浄化は……」
「香織殿。オアシスは相変わらずだ。新鮮な地下水のおかげで、少しずつ自然浄化は出来ているようだが……中々進まん。このペースだと完全に浄化されるまで少なくとも半年、土壌に染み込んだ分の浄化も考えると一年は掛かると計算されておる」
少し、憂鬱そうにそう語るランズィに、香織が今すぐ浄化できる可能性があると伝える。それを聞いたランズィの反応は劇的だった。掴みかからんばかりの勢いで「マジで!?」と唾を飛ばして確認するランズィに、香織は完全にドン引きしながらコクコクと頷く。
そしてオアシスにて、香織が杖先に魔力を込めて再生魔法を唱える。
「絶象」
手に入れた再生魔法の適性が1番高かったのが香織で次がティオ、ユエと士郎が同じくらい。その月に幸利と恵里、次いで優花と雫、ヴェアベルトでギリギリ使えるのがシアで適性がなかったのは当然の如くハジメだった。
自己再生ができるユエは少し苦手としているようだった。対する士郎は強化魔術を他者に行う要領で使い熟していた。
香織の魔法はオアシスの中心に落ちる。
神秘的な光がオアシスを包みその光が空に溶けていった。
術の効果に呆気に取られていたランズィ達が慌ててオアシスを調べる。
「……戻っています」
「もう一度言ってくれ……」
「オアシスに異常なし!元のオアシスです!完全に浄化されています!」
その瞬間、ランズィの部下達が一斉に歓声を上げた。手に持った書類やら荷物やらを宙に放り出して互いに抱き合ったり肩を叩きあって喜びをあらわにしている。ランズィも深く息を吐きながら感じ入ったように目を瞑り天を仰いでいた。
「あとは、土壌の再生だな……領主、作物は全て廃棄したのか?」
「……いや、一箇所にまとめてあるだけだ。廃棄処理にまわす人手も時間も惜しかったのでな……まさか……それも?」
「そうだね……他のメンバーでやればあっという間に終わると思う」
「……ん、問題ない」
「うむ。せっかく丹精込めて作ったのじゃ。全て捨てるのは不憫じゃしの。任せるが良い」
「そうだな、食料は大切にしねぇと」
士郎達の言葉に、ランズィは胸に手を当て、深く頭を下げた。
「領主がそんな簡単に頭下げていいの?」
「今下げないでいつ下げる……貴方方は我々の救世主だ……」
ランズィの愛国心がとても伝わった。
「ねぇ、あれアンカジの兵士じゃないわよね?」
すると優花が遠見で確認した場所には彼女の言う通り、アンカジの兵士とは違う装備の兵士が隊列を組んでこちらにやってきていた。
「……あれは神殿騎士かしら?」
「……嫌な予感がするよ」
そして士郎達の元へやってきた彼らの中から、豪奢な法衣を着た初老の男が進み出てくる。
「ゼンゲン公……こちらへ。彼等は危険だ」
「フォルビン司教、これは一体何事か。彼等が危険?二度に渡り、我が公国を救った英雄ですぞ?彼等への無礼は、アンカジの領主として見逃せませんな」
「ふん、英雄?言葉を慎みたまえ。彼等は、既に異端者認定を受けている。不用意な言葉は、貴公自身の首を絞めることになりますぞ」
「異端者認定……だと?馬鹿な、私は何も聞いていない」
「当然でしょうな。今朝方、届いたばかりの知らせだ。このタイミングで異端者の方からやって来るとは……クク、何とも絶妙なタイミングだと思わんかね?きっと、神が私に告げておられるのだ。神敵を滅ぼせとな……これで私も中央に……」
「うわ、この男、私欲まみれですよ。主に最後の言葉なんて」
士郎達には聞き取れなかった言葉をシアだけが聞き取り、ドン引きしていた。
どうやら士郎達が異端者認定を受けたようだ。
「さぁ、私は、これから神敵を討伐せねばならん。相当凶悪な男だという話だが、果たして神殿騎士100人を相手に、どこまで抗えるものか見ものですな……さぁさぁ、ゼンゲン公よ、そこを退くのだ。よもや我ら教会と事を構える気ではないだろう?」
こちらを舐めている発言をする。
しかしランズィが発した言葉は──
「断る」
否定だった。
「何?今なんと言った?」
「断ると言った。彼等は公国の英雄にして救世主。そんな彼等に恩を仇で返すようなことはしない。例え聖教教会であろうとも彼等に仇なすことは許さん」
「なっ、なっ、き、貴様!正気か!教会に逆らう事がどういうことかわからんわけではないだろう!異端者の烙印を押されたいのか!」
「フォルビン司教。中央は、彼等の偉業を知らないのではないか?彼は、この猛毒に襲われ滅亡の危機に瀕した公国を救ったのだぞ?報告によれば、勇者一行も、ウルの町も彼に救われているというではないか……そんな相手に異端者認定?その決定の方が正気とは思えんよ。故に、ランズィ・フォウワード・ゼンゲンは、この異端者認定に異議とアンカジを救ったという新たな事実を加味しての再考を申し立てる」
「だ、黙れ!決定事項だ!これは神のご意志だ!逆らうことは許されん!公よ、これ以上、その異端者を庇うのであれば、貴様も、いやアンカジそのものを異端認定することになるぞ!それでもよいのかっ!」
「ランズィよ、良いのか?王国と教会、この2つと事を構えることになるのだぞ?」
ランズィはヴェアベルトの言葉に反応することなく事の成り行きを見守っていた部下達に視線を向けた。ハジメも、誘われるように視線を向けると、二人の視線に気がついた部下達は一瞬瞑目した後、覚悟を決めたように決然とした表情を見せた。瞳はギラリと輝いている。明らかに、「殺るなら殺るぜぇ」という表情だ。
その意志を司教も読み取ったようで、更に激高し顔を真っ赤にして最後の警告を突きつけた。
「いいのだな?公よ、貴様はここで終わることになるぞ。いや、貴様だけではない。貴様の部下も、それに与する者も全員終わる。神罰を受け尽く滅びるのだ」
「このアンカジに、自らを救ってくれた英雄を売るような恥知らずはいない。神罰?私が信仰する神は、そんな恥知らずをこそ裁くお方だと思っていたのだが?司教殿の信仰する神とは異なるのかね?」
ランズィの言葉に怒りの限界を超えたのか、神殿騎士に攻撃の指示を出そうとしたが、何かが神殿騎士に飛来してきた。飛来してきたそれはただの石ころだった。
それを皮切りに大量の石ころやらなんやらが神殿騎士や司教に飛来してくる。
「やめよ!アンカジの民よ!奴らは異端者認定を受けた神敵である!やつらの討伐は神の意志である!」
フォルビンが、殺気立つ住民達の誤解を解こうと大声で叫ぶ。彼等はまだ、士郎達が異端者認定を受けていることを知らないだけで、司教たる自分が教えてやれば直ぐに静まるだろうと、フォルビンは思っていた。
実際、聖教教会司教の言葉に、住民達は困惑をあらわにして顔を見合わせ、投石の手を止めた。
そこへ、今度はランズィの言葉が、威厳と共に放たれる。
「我が愛すべき公国民達よ。聞け!彼等は、たった今、我らのオアシスを浄化してくれた!我らのオアシスが彼等の尽力で戻ってきたのだ!そして、汚染された土地も!作物も!全て浄化してくれるという!彼等は、我らのアンカジを取り戻してくれたのだ!この場で多くは語れん。故に、己の心で判断せよ!救国の英雄を、このまま殺させるか、守るか。……私は、守ることにした!」
フォルビン司教は、「そんな言葉で、教会の威光に逆らうわけがない」と嘲笑混じりの笑みをランズィに向けようとして、次の瞬間、その表情を凍てつかせた。
住民達の意思が投石という形をもって示されたからだ。
「なっ、なっ……」
再び言葉を詰まらせたフォルビン司教に住民達の言葉が叩きつけられた。
「ふざけんなぁ!俺達の恩人を殺らせるかよ!」
「そうよ!あんた達なんか何もしてくれなかったのに!」
「異端者認定なんて何かの間違いよ!」
「香織様を守れ!」
「雫お姉様をお守りするわよ!」
「ビィズ会長を呼べ!香織様にご奉仕し隊を出してもらうんだ!」
「雫お姉様の妹になり隊行きまーす!」
などなどアンカジの住民が口々に大声を出す。
雫は顔を隠していた。どうやら
「司教殿、これがアンカジの意思だ。先程の申し立て……聞いてはもらえませんかな?」
「ぬっ、ぐぅ……ただで済むとは思わないことだっ」
そう言ってフォルビン司教達は士郎達を憎々しげに睨んで立ち去っていった。
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その後農作物や土壌を浄化した士郎達はアンカジの宴会に参加していた。
その国特有の料理やダンスを楽しんだ。
その際に恵里達が来ていた衣装を見て押さえ込んでいた欲が爆発して、宴会が終わり、そのまま宿屋に戻ったのだが、朝になっても中々出てくることはなかった。無論ハジメもだった。
幸利も幸利で夜中、外で魔力を放出し、気分を落ち着かせていた。
アンカジの出たのは3日後になっていた。
登場した食材の簡単な説明
アイザリー貝
あさり
カタライド
鱈
アタマト
トマト
スメズ
しめじ
マッスルーミー
マッシュルーム
ニギンニギュ
にんにく