ありふれない天の鎖の投影魔術師は世界最強   作:小説大工の源三

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最近星色夜空を聴いています。
良い曲だなぁ……

遅くなって申し訳ない。


王都侵攻 前編

アンカジを出てしばらくすると隊商が賊に襲われているのを見つけた。

 

「相手は賊みたいだな。……小汚ない格好した男が約四十人……対して隊商の護衛は十五人ってところか。あの戦力差で拮抗しているのがすげぇな」

 

「あの結界は中々のものね」

 

「ふむ、さながら城壁の役割じゃな。あれを崩さんと本丸の隊商に接近できん。結界越しに魔法を撃たれては、賊もたまらんじゃろう」

 

「でも、一向に引く気配がありませんよ?」

 

「そりゃあ、あんな隊商全体を覆うような結界、ボクら異世界組でもなければ、そう長くは持たないよ。多少時間は掛かるけど、待っていれば勝手に解ける」

 

「でもあの結界どこかで見たような……」

 

ボクは前の結界を観察する。

すると恵里が飛び出して声を上げる。

 

「お兄ちゃん!あの結界、リリィのだよ!」

 

「リリィのか!」

 

一言叫んでボクはアクセルを全開にして賊に突撃する。

 

「お兄ちゃん!?もしかしてこのまま行くの!?」

 

「正直そっちの方が楽!あ、良い子のみんなは車で人を引いちゃダメだよ!」

 

「言ってる場合じゃ、きゃああああ!」

 

ブリーゼで賊を次々と轢き殺す。ボンネットに乗った者は屋根のブレードに切り裂かれていた。

 

「お兄ちゃんトータスに来てからアグレッシブになったね……」

 

そう言う恵里はフロントガラスを見ないように顔を下げている。

その後、ブリーゼから降りて賊を蹴散らしていく。

香織は倒れていた護衛の人を治療するのだが、数人は事切れていたのか再生魔法でも蘇生は叶わなかった。

するとフードを目深に被る人物が恵里に抱きつく。

 

「恵里!」

 

「リリィ!やっぱり君だったんだね!あの結界を見てまさかと思ったけど……」

 

「私も、こんなところで恵里に会えるとは思いませんでした……僥倖です。私の運もまだまだ尽きてはいないようですね」

 

「どういうことなのリリィ……」

 

感動の再会に水を差すのは気が引けたのだが、状況を把握したいのでやむを得ず2人の間に割って入る。

 

「リリィ、久しぶりだね……見た目はこんなに変わったけど」

 

「士郎さんですか!?」

 

「うんお兄ちゃんだよリリィ。ハジメ達もそこにいるし」

 

「鈴やメルド団長から聞いてはいましたが、皆さん本当に生きていたのですね……よかったです……」

 

「まぁなんとか……だけど。それでリリィはなんでここに?」

 

ハジメはリリィに質問をする。

リリィほどの立場の人間がここにいるのかわからなかった。

すると後ろから初老の男が現れた。

 

「お久しぶりですな、息災……どころか随分とご活躍のようで」

 

「アンタは確かユンケル・モットーさんか……」

 

「栄養ドリンク?」

 

「香織、違うわよ」

 

そんなやりとりが聞こえてきたが、ユンケルさんは話を続ける。

 

「ええ、覚えていて下さって嬉しい限りです。ユンケル商会のモットーです。危ないところを助けて頂くのは、これで二度目ですな。貴方とは何かと縁がある」

 

握手を求めながらにこやかに笑う男は、かつてボク達が、ブルックの町からフューレンまでの護衛を務めた隊商のリーダー、ユンケル商会のモットー・ユンケルだった。

 

「申し訳ありません。商人様。彼等の時間は、私が頂きたいのです。ホルアドまでの同乗を許して頂いたにもかかわらず身勝手とは分かっているのですが……」

 

「おや、もうホルアドまで行かなくても宜しいので?」

 

「はい、ここまでで結構です。もちろん、ホルアドまでの料金を支払わせて頂きます」

 

どうやらリリィは、ユンケルさんの隊商に便乗してホルアドまで行く予定だったらしい。しかし、途中でボク達に会えたことでその必要がなくなったようだ。

 

「そうですか……いえ、お役に立てたなら何より。お金は結構ですよ」

 

「えっ?いえ、そういうわけには……」

 

お金を受け取ることを固辞するユンケルさんにリリィは困惑する。

おそらく隊商では色々とお世話になったのだろう。

 

「二度と、こういう事をなさるとは思いませんが……一応、忠告を。普通、乗合馬車にしろ、同乗にしろ料金は先払いです。それを出発前に請求されないというのは、相手は何か良からぬ事を企んでいるか、または、お金を受け取れない相手という事です。今回は、後者ですな」

 

「それは、まさか……」

 

「どのような事情かは存じませんが、貴女様ともあろうお方が、お一人で忍ばなければならない程の重大事なのでしょう。そんな危急の時に、役の一つにも立てないなら、今後は商人どころか、胸を張ってこの国の人間を名乗れますまい」

 

「ならば尚更、感謝の印にお受け取り下さい。貴方方のおかげで、私は、王都を出ることが出来たのです」

 

「ふむ……突然ですが、商人にとって、もっとも仕入れ難く、同時に喉から手が出るほど欲しいものが何かご存知ですか?」

 

「え?……いいえ、わかりません」

 

「それはですな、『信頼』です」

 

「信頼?」

 

「ええ、商売は信頼が無くては始まりませんし、続きません。そして、儲かりません。逆にそれさえあれば、大抵の状況は何とかなるものです。さてさて、果たして貴女様にとって、我がユンケル商会は信頼に値するものでしたかな?もしそうだというのなら、既にこれ以上ない報酬を受け取っていることになりますが……」

 

これ以上ない上手い言い方だな……ユンケルさん。実際、リリィからの、王家からの信頼を得ると言うことはかなりの報酬だ。

 

リリィ、諦めたように、その場でフードを取ると、真っ直ぐモットーに向き合った。

 

「貴方方は真に信頼に値する商会です。ハイリヒ王国王女リリアーナは、貴方方の厚意と献身を決して忘れません。ありがとう……」

 

「勿体無いお言葉です」

 

リリアーナに王女としての言葉を賜ったユンケルさんは、部下共々、その場に傅き深々と頭を垂れた。

その後ユンケルさんはボク達をその場に残しホルアドへと進んでいった。

 

「それでリリィ、なんでそんなお忍びの格好をしてまで王国を出たの?」

 

リリィに質問をしたのはハジメだった。

 

「……愛子さんが……攫われました」

 

「なにっ!?」

 

「そんな……!?」

 

リリィの話を要約すると。

王宮内の雰囲気がおかしくなったり、父王が教会に傾倒し、時折、熱に浮かされたようにエヒト様を崇め、それに感化されたのか宰相や他の重鎮達も巻き込まれるように信仰心を強めていった。

顔馴染みの騎士達は正気を失ったような行動をし、メルド団長に至っては顔を合わせる回数が激減し、話す機会がなくなってしまった。

さらにはボク達の異端者認定に反対しようものなら、自身のことを敵を見るような目で見られたという。

先生から話があると言われて夕食の時に同席して欲しいと頼まれ、時間になって向かうと先生と何者かが言い争っていた。

その様子を見ると彼女と銀髪の修道女がいて、その修道女が先生を気絶させ、担いでどこかへいくのを目の当たりにした。

王族用の脱出ルートで王国から出て恵里、そしてボク達を探しに来たという。

 

「あとは知っての通り、ユンケル商会の隊商にお願いして便乗させてもらいました。まさか、最初から気づかれているとは思いもしませんでしたし、その途中で賊の襲撃に遭い、それを皆さんに助けられるとは夢にも思いませんでしたが……少し前までなら神のご加護だと思うところです……しかし……私は……今は……教会が怖い……一体、何が起きているのでしょう……あの銀髪の修道女は……お父様達は……」

 

自分の体を抱きしめて恐怖に震えるリリィは、才媛と言われる王女というより、ただの女の子にしか見えなかった。だが、無理もないことだ。自分の親しい人達が、知らぬうちに変貌し、奪われていくのだから。

香織は震える彼女を落ち着かせるよう抱きしめ、ゆっくりと背中を撫でる。

 

「幸利……銀髪の修道女と王国の人達の変化って……」

 

「ああ、十中八九メルジーネで見たあれと同じだ……」

 

先生が攫われた理由は確実にこの世界の事、そしてエヒトの事を話してしまったからだ……

迂闊に話すべきではなかったか……

 

「士郎殿……畑山殿を……」

 

「うん。助けに行かないとね。先生には地球で世話になったし」

 

「そうだね……先生には恩返しをしないと」

 

「宜しいのですか?」

 

「うん」

 

リリィが確認するとハジメは短く一言頷く。

 

「皆さんありがとうございます……」

 

「よし、それじゃあこのまま王国まで一走りだ。リリィも車に乗って」

 

─────────────────────────

 

ブリーゼの速度をMAXまで上げてハイリヒ王国まで突っ走る。すると大地感知に複数の気配を感じ取った。

 

「……どうやら魔人族も来てるみたいだね」

 

「そんな……」

 

魔人族の対処に悩む。

おそらく本物の神の使徒がいるだろうし戦力はあまり割く事はしたくない。王国の結界も当てにできないわけではないが、神代魔法のことを考えると期待ができない。

 

「士郎、俺に行かせてくれるか?」

 

「士郎さん、あたしも行かせて欲しいわ」

 

「それは構わないけど。どうしたの?」

 

幸利と優花が突然名乗り出たことについ問い返してしまった。

 

「多分だが火山でやりやったフリードってやつがいるだろうから、やり返しに行く」

 

「アタシも同じ理由よ」

 

「わかった。2人とも気をつけて」

 

2人は空力を使い、空を跳んで行った。

 

「……ティオは行かなくてよかったの?」

 

と、ユエは皆が疑問に思っていたことを口に出す。

 

「本来なら妾も行きたかったのじゃが、流石に戦力を割けないからのぉ」

 

と、真面目に答えたのだった。

ボクらはこのまま神山に向かい、熱源探知で先生を探すのだった。

 

─────────────────────────

 

神山で監禁されていた畑山愛子は1人不安に苛まれていた。

自身のこれから、教え子達が何をするのか、様々だ。

 

「みなさん……何をするつもりなのでしょうか……」

 

愛子は生徒の無事を祈るように両手を握る。

 

「……殿……畑山殿」

 

突如聞こえてきた声に当たりをキョロキョロと見渡す。

 

「……幻聴でしょうか?ヴェアベルトさんの声が聞こえるなんて」

 

「……幻聴ではないぞ」

 

「え!?」

 

格子の小窓からヴェアベルトが顔を覗かせていた。

 

「ヴェアベルトさん……!?何故ここに?」

 

「しっ!静かに……今ここを開ける」

 

ヴェアベルトは格子戸の鍵を破壊して扉を開ける。

 

「開いたぞ」

 

「ありがとうございます……ですが何故……って、ええっ!?」

 

愛子はヴェアベルトが自身の手を突然握ってきたことに慌てる。

そして手首につけられていた金属の腕輪を破壊する。

 

「ヴェアベルトさん……?」

 

「その枷は魔力を封じる物のようだったのでな。破壊させてもらった。

 

そして愛子を連れ出そうとしたその時だった。

 

『ヴェアベルト!急いで先生を連れ出して脱出して!』

 

突然、外で警戒していた士郎から連絡が入ってきた。

 

『士郎殿!?何があった!』

 

『メルジーネ海底洞窟にいた銀髪がこっちに襲いかかってきた!』

 

「『わかった、今すぐ連れ出す!』愛子殿、すぐに出るぞ!」

 

「は、はい!」

 

ヴェアベルトは愛子の手を引っ張り、そのままメルリアンに乗って外に出る。

彼等が居た場所に空からレーザービームのようなものが放たれた。あと数秒遅ければ2人共アレを喰らっていた。

 

「フリード将軍から話は聞いたが……本当に生きていたとはな……」

 

ヴェアベルトが空を見上げるとそこには髪を一つに束ねた女の魔人族が三つ首の竜に乗りこちらを見下ろしていた。

 

「カイラナか……」

 

「異教徒を滅ぼす……それが私の使命……」

 

そう言うと、三つ首の真ん中の首から先程と同じ攻撃が何度もこちらに放たれる。

 

「ぐっ……」

 

「きゃああああ!」

 

それをメルリアンが急旋回しながら回避する。

 

『ティオ殿!今すぐこちらに来てくれ!畑山殿を頼みたい!』

 

『承知したのじゃ!』

 

ヴェアベルトはティオが来るまでの間、攻撃をかわし続けた。何度も旋回し時には急に止まり、攻撃を愛子に当てぬよう必死に避ける。

すると黒竜がこちらに飛んでくる。ティオだ。

 

『ヴェアベルトよ待たせたのじゃ』

 

「助かった。畑山殿を頼む」

 

『任せるのじゃ』

 

愛子をティオに乗せる。

 

「えっと、ティオさん。よろしくお願いします」

 

『うむ任せよ』

 

そう言ってティオは離れていった。

だがカイラナはそれを逃がさない。三つ首のブレスを放つ。しかしそれを防ぐようにメルリアンのブレスで相殺する。

 

「異教徒……いや、裏切り者のヴェアベルト・ハリス。貴様はここで始末する」

 

「……目的を邪魔するのなら、私は貴様を排除する」

 

2人は剣を抜刀し急接近する。

 

ガキン!

 

剣が交差し何度も斬り合うが、決め手にはならない。

しかし互いが乗る竜のブレスの威力はこちらが上だが、3発同時に放たれれば競り負ける。

神山の空で2人の竜騎士と竜が剣とブレスのやりとりが行われる。

 

(くっ……剣技はこちらが上だが、ブレスの数と威力が劣るか……ならばやるしかあるまい……北の山脈では使うことはなかったが、ここで使うとしよう。出し惜しみして時間をかけてはいられん!メル!)

 

(ワカッタ!)

 

ヴェアベルトとメルリアンと意識を同調させる。

隙だらけの姿を晒すことになるが、僅かな時間だ。

三つ首竜がブレスを放つ。

しかしヴェアベルト達のいた所から放たれた火炎がそれを防ぐ。相殺したと同時に爆発が起きる。

爆炎が晴れると表れたのは素肌を竜の鱗で覆い、蒼い竜翼を生やしたヴェアベルトだけがそこに飛んでいた。

 

「何っ!?」

 

「あまり手の内は晒したくはなかったのだがな……貴様を殺す。情報は渡さん」

 

「そんな姿になったからって……なんだと言うのだぁ!」

 

カイラナは突撃してくる。三つ首竜の角で突き刺そうとしたのだが、ヴェアベルトの姿はなかった。

 

「何処に「後ろだ」なっ!?」

 

振り向くと同時に剣を突き刺す。心臓を外したが、大量に出血する。さらに三つ首竜の首を落とす。

カイラナが別の竜に乗り移ろうとしたのだが、ヴェアベルトは息を吸い込み、氷ブレスを吐く。

 

「ぐあああ!」

 

乗り移ることが出来ずにそのまま下へ落ちていく。

それを追い、ヴェアベルトは止めを刺した。

 

「裏切り者に……敗れるとは……フリー……ド様……魔王様……お許しを……」

 

「ふう……早く士郎殿達に加勢せねば」

 

ヴェアベルトは士郎達の加勢に向かった。

 




フリードとの初戦を修正しました。
戦闘シーンが難しいですぅ(なら何故書く)
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