ありふれない天の鎖の投影魔術師は世界最強   作:小説大工の源三

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悲劇を起こさせはしない

士郎side

 

信じられない光景を目の当たりにしている。

 

手から握っていた干将・莫耶が滑り落ちる。

 

カランカラン……

 

何度も目を擦るけど視界に入る世界は変わらない。

 

なんで

 

 

恵里が

 

 

胸を剣に貫かれていて

 

 

 

死んでいるんだ?

 

更には貫かれているだけでなく、何度も滅多刺しにされている。

 

「邪魔しやがって!テメェがいなけりゃ!香織は!俺の物になっていたのによぉ!」

 

男が恵里に馬乗りになって刺しながら叫んでいる。

 

「こうなったらテメェの身体で返してもらわねぇと割に合わねぇなぁ!」

 

男が恵里の服に手をかける。

 

自分でも信じられないくらい怒りが湧き上がるのがわかる。それと同時に自身の頭が冷たく冷静になっていくのもわかる。

今は恵里を助ける。

それだけを考えて縮地で恵里を犯そうとする男を蹴飛ばす。

 

「ガフっ……!」

 

恵里の身体から剣が抜け落ちる。

士郎は再生魔法を使い、傷を治そうとするのだが──

 

「なんで治らないんだ……!?」

 

傷が塞がらない。再生魔法が弾かれている。

ティオと先生の魂魄魔法により魂は保護しているが、傷が治らない限りは恵里が死んでしまう。

焦りが顔に出る。必死に解決策を模索する。まずは恵里の状態を解析──しようとしたところで剣を突き刺した男が起き上がる。

 

「そいつはもう死ぬぜ……残念だったなぁ……俺が新たに手に入れた力でなぁ……キヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!」

 

そう喋り笑ったのは──

 

「檜山っ……」

 

檜山大介だった。

それがわかると同時にボクはまた蹴飛ばす。その先に回り込みまた蹴飛ばす。

それを

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

繰り返し、その最後にそいつの頭を踏みつける。

 

「アグァ!」

 

「何をした?とっとと答えろ……」

 

グリグリとボク足を動かす。問い詰めて治し方を知ることが優先だ。

すると後ろから雫の声が聞こえているが頭に入らない。

 

「ヒ、ヒヒヒヒヒ!知らねえなぁ!」

 

嘲るように笑う。

ボクは頭を踏み砕こうとするが、止まる。

 

こ ん な 奴 殺 す 価 値 も な い

 

そう脳によぎった。

 

そうだこんなことしている場合ではない。今すぐ恵里の傷を癒やし、失われそうな命を──

 

すると雫が駆け寄ってくる。

 

「士郎さん!檜山のことは放っておいて今は恵里の治療を!」

 

「雫……そうだね。こいつなんかに構ってられないよね」

 

返事をして檜山の身体を鎖で拘束して、恵里の治療を行うのだった。

 

 

 

─────────────────────────

 

士郎達が来る前に時は遡る。

 

─────────────────────────

 

side恵里

 

お兄ちゃん達が上空で戦っている間、僕達は王宮に侵入した魔人族が連れてきた魔物を蹴散らしながらハイリヒ城内に入る。

そこでは鈴が結界を貼り、天之河や坂上くん達が魔物と交戦していた。

雫が一瞬で魔物との距離を縮めたかと思えば、いつのまにか魔物の首が撥ねられていた。

力の差がはっきりとわかってしまう。

だが今、くよくよしている暇はない。

 

「鈴!無事!?」

 

「エリリン!来てくれたんだね!鈴達はシズシズの攻撃のおかげで大丈夫だよ」

 

「そっかぁ……よかった……でも王都に魔物がいるんだろう……?それに結界のアーティファクトがあった筈なのになんで?」

 

僕自身この2つの疑問しか浮かばない。

アーティファクトが壊されたか、単純に火力で押し切られたかのどちらかでしかない。

しかし火力の線はないと思っている。お兄ちゃんの熾天覆う七つの円環を直ぐに貫通できない白竜のブレスでは王都に貼っている結界は壊せない。

つまり内部犯の可能性が高い。

もちろんあの後さらに強くなったか、まだ別のがいるかもしれないけれど。

 

「とにかく。みんなと合流しよう。メルド団長もいるだろうし」

 

「そうだな……ここにいても仕方がねぇ……」

 

天之河の提案に従い、魔物を蹴散らしながら僕達は王国の騎士団とクラスメイトと合流した。

最初は彼らも魔物に囲まれていると思っていたのだが違った。

目に入って来たのは、王国の広場には謎の黒ローブが立っており、王国の騎士団がクラスメイトを拘束し、押さえつけている光景だった。

操られているのかもしれない……

 

「な……みんな!」

 

「なんで王国の騎士団がみんなを……!?」

 

騎士団の人をよく見ると正気がないように感じた。

怪しんでいると、天之河が黒ローブに斬りかかる。

しかし、黒ローブはヒラリヒラリと攻撃を避ける。その攻撃を避ける動きが常人離れしているというより、人間には絶対にできない動きで避けていた。関節の動きが特にだ。

 

するとクラスメイトを抑えていない騎士団がこちらに襲いかかる。

槍や剣、大剣など様々武器が襲いかかるが、雫や香織達のようなチートスペックには攻撃が当たらない上に当たったとしても武器が壊れてしまう。

僕や鈴、坂上くんに遠藤くんはあまりの物量に最初は対処ができていたが疲れが目立ち始め、遂には攻撃を防ぎ損ねてしまう。

 

「くっ……もうダメ……キャア!」

 

「鈴!」

 

最初にやられてしまったのは鈴だった。

 

「谷口!野郎!」

 

「遠藤くん!突っ込んだらだめ!」

 

「こうなったらヤケクソだ!オラァァァァア!」

 

立て続けに筋力ステータスの低い遠藤くん、前に出て攻撃して受け続けた坂上くんがやられてしまう。

 

「暗落!」

 

闇属性魔法を使い騎士の意識を堕とす。すると騎士はピクリとも動かなくなった。呼吸すらもだ。

 

「……どういうこと……?」

 

「恵里?どうしたの?」

 

「雫……暗落を使ったら騎士の人が動かなくなったんだ……」

 

「攻撃魔法でもないのになんでかしら……」

 

僕はふとメルジーネの大迷宮の幽霊を思い出した。

 

「……まさか騎士団の人はもう……死んでるんじゃ……」

 

「そんな……洗脳されているんじゃないの……!?」

 

その事実に気づいた僕は雫に香織にも伝えるよう頼む。雫は一つ頷き、瞬きする間に香織の元に辿り着く。

 

「ガハッ!?」

 

しかし不意打ちの一撃で僕は壁に飛ばされ叩きつけられる。全身の骨が砕けるような痛みか走る。だが実際に骨が何本かイったのだろう。内部から突き刺さるような痛みと口から血が垂れる。

 

「しまった……油断した……ケホッケホッ……」

 

するとクラスメイトの方から3人──中野、斉藤、近藤が動き出すのが見えた。しかも香織と雫の方に向かっていた。

 

「死ねぇぇぇぇぇえ!」

 

「ヒャッハァァァァァァァ!」

 

「ハハハハハハハハハハハ!」

 

叫びながら攻撃してくる。

しかし雫の刀、香織の銃弾によりその攻撃は防がれ──ることはなかった。

雫と香織の2人が少しノックバックしたのだ。

 

「なっ!?」

 

そのまま攻撃が続けられる……想定外の攻撃に2人は難なく対応している。しかし2人間には明確な距離が現れる。

 

(なんでこの3人が参加してるのに檜山のやつが行動していないんだ……?まさか!?)

 

僕は壁に叩きつけられ、身体の中から発生する激痛に耐え、香織の元に走る。

 

この時の僕がなんで走り出したのか分からなかった。

 

兄のように家族で恋人で最愛の存在でもなければ、雫のように恋の仲間でもない、鈴のように親友でもない、友達なだけの香織の元に身体は勝手に走り出していた。

脳裏に浮かぶ誰かの言葉──

 

『恵里……誰かに優しくしてあげるんだよ……それ巡り巡って自分に返ってくる……■■■はいつもいいことがあるんだよ……』

 

懐かしいなぁ……誰だろう……お兄ちゃんやお義父さん、お義母さんにも言ってなかったけど……

 

目に写り込む光景がゆっくりになる。

 

いつのまにか現れていた檜山が香織に剣を突き刺そうとしていて、それを知って対応のできない香織。そのことに狂気の笑みを浮かべる檜山。

僕はその2人の間に割り込み、その剣は僕の胸を貫き、心臓をも貫いた。

 

痛いなぁ……死んじゃうのかなぁ……今度こそ助からないのかも……まだお兄ちゃんとしたいことあったのにな……

 

ズブリ……

 

狂刃が僕の命の焔を消した。

 

 

─────────────────────────

 

雫side

 

いつの間にか現れた檜山が香織に剣を突き刺そうとしているのを横目で視界に入れていた。

距離が離れていて距離はさほどないのに遠く感じる。香織の元に行きたいのに近藤と斉藤が間に割って入られ彼女の元に向かえない。

そしてその剣は突然割り込んだ恵里の胸を貫く。

朱い血が吹き出し血飛沫が上がる。

 

「え……恵里ィィィィィィィ!

 

叫んだのは鈴かリリィかはたまた私か──誰のものだったかわからない。

悲鳴が響く。

 

恵里の口から血が吐き出される。

 

「あ?なんで香織じゃねぇんだよ……クソが……ホントあの兄妹は俺の邪魔しかしねぇなぁ……クソがよぉ……」

 

そうぶつぶつ呟く檜山。

 

こいつは人の命をなんだと思っているのだろう……私の中の怒りが湧き上がる。

すると上から誰かが降りてきた。

白緑の男性にしては長い髪。

両手に握られた白と黒の中華刀。

 

それだけで士郎さんだとわかった。

彼が恵里の今の姿を見たのだろう。姿が一瞬にてしてかき消え、檜山が吹き飛ぶ。恵里を抱えてすぐに下がり、安全な場所に下ろす。

そして檜山を何度も蹴飛ばす。

その余りの速さに私の目がギリギリ追えるほどだった。

 

「士郎さんやめて!ソイツにかまってないで、恵里を!」

 

叫ぶのだが、止まらない。

最後に地面に叩きつけて、頭を踏みつけた。

 

─────────────────────────

 

そして冒頭に至る。

 

─────────────────────────

 

士郎side

 

恵里の傷を解析すると、傷の表面に謎の魔力が覆われており、それのせいで回復魔法や再生魔法が弾かれている。

なので破戒すべき全ての符で魔力を霧散させる。そして恵里の身体は元通りに治った。

 

「ん……お兄……ちゃん……?」

 

「よかった……生きてる……生きてるよ……」

 

ボクは思わず恵里を抱きしめた。

 

「く、苦しいよお兄ちゃん……」

 

「ごめんね……でも今だけはこうさせて欲しい……ごめん……守れなくてごめんね……」

 

失われそうになった彼女の命。ボクは守りきれなかった。

あの日の約束が果たせなかった。

檜山のことも許せないが1番許せないのは約束も果たせない自分だ。

 

「ううん。お兄ちゃんは僕を生き返らせたから大丈夫だよ……」

 

恵里はボクのことを許してくれた。そして抱きしめ返してくれた。

 

「これでダメだったら、別の方法を考えるしかなかったよ……」

 

「別の方法?」

 

「神の使徒の遺体から色々拝借するのさ……」

 

すると恵里は興味を示したのか聞き返してきた。

詳しく説明すると。

 

さっき倒した神の使徒の身体の一部を恵里の体に取り込ませて傷を埋めることだ。

上手くいけば恵里は神の使徒の力も手に入る可能性もあった。

そのことを説明する。

 

「お兄ちゃん。それ今できる?」

 

「まぁ出来るけど……」

 

「お願い。それを僕に使って!」

 

突然何を言い出すんだこの妹は。

 

「ええ……?」

 

「お兄ちゃん達の足手まといはもう懲り懲りなんだ……」

 

恵里の瞳からは悔しさが詰まっていた。

だからボクは──

 

「わかった。ヴェアベルト、力を貸してくれ」

 

そう了承した。

恵里の望みを叶えてあげたい。ボクはヴェアベルトに協力を頼む。

 

「了解した。いくらでも貸そう」

 

ボクとヴェアベルトは上空へ登り、恵里の魔改造パワーアップを始めるのだった。

 

 

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