ありふれない天の鎖の投影魔術師は世界最強 作:小説大工の源三
ハジメside
王国からフェアベルゲンに向かうため、僕は宝物庫から飛空艇『フェルニル』を取り出す。
これには様々な設備が備わっている。
まず鍛錬場、調理場に休憩室、鍛治場に菜園場などだ。
鍛錬場は感応石などの鉱石を使い、壊れにくく、壊れても再生するのでどんなに激しく戦っても、大丈夫な作りになっている。
調理場は火などは使わず魔力だけで料理することができる。
ただし魔力操作かないと細かい料理は作るのは難しい。
休憩室は複数の個室スペースを作り、1人になりたい時、もしくは何人かで過ごしたい時に使う。
菜園場は様々な野菜を育てている。
名前の通りだ。
鍛治場は完全に僕専用になっているので説明はいらないだろう。
外壁には大量の砲門が備え付けられており、魔力を通せば魔力弾が放たれ、敵を迎撃することができる。
さらに属性魔法も撃てるし、別の場所からはミサイルも撃てる。
他にも色々あるが説明はこれだけにしておく。
フェルニルを作るにあたって、最初は僕や士郎、幸利にヴェアベルトと試行錯誤したので、これを破壊されようものなら僕は多分軽く発狂すると思う。
唐突に昨日の夜にあったことを思い出した。
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僕はやる事ほとんど済ませて、部屋に戻ろうとした時、ランデルから話があると言われたので、彼の部屋に向かっている。
夜の王城の通路はろうそくだけの頼りない明かりなので薄暗い。月明かりがなければ真っ暗闇に近いだろう。
まぁ僕には暗視があるから何も問題はないけど。
コンコンコン
「ランデル?入るよ?」
『ハジメ。鍵を開ける。少し待ってくれ』
ガチャリと鍵の開く音共に扉が開かれる。
寝巻き姿のランデルが現れる。
「夜遅くにすまない」
「まぁこんな時間に呼び出されるとは思わなかったから少し驚いたよ」
「中に入ってくれ。こんな話はハジメにしかできぬ……」
彼の部屋に入る。
そういえばランデルの部屋に行くのなんてオルクスで落ちる前以来だな。
「そこに座ってくれ……いい茶葉も手に入ったのでな。優花のよりは及ばないがハジメ達がいない間、練習したのだ」
彼が注いだ紅茶を一飲みする。
まだ発展途上だが、とてもいい味だ。深みがある。
「それで話って?」
「姉上が帝国に向かわれる……それは、帝国に嫁ぎに行かれるのだ……」
「それはまた突然だね……」
「うむ、魔人族の襲撃もあり、ハイリヒ王国では檜山達の裏切りにより騎士達の大量の損失。このままでは我が国は魔人族に攻め入れられ、滅亡してしまうだろう。ハジメの作ったアーティファクトがあるとはいえ、国民の不安は拭えない。そこで姉上は帝国に嫁ぎ行かれる。前々から形だけとは決まっていた婚約の話を今回の一件で正式なものにするのだ……」
「なるほど……」
「ハジメ……頼みがある。余は無力だ……まだ歳が幼いが故にこのような話には関われぬ……姉上の相手は余り良い話を聞かない男が相手なのだ。出来るならで良い……姉上が助けを求めたのなら助けてはくれないか?」
ランデルは頭を下げた。
正直少し難しいがリリィには落ちる前から良くしてもらっていたので、見捨てる選択はしたくない。
「……わかった。ハイリヒ王国に不利益が被らないようなんとかするよ」
「本当か!?」
「うん。約束するよ」
「そうか……ありがとう……ハジメ……」
ランデルは僕の手を力一杯握る。
「話は終わりだ……今日はもうゆっくり休んでくれ」
「そうするよ。おやすみランデル」
「おやすみだ。ハジメ」
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士郎side
「飛空艇を作るの本当に苦労したよね……」
「まずそもそも重力石の熟成がね……」
生成魔法で作った重力石が1番の難点だった。
「そうだ……ん?アレ?」
ハジメと突然水晶ディスプレイを見ていると気になる映像が流れてきた。
「兎人族と……帝国兵?」
「とりあえずみんな呼んでおこう」
念話で全員に召集をかける。
1分もしないうちに全員集まる。
「な!襲われてるのか!今すぐ助けないと!」
天之河が騒いでいるが無視する。
「シア、あの2人って……」
「へ?……あれ?……まさか……」
映像を拡大すると確証を持つことができた。
「あ〜……ラナとミナだな……」
「そうね……」
「みんななにのんびり見ているんだ!シアさんは同じ種族だろ!」
「すいません、ちょっと黙ってくれますか?」
ラナとミナが倒れ込み、開けた谷間で足を止める。
そして帝国兵が武器をペタペタと触りながら近づいてきたが、近くにあった帝国兵の死体の山を見て、恐喝するように近づいたその時だった。
いつのまにか首を刎ねられていた。
「え?」
「うーむ、また一段と強くなったなぁ……」
「明らかに誘い込む動きしてたのに気づかなかったのかな?」
そのまま残りの帝国兵を弓矢や小太刀により殺していった。
「なぁ清水……兎人族ってみんなシアさんみたいなのか?」
予備知識と目の当たりにした兎人族にあまりにも差がありすぎたのか、坂上くんが幸利に質問した。
「いや?特殊なのはシアだけだぞ?強くしたのは俺たちだが」
「マジかよ……」
「ウサギこわい……」
なんか若干引かれてる気がする。
「サボってはいねーがまだ詰めが甘ぇな」
幸利は外に出てスカイダイビングをする。
その行動に王国組は目を丸くする中、彼は闇魔法の塊を帝国兵の生き残りや馬車に放つ。
帝国兵はそのまま爆死、空力を使い、着地した。
「士郎さんもしかしたら暴走してかもしれないです……」
「それはないと思うけれど、なんでここにいるかはわからないから一回聞く必要があるね」
ボクも飛び降りる。
クレーターを作らないように着地する。
兎人族達がボクも認識すると、ビシッと敬礼する。
「お久しぶりです、団長!再びお会いできる日を心待ちにしておりました!まさかあのようなものに乗って登場するとは……改めて感服いたしました!それと教官!先程はのご助力感謝致します!」
「気にすんな。お前らならやられることはないからな。こっちも事情が聞きたかったし」
「しかし腕を上げたね……」
「「「「「「恐縮であります!」」」」」」
フェルニルから全員降りてきた。ハウリアを知る人は平然としているが、知らない人はドン引きしていた。
「えっと、みんな、久しぶりです!元気そうでなによりですぅ。ところで、父様達はどこですか?パル君達だけですか?あと、なんでこんなところで、帝国兵なんて相手に……」
「落ち着いてくだせぇ、シアの姉御。一度に聞かれても答えられませんぜ?取り敢えず、今、ここにいるのは俺達六人だけでさぁ。色々、事情があるんで、詳しい話は落ち着ける場所に行ってからにしやしょう。……それと、パル君ではなく『必滅のバルトフェルド』です。お間違いのないようお願いしやすぜ?」
「……え?いま、そこをツッコミます?っていうかいつの間にそんな名前を……ラナさん達も注意して下さいよぉ」
シアがラナ達に頼もうとしたのが、現実というのは常に予想の斜め上をいくものなのだ。
「……シア。ラナじゃないわ……『疾影のラナインフェリナ』よ」
「!?ラナさん!?何を言って……」
ハウリアでも、しっかりもののお姉さんといった感じだったラナからの、まさかの返しにシアが頬を引き攣らせる。しかし、ハウリアの猛攻は止まらない。連携による怒涛の攻撃こそが彼等の強みなのだ。
「私は『空裂のミナステリア』!」
「!?」
「俺は『幻武のヤオゼリアス』!」
「!?」
「僕は『這斬のヨルガンダル』!」
「!?」
「ふっ『霧雨のリキッドブレイク』だ」
「!?」
某スタン○云々の漫画のような香ばしいポーズをとるハウリア族。
遂に畏れていたことが起きてしまった……彼らは厨二病を発症してしまった……
それを恐れたボクと幸利は……
「「うわぁぁあぁぁぁぁあ!」」
どこぞの仮面のライダーのタディの如く情けない叫び声を上げたのだった。
「遂に発症しやがったァァァ!」
「恐れていたことが現実にィィィィィィィ!」
安静化している間にハジメがアルテナと呼ばれているアルフレリックのお孫さんの手足の枷を破壊していた。流石に歩きづらそうだったからどうせだろう。
それから復活したボクと幸利は何故彼らが何故樹海の外で帝国兵と戦っていたのか聞いた。
どうやら樹海を魔人族が襲撃してきたらしくなんとかハウリア達が追い返したが、その後に帝国兵が亜人達を攫っていったという。
立て続けの襲撃になすすべもなく攫われてしまったようだ。
しかも攫われた大半が女子供だったのだ。その中には当然、ハウリア以外の兎人族もいた。
攫った理由など考える必要もないだろう。
帝国に向かい、同族を取り戻そうとしたが、カム達は侵入したものの連絡が途絶えてしまったようだ。
そして亜人達を輸送している馬車が出発したのを知り、情報収集も兼ねて奪還を試みたということだ。
「すまない……本当に同族からすまない……」
ヴェアベルトはハウリア達に頭を下げていた。
彼のことは説明しているので、そこまで大きないざこざは起きなかった。
「それにしても帝国や樹海にも魔人族は襲撃してるのね……」
「運が悪いというかなんというか、ほとんどがお兄ちゃん達と居合わせてるから失敗してるし……」
「そろそろヴェアベルトは仲間と合流した方が良さそうだぞ?」
「仲間とは定期的に連絡は取り合っている。無事なのは確かだが……些か不安だな……」
「とりあえず捕まってた連中は樹海に送ろうか。みんなはこのままカム達の情報を集めるんでしょ?帝国まで送るよ」
「ありがとうございます!棟梁!」
パル達が一斉に頭を下げた。後ろではシアが何か言いたそうだったが、敢えて彼女から言い出すのを待つことにした。
パル達とリリィを帝国から少し離れた場所に下ろしてボク達は樹海に向かった。
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再び足を踏み入れたハルツィナ樹海は、変わらず濃霧が立ち込めていた。
迷わないよう亜人族達に案内してもらいながら進んでいると、大地感知に反応があった。
どうやらシアも何か感じ取ったのかウサミミをぴこぴことと揺らしていた。
「士郎さん武装した集団が前から来ます」
この感じだと……あの時の虎かな?
濃霧の中から予想通り虎人族の武装集団がいつだったかと同じように現れた。
「お前達は……あの時の……」
「久しぶりだね。とりあえず、アルフレリックの孫娘達がいるから彼らの案内お願い。助けたのはハウリアだから」
「ア、アルテナ様!?ご無事だったのですか!?」
「はい。彼等にも助けていただきました」
「それはよかったです。アルフレリック様も大変お辛そうでした。早く、元気なお姿を見せて差しあげて下さい。……お前たちはここに来るときは亜人を助けてからというポリシーでもあるのか?」
「まさか?偶々だよ……というかここ来るの2回目だし。それよりもハウリアは何人かいる?」
「む?ハウリア族の者なら数名、フェアベルゲンにいるぞ。聞いているかもしれないが、襲撃があってから、数名常駐するようになったんだ」
「そりゃよかった。じゃあ、さっさとフェアベルゲンに向かうよ」
そうしてフェアベルゲンに辿り着いたのだが、目に入ったのは凄惨な姿だった。
ボク達を魅了した幻想的な自然の美しさと水の都は見る影もなかった。
「酷い……」
「美しいと聞いていたフェアベルゲンが、襲撃でこのようなことに……」
「ふざけてる……」
通りがかったフェアベルゲンの人々がアルテナ達を見つけ信じられないといった表情で硬直し、次いで、喜びを爆発させるように駆け寄ってきた。
傍に人間族がいることに気がついて、一瞬、表情を強ばらせるもののアルテナ達が口々助けられた事を伝えると、警戒心を残しつつも抱き合って喜びをあらわにした。
どんどんと人垣に埋め尽くされていたが、不意に人垣が割れ始める。その先には、フェアベルゲン長老衆の一人アルフレリック・ハイピストがいた。
「お祖父様!」
「おぉ、おお、アルテナ!よくぞ、無事で……」
アルテナは、目の端に涙を溜めながら一目散に駆け出し祖父であるアルフレリックの胸に勢いよく飛び込んだ。もう二度と会えることはないと思っていた家族の再会に、周囲の人々も涙ぐんで抱きしめ合う二人を眺めている。
しばらく抱き合っていた二人だが、そのうちアルフレリックは、孫娘を離し優しげに頭を撫でると、こちらに視線を向けた。その表情は苦笑いが浮かんでいた。
「……とんだ再会になったな、天野士郎。まさか、孫娘を救われるとは思いもしなかった。縁というのはわからないものだ。……ありがとう、心から感謝する」
「ボクは送り届けただけだよ。感謝するならハウリア族にしてくれ。ボクは、ここにハウリア族がいると聞いて来ただけだから」
「そのハウリア族をあそこまで変えたのもお前さんだろうに。巡り巡って、お前さんのなした事が孫娘のみならず我等をも救った。それが事実だ。この莫大な恩、どう返すべきか迷うところでな、せめて礼くらいは受け取ってくれ」
「わかったよ」
ボクは困ったように肩をすくめた。
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ハウリア達は外にいるとのことだったので、アルフレリックの家で休んでいた。
アルテナが淹れたお茶を飲んでゆっくり待つことにした。
その時アルテナがハジメにお茶を渡す時頬を赤く染めていたのはおそらくそういうことだと思い何も気にすることはなかった。ユエと香織が一層近くに寄っていたが、お兄さんは知りません。
お茶を一杯飲み終えた頃、ハウリア族の男女が複数人、慌てたようにバタバタと駆け込んできた。
「団長!!お久しぶりですっ!!」
「お待ちしておりましたっ!団長!!」
「お、お会いできて光栄ですっ!教官!!」
「うぉい!新入りぃ!団長達のご帰還だぁ!他の野郎共に伝えてこい! 三十秒でな!」
「りょ、了解でありますっ!!」
余りの剣幕に、パル達でハウリアの反応を予想していたはずの天之河達はお茶を勢いよく噴き出した。
ボタボタと垂れるお茶を拭いながら全員がそちらを見ると、複数の兎人族がビシッ!と踵を揃えて直立不動し、見事な敬礼を決めている姿があった。
ボクにも見覚えのない者が何人かおり、先程の言動も踏まえると、どうやらハウリアは他の兎人族の一族を取り込んで自ら訓練を施し勢力を拡大しているようだ。
「あ~うん、久しぶりだな。取り敢えず、他の連中がドン引いているから敬礼は止めような」
「「「「「「「Sir,Yes,Sir!!!」」」」」」」
幸利は顔を手で隠しながら敬礼を止めるよう言う。
樹海全体に響けと言わんばかりに張り上げたボク達への久しぶりの掛け声に、とても満足そうなハウリア族と、初めて経験した本物の掛け声に「俺達もついに……」と感動しているハウリアでない兎人族達。
ボクはもう気にすることはやめた。もうパルくんから伝染した厨二病パンデミックは収束することはないと諦めた。
「ここに来るまでにパル達と会って大体の事情は聞いている。中々、活躍したそうだな?連中を退けるなんて大したもんだ」
「「「「「「きょ、恐縮でありまずっ!!」」」」」」」
最後が涙声になっているのはご愛嬌。幸利は、感動に震えるハウリア達にパル達から預かった情報を伝える。すなわち、カム達が帝国へ侵入したらしいという情報を掴んだ事と、自分達も侵入するつもりであること。そして、応援の要請だ。
「なるほど。……『必滅のバルドフェルド』達からの伝言は確かに受け取りました。わざわざ有難うございます、団長」
「………………ねぇ、君も……二つ名があったりするの?」
「は?俺ですか?……ふっ、もちろんです。落ちる雷の如く、予測不能かつ迅雷の斬撃を繰り出す!『雷刃のイオルニクス』!です!」
「……そっか」
「因みハウリア以外も訓練させてたけど、何人参加できるの?」
「……確か……ハウリア族と懇意にしていた一族と、バントン族を倒した噂が広まったことで訓練志願しに来た奇特な若者達が加わりましたので……実戦可能なのは総勢百二十二名になります」
「なるほど……それなら全員送り届けれるね。今すぐ集めてきて。連れてくから」
「は?はっ!了解であります!直ちに!」
どうやらボク達が手伝うとは思わなかったようだ。一回間の抜けた反応をしていた。
同じ反応していたのはイオだけではなかったようだ。隣に立ち、ウサミミをピンッ!と立ててボクを見ていた。
「あ、あの士郎さん?大迷宮に行くんじゃ……」
「カムのこと、気になってたんでしょ?
「それは……そうですけど……でも……その……」
それでも口籠もるシア。
ボクはシアの頬に手を添える。
「正直言えば、早く大迷宮を攻略したい。でもね、シア。君がそんな調子じゃ、大迷宮の攻略なんてできないよ。それに心配ならそうだと言えばいいんだ。初対面の時の君はどうしたのさ」
「士郎さん……」
「あのね……ボクは君の事を大切に想ってるんだ。だからこそ君の不安くらい払拭してあげたいんだよ。だから君の口から言ってごらん?ちゃんと聞くから」
そう言って頭を撫でる。
「わたし……父様達が心配ですぅ……一目でいいから無事な姿を確認したいですぅ……」
「わかった……最初からそういえばいいんだよ。君が遠慮なんて何か変なものでも食べたと思っちゃったよ」
「士郎さん!?わたしそこまで無遠慮じゃないですよ!?」
そう言いながらボクの胸をポコポコと叩く彼女は可愛かった。
「やっぱりお兄ちゃんってタラシ気質な気がするよ……」
「恵里……今さらよそれは……」
その後周りに見られていたことを自覚したシアは真っ赤に染まった顔を両手で隠したが、ウサシッポをフリフリと揺らしていたので、気持ちを抑えきれていなかった。
ちょうどいいタイミングでイオ達が戻り、準備が整ったようだ。
アルフレリック達の見送りを受けながら、帝国に向けてフェルニルを飛ばした。
原作と大きく離れたランデルくん()
今作のランデルは内政もリリィやエリヒドの職務を見て習ってある程度仕事もできるようになっています。つまりリリィがお城を離れてもランデルがいるから安心だね!
あとなんかタイトル詐欺感が否めない……