ありふれない天の鎖の投影魔術師は世界最強   作:小説大工の源三

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夏休み期間は仕事がたくさんだなぁ

投稿また遅れます。

北の大地は涼しいから暑さでダメになることは無さそうです。ただコロナヤベェ……


ハウリア族への一喝と皇帝への謁見

カム達を救出したボク達は待機していたハウリア達が再会を喜んでいる場面に遭遇した。

カムの姿が目に入ると『族長!』と声を上げて喜びの声をさらに上げた。

再会の喜び合いを終えたカムがこちらに向いた。

 

「よろしいでしょうか団長?」

 

「うん。話して」

 

「まず、何があったのかということですが、簡単に言えば、我々は少々やり過ぎたようです……」

 

「やりすぎた?」

 

そう言って、始まったカムの話を要約すると、こういう事だ。

亜人奴隷補充の為に、疲弊した樹海にやって来た帝国兵を、カム達ハウリア族は相当な数、撃破している。逆にそれが、帝国兵をかなり警戒させたらしい。というのも、単なる戦闘の果ての撃破ではなく味方の姿が次々と消えていき、見つけた時には首を落とされているという暗殺に近い形だったからだ。

正体不明の暗殺特化集団という驚異を前に、帝国はその正体を確かめずにはいられなかった。そこで一計を案じたらしい。それが帝都での包囲網だ。要は誘い込まれたということである。

カム達も、あっさり罠にはまるという失態を犯したわけだが、それは、帝国が直接樹海に踏み込んで来るというまさかの事態に対する少なくない動揺があった、としか言いようがない。

または、看過できない程大勢の亜人を捕獲されてしまい頭に血が上ったということや、焦りが隙を生んだということもあるだろう。帝国の襲撃が、樹海を端から焼き払ったり、亜人奴隷に拷問まがいの強制をして霧を突破したりという、非道な方法だったというのも原因の一つかもしれない。

普段のフェアベルゲンなら、それでも組織的に動いて戦うことは出来ただろうが、おそらく、魔物の襲撃によって疲弊している情報も掴まれていたのだろう。タイミングも絶妙だった。

まさに泣きっ面にハチ状態では、カム達も完全には冷静になりきれなかったのだ。

それでもカム達は応戦して抵抗したが、大勢捕まってしまった。

 

「我等は生け捕りにされ、連日、取り調べを受けていたわけです。あちらさんの興味は主に、ハウリア族が豹変した原因と所持していた装備の出所、そして、フェアベルゲンの意図ってところです。どうやら、我等をフェアベルゲンの隠し玉か何かと勘違いしているようで……実は、危うく一族郎党処刑されかけた上、追放処分を受けた関係だとは思いもしないでしょうなぁ」

 

「それもそうだな……むしろそれが想像つく方が無理だ」

 

「それで、本題は?」

 

「はっ!本題ですが、我々ハウリア族と新たに家族として向かえ入れた者を合わせた新生ハウリア族は……帝国に戦争を仕掛けます」

 

彼の発言に場の空気が凍りつく。

シアは何を言っているのか理解が追いついていないようだ。

 

「何を、何を言っているんですか、父様?私の聞き間違いでしょうか?今、私の家族が帝国と戦争をすると言ったように聞こえたんですが……」

 

「シア、聞き間違いではない。我等ハウリア族は、帝国に戦争を仕掛ける。確かにそう言った」

 

「ばっ、ばっ、馬鹿な事を言わないで下さいっ!何を考えているのですかっ!確かに、父様達は強くなりましたけど、たった百人とちょっとなんですよ?それで帝国と戦争?血迷いましたか!同族を奪われた恨みで、まともな判断も出来なくなったんですね!?」

 

「シア、そうではない。我等は正気だ。話を……」

 

「聞くウサミミを持ちません!復讐でないなら、調子に乗ってるんですね?だったら、今すぐ武器を手に取って下さい!帝国の前に私が相手になります。その伸びきった鼻っ柱を叩き折ってくれます!」

 

そう言ってシアは宝物庫から星砕きを取り出してカムに突きつける。

身体強化も入っているのか、物理的圧力でカムを威圧する。

普段から明るくコミカルな彼女からは想像もできないほどの怒りが現れている。

しかしカムの目を見ると、イカれて言っているわけではなく、一つの覚悟を持った目をしていた。

冷静になれないシアはそれに気付けていないので、一旦彼女を落ち着かせるためにボクは尻尾をモフりだした。

 

「ひゃわ!?士郎しゃん、しょこはダメでしゅぅ〜」

 

しばらくモフり、シアが崩れ落ち、四つん這いになる。そのまま頭を撫でる。

 

「ちょっとは落ち着いた?カムの話はまだ終わってないんだから、吹っ飛ばすのは最後まで聞いてからにしよう」

 

「うっ……そうですね……すいません。ちょっと頭に血が上りました。もう大丈夫です。父様もごめんなさい」

 

「家族を心配することの何が悪い?謝る必要などない。こっちこそ、もう少し言葉に配慮すべきだったな。……最近どうも、そういう気遣いを忘れがちでなぁ。……それにしても、くっくっくっ」

 

「な、なんですか、父様、その笑いは……」

 

「いや、お前が幸せそうで何よりだと思っただけだ。……団長には随分と可愛がられているようだな?うん?孫の顔はいつ見られるんだ?」

 

「なっ、みゃ、みゃごって……何を言ってるんですか、父様!そ、そんなまだ、私は……」

 

カムにからかわれて、顔を真っ赤にしながらチラチラと上目遣いにボクを見るシア。見ればハウリア達が皆、ニヤニヤとした笑みを浮かべている。本当に、どいつもこいつもいい性格になったものだ。

 

「で、カム。なんで帝国に戦争を?」

 

「先程も言った通り、我等兎人族は皇帝の興味を引いてしまいました。それも極めて強い興味を。帝国は実力至上主義を掲げる強欲な者達が集う国で、皇帝も例には漏れません。そして、弱い者は強い者に従うのが当然であるという価値観が性根に染み付いている」

 

「つまり、皇帝が兎人族狩りでも始めるって言いたいのか?殺すんじゃなくて、自分のものにするために?」

 

「肯定です。尋問を受けているとき、皇帝自らやって来て、『飼ってやる』と言われました。もちろん、その場でツバを吐きかけてやりましたが……」

 

皇帝の顔にツバを吐いたというカムの言葉に、ハウリア達は「流石、族長だぜ!」と盛り上がり、天之河達は「あの皇帝に!?」と驚愕をあらわにした。

 

「しかし、逆に気に入られてしまいまして。全ての兎人族を捕らえて調教してみるのも面白そうだなどと、それは強欲そうな顔で笑っていました。断言しますが、あの顔は本気です。再び樹海に進撃して、今度はより多くの兎人族を襲うでしょう。また、未だ立て直しきれていないフェアベルゲンでは、次の襲撃には耐え切れない。そこで、もし帝国から見逃す代わりに兎人族の引渡しでも要求されれば……」

 

「なるほどな。受身に回れば手が回らず、文字通り同族の全てを奪われる……か」

 

「肯定です。ハウリア族が生き残るだけなら、それほど難しくはない。しかし、我等のせいで、他の兎人族の未来が奪われるのは……耐え難い」

 

「だけど今いる戦力で帝国が落とせるなんて思ってないでしょ?」

 

「もちろんです。平原で相対して雄叫び上げながら正面衝突など有り得ません。我等は兎人族、気配の扱いだけはどんな種族にも負けやしません」

 

そう言って、カムはニヤリと笑った。

 

「なるほど、暗殺ね」

 

後ろで雫が納得したように呟く。

 

「肯定です師範。我等に牙を剥けば、気を抜いた瞬間、闇から刃が翻り首が飛ぶ……それを実践し奴らに恐怖と危機感を植え付けます。いつ、どこから襲われるかわからない、兎人族はそれが出来る種族なのだと力を示します。弱者でも格下でもなく、敵に回すには死を覚悟する必要がある脅威だと認識させさます」

 

「皇帝の一族が、暗殺者に対する対策をしていないと思うか?」

 

「もちろんしているでしょうな。しかし、我等が狙うのは皇帝一族ではなく、彼等の周囲の人間です。流石に、周囲の人間全てにまで厳重な守りなどないでしょう。昨日、今日、親しくしていた人間が、一人、また一人と消えていく。我等に出来るのは、今のところこれくらいですが、十分効果的かと思います。最終的に、我等に対する不干渉の方針を取らせることが出来れば十全ですな」

 

なんともえげつない策だが、これは長い時間がかかる。その間に報復されるかもしれない。

どうしようにも分の悪い賭けである。

 

「……父様……みんな……」

 

シアは、悄然と肩を落とす。帝国兵を敵に回し、絶対監獄ともいうべき帝城の地下牢からも逃走を果たした兎人族を、皇帝は私的興味と公的責務として見逃しはしないだろうと、彼女も察したんだ。

兎人族に残された道は、他の同族を見捨ててハウリア族だけ生き残るか、全員仲良く帝国の玩具になるか、身命を賭して戦うか、そのどれかしかないんだ。

 

「シア、そんな顔をするな。以前のようにただ怯えて逃げて蔑まれて、結局蹂躙されて、それを仕方ないと甘受することの何と無様なことか……今、こうして戦える、その意志を持てることが、我等はこの上なく嬉しいのだ」

 

「でも!」

 

「シア、我等は生存の権利を勝ち取るために戦う。ただ、生きるためではない。ハウリアとしての矜持をもって生きるためだ。どんなに力を持とうとも、ここで引けば、結局、我等は以前と同じ敗者となる。それだけは断じて許容できない」

 

「父様……」

 

「前を見るのだ、シア。これ以上、我等を振り返るな。お前は決意したはずだ。ボスと共に外へ出て前へ進むのだと。その決意のまま、真っ直ぐ進め」

 

カムが、族長としてでも戦闘集団のリーダーとしてでもなく、一人の父親として娘の背中を押す、自分達のことでこれ以上立ち止まるなと、共に居たいと望んだ相手と前へ進めと。

 

「なら俺がなんとか「お前は黙ってろ」ぶへっ!」

 

天之河が何か言おうとしたが幸利の裏拳を喰らいぶっ飛ぶ。

 

「シア、今回ボク達はカム達のためにできることはほとんどない」

 

「……そう、ですよね」

 

早とちりするシアのほっぺをムニムニとこねる。やはり柔らかい。

 

「でも、サポートくらいはできる」

 

「ふぇ?」

 

カム達の方に向き直る。

 

「今回の一件はカム達が力を証明しなくちゃならない。だからボクらが戦っても意味はない。だけどね、シアがこんな顔してて何もしないで立ち去るなんてボクの信条に反するんだよ」

 

「だ、団長……な、なら一体?」

 

困惑するカム達を前にボクは今、結構嫌な笑顔になっているだろう。

息を吸い込み、大きく宣言する。

 

「カム!ハウリア族!シアを泣かせる作戦は全部却下!お前達には一夜で帝国を落とさせる!ハウリア族にはそれが出来ると証明して見せろ!あの一夜から帝国には安心はないと!いつ生命を奪われるか分からない恐怖を骨の髄まで覚えさせろ!」

 

辺りは静かになる。ハウリア族も硬直し、固唾を飲み込んでいた。

 

「返事ィィィィィィィ!」

 

「「「「「「「「「は、ハイィィィィィィィ!」」」」」」」」」

 

 

─────────────────────────

 

翌日。

ボク達は天之河の勇者という名目を使い、正面から堂々と帝都へ入った。

がしかし、受け付けの男がシアに目をつけた。

 

「よぉ、ウサギの嬢ちゃん。ちょっと聞きてぇんだけどよ。……俺の部下はどうしたんだ?」

 

「部下?……っ…あなたは……」

 

どうやらあの時、渓谷の時のやつの上司のようだ。

 

「おかしいよな?俺の部下は誰一人戻って来なかったってぇのに、何で、お前は生きていて、こんな場所にいるんだ?あぁ?」

 

「ぅあ……」

 

シアを追い詰めるようにジリジリと迫るグリッド。

根付いたトラウマはそう簡単には拭いきれない。更には家族が減っていく恐怖がフラッシュバックしているのだろう。

呻き声が漏れている。

ボクは彼女の背中を軽く押し、軽く頬を摘む。

ハッとした顔を見るので大丈夫そうだ。

 

「あなたの部下の事なんて知ったことじゃないですよ。頭悪そうな方達でしたし、何処かの魔物に喰われでもしたんじゃないですか?あと、私のことであなたに答える事なんて何一つありません」

 

「……随分と調子に乗ったこと言うじゃねぇか。あぁ?勇者殿一行と一緒にいるから大丈夫だとでも思ってんのか?奴隷ですらないなら、どうせその体で媚でも売ってんだろ?売女如きが、舐めた口を利いてんじゃねぇぞ」

 

こいつ……

シアを売女呼ばわりしたこの男に向けて、女性陣から途轍もない怒りのオーラが溢れる。

シアの態度に青筋を浮かべて怒りに表情を歪めつつも、その眼差しに気がついたようでグリッドは誤魔化し笑いをしながら光輝に向けて提案する。

 

「申し訳ありませんがね、勇者殿。この兎人族は二ヶ月ほど前に行方不明になった部下達について何か知っているようでして、引渡し願えませんかね?兎人族の女が必要なら、他を用意させますんで、ここは一つ――」

 

そう言い切る前にボクはそいつの顎を掴む。

 

「オイ……三下」

 

「あぐっ……!?」

 

「受け付けの出番は終わったんだ……さっさと別の客の対応したらどうだ?」

 

「てめ……」

 

「言葉がわからないのか?それとも下半身に脳味噌がついてるのか?テメェに使う時間があるとでも思ったか?理解ができたならどけ」

 

『ミシリ』と顎から音が鳴る。

骨にヒビは入れていないので、痛みはないが、圧だけは与える。

それでも怒りが収まらないようだが、視線で部下達に何か命令したようだ。

どうやら案内を促されたようだった。

 

─────────────────────────

 

そして何故か今ボク達は皇帝の前にいる。

いや、皇帝に目をつけられているからかもしれない。

だからといってそんなことはどうでもいいけど。

 

「お前が、天野士郎か?」

 

「ええ、そうですよ。ボクが天野士郎ですよ。お初にお目にかかります皇帝陛下」

 

ボクは最大限の笑顔を見せる。

こんなの学園祭の執事喫茶の時にやったから余裕である。

 

「似合わねぇ喋り方してぇねぇで、普段通り話しな。俺は、素のお前に興味があるんだ」

 

「そう?ならそうさせてもらうよ」

 

「くく、それでいい」

 

満足したようにガハルドは笑う。

 

「恵里、久しいな。俺の妻になる決心はついたか?」

 

「前言撤回はしません。というか僕の好みじゃないし」

 

「つれないな。だが、そうでなくては面白くない。元の世界より、俺がいいと言わせてやろう。その澄まし顔が俺への慕情で赤く染まる日が楽しみだ」

 

こいつボクのこと無視……いや、恵里の恋人がボクだと思ってないのかな?

 

「そんな日が永遠に来るわけないね」

 

「ほう?何故そんなことが言える?」

 

ボクは恵里を抱き寄せながらガハルドに宣言する。

 

「恵里が欲しけりゃ恋人のボクを超えてからしろってことだよ」

 

「なるほどなぁ……天野士郎、一つ聞かせろ」

 

「何?」

 

「俺の恵里はもう抱いたのか?」

 

「抱いたけど?何か問題でも?それとお前のじゃなくてボクのだからね?」

 

「そうか……なら奪った時が楽しみだな」

 

「ふうん……」

 

こいつどうやって消そうかね……

 

「まぁいい話を変えるぞ。リリアーナ姫からある程度は聞いている。お前が、大迷宮攻略者であり、そこで得た力でアーティファクトを創り出せると……魔人族の軍を一蹴し、二ヶ月かかる道程を僅か二日足らずで走破する、そんなアーティファクトを。真か?」

 

「そうだね」

 

「そして、そのアーティファクトを王国や帝国に供与する意思がないというのも?」

 

「そうだね」

 

「ふん、一個人が、それだけの力を独占か……そんなことが許されると思っているのか?」

 

「誰の許しがいる?許さなかったとして、何が出来る?」

 

ボクはガハルドの背後や周辺の気配が薄いところに目配せする。確実にそこに暗殺系統の連中がいるだろう。

それがわかっているという視線をガハルドに向ける。

どうやらそれが伝わったのか僅かに動揺したようだ。

 

「はっはっは、止めだ止め。ばっちりバレてやがる。こいつは正真正銘の化け物だ。今やり合えば皆殺しにされちまうな!」

 

「なんで喜んでるのかな……」

 

「おいおい、俺は『帝国』の頭だぞ?強い奴を見て、心が踊らなきゃ嘘ってもんだろ?」

 

「戦闘民族かよ……」

 

幸利から呆れの声が漏れた。

正直ボクも同じこと考えた。コイツサイ○人と同類だろ。

 

「それにしても、お前が侍らしている女達もとんでもないな。おい、どこで見つけてきた?こんな女共がいるとわかってりゃあ、俺が直接口説きに行ったってぇのに……一人ぐらい寄越せよ」

 

「馬鹿言わないでくれるかなぁ?ド頭カチ割るよ?…………いや、ティオならいいか」

 

「変態の扱いには困ってたしな……」

 

「っ!?な、なんじゃと……ご、ご主人様め、さり気なく妾を他の男に売りおったな!はぁはぁ、何という仕打ち……たまらん!はぁはぁ」

 

「ちょっと問題あるが、いい女だろ、外見は」

 

「すまんが、皇帝にも限界はある。そのヨダレ垂らしている変態は流石に無理だ」

 

「こ、こやつら、本人を目の前にして好き勝手言いおって!くぅうう、んっ、んっ、きっと、このあと陛下に無理矢理連れて行かれて、ご主人様の目の前で嫌がる妾を無理やりぃ……ハァハァ、んっーー……下着替えねば」

 

どうやらガハルドでもドMの扱いは無理のようだ。

冗談でアレは言ったけど、幸利からはあんまり本気度を感じられなかったなぁ……まさかね……

 

「俺としては、そちらの兎人族の方が気になるがね?そんな髪色の兎人族など見た事がない上に、俺の気当たりにもまるで動じない。その気構え、最近捕まえた玩具を思い起こさせるんだが、そこのところどうよ?」

 

玩具という言葉にシアがピクリと反応したが隣にいる雫がシアの手を握る。

 

「玩具なんて言われてもね……」

 

「心当たりがないってか?何なら、後で見るか?実は、何匹かまだ……いてな、女と子供なんだが、これが中々」

 

「興味ないね」

 

ガハルドの言葉ははったりだ。カムを通じて、捕まった者全員を連れ出したことは確認済みである。カマをかけているだけだ。

 

「ほぉ。そいつらは、超一流レベルの特殊なショートソードや装備も持っていたんだが、それでも興味ないか、錬成師……?」

 

「それで?」

 

作った本人のハジメも既に興味なさげに返答する。

 

「……そうかい。ところで、昨日、地下牢から脱獄した奴等がいるんだが、この帝城へ易々と侵入し脱出する、そんな真似が出来るアーティファクトや特殊な魔法は知らないか?」

 

「知らないし。脱獄されたならそれはきっとザル警備だったんだね」

 

「……はぁ……ならいい。聞きたい事はこれで最後だ……神についてどう思う?」

 

「ボク等の邪魔をするなら消すだけだ」

 

「あ〜もうわかったわかった……可愛げのねぇガキだな。外見だけなら綺麗なのによ……」

 

ガハルドがガリガリと頭を掻きながら悪態をつく。しかし、その表情にはやはり何処か楽しげな表情が浮かんでいる。自分に抗う相手というのが実に好みらしい。言葉の端々に含ませたものから、ハウリアとボク達が関係あるのは察しているだろう。

 

「まぁ、最低限、聞きたいことは聞けた……というより分かったからよしとしよう。ああ、そうだ。今夜、リリアーナ姫の歓迎パーティーを開く。是非、出席してくれ。姫と息子の婚約パーティーも兼ねているからな。真実は異なっていても、それを知らないのなら、『勇者』や『神の使徒』の祝福は外聞がいい。頼んだぞ?形だけの勇者君?」

 

そう言ってガハルドはこちらをひと睨みしてそのまま退室した。

しかしリリィが婚約か……初めて聞いたけど、ハジメだけ何も反応してなかったのは気になるな……もしかして誰かから聞いてたのかな?

 

「リリィ、婚約ってどういうことだ!一体、何があったんだ!」

 

「それは……たとえ、狂った神の遊戯でも、魔人族が攻めてくれば戦わざるを得ません。我が国の王が亡くなり、その後継が未だ十歳と若く、国の舵取りが十全でない以上、同盟国との関係強化は必要なことです」

 

「それが、リリィと皇子の結婚ということなのね?」

 

「はい。お相手は皇太子様ですね。ずっと以前から皇太子様との婚約の話はありました。事実上の婚約者でしたが、今回のパーティーで正式なものとするのです。魔人の侵攻で揺らいでいる今だからこそ、というわけです」

 

「王国には?協議が必要ではないの?」

 

「事後承諾ではありますが、反対はないでしょう。元々、そういう話だったわけですし、それに、今の王国の実質的なトップは私です。ランデルは未だ形だけですし、お母様も前には出ない人ですから。なので、問題ありません。今は何事も迅速さが必要な時なのです」

 

「……リリィは、その人の事が好きなのか?」

 

「好き嫌いの話ではないのです。国同士の繋がりのための結婚ですから。ただ、皇太子様には既に幾人もの愛人がいらっしゃるので、その方達の機嫌を損ねることにならないか胃の痛いところです。私の立場上、他の皇子との結婚というのは釣り合いが取れませんから、仕方がないのですが……」

 

「な、なんで、そんな平然としているんだよ!好きでもない上に、そんな奴と結婚なんて、おかしいだろ!」

 

「光輝さん達から見れば、そうなのかもしれませんが、私は王族で王女ですから。生まれた時から、これが普通のことです」

 

「普通って……リリィだって、女の子なんだ。ちゃんと好きになった人と結婚したいんじゃないのか?」

 

そこで言葉を挟んだのがハジメだった。

 

「そんなに納得できないなら、君が行動すればいいでしょ」

 

「南雲?」

 

「リリィがさっきから言ってるけど、納得するしないの問題じゃないんだよ。政略結婚なんて昔の日本でもあったでしょ。それが当然の世界なんだから、僕達の世界の理屈をこの世界に当てはめるのはやめたら?」

 

「お前はリリィのこと、何とも思わないのか!?」

 

「なんでそんなこと聞くの?この件で僕らが口出し出来る余地はないんだ。君が納得できないなら、何か一つでも行動したら?まぁそれで僕達の邪魔になるようなら止めるけど」

 

ハジメがそう言うと天之河はギリッと歯を食いしばり、悔しそうに拳を握っていた。

その後一言二言交わして別の部屋に別れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




原作だとハー○マンしてたけど士郎くんはそんなことしてないので一喝しただけですね

そしてガハルドに対して殺意マシマシの士郎くん
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