ありふれない天の鎖の投影魔術師は世界最強   作:小説大工の源三

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本当に投稿遅くなってすみません。
繁忙期は忙しくて執筆する気力が湧きませんでした。


樹海の大迷宮の試練

帝国から亜人族奴隷を送り届けて、数日。

霧が晴れるまでの間、各々は自己鍛錬をしていた。

士郎は恵里の身体の調整も兼ねて模擬戦をしている。

 

「はぁぁぁああ!」

 

ガキン!

 

恵里の握るデュランダルがボクの干将とぶつかり合う。ギリギリと刃が擦れ合う音は互いの武器に負担がかかる。

だが、デュランダルは折れない剣だ。このままだと折れるのはボクの干将の方が折れてしまうが、それをさせまいと、莫耶で切り返す。

 

「ふっ!」

 

次いで振り下ろされるバルムンクを莫耶で受け止める。

さらに銀翼から魔弾が放たれるのでそれを熾天覆う七つの円環を遠隔操作で防ぎ、そのまま回し蹴りで恵里を吹っ飛ばす。

 

「ガハッ……!」

 

容赦がないかもしれないがそうも言ってられないのだ。

くるりと身を翻して着地をした恵里は剣に魔法を纏わせて再び斬りかかる。

ボクは地面から柱を生やして妨害する。

その柱を恵里は次々切り裂き、ボクのところへ向かってくるのだが、ボクは切られた柱から別の柱を生やし、恵里を挟む。しかし、瞬時にそれをバラバラに銀翼で破壊、そのまま突っ込む。

 

「『天鎖』っ!」

 

生成魔法の応用で破壊された岩から鎖を作り恵里を縛る。

普通ならただの硬い鎖だが、恵里の身体を改造するのに使った素材には神性が含まれていた。

なのでこの鎖はそういったモノに強い捕縛能力が発動する。

吊るされた恵里は剣を手放し、遠隔操作で鎖を切る。そしてそのまま拳で殴りがかってくる。

その拳を受け止め、掴み地面に叩きつける。

 

「うぐぁっ……」

 

苦悶の声を漏らすも、腕に足を巻き付ける。ボクは腕を振るい、恵里を投げようとするが、恵里はすぐに手足を離して距離を取る。

 

「『火柱』!」

 

後ろに下がりながら恵里は炎魔法を放つ。

それを対処しようと拳を構えようとしたがさらに別の魔法が火柱の後ろから放たれていた。

 

「『炎浪』!」

 

拳で対処するのをやめ、干将・莫耶を消して別の武器を取り出す。

月と太陽が描かれた軍配を二つ手に持ち、勢いよく振るう。

 

「風林火山……『風』!」

 

竜巻が炎の魔法を飲み込み炎の竜巻となり恵里に襲いかかる。

 

「『深渦』っ…!」

 

恵里は即座に水の竜巻を放ち相殺しようと試みる、がしかし炎を消すことには成功したものの、竜巻は相殺しきれずもろに喰らう。

 

「キャァァァァァァ!」

 

竜巻が消え、恵里は地面に叩きつけられるかと思ったが、背中の銀翼で身体を覆い、上手く防いだようだ。

とはいえ上級魔法クラスの攻撃を受けたので肩で息をするほど消耗していた。

 

「……ハァッ……ハァッ……お兄ちゃんそれ、鈴に渡した武器?」

 

「そうだね。まだ恵里は鈴が使ってたの見たことなかっただろうから、一部能力見せておいた方が良さそうだと思ってね」

 

「そっか……」

 

数時間模擬戦をした後、恵里の身体の調整と万が一の備えのために改造を施しているが、どうしても最後の調整が未だに上手くいかない。

やはり変成魔法を習得するしか無さそうだ。

 

「一先ず今できる最高の調整だよ……」

 

「ありがとうお兄ちゃん」

 

「最後のさえ出来れば完璧なのにね……」

 

「無い物ねだりしても仕方ないよ」

 

恵里の言う通りだ。

 

「そうだね。今は目先のことに集中しよう」

 

そう言ってボク達は、食堂に向かう。

先程、時計を確認したが、既に夕食の時間だった。

食堂の扉を開けると出来上がった料理を運ぶ幸利の姿が真っ先に目に入った。

 

「おう、もう出来てるぞ」

 

「最近料理当番代わってもらってごめんね」

 

「別に良いぞ。楽しんで作ってるからな」

 

そう言って料理を並べに戻った。

 

─────────────────────────

 

翌日、フェアベルゲンの霧が晴れて、樹海の奥に進めるようになった。

今回の迷宮探索のメンバーに遠藤くんは含まれていない

最初は彼も参加させようと思っていたが、彼の長所を伸ばすのならば、兎人族の所で鍛えた方が効率が良いと考え、カム達に預けることにした。

一抹の不安があるが、流石にそうならないだろうと思い、不安を頭の隅に追いやった。

 

迷宮前に向かう道中、魔物が襲いかかってくるが、それらの対処は全て天之河達に任せている。

このくらいは余裕で倒してもらわないと困るし、ウォーミングアップも兼ねている。

恵里は単独で魔物を撃破している。

 

「エリリン……もうチート的存在だね……」

 

「鈴、僕がチートならお兄ちゃん達はなんなのさ」

 

「え?バグとか?」

 

「うわぁ……否定しきれない」

 

「あはは……まぁ魔物食べてる時点でもうお察しだよね……」

 

食ったら死ぬもの食べて生き残った時点でバグだと言うのは理解している。

 

「みなさーん、着きましたよー」

 

数十分して漸く、大樹の下にたどり着いた。

 

「それじゃあ、証を窪みに嵌め込むよ」

 

ボクは宝物庫に保管してある迷宮攻略の証をそれぞれに対応する窪みに嵌め込む。

 

「よし、あとは再生魔法を使うだけだね。カム達は離れて」

 

「了解です、団長。ご武運を」

 

「先輩!みんな気をつけてくれよ!」

 

そう言ってカム達は自分達の領地に向かって行った。

彼らを見届け、見えなくなったので、香織が再生魔法を使う。

今までの比ではない光が大樹を包み込み、香織の手が触れている場所から、まるで波紋のように何度も光の波が天辺に向かって走り始めた。

燦然と輝く大樹は、まるで根から水を汲み取るように光を隅々まで行き渡らせ徐々に瑞々しさを取り戻していく

 

「あ、葉が……」

 

シアが、刻々と生命力を取り戻していく大樹にうっとりと見蕩れながら頭上の枝にポツポツと付き始めた葉を指差す。まるで、生命の誕生でも見ているかのような、言葉に出来ない不可思議な感動を覚えながら見つめるボク達の眼前で、大樹は一気に生い茂り、鮮やかな緑を取り戻した。

少し強めの風が大樹をざわめかせ、辺りに葉鳴りを響かせる。と、次の瞬間、突如、正面の幹が裂けるように左右に分かれ大樹に洞が出来上がった。数十人が優に入れる大きな洞だ。

そこに入るが行き止まりで何もなかった。

 

「お兄ちゃん……」

 

「これは多分転移するやつだね……」

 

そして予想通り、足元に魔法陣が現れる。そのまま光に飲み込まれ視界が真っ白になった。

 

─────────────────────────

 

視界が晴れるとそこは森の中だった。

しかもたった一人である。

 

(いや、いきなりこれ?)

 

声を上げようとしたのだが声が出なかった。身体にも違和感を感じたので近くの水辺で自身の姿を見る。

そこに写ったのは大きなカマキリの姿だった。

 

(うわぁ……これは……ないわ……。皆も同じ事になっているのかな?)

 

そう考えながら皆を探すのだが、気配すら感じれない。どうやら技能すら使えなくなっているみたいだ。

この状態で魔物がウヨウヨいる場所を歩かなければならないのがキツい。

恐らく紡がれた絆の道標というのは、まず姿が変わっても信頼できるかどうかも試されているのだろう。

しばらく歩いていると魔物を見かけたので、ゆっくりと見つからないよう移動すると、ハジメ達を見つけた。

その中にはゴブリンやオーガがいた。おそらく誰かがボクのように変化しているのだろう。

ならば何か見抜く方法があるのだろうか。

 

そう考えボクはハジメ達の前に姿を現した。

それと同時に天之河がボクに斬りかかろうとしてきたが、恵里が天之河をぶっ飛ばした。

 

「な、何をするんだ!?」

 

「それはこっちのセリフだよ!」

 

「光輝……このカマキリは士郎さんよ」

 

「な!?それは本当なのか!?」

 

半信半疑の天之河に証明するためにいくつかのボク達しか知らない質問に答えることで証明した。

 

(それにしてもよくわかったね三人共)

 

「お兄ちゃんがどんな姿になっても僕達ならすぐにわかるからね」

 

(?言いたいことわかるの?)

 

「はい!わたし達には士郎さんの考えてることならわかるのですぅ!」

 

(それは嬉しいな……)

 

「士郎、これ使って」

 

そう言って渡された念話石を身につける。

 

『あーあー……どう?伝わってる?』

 

「わかるよお兄ちゃん」

 

『よかった』

 

とりあえずは会話ができるので安心した。

 

「士郎殿、その鎌は切れたりするのか?」

 

『切れるね。大木は切れないけど』

 

「戦いには参加でなさそうだな」

 

『そうだね。今のボクは役立たずな訳だからよろしくね』

 

「任せてねお兄ちゃん!」

 

それはそれとしてそこにいる脳筋そうなのは坂上くんなのはわかるけど、ゴブリンはどっちがどっちなのか気になった。

 

『ねぇ、そこのゴブリンはどっちがユエでティオなの?』

 

「ハジメにくっついてるのがユエで幸利にくっついてるのがティオ」

 

『なるほど……ボクがいない時何があったの?』

 

「えっとね……」

 

─────────────────────────

 

士郎が別のところに飛ばされた同時刻。

ハジメ達はユエ達が偽物だと即座に見抜き、偽物を潰していた。

恵里達も容赦なく士郎の偽物を叩き潰していた。

叩き潰されたそれは赤銅色のスライムになり地面へと吸い込まれていった。

 

「全くタチが悪い……」

 

「この先も偽物ばかり出てくるのかな……」

 

「そう考えると厄介というより、この大迷宮の作者の性格の悪さが出てくるわよ……」

 

「優花の言う通りだ……仲間との絆を信じて本物を探す……まぁ糞神も仲間割れとか好きそうな奴だから試練としては正しいけどな」

 

そう言ってしばらく進むと、ユエの姿が現れたのだが、その姿はあられも無い姿だった。それを見たハジメと香織は坂上くんと天之河の両目を潰す勢いで目潰しを放った。

 

「「ギャァァァァァァァ!?」」

 

「やりすぎだ馬鹿!」

 

スパパーン!

 

真っ先に宝物庫からハリセンを出して叩いたのは幸利だった。

 

「ごめん……ユエのあんな姿他の奴に見せたくなかったから……」

 

「だからってやりすぎだアホ」

 

そうして進むと今度はティオのあられも無い姿が現れる。

次は幸利がさっきの2人の顔面にグーパンをぶちかました。

 

「幸利……」

 

「すまん……」

 

その後現れた士郎の偽物も恵里が魔力砲で消しとばしていた。

 

─────────────────────────

 

「て感じかな?」

 

『2人は災難だったね』

 

『いや、先輩、災難でしたよホント……』

 

「見つかるまで、俺たち目隠しさせられましたからね……」

 

『まぁ何はともあれ無事全員合流できてよかった』

 

そう言って先に進む。

行き止まりに到着するとそこにはトレントの魔物がいた。

最初は天之河達が相手をすることになった。

 

「『聖絶・散』!」

 

鈴の出す結界がトレントの攻撃を防ぐ。的確なタイミングで防ぐので被害も攻撃の余波も最小限に抑えられているが、あまりにも数が多すぎる。結界にもヒビが入り始める。

 

「くっ……攻撃が激しい……!」

 

『光輝!俺たちが鈴の手を開けさせるぞ!』

 

「龍太郎!?……わかった!」

 

『鈴!俺と光輝で攻撃を止めるから、お前は有効打を頼む!その隙に一気にたたみかける!』

 

坂上と天之河が特攻し、攻撃を受け止める。

僅か数秒だが、その数秒が鈴が攻撃へと転じるに充分な時間だった。

 

「風林火山……『火』!」

 

鈴が軍配を振るうと無数の火炎弾がトレントに襲いかかる。流石に迷宮の魔物なだけあって、そう簡単に燃えはしなかったが、同じところや、守りの薄いところに火炎弾を飛ばし、炎上させる。

 

「よし!今だ光輝!神威を頼む!」

 

「っ!わかった!」

 

そう言って天之河は神威の詠唱を始める。

 

「風林火山……『山』!」

 

さらに鈴は追撃として軍配を地面に叩きつけて、地中の鉱物を固めて下から突き上げて攻撃する。

浮いたところに坂上が回り込んで、ダブルスレッジハンマーで地面に叩きつけ、バウンドさせる。

 

「──────────────みんな準備できた!行くぞ!『神威』!」

 

天之河の渾身の神威がトレント目掛けて放たれる。防御体制すらまともに取れずにモロに食らったトレントはバラバラと崩れ───去ることはなく次の試練の扉に変化した。

全員が扉の中に入ると再び転移の魔法陣が現れ、別の場所へと移動するのだった。

 

─────────────────────────

 

ピピピピッピピピピッピピピピッピピピピッ

 

目覚まし時計の音が響く。

ボクはそれを手探りで探し当てて止める。

もう既に朝になっており、雀の鳴き声が聞こえてくる。

 

「まだ、時間に余裕がある……また寝よ……」

 

そう思い、再び横になろうとしたところだった。

 

「士郎くん、二度寝はダメだよ?」

 

そう言って二度寝を阻止しようとしたのは、幼馴染で恋人の中村恵里だ。

父さんの友人の娘さんで小さい頃から兄妹のように過ごしてきた仲だ。

 

のように?

 

「まだ時間あるでしょ……」

 

「そう言って遅刻しかけたのはどこの誰かな?」

 

実際遅刻しかけたことがあったので、何も言えなかった。

 

「わかったよ……」

 

そう言って布団から出て、制服に着替える。

朝食を食べ終え登校する。

 

「士郎さーん早く行きましょう!」

 

「今日、阿迦菜先生に用事があるんでしょう?早くしないと時間なくなっちゃうわよ」

 

玄関の戸を開けてすぐ目の前には恵里と同じく恋人の八重樫雫とシア・ハウリアだ。

しすぎは八重樫道場の娘さんで大きな大会にも出ている屈指の実力者だ。ボクもそこで身体を鍛えているが、彼女には及ばない。

シアは海外からの長期留学でこちらに来ていて、この町に親戚が住んでいるので、そこで暮らしている。

恋人3人なんて非常識だと思うが、ボク達が決断した選択だ。

 

「今日って何かあったっけ阿迦菜先生以外に……」

 

「何もないですぅ」

 

「私も今日は剣道の練習のない日だから、放課後は自由よ」

 

「ならさ、あそこ行かない?最近できたゲームセンター。そこにしかない、ぬいぐるみが取れるクレーンゲームあるからさ」

 

「恵里、それは私に取って欲しいの?」

 

「バレたか……まぁ僕のお金で取ってもらうからいいでしょ?」

 

雫は呆れたように恵里を見る。

 

「しょうがないわね……」

 

そう話している内に学校へ到着する。

いつも通りハジメ達やクラスメイトと話して授業を受けてそれを繰り返す内に放課後になる。

下校途中幼稚園に寄り、リーニャを迎えに行く。

親御さんがどちらも忙しいので、ボク達が迎えに行くことになっている。

 

「おにーちゃん!」

 

「おかえりリーニャ。幼稚園は楽しかった?」

 

「うん!」

 

「それは良かったね。このまま帰る?それとも僕達と一緒にゲームセンターに行く?」

 

「行きたい!」

 

「こら、恵里。それは流石にダメでしょ」

 

「まぁまぁ雫。一度聞いてみよう?というわけで士郎くんお願い」

 

「いや、雫の言う通り許可もらえないでしょ……まぁ聞くけどさ」

 

こういう所は甘いのがボクだ。正直、ボクもリーニャと行きたかったので、連絡帳から、リーニャの父親のを探し、電話をする。幸い今の時間は忙しい時間ではない。

 

「もしもしシュロムさん?」

 

電話がつながり、聞き覚えのある声が聞こえた。

 

『やあ士郎くん。どうしたのかな?』

 

「リーニャがゲームセンターに行きたがってて……」

 

『士郎くん達がいるなら良いよ』

 

いつもの優しい声で許可をだすシュロムさん。

 

「分かりました。お忙しい中すいません」

 

『リーニャのことよろしくね。それじゃあ切るよ』

 

「はい。失礼します」

 

電話を切る。

 

「リーニャ、行っても良いってさ」

 

「やった!」

 

両手を上げて喜ぶリーニャ。とても可愛らしい。

 

一度それぞれの家に戻り、私服に着替えて、合流する。

ゲームセンターに向かい、クレーンゲームで景品を取ったり、音ゲーでハイスコア出したり、楽しんだ。

家に帰り、恵里と一緒に夕食を食べて風呂に入って、布団に入る。

いつもの幸せな日常に終わりを告げる。

 

幸せ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これが?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

違う。

 

こんなのは幸せなんかじゃない。

そう思ったボクは飛び起きる。

それに追付いして恵里も目を覚ます。

 

「士郎くん?」

 

不思議そうな顔をこちらに向ける。

 

ああ……ここは幸せだが違う。ここは───理想だ……ボクが……ボクが望んだ、誰も傷ついていない世界だ。

今の恵里は天野恵里であって中村恵里ではないし、ボクのことを士郎くんなんて呼ばない。ましてやリーニャの両親の声なんて知らない。

 

「ああ……吐きそうだ……ホントの世界で幸せになりたい……」

 

こんな理想は糞食らえ

 

「士郎くん、気持ち悪いの?風邪ひいた?」

 

「ねぇ恵里。今幸せ?」

 

「うん。幸せだよ」

 

「そっか……」

 

即答したことでボクは全身に力を込める。

そしてガラスが砕けるようにボクの体が迷宮に入ってきた時の姿に戻る。

 

「ごめんね恵里、雫、シア……必ず元の世界で抱きしめるから」

 

そう言ってボクは全身から魔力を放出した。

 

─────────────────────────

 

3人称side

 

「ん……は!?」

 

辺りを見渡すとそこは夢を見る前に入った巨樹の洞と同じような、されど二回りは大きい場所だった。

周りを見ると既にハジメと香織、ユエが目を覚ましていた。他は琥珀のような状態になっていた。

 

「おはよう士郎。4番目だね」

 

「真っ先に起きたのはハジメ?」

 

「うん、その次に香織とユエだった。4番目の士郎くん?」

 

「誰が寝坊して○カチュウもらったスーパー○サラ人だ。それとくん付けで呼ばないで……今すっごい嫌悪感が……」

 

「夢でなんかあったのか?」

 

後ろから声がしたので振り向くといつの間にか目を覚ました幸利が後ろで胡座をかいていた。

 

「幸利……まぁ……うん……あんなのを見た自分が嫌になるよ……誰も死の苦難を乗り越えてない世界なんてさ……」

 

「おう……そりゃ目に見えて落ち込むわな……」

 

「そういう幸利くんはどんな夢見たの?」

 

「ああ……理想は糞食らえって思ったわ……それと俺が天之河の奴をどれだけ嫌いなのかよーくわかったしな……」

 

幸利が見た夢は、優花と、ティオと暮らして、料理を追求するものだった。その上で自分が何でもできる人だったようだ。

 

「そういうオメーらはどうだったんだよ」

 

「僕は香織やユエ達と学生生活してた」

 

「私はハジメくんと同じだね」

 

「……私はハジメと香織と一緒に王宮で暮らしてた」

 

「おー地球組はそうなのか。お姫様はやっぱしそういう夢を見るのか」

 

そう話している内に雫とシアの琥珀が溶け出し地面に吸い込まれていた。

 

「2人ともおはよう」

 

「やっぱり夢ね……あんなの士郎さんじゃないわ……」

 

「士郎さんは過保護でもあそこまで過保護じゃないですぅ」

 

「2人ともどんな夢見たの……」

 

「士郎さんが王子様で、お姫様になった私達と暮らしてたわ……」

 

「それ絶対ボクじゃない」

 

「わたしは士郎さん達ががハウリア族を守ってくれた夢ですね……それも追い出される前に。自分の今と過去を否定するような世界だったので」

 

「シアちゃんはそれで戻ってこれたんだね」

 

「はい!わたしは後ろでもなく前でもなく隣に立っていたいんですぅ!」

 

そして次に優花が目を覚ました。それに続いてティオも目を覚ました。

 

「ぬがぁー!ご主人様の折檻はそんなに生温くないわァーー!一から出直して来るんじゃな!」

 

「「「「「「…………。」」」」」」

 

どんな夢を見たか察してしまう一同。

 

「ご主人様よぉ~ただいま戻ったのじゃ~!愛でておくれ~!」

 

そう言いながら幸利目掛けてル○ンダイブをを決めながら飛び込んでくるティオ。

幸利がはたき落とそうとした時、突然後ろからワイヤーがティオの身体に巻きつき、地面に落ちる。

 

「おはようみんな」

 

優花だ。手に持ったワイヤーがティオに巻きついていた。

そしてとても良い笑顔だったのだが、目の奥は何も笑っていなかった。

 

「おう、優花おはよう……」

 

「ちょっとティオと話があるからアタシ離れるわ」

 

「お、おう……あんま時間かけんなよ?」

 

「わかってるわ」

 

ズルズルとティオを引きずりながら、少し離れた場所まで歩いていった。

 

─────────────────────────

 

優花side

 

アタシはティオを連れて離れた場所に移動していた。

 

「優花よ、ここで良さそうじゃぞ」

 

そう言うティオ。彼女はアタシが話したいことがわかっているみたいだ。

 

「お主は夢で何を見たのじゃ?」

 

「アタシは地球で料理店の娘だったのよ。そこでアタシと幸利とティオの3人で店を切り盛りしてたわ」

 

「ほう……」

 

「しかも、幸利の奥さんとしてね……」

 

「それについてお主はどう思ったのじゃ?」

 

「それは……」

 

正直言えば悪くないどころかすごい嬉しかった……と言うより、アタシは自分が彼のことが好きだとあの夢に理解させられた。

あの時モヤモヤしたのは、ティオが幸利に何度もスキンシップをして嫉妬や自分に正直になれていたことが羨ましかったのだ。

 

「現実でもそうなれたら良いな思ったわ……」

 

「ならどうするのじゃ……」

 

「この迷宮の攻略が終わったらちょっと甘えてみるわ……」

 

振り向いてもらえるよう、今更だけど、行動しようと思った。

 

「ならば妾と協力せぬか?」

 

「協力?」

 

「うむ。ご主人様は妾達を見る目が少し他と違うのじゃ」

 

「え?」

 

「妾の感が間違ってなければじゃが、押せばイケると思うのじゃよ」

 

ふと、今までのことを振り返ってみた。

地球にいた頃から彼とはかなり距離が近かった。というより彼と一緒にいる、というのが普通、の感覚だった。

あの時から彼が自分の家に来た日から徐々に惹かれてたのだろう。

料理が美味しいと言い、趣味が同じで、それでいて一つのことを追求しようとする姿が。

この世界に来てからも料理への熱意は失われず、むしろ燃え上がっていた。この世界特有の食材に目を光らせていたから。

彼がアタシのことをどう思っているかはわからないけど、好意的に想ってくれているのなら、それに乗っかる手はない。

 

「そうね。一緒に幸利の奴を堕としましょう?」

 

「ふふふっ……優花も覚悟が決まったようじゃのう」

 

「ええ…!」

 

覚悟しなさい幸利。

乙女の本気、見せてやるわ!

 

─────────────────────────

 

3人称side

 

優花とティオが十数分して話し合いから戻ってきた。

 

「おかえり2人とも」

 

「話し合いは終わった?」

 

「ええ。少し悩みをぶちまけただけだから」

 

そう言った優花の顔は少し晴れていた。

隣にいるティオも、満足気な顔をしている。

 

「しかし、残りの連中は目が覚めねぇな……」

 

2人が話し合っている間に誰も目覚めていない。

 

「……恵里」

 

士郎は未だに目覚めぬ義妹が心配だった。

今までの生活を振り返り、彼女の実の父親がどれだけ大きな存在なのかはわかっている。

その人が生きている夢を見せられているのなら、目覚めるまで時間がかかってしまう。

だが士郎は恵里が目を覚ますと信じている。

すると恵里の琥珀が溶け始める。

 

「んにゅう……ふわぁ……」

 

目をパチクリさせてこちらを見る。

 

「おはよう、恵里」

 

「おはよう……しr……お兄ちゃん」

 

「目が覚めて良かったわ」

 

「うん……」

 

「それで恵里さんはどんな夢を見たんですか?」

 

シアがそう聞くと恵里は俯き少ししてから話し始めた。

 

「地球でお兄ちゃんと暮らしてる夢だったよ。お父さんも生きててね……」

 

「やっぱり理想的な夢を見せられてたのね……」

 

「うん……」

 

そういう恵里の表情は士郎達からは見えなかった。

数分後に鈴が目を覚まし、その次に龍太郎が目を覚ました。

 

「鈴!」

 

「……あれ?ここ迷宮?」

 

「そうだよ。よかった……目を覚ましてくれて……」

 

「まぁ……あまりにも現実離れした夢だったし……」

 

そう言って苦笑いをする。

 

次いで龍太郎も目を覚ましたのだが、天之河だけが目を覚ますことができなかった。

このまま放置するのもなんなので、強制的に目を覚まさせた。

 

「……あ?あれ、香織?雫?ここは?俺は、二人と……」

 

目を覚ました天之河は辺りを見渡す。すぐに理解したのか、自分だけ失敗したことに悔しそうに拳を握った。

 

「悪いけど悔しがってる暇はないからね」

 

「……ああ、わかってる」

 

次のステージへの魔法陣へと足を踏み入れるのだった。

 

 

 

 




久しぶりにここまで長いので書いた気がする。
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