ありふれない天の鎖の投影魔術師は世界最強   作:小説大工の源三

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皆様あけましておめでとう御座います。
今年も自分の小説をよろしくお願いします。


Icing Biohazard

士郎side

 

鏡のように磨かれた氷の壁が続くこの迷宮はさながら【ミラーハウス】のようだ。

小学生の頃に遊園地のアトラクションで恵里が駆け出して壁に頭をぶつけて半泣きになったのを思い出す。

 

「お兄ちゃん?変なこと考えてないよね?」

 

「なんも考えてないよ…」

 

相変わらず感の鋭い義妹様だこと……

 

「しっかし、よく魔人族の連中はここをクリアしたな……」

 

「そうね……アタシ達みたいに便利アーティファクトもないのに」

 

あまりの寒さに恵里が試しに結界の外に放った水魔法は、出た瞬間に凍りつく。おまけにチラつく雪に触れれば、凍傷を負わせる。

 

「龍太郎結界の外に出るなって……」

 

「すまん。またやっちまった…」

 

簡易的な回復魔法を天之河が使う。全属性適正があるのだからできるに越したことはないとのことで、天之河には殆どの魔法を頭に詰め込ませた。

 

「水魔法なんてここじゃ使い物にならないよ……」

 

「……おまけに炎魔法も発動を阻害される。でも、私達には関係ない」

 

「それにここに来る時には相当、防寒具を着込んで来たのじゃろうな……妾にはこの寒さは堪えるのじゃ……」

 

幸利にピッタリくっつくティオは他の人よりも防寒具を着込んでいる。

竜──というよりも変温動物に近い生態なのかもしれない。

しばらく進んでいくと、氷壁の中に沢山の死体が見え始めた。

 

「防寒アーティファクトがなかったら僕達も彼等と同じ末路を辿ってたのかもね……」

 

「死体だらけだね……」

 

「ああはなりたくねぇな……俺なんかがこんな目に遭ったら氷れる美女じゃなくて筋肉達磨だぞおい」」

 

「龍太郎くん……w」

 

眠るよう目を閉じたまま氷の壁の中に埋まっている男の姿があった。まるで、疲れて壁に背を預けながら座り込み、そのまま凍てついてしまったかのようだ。外傷一つ見受けられないので、寒さのせいで意識が飛び、そのまま……ということなのだろう。

 

「士郎さん、あの死体おかしくないですか?」

 

「まぁ、変に綺麗に埋まってるね……」

 

「はい。まるで座り込んでいた場所まで氷の壁がせり出てきたか、座ったままの状態で壁の中に取り込まれたみたいな……」

 

「まるで標本ね……」

 

雫の言う通り、標本──透明なガラスケースに入れられた、博物館に展示されている旧人類の再現模型のようだ。

 

「何かされても困るし、念の為砕いておくか……」

 

そう言いながらボクは偽・螺旋剣を投影し狙撃する。ハジメもドンナー・シュラークで破壊していく。

 

ゴガガガガガガガガッ!!

 

偽・螺旋剣は大きな音を立てて飛んでいき周囲を抉るように真っ直ぐ飛び、最後には爆散する。

 

「うわぁ……お兄ちゃんやりすぎじゃないこれ?」

 

少し魔力を込めただけでこれである。全力で放ったらどうなるか分かったもんじゃない。扱いには充分気をつけねば。

 

そう考えながら先に進んでいく。

 

─────────────────────────

 

「……またよ」

 

「おいおい、えらく数が増えてんぞ……」

 

「多分、ヴェアベルト達が攻略した後にゾロゾロ来たんだろうね。殆どが軍服だよ」

 

氷壁の中に囚われた魔人族の服装から考察する。中には個人的に挑んだ者もいたのだろう私服の防寒具の者もいた。それでも十数人なのだが。

 

「ふむ。攻略情報があれば行けると踏んだのじゃろうが……やはり、そう簡単にはいかなかったようじゃのう。他のルートのことも考えると、どれだけの者が挑んだのやら」

 

「でも、国を挙げて挑んだのなら、ヴェアベルトさん達以外にも攻略した人がいる可能性もあるわけだよね……また魔物の軍団が再編成されて……ってことも」

 

王国の心配をする香織。

 

「流石にそれは直ぐにはないと思うわ、香織。ハジメのヒュベリオンに警戒して、来ないのと、内通者の可能性は徹底的に潰したし、大結界だって修復した、兵士達の警戒心も高いのだから」

 

「そう……だね……雫ちゃん」

 

それでも不安なものは不安なのだろう。

 

「……安心してくれ、香織。力を手に入れて狂った神を倒し、人間も魔人も皆、俺が救って見せる。ここに残ってリリアーナ達も俺が守る。全ての神代魔法を手に入れれば、いずれ自力で帰れるからな。俺は、誰も見捨てない」

 

「……光輝くん」

 

実に勇者らしい言葉だが、余りにも軽く聞こえてしまう。ヴェアベルトと同じ事を言っているのに、言葉の重みと世界への理解度が違いすぎる。

更に言えば、善意だけでなくナニカ別のモノも混ざっているようにも感じる。

 

「まぁリリィとランデルには防衛兵器でも渡すよ。例えば、ヒュベリオンとか、大陸間弾道ミサイルとか、高速軌道型戦車とか、慣性と重力を無視した戦闘機とか……」

 

「南雲……国の為っていうのはわかるが……プレゼントするのにそれは流石にないだろ……俺でもわかるぞ?」

 

「そうだぞ……この世界のパワーバランスの崩れんぞ……」

 

「知らないよ。僕が個人的に渡すんだから、パワーバランスもクソもない。死んだり侵略されるよりかはマシだよ」

 

ンンンンンンンンンンンまさに暴論!

 

と何処ぞの陰陽師が言いそうだ。

すると、大地感知に気配が引っかかる。しかも四方からだ。

 

「士郎さん…っ!」

 

「うん。全員周囲警戒!四方から気配!」

 

全員が戦闘体制を取り、襲撃に備える。

暗がりから現れたのは、先程から目にしていてた氷漬けにされていた、死体の軍隊だった。

 

「なるほど……こうして防衛手段と共に試練に組み込んでいく訳か」

 

「なんにせよ、元人だろうと関係ないよ」

 

「暴れるとするか……」

 

幸利の言葉を皮切りに戦闘が始まる。

ゾンビが雄叫びを上げて襲い掛かる。

 

「い、嫌ァ!来ないでぇ!聖絶・爆散!」

 

リアルバイオにパニックになった鈴がバリアバーストの散弾をゾンビに向けて放った。

恵里は銀翼の羽を雫は斬撃、シアは星砕きでゾンビを葬り去る。

しかし粉砕したはずのゾンビは氷を使って再生し始める。

 

「んだこりゃ?」

 

「再生……とはまた違うね」

 

「修復に近いな……ミレディのとこのゴーレムみたいなもんか」

 

「それに魔石がないからどっかで操ってる本体か何かあるみたい」

 

「それじゃあ一気に突破するから…偽・螺旋剣射出!」

 

ボクは偽・螺旋剣で一気に道を広げる。何処にいるかは大地感知である程度捕捉している。

偽・螺旋剣で開けた道を全力で進み、後続をハジメが銃撃で粉砕していく。

 

「ギャァァァァァァァ!?」

 

「手!手だけ追ってきてるよ!」

 

「ああ〜なんかエルデンの指虫だったかに似てんな」

 

「トッシー!?思い出さないであれなんとかしてぇ!」

 

「腕ぇ!?なんでぇそんなことするノォ!?」

 

「士郎さん!助けてデスゥ!シッポ!シッポ触られましたァ!」

 

粉砕された死体の一部カサカサとついてくる。樹海でのGの件のせいで余計に悲鳴が上がる。

 

「う~む、若いのぅ。ただの魔物にああまで騒げるとは……」

 

「……ティオ、ババくさい」

 

「ふぉ!?ひ、酷い言い草じゃ。まぁ、実際、年上じゃから、ついつい微笑ましく思ってしまうことはあるが……ユエもあるじゃろう?」

 

「……ない。私は永遠の十七歳」

 

「あれ?ユエって確か二十歳越えてから幽閉されたんじゃ……」

 

ハジメ、それはアウトだよ……

 

ハジメに、ユエの名状しがたい眼差しが突き刺さる。溢れでるフロストゾンビを歯牙にも掛けず爆炎に包むハジメだったが、危機感が背筋を駆け抜けたため一瞬で折れた。

 

「……ユエは永遠の十七歳、間違いない」

 

「……ん。ハジメと同い年」

 

「尻に敷かれてんなおい……」

 

「妾はご主人様の尻に敷かれたいのぅ」

 

「後で踏んでやるから今は戦いに集中しろ……」

 

「ふふふ、言質取ったのじゃ」

 

─────────────────────────

 

羅針盤で大元の所まで走り続けていると、ドーム状の広場に出る。

ゾンビ達を動かしている魔石の場所はここだと羅針盤も示している。

 

「ここの何処かにか……」

 

「お兄ちゃん上!」

 

恵里の声に釣られて上を見ると、そこには透き通るような氷でできた大鷲が次々と現れた。

すぐさまボクは銃剣・干将・莫耶を取り出して迎撃する。

 

「ハジメは魔石を!」

 

「今狙ってる!」

 

既にハジメはシュラーゲンを取り出して魔石に狙いを定めていた。彼の両隣りでは香織とユエがその邪魔をさせないように、魔法と銃撃で大鷲を破壊していく。

ハジメはシュラーゲンの引き金を引く。そのまま灰色の稲妻を纏った弾丸は真っ直ぐ魔石へと向かう──がしかし、

 

「かわされた!」

 

氷壁の中にある魔石が突如動き出して弾丸をかわしたのだ。

 

「オアシスのスライムと同じみたいね……」

 

「つーことはこの部屋全部あいつの武器であり防具か。お前ら、不意打ちに気ぃつけろ」

 

幸利の言葉通り壁から狼が生み出される。大鷲と同じように全身が氷でできている。

更にゾンビ達もこちらに食い付かんと呻き声を上げて大口を開けている。

多少の撃ち漏らしはあれど、ゾンビの数はみるみる減っていく。

 

「しつこいぞこいつら……」

 

「龍太郎、ヤケになるなよ…」

 

「わかってらぁ……」

 

すると氷壁の奥の奥からピキピキと音を立ててナニカがこちらに向かって来ている。

目の前の氷壁が魔石の周囲に集まると、そこから巨大な亀が生み出された。

その甲羅は剣山のような氷柱が突き立っており、甲羅から伸びた足は鋭い爪が足下にヒビを入れる。

 

「なるほど……まずこれが第一の試練ね」

 

「ボクの偽・螺旋剣を連射すれば、余裕だろうけど……」

 

ボクは後ろで狼やゾンビを相手にしている、天之河達を見る。

 

「ん?ならなんでやらないんですか?」

 

「それじゃあ、アイツらの試練にならないからだよシア」

 

「なるほどです」

 

「私がみんなに念話で後ろに下がるよう伝えるわ」

 

「ありがと、雫」

 

そう納得したシアは後ろに大ジャンプする。それに続いてボクも後ろに移動する。

 

「天之河。あの亀は君らで討伐してね」

 

「え?」

 

「え?、じゃないよ。君らがやんないと試練にならないからね?雑魚はこっちが受け持つ。亀に集中すればいいよ」

 

「あ、ああ……わかりました……龍太郎!鈴!手を貸してくれ!あのデカい亀をやっつける!」

 

「おう!」

 

「すぐやられないでよ!」

 

「大丈夫だ!今の俺達ならやれる!」

 

そう言って聖剣を構える天之河。

 

「傷のことは私が回復するから気にしないでいいよ」

 

後ろで発動待機済みの香織が銃撃でゾンビや狼、大鷲を迎撃しながら伝える。

 

「香織……助かる!」

 

どうやら、心配する必要がないようだ。

 

「大丈夫そうだね」

 

「ボクらは目の前の雑魚を一掃するとしますか」

 

そう言って、ボクは空間魔法と重力魔法の合わせた魔法、『呑空(どんくう)』(フィーアンと戦った際に炎を空間に閉じ込めたような時に使った『圧空(あっくう)』と同じようなものだが似て非なるものである)を使い、一纏めに圧縮して塵にする魔法。

それを複数展開して天之河達の邪魔をさせないように魔物を塵にしていく。

そうこうするうちに巨大な亀は天之河の一撃で葬り去ったようだ。

こっちも魔物も殲滅し終えたところだった。

 

「お疲れ様。少し休んだら進むよ」

 

そう言って、身体に付着した氷の破片を払い落とす。

すると天之河が心配そうな顔をしていた。

 

「??……ああ、ボクらも結構魔物倒したし、試練突破は大丈夫だと思うよ」

 

「そ、そうか……それならいいんだ」

 

そう言ってボクらは通路の先に進んで行き、待ち受けていたのは眼下に広がる、アホのように長い迷路だった。

 

「うわぁ……」

 

ボクはげんなりした声を漏らした。

 

 

 

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