ありふれない天の鎖の投影魔術師は世界最強   作:小説大工の源三

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今回は幸利、優花、龍太郎、鈴です。


虚像は虚像であるがそれと同時にそれは自分だ。

3人称side

 

士郎達が恵里と合流した頃。幸利は自身の虚像と話ていた。

虚像は地に倒れ、本人はブラックロッドを肩に乗せ、虚像を見下ろしている。

 

『そんなお前をアイツらが受け入れてくれると思うのか……』

 

「俺はお前の言ってることはわかってる。正直、昔の俺の欲望だそれは。ティオや優花と付き合った時に、嬉しい以外に支配欲求みたいなもんはあったさ。そりゃハジメや士郎も持ってるもんだからな。天之河の奴の勇者欲求は流石にあれも昔の俺だが、正直見てて痛々しいわな。ま、根付いたモンは仕方ねぇが、それはそれだ」

 

『……は?』

 

「だって恋人を奪われたくない、且つ手放したくねーのは当然のことだろ?それに勇者願望なんざどうでもいい。そんな柄じゃねぇからな」

 

『元から乗り越えてたか……』

 

納得したように軽く笑う虚像。

 

「当たり前だ。ま、士郎と出会ってなかったらここにいなかったかもしんねーけどな」

 

『そりゃそうだ。もしかしたら殺されたかもな』

 

「やめろよゾッとする……」

 

『はははっ……まぁ頑張れよ……』

 

虚像が解けていった。

 

「通路……ねぇ……何が待ち受けてるのやら……」

 

─────────────────────────

 

一方、別の部屋では優花が虚像とぶつかり合っていた。

辺りには苦無や手裏剣、短刀などの投擲物が壁に突き刺さり床に散らばっている。

壁や床にヒビがあり、一部が崩れ落ちていることからも戦闘の激しさがわかる。

 

『本当に彼は貴女を捨てない?』

 

「どういうこと……」

 

『だって地球にいた頃、アタシは香織や雫みたいに二代女神なんて呼ばれることもなかった。この世界に来て、ティオが彼に近づいてきた時も周りに一歩劣る容姿が恨めしかったでしょう?』

 

そう言う虚像を無言で背中に吊るしていた槍で突き刺し、そのまま壁まで押し付ける。

そして腕に纏雷を為て宝物庫から取り出した、金属製の塊を殴り飛ばし、虚像にぶち当てる。

 

『ガフッ……』

 

「……持て囃されなくていいわよ。それにアイツを好きになったのはアタシが築いてきた関係からよ」

 

そう言い切り、溶けかけの虚像にトドメを刺す。

 

『やっぱり通じないのね……』

 

虚像は満足そうにトドメの一撃をくらい消滅していった。

 

「ふう……ダメねアタシ。これじゃあ幸利の奴を信じてないのと一緒じゃない」

 

─────────────────────────

 

ドゴォ!

 

拳と拳がぶつかり合い、ぶつけ合った当人達が吹き飛ぶ。

 

「この時点じゃ互角か……」

 

『開幕殴りかかってくるとか脳筋かよ俺』

 

「そりゃどうも…オラァ!」

 

再び殴りかかる龍太郎だが、今度は空力シューズで縦横無尽に飛び回り、虚像の目が追いつかなくなると同時に拳を入れ込む。

 

ドカッ!バキッ!ゴキッ!

 

『見え見えだッ!』

 

次の拳を叩き込もうとしたところを回し蹴りで横っ腹を蹴り投げる。そのまま壁に激突する。

だが龍太郎は怪我した気配もなく現れる。

 

「チッ……こうなりゃゴリ押しだァァァア!」

 

籠手を黒い炎で燃やし、足には電撃を纏わせる。

そこからは殴り殴られ蹴り蹴られの攻防が始まった。

防ぎきれない拳と膝、蹴りが頰、腹、腰、顎にヒットする。

口が切れたのか血を吐き出し、鼻血が垂れる。

 

『なぜそこまでッ……焦る?俺はこのままなら迷宮は攻略できるだろ……』

 

「……ウルセェよ」

 

『そりゃ焦るさ……親友の間違いを正す役目を盗られかかってるからな……!』

 

虚像のコークスクリューブローが龍太郎の鳩尾にクリーンヒットする。

 

ボキボキボキィ……

 

骨が何本かイカれる。

 

「グボォア……」

 

再び壁まで飛ばされる。しかも今度は崩れた壁だ。

そこには鋭利に尖り落ちた氷塊だった。

龍太郎は止まろうと、空力を使うも、勢いを殺すことが出来ずに、背中を串刺しする。

 

『その焦りこそがお前の不安だ』

 

虚像がそう言ったものの、龍太郎は俯いたまま動かなくなってしまった。

氷塊を伝って背中の血が滴り、血溜まりを作る。

数分間、何もない時間が過ぎる。

 

ポタッ……ポタッ……

 

『拍子抜けだな俺……テメェの親友に対する感情はその程度なのかよ』

 

その言葉にピクリと龍太郎の身体が動く。

 

ズル……ズル……

 

ゆっくりと氷塊が突き刺さったまま立ち上がる。

ダメージは大きく、まともに立っていられないほどの激痛が襲いかかる。

 

「……ゲホっゲボっ!」

 

咳き込む度に血反吐を吐く。

頭を切っていたのか血で左目の視界が紅く染まる。

 

「ああそうさ……俺は光輝の間違いを正すッ!これだけは絶対誰にもゆずらねぇ!アイツの親友としてだッ!』

 

拳に魔力を込め先程よりも炎を燃やし走る。

虚像は拳の衝撃波を飛ばし、それを龍太郎は喰らうものの、それで止まるような気迫ではなく、更に炎を燃やし続ける。

 

「おおおおおおおぉお!」

 

叫びながら体勢を低くし虚像の拳をかわし、スマッシュを顔面に叩き込む。そのまま地面に叩きつける。燃え沸る炎は消えることなく焔の渦を生み出し、周囲や背中に突き刺さった氷を溶かし始める。

焔が消えるとそこには叩きつけた筈の虚像の姿はなく、拳を地面に立てているだけだった。

 

「はぁっ……はっ……終わったみたいだな……!」

 

休むことなくフラフラと壁に寄りかかりながら、龍太郎は開いた通路へと向かい歩き始める。

 

─────────────────────────

 

「風林火山……『風』!」

 

手にした軍配を振るい、巨大な竜巻を巻き起こす。そしてその中に、

 

「聖絶・『爆』!」

 

あらかじめ用意していた聖絶で、バリアバーストを放ち、擬似的な氷の竜巻を放った。

全て障壁に阻まれ、全くダメージを与えることができなかった。

 

「これだけやってもまだ効いてないの……?」

 

『風林火山・『林』』

 

虚像が軍配を地面に突き立て、氷の木を生み出し、攻撃する。聖絶で防御しているのだが、樹氷の鞭の威力にドンドンとヒビが入っていく。

 

「ううッ……」

 

更に数が増えていき、そして遂に破られてしまった。

キャッチボールでもするかのように何度も叩き飛ばされる。

最後にその枝で拘束される。

 

『そろそろ私の話を聞いたら?』

 

それを聞きたくない鈴は、攻撃を続けようとしたのだが、枝がキツく締め付けており、身動きが取れなかった。

 

『本当は天之河くんに着いて行くなんて嫌だった。でも龍太郎くんが正すって言うから着いて行った。これ本当は恵里が羨ましかったんだよね?』

 

「……っ!」

 

『だって、恵里は支える相手がいて、自分にはいない。恵里は自分を曝け出してるのに、自分はあの時から、別の誰かになろうとしてる。恵里は友達なのかなぁ?憧れだったんじゃないの?だって憧れは理解から最も遠い感情だもんね』

 

「うるさい!」

 

軍配で虚像を殴ろうとしても拘束から抜け出せず必死にもがくだけだった。

 

─────────────────────────

 

鈴は今と違い、昔はひとりぼっちで寂しがり屋、おまけに家に親は中々おらず、使用人と暮らしているような日が多かった。

他のクラスメイトの親が授業参観に来ている中、自分の親だけが出ていなかった。

そんな中、一際目に入るよう少女がいた。

それが恵里だ。

幼い鈴から見ても両親とは全く似ておらず、本当にその家の子なのかと疑うほどだ。

そんな時、恵里がついうっかり漏らして言葉を聞いてしまった。

 

「いつもありがとうお義父さん、お義母さん。僕は養子なのに……いつも良くしてくれて」

 

その後の会話は耳に入らなかった。

 

血の繋がりのない両親なのに自分と違い、愛されていることが実感できている。

ただ自分が愛されていないとは思ってはいない。

プレゼントなどは考えて選ばれている物だったし、話すことができた時はたくさん話しをした。

でも、共働きの両親はいつも忙しいので、自分が寝静まった夜に帰ってくる。

そんな彼女が羨ましかったのか、はたまたどうしたら親に構ってもらえるか知りたかったのか、鈴はちょっとした打算目的で彼女に近づいた。

最初は暗い自分から話しかけた所で話が続かず、気不味い空気が流れた。

 

『なら、大きめのわがまま言ってみたらどうなのさ。僕だって時折言うよ?』

 

今まで鈴は大きなわがままを言ったことがなかった。

そんな彼女の一言が衝撃だった。

だから初めてわがままを言った、お父さんとお母さんも最初は驚いたけど、その日からなるべく早く帰って来るようになった。

それからは恵里とよく遊ぶようになり、彼女の一つ上の兄である士郎さんのことを知った。

士郎さんはいろんなことができる、お兄さんなイメージだった。

でもなんでもできる訳じゃない。恵里はそんな彼を支えると言い切っていて、すごくかっこいいと思った。

自分も誰かを支えたいと思うようになった。

 

─────────────────────────

 

「……うん。違う。鈴は恵里の友達で親友だ」

 

それは変えようのない事実だ。

憧れから変わって産まれる友情だってあっていい筈だ。

腕に力を込めて樹氷の拘束を破る。

 

『なっ……!?』

 

「聖絶・『浮剣』!10!」

 

聖絶で作り出された剣を10本、自身の周囲に浮かせる。

 

「射出!」

 

それを勢いよく放つが、虚像の聖絶で防御される。

 

『くっ……聖絶・斧!』

 

虚像も負けじと攻撃をする。

 

「聖絶・剛腕!」

 

巨大な腕を作り出し、斧を受け止め、もう一つ腕を作り、虚像の聖絶をなぐる。

聖絶を先程の仕返しと言わんばかりに破壊する。

 

「オリャアァァァア!」

 

バギッバキバキビキッィ…!

 

『ぐぅ……』

 

無防備になった虚像へと最後の一撃を放つ。

 

「聖絶・転!」

 

今まで砕かれてきた聖絶が巻き戻しをしているかのように虚像を囲むように現れる。

 

『自分のだけじゃなく、鈴の分までか……』

 

「ここの聖絶は鈴の物だからね……どっちもやるのは難しいことじゃないよ。今からこれをありったけの魔力で放つよ……」

 

『なら存分に放って……乗り越えた君の力を』

 

「聖絶・爆散!」

 

聖絶が一気に爆発する。

その威力は虚像だけでなく、放った鈴はすらも吹き飛ばした。

天井は崩れ落ち、壁は原型すらわからないほど壊れ、床には巨大なクレーターが出来上がっていた。

それの中心には何もいないことから虚像に勝つことができたようだ。

ただその代償も大きく、全てを攻撃に使った為その後のことを考えていなかった。

吹き飛んだ衝撃で地面を何度もバウンドし壁に勢いよく激突した激痛で鈴は意識を失うのだった。

 

─────────────────────────

 

ゆっさゆっさ心地よい揺れに鈴は目を覚ます。

 

「んぅ………?」

 

「お、目ぇ覚ましたか鈴」

 

「りゅう……たろーくん?」

 

「おう俺だぞ」

 

「どういう状況……これ……?」

 

何故か龍太郎との顔の距離が近いことを不思議に思う。

 

「………?………ッ!?///」

 

どうやらお姫様抱っこされているようだ。

 

「おっと、暴れんなよ……?お前が壁に寄りかかって倒れてるもんだから、起こそうと思ったんだがよ。中々起きないから運ぶことにしたんだよ。運び方は後でいくらでも文句聞くから今は我慢してくれ。背負うにも背中がズタボロなもんだから、こうやって運んでんだ」

 

「え?背中?」

 

進んだ後を見るとそこにはポタポタと赤い点が続いていた。

 

「ちょっと!龍太郎くん!背中見せて!早く!」

 

「お、おい!暴れんなって……!」

 

「暴れるよ!傷!治さないと!回復薬は!?」

 

「薬はもうねぇよ……気合いでなんとかしてるから大丈夫だって……」

 

「いいから!」

 

そう言って鈴は龍太郎の腕から降りる。

 

「カオリンに教えてもらったから、ほら背中診せて」

 

「お、おう……」

 

背中に魔力が流れ込む。

背中以外にも肋骨や腕の骨、肩が脱臼していたようだ。

 

「焦天!何バカみたいに気合いで耐えてんのさ!」

 

「い、いや……大丈夫だと思ってたから……ゲボバァッ!』

 

「わァァァア!あり得ないくらい吐血してる!骨、肺に刺さってるよねこれ!」

 

そのまま回復魔法を続ける鈴。

2、3分ほど経過すると、治療が終わり、立ち上がる鈴。

 

「……うし、大分マシになったわ。サンキューな鈴」

 

ニカッと笑いながら口についた血を拭いながら龍太郎は立ち上がる。

その仕草に鈴は何故かドキッとしてしまった。

 

「それじゃあ行こっか」

 

「もう歩けんのか?」

 

「うん」

 

通路の続きを進んで行くのだった。




幸利

支配欲というものとの向き合い。
原作のような勇者欲求等、天之河が無意識抱いているものが幸利とどことなく似ており、彼の同族嫌悪というものを認識、それをどう見るか。
開き直った上で乗り越えた感じですね。

優花
容姿へのコンプレックス。
彼女自身も高い容姿なのだが、作中明確に評価されることが少なかったり、香織や雫などのレベルが高いキャラが多いので、その辺りが悩みへと。
それよりも時間を重要視している為問題なし。

龍太郎
いつも光輝に指摘していたのは自分ではなく、士郎や幸利、ハジメと止める役割を盗られそうになっていることへの不安と焦りですね。
ズタボロになりながらも無事突破。(無事……なのか?)


恵里への憧れコンプレックスなど、明かされていない原作との違いが今回の試練へと変わった。
龍太郎同様ボロッボロですが無事突破です。

尚、恵里が鈴にわがまま言えばいいと言った時は、雫のことがデジャブったらしい。
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