ありふれない天の鎖の投影魔術師は世界最強   作:小説大工の源三

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ご注意を


今、光と闇が交わりセイバーに見える!

 

一方、他のメンバーは……

 

『やっぱり『私』の中での疑いは晴れているのね』

 

「……当たり前。叔父様は私を逃してくれた。その事実だけで充分。後は真名をハジメと香織に伝えるだけ……かな?」

 

『ふふふっ……変わったのね『私』。なら行くといいわ。ちゃんと伝えなさいよ私、アレーティアの真名を』

 

「……ん」

 

ユエは既に不安だった叔父が逃した理由についても、残していた遺言が彼女を揺らさない。

叔父と開いてしまった距離を縮めることは今更になってだが、彼の意を汲むことで縮めたと思っている。

自動再生とて無限ではない事を叔父が知らないはずがない。だからこそあの遺言を信じられる。

それを知った虚像は満足そうに消えていった。

 

「……虚像が昔の言葉使いなのがちょっと寂しい……今の私はユエ。吸血姫、アレーティア・ガルディエ・ウェスペテリオ・アヴァタールはもうあの日、滅んでしまったから」

 

少し悲しさが胸を割きそうだったが、これからの為に押し流す。

 

─────────────────────────

 

ドパンッ!

 

シュラーゲンから弾丸が放たれ、虚像の眉間を撃ち抜く。

 

「居場所は作る……その程度が怖いなら……僕は地球に帰れない……」

 

『開き直り……でもねぇな……ちゃんと乗り越えてやがる……』

 

「でもまぁ……士郎と出会ってなかったら、開き直りだったかもね」

 

たはは、とハジメは自嘲するように笑う。

 

『まぁいい……進め。それだけでいい。お前は、迷う方が問題だ』

 

「うん。行ってくるよ」

 

─────────────────────────

 

杖に腹を貫かれ磔にされた虚像とそれに向けて銃を向ける香織。

 

「ハジメくんの一番は譲らない。だって私はハジメくんの特別でいる為に努力してきた」

 

『ならユエ達はどうするの…?』

 

「ユエもレミアさんもハジメくんのことが好きなのはわかってるよ。でもね、特別は渡さない。私のわがままで、独占欲。だって好きな人には自分を見てもらいたいもん」

 

『吹っ切れてるね……その猪突猛進具合はどうあっても変わらないんだね』

 

「だから押し通るよ!」

 

密かに改造していたスヴェート&シーズンで虚像を撃ち抜く。

一度に3発放たれる。それが2丁分で6発だ。

それぞれ、両肩、両足、眉間、心臓にヒットする。

 

『おめでとう……先に進んで……多分、貴女が会いたい人に会えるから……』

 

開いた通路遠進むとそこには──同時に通路から部屋に出てきたハジメとユエの相があった。

 

「香織!ユエ!」

 

「「ハジメ(くん)!」」

 

「2人も無事にクリアできたんだね」

 

「……ん」

 

「勿論!」

 

ワイワイと再会と、クリアできたことを喜び合う。

そしてユエは虚像に約束したこと……自身の真名の全てをハジメと香織に教えた。

 

「それが私の昔の名前。記憶の片隅に置いておいて欲しい。これはここにいる3人だけの秘密だから」

 

2人は彼女の名前を忘れないよう魂に刻み込むのだった。

 

─────────────────────────

 

優花が抜けた通路の先は、白と黒の閃光がぶつかり合う部屋だった。

 

「この炎は……ティオね……」

 

部屋の様子を伺うと、予想通りティオが虚像の彼女とブレスの撃ち合いをしていた。

 

『ふふふ、感じるのじゃ。()の憎悪と憤怒、恐怖と諦念を。何百年経とうとも、忘れ消えることのないあの悲劇の日を、庇護していた者どもから手のひら返しのように裏切られ、侮蔑と畏怖の眼差し、同胞を、両親を殺され、その亡骸を辱められた屈辱』

 

「……」

 

虚像がティオに嫌らしい笑みを浮かべ、歴史(過去)を語る。

優花や皆が知らない、ティオの過去。

王国の図書館で読んだ内容と照らし合わせればこの世界の神が、教会が行った非道が明らかになるであろうことだ。

 

『あの時は中々に痛快な気分だったのぅ。聖教教会の総本山を粉微塵に破壊した時じゃ。あの一件の中心は教会であった。怨敵が塵芥となる様は何よりも快感じゃっただろう』

 

虚像が言うことは真実なのだろう。

 

『最初に、清水幸利について行こうとしたのも、“使える”と思ったからじゃろう?彼奴らの異常じゃ、それをまとめ上げている天野士郎は特にじゃ。その力に神は必ず目を付けあの時の大迫害のように牙を向ける。さすれば奴らの牙も神へと向き、弑逆の一助になるやもと、そう考えたのじゃろう』

 

正直に言えば優花はこのことに驚いた。

いつも幸利に被虐趣味を全開に迫ったり、自分の心情を察して解決しようと話を持ちかける理知的で優しい一面ばかりを見ていたため、こんな黒い内面には少しショックを受けた。

だが、ティオはこの部屋に、優花がいることは知っている筈だ。一度こちらに視線を向けたのだから。

だから信じることにした。自分が虚像を打ち破った時と同じように、ティオと少ないが過ごした濃い時間を。

だが彼女の信頼とは逆にティオの黒い焔はドンドンと弱まっていく。

 

『人間、亜人、魔人、そして神。あの時、大切なものを奪い去った全てが憎い。じゃが、その憎しみは、怒りは、主にとって抱いて当然のもの。──そう、復讐は、主の正当な権利じゃ!』

 

虚像の焔がティオの焔を呑み込み始めた。

 

『妾の手を取れ。さすれば、妾がその復讐を成し遂げさせてやろう。もう、内にくすぶる業火を無理に押さえ込まんでもよい。良心に苛まれて、復讐の牙を鈍らせることはない。妾が…彼奴らを上手く誘導してやるのじゃ。なに、あの男も、妾を想うておる。一度懐にいれた者には甘い男じゃ。やりようはいくらでもある』

 

虚像の誘惑がティオへと伸びる──筈だった。

いきなり黒い焔が白い焔を逆に呑み込み始めた。

 

「我等、己の存する意味を知らず。この身は獣か、あるいは人か。世界の全てに意味あるものとするならば、その答えは何処に。答えなく幾星霜。なればこそ、人か獣か我等は決意をもって魂を掲げる。竜の眼は一路の真実を見抜き、欺瞞と猜疑を打ち破る。竜の爪は鉄の城壁を切り裂き、巣食う悪意を打ち砕く。竜の牙は己の弱さを噛み砕き、憎悪と憤怒を押し流す。仁、失いし時、我等はただの獣なり。されど、理性の剣を振るい続ける限り──我等は竜人である!」

 

圧倒的な覇気と共にティオの眼がカッと見開く。瞳は縦に割れ獣性を示すものの燦然と輝く黄金に彩られている。

 

『……その言葉。お主、制御しておったな?』

 

虚像は信じられないと言いたげな表情になる。それもそうだろう。強まっていった力が、いきなり弱まったのだから。

 

「大迷宮の意思よ、感謝するのじゃ。中々、己の本心を客観的に聞くことの出来る機会はない。心とは、広大な海のようなものであるからして、妾自身の気づかぬ内に隙が出来ているかもしれんと利用させてもらったが……存外、収穫はあったのじゃ」

 

『……じゃが、妾の言ったことは偽りはない!負の感情がなくなった訳ではないはずじゃ!なぜこうも容易くッ!』

 

焦る虚像、だがティオは変わらず毅然とした様子でブレスを続ける。

黒い着物と長く艶やかな腰まで届くその黒髪を魔力の奔流にはためかせ、口を開く。

 

「舐めるな。妾を誰と心得る」

 

負の感情への疑問なら竜人族の誓いで答えている。

 

「誇り高き竜人──クラルス族が末裔、ティオ・クラルスなるぞ!」

 

自分が自分である限り、折れはしない。ただそれだけが答えだ。

そのまま黒い焔が虚像を呑み込み焼き尽くす。

 

「お疲れ様、ティオ」

 

「む、優花か。そちらも無事、達成したのじゃな」

 

「そうね。この先になんかものすごい争いの気配がするけど……」

 

「ご主人様達が苦戦してるとは思わぬしのぅ……大方勇者とやらが自分の負を認めずにただを捏ねているのじゃろうな」

 

ティオですら散々な評価のようだ。

 

「貴女もそう思うのね……」

 

「流石にな……しかしこの迷宮の試練は厄介なものじゃ。試練と自分の負を理解出来ぬのなら、あっという間に呑まれてしまうじゃろう。そう考えると士郎は妾と同じような方法で乗り越えていそうなのじゃ」

 

普段から歳上として行動している士郎ならそうしていそうなのは納得だ。

ただ身内に関しては感情的になるのが玉に瑕だが。

神殿騎士がシアをコケにしたり、天之河が士郎と恵里の家族関係を否定した時など、思い当たるところは様々だ。

そう言ったところはやはりまだ子供のままなのだろう。

 

「まぁティオみたく一気に乗り越えはできないでしょうね。年季の差もあるわ」

 

「流石にあの歳で妾と同じように乗り越えられたら立つ背がないのじゃが……」

 

そう言うのだが、実際はその通りだが、多少の躓きはあった。

そうこうして通路を進み、別の部屋に出るのだが、そこでも激しい争いが起きている。

 

その争いの中心にいたのが、伸ばしたブラックロッドを巧みに操り、攻撃を対処している幸利に、黒と白の聖剣を持った天之河が殺し合いをしていた。

 

─────────────────────────

 

幸利が進んだ通路の先にいたのは虚像と鍔迫り合いの真っ最中の天之河だった。

 

「……やっぱ苦戦してるか」

 

天之河が虚像に押されているのは火を見るよりも明らかだった。

 

『見ろよ……トータスに来る前は俺よりも下だった奴がもうクリアしてるぞ?』

 

虚像が幸利の存在に気づき、天之河を煽り始める。

 

「清水は、俺の見てない所で努力してたんだ……ッ!」

 

『そんなこと思ってないだろ?同じ事をすれば俺の方が強くなれる。俺の方がもっと上手くやれるって』

 

「黙れッ!迷宮の魔物!」

 

天之河は自身の闇である虚像に怒りをぶつける。

がしかし、軽くいなされ蹴飛ばされ、幸利の足下まで転がる。

 

『そんなんだから香織も雫も取られるんだろう?今、俺と手を組めば2人を取り戻せる』

 

「……黙れッ!元々、2人は俺よりも南雲や天野先輩に『お前が過去に失敗したから奪われたんだろ?』違う!」

 

焦りまくる天之河を見ていられない幸利はかがみ込んで、助言する事にした。

 

「落ち着け天之河。一度、クズに堕ちかけた俺がクリアできてんだから、普段から良くあろうとしてるお前ができねぇわけねぇだろ……」

 

幸利は地球にいた頃の天之河のことは相性が悪いと思ってはいるが、幼い頃から正しくあろうとし続けるその精神性だけは認めていた。ただ自分の意思を押し付けたりする所は嫌いだが。

昔の自分はただ自分を害する邪魔な奴を消し、欲望のままに女を襲いたいとすら思うような人間(クズ)だった。

だからこそ天之河の現状には昔の自分に似ていて同情すら抱いてしまうほどだ。

 

だが、天之河にとってその言葉は──

 

「黙れよ……お前に俺の何がわかるッ!!」

 

神経を逆撫でするように、彼の焦りを怒りへと変貌させるだけだった。

 

(とことんそっくりだな……俺ならわかってただろ……こんな事になったら俺だってキレることくらい……)

 

そのまま天之河は聖剣で八つ当たりするように幸利へと振るった。

 

『まずはヒーロータイムの足がかりだ俺。手を取れ。そうすれば清水を殺すことができる』

 

虚像が手を差し出す(誘惑する)

天之河はその手を取ってしまう。虚像は解けるように彼に纏わりつき、左手には右手に握る白の聖剣と正反対の黒い魔剣が握られる。

 

『さぁ!奴を序盤の雑魚のように切り捨ててしまおう!』

 

「五月蝿い……今使ってやるだけだ!全てが終わったらお前の番なのを忘れるな!」

 

白と黒の魔力を放出し辺りを吹き飛ばす。

幸利はその余波に吹き飛ばされることはなかったが距離を取る。

 

「馬鹿が……闇に呑まれやがったか……」

 

腰に付けていたブラックロッドを抜き、自身の身長よりも少し長めに伸ばして構える。

天之河が斬りかかるも、幸利は身体強化を施し、攻撃を軽くいなす。

 

「降れ!『火炎時雨』!」

 

聖剣を振るうと、斬撃の軌跡から炎の弾丸が降り注ぐ。逃場がないほど範囲が広いものの──

 

「『絶禍』」

 

幸利が指先に作り出した重力球に呑み込まれる。

 

「唸れ!『震空波』!」

 

二つの聖剣で斬りかかり、幸利がブラックロッドで受け止めたと同時に、振動を発生させ、後ろに弾き飛ばす。

 

「ちっ……!『暗黒球砲』装填!」

 

弾かれながらも闇魔法を発動・待機させる。

 

「消し去れ!『白光閃』!」

 

光魔法のレーザーで待機中の暗黒球を破壊し、追撃をする。

直撃こそしたものの、高い魔力耐性で全くダメージを与えられない。

 

「『暗黒陣』吹っ飛べ!」

 

ブラックロッドを構えた時に地面に魔法陣を作っており、そこから闇魔法の衝撃と重力魔法による圧をかける。

少しでも動きを止めるためなのだが、天之河はその態勢のまま、黒い聖剣を振るう。

 

「『天翔閃・邪光』!」

 

黒い天翔閃が放たれる。

 

「しまっ……!」

 

闇魔砲の攻撃に幸利は防御態勢を取り受け止める。直撃したもののダメージだけはないが、後ろの氷壁が崩れ落ち、その威力と彼の魔力耐久が凄まじいことがわかる。

 

「……ふぅ。さーて、どうしたもんかね」

 

幸利なら余裕で避け、反撃し、天之河を黙らせることができるが、彼としては、この迷宮を全員で──特に天之河をクリアさせたいと思っている。

幸利はこの迷宮の試練はただ自分の闇を見せるだけではないと思っている。

闇を見せるだけなら、乗り越える者はまだ多くいるはずだ。これの前の試練でダメになる者もいるだろうが。

おそらく心の闇を強くし、逆に自身の闇を見た本人は闇に付け入れられやすくなっているのだろう。そして仲間と同士討ちさせることで、試練の難易度を上げている。逆に言えば、呑み込まれてから逆転も可能な筈だ。

闇術師であるからこそ幸利は、この迷宮の試練の仕掛けの深い所まで理解していた。

 

「……やっぱ、俺じゃ無理だろうな。龍太郎辺りが来てくれれば良いが」

 

そう考えた時だった。

 

「なんだなんだ!スゲー音が聞こえたぞ!」

 

叫びながら入って来たのは、クラス一番の脳筋、坂上龍太郎だった。

その後ろには鈴もおり、無事に試練を乗り越えて合流したのだろう。更に別の通路からは優花とティオも来ている。

 

「トッシー!?」

 

「龍太郎!鈴!良いところに来てくれた!」

 

幸利は大規模な魔法で天之河を吹き飛ばし、重力魔法で拘束する。

 

「お前ら!手ェ貸してくれ!」

 

そう叫び、説明の為に2人の元に移動する。

 

「どうした幸利……」

 

「天之河が虚像に呑まれた……」

 

「なっ……」

 

「ええ……」

 

龍太郎は驚き、鈴は落胆や呆れのような感情を顔に出す。

 

「案の定呑まれたわねアイツ……」

 

「俺としてはクリアに導きたいが……俺じゃ無理だ……そこで龍太郎に説得を頼みたくってな。ただアイツの意識の中に入る予定なんだが、さっきから暴れてそれどころじゃねぇんだ」

 

「ご主人様は優しいのじゃな……妾はこのままのしても良いと思うのじゃが」

 

あのティオですら諦めさせる選択を取っている。それだけ天之河に期待していないということだ。

 

「俺が抑えれば良いのか」

 

「いや、抑えるのは鈴に頼みたい。お前は俺と一緒にアイツの意思の中に入る。頼めるか?」

 

「わかったぜ。無理矢理にでもやってやるさ」

 

「良いよ。2人がやるなら鈴も手伝うから」

 

「幸利、アタシ達はどうしたら良い?」

 

「優花とティオは何もしなくて大丈夫だ……もし士郎達が来たら状況の説明を頼む」

 

そう言って幸利は天之河にかけている重力魔法を解く。

そのまま斬りかかろうとしている天之河を鈴の結界魔法で拘束する。その拘束から逃れようと天之河は必死にもがく。

 

「龍太郎……俺の肩に触れてろ」

 

「おう……!」

 

幸利は杖を地面に突き刺し、魔力を高め、集中する。天之河の意識の根幹を探している。

2人の身体を青紫色の魔力が覆い始める。

 

「………………掴んだッ!『侵魂』!」

 

魔法を使った途端、もがいていた天之河と魔法を使った幸利、その肩に触れていた龍太郎の動きがピタリと止まった。

 

 




ふと思った事。
今しか見てない人間が怖い。
というのを某菌糸類が言っていましたが、
これ前の士郎のセリフの中に

「迷う暇があるなら先に進む方が良い。辛い事を先送りにするより今やるだけだよ。過去も未来も嫌なら消去法で今が一番。その今すら嫌なら、それを乗り越えて次の今に行く。今はすぐに過ぎて次の今がめくるめくる来るのだからね」

ってのあったけど。
これ、一歩間違えれば士郎くん、完全狂人になってるやつ……


ということを思い出しました。


─────────────────────────
タイトルコールは謎のヒロインにお任せして、近況報告。

ちょいと仕事が忙しくなったので更新が遅くなります……
今回の投稿が遅くなったのもそれが理由です。
もしかしたら速くなるかもしれませんが余り期待はしないでください。
あとそろそろFGOのバレイベもありますし……
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